「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」レビュー

3.0
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ファンタジー
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評価 ★★★☆☆(59点) 全13話

あらすじ 4年間にわたる東西南北による大陸戦争が終結。その戦場で「武器」と称されて戦うことしか知らなかった少女・ヴァイオレット・エヴァーガーデンは引用- Wikipedia

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人形は愛を知ることができるのか

原作はライトノベルな本作品。
監督は石立太一、制作は京都アニメーション。

圧倒的な作画


画像引用元: ヴァイオレット・エヴァーガーデン 1話より
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

Ⅰ話、早々に圧倒的な作画にやられる。
髪の毛の一本一本からまつげの一本一本まで描かれるような細かい描写、
机の木目まで描き、紅茶の絶妙な透明感まで描くのは
TVアニメとしては「異質」といえるほどの作画だ。

もちろん作画がいい事に越したことはない、しかし、
深夜アニメという放送媒体にここまでの作画が必要なのか?と
逆にそう感じてしまうほどに細かすぎる描写は
さすが京都アニメーションと言わざる得ない。
TVアニメでありながら劇場アニメのようなクォリティだ。

ソファに座っている登場人物の絶妙な揺れ、
クッションの効き具合すら感じさせる、
この圧倒的な作画により半ば強制的に作品の
世界観に飲み込まれる。

戦争の道具が戦後にどうなるか


画像引用元: ヴァイオレット・エヴァーガーデン 2話より
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

この作品は非常に独特だ。
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」というタイトルの通り、
この作品の主人公はヴァイオレットという名前の女の子だ。
彼女は戦争孤児であり、かつては「少佐」のもと軍に所属し兵士として、
戦争の道具として戦い両腕を失った。

戦争が終わり平和になった世の中で道具だった彼女がどう生きるのか。
命令を与えてくれて、好意に近い感情をいだいていた「少佐」も
消息不明であり、自分には会いに来てくれない。

そんな言われたまま、命令どおりに戦い続けていた彼女が、
自分は戦争意外では何の役にも立たないと思っていた少女が
「郵便社」で働く中で人々の「手紙」を通し、普通の人の心に触れ、
変わっていくというストーリーになっている。
この作品はそれ以上でもそれ以下でもない。

メイドになってかつての敵が襲いかかってくるわけでも、
実は秘密任務についていて誰かを守っているわけでも、
彼女の出生に何らかの大きな秘密があるというような、
そんな壮大なストーリー展開はない。

「自動手記人形」と呼ばれる代筆業を通じて、
少佐の最後の言葉である「愛している」という言葉の意味を理解していく。
シンプルなストーリーであり、シンプルだからこそキャラクターの感情表現の
描写が重要だ。
一見地味とも思われる内容を「京都アニメーション」の鮮彩な作画で盛り上げる。

感情の機微


画像引用元: ヴァイオレット・エヴァーガーデン 5話より
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

戦争が終わり、大切な人と離れ、命令どおりにしか生きてこなかった彼女が
手紙の代筆業を通じて人々の心を理解していき、彼女も変化していく。
この作品は非常にシンプルだ。
1話の1話のストーリーの積み重ねが主人公の変化に繋がり、
淡々としたストーリー展開が見ている側に染み渡るような感動を感じさせる。

序盤では彼女は人の感情を理解していない。
だからこそ手紙の代筆を頼む人の人間としての感情を理解できず、
まるで本当に「人形」のように対処してしまう。
文字を書けない人が多い時代だからこそ、依頼人の言葉を読み取り、
それを感情の伝わる手紙にしなければならない。

道具であったヴァイオレットは依頼人の感情を、本心を読み取ることが出来ず、
言葉通りに、そのまま書いてしまう。人は口に出したことが全てではない。
言葉とは複雑で繊細で裏腹だ。
そんな人だからこその「難しさ」をヴァイオレットは学んでいく。

愛しているという言葉の意味を、感情そのものを彼女は理解しようとする。
「少佐」の最後の言葉だからこそ、彼女はそれにすがる。
少佐がもう戻ってこないとは知らず、少佐とのつながりを彼女は求めている。

道具だった彼女を周囲の人もまた気になり、言葉と感情をぶつけていく。
人と関わり、人と言葉をかわし、人の感情を目の当たりにすることで
彼女もまた人になっていく。

旅と手紙


画像引用元: ヴァイオレット・エヴァーガーデン 6話より
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

中盤以降になると単発のエピソードも多く、
1話完結の短編集を読んでいるような感覚になる。
ちょっと毛色は違うが「キノの旅」にも少し似ており、
様々な場所に訪れ、1話一人ずつの手紙で物語が作られている。

それ故に話の当たり外れも生まれてしまっている。
1話30分という枠で各話のストーリーを収めるために、
綺麗にまとめ過ぎている部分が目立ちTVアニメという媒体上仕方ないのだが、
尺にいい意味でも悪い意味でも縛られてしまっている。

1エピソード2時間位で描いてほしいと感じる話や、
逆に15分位でまとめてほしいと感じる話もあり、
序盤で出ていたキャラクターが後半で出番が少なくなることも多く、
せっかく魅力的なキャラが多いのに使いこなせていないもどかしさも感じてしまう。

アニメにおいて原作には居ないキャラもかなり追加したようだが、
追加したわりには使いこなせていない。

ストーリー構成


画像引用元: ヴァイオレット・エヴァーガーデン 4話より
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

ストーリー展開もかなり唐突だ。
4話まで堅苦しい文章しか書けなかったヴァイオレットが、
5話でいきなり王女の恋文を代筆するようになるまでになっており、
しかも恋文もとても優秀であり、恋心なども理解してるように感じさせる。
この成長の過程があまりにも急激でやや雑だ。

このあたりのエピソードはBD特典のOVAのEXエピソードで描かれており、
本来はTVアニメの中でやらなければならない重要なエピソードを
TVアニメのストーリー構成の中でやらなかったせいで、
違和感が生まれてしまっている。

4話まで丁寧な成長描写を感じられるのに、5話でふっとその
丁寧さがなくなってしまうのは残念でならない。
後半のエピソードが序盤にあったほうが良かったと感じる部分もあり、
5話のエピソードにしても、もう少し終盤か、
せめて6話と入れ替わっていれば違和感はもう少し減っていたかもしれない。

感情


画像引用元: ヴァイオレット・エヴァーガーデン 9話より
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

1話1話の物語で彼女は色々な感情を知り、自分の中に取り戻していく。
時には恋を、寂しさを、誰かを思う心を、共感を、喪失を。
1話完結の物語そのものが彼女の「感情」を取り戻す物語になっており、
話が進めと1話の彼女とは別人のようになっていく。
道具から人へ、人と接していきながら感情を得ていく。

1話1話の、1通1通の手紙が、彼女にとっては貴重な経験だ。
そんな貴重な経験を通じて彼女の中の感情が育っていくのが見る側にも伝わり、
時には涙腺を刺激される温かいエピソードが描かれる。

感情を得ていくからこそ、自身の喪失も痛く感じてしまう。
戦争で誰かの命を奪ったこと、戦争で失った少佐のことを。
知りたくない真実を知ってしまったことで彼女の感情は強く揺れ動く。

喪失を受け入れられず、叶わぬ思いが、あの頃の日々を思い返させる。
道具だった頃の自分に人としての生き方を教えてくれようとした少佐の存在は
彼女にとっては「愛してる」存在であり、それを感情を取り戻した彼女だからこそ
強く実感してしまい、打ちひしがれる。

手紙


画像引用元: ヴァイオレット・エヴァーガーデン 10話より
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

少佐を失ったことを実感した彼女は自身への「命令」の意味も失ってしまう。
深い深い喪失の中で彼女は手紙を受け取る。彼女と関わってきた人達からの手紙、
すべてを失ったと思った彼女が手に入れていたものを手紙の中で知る。
自身がこれまで綴った「手紙」で救われた人達を見て、
彼女は自身の存在を、アイデンティティを確立する。

自身の名前、生きる意味を実感することで彼女は「自動書記人形」として
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」という一人の人間になる。
自分と向き合い、過去と向き合い、そこで立ち止まらず一歩進む。

そこからの10話だ。彼女が受けた依頼は50年に渡る未来への手紙だ。
小さな娘へ、母が綴る手紙。50年後の彼女へ届ける唯一の方法だ。
「愛」を自覚しつつある彼女だからこそ娘への愛を綴る母の手紙を
綴ることができる。

小さな娘は母が居なくなったら一人だ。だが母の命は病に侵され短い。
そんなことを知らない少女の無垢な叫びと、母の想い。
「死」を自覚したからこそ残す手紙と、それを綴るヴァイオレット。
自身も誰かの「死」を味わったからこそ彼女は涙する。

もうそこには1話の頃の道具だったヴァイオレットはいない。
感情を、愛を知った「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」が居る。
予想できるストーリーなのに泣いてしまう。
そこにはキャラクターを演じる声優の演技力と、表情豊かな作画、演出が
予想できるストーリーを号泣するストーリーへと変える

終盤


画像引用元: ヴァイオレット・エヴァーガーデン 12話より
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

ただ、終盤、またストーリー構成が足を引っ張ってしまう。
話としては山場は10話ないし11話で迎えてしまい、
そのあとの12話と13話ははっきり言って蛇足だ。
アニメでは原作の内容をだいぶ改変しており、その影響が終盤にも出ている。

本来は最終話のエピソードで彼女は「再会」する。
1クールで綺麗に「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」という少女の
物語を描ききることが出来たはずなのに、引き伸ばすような展開になっている。
おそらく新作エピソードの制作も決まっており、
「引き伸ばすため」の原作改変だ。それが見ていてわかってしまう。

「ヴァイオレット」の戦闘描写も色々突っ込みどころや過剰な部分も多く、
この作品のツッコミどころが終盤で目立ってしまっていたのは残念なところだ。

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総評:この素晴らしい作画に最大限の称賛を


画像引用元: ヴァイオレット・エヴァーガーデン 13話より
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

全体的にこの作品の「作画」の良さが色々な部分を後押ししている。
戦争孤児で命令されて生きてきた少女が戦場を離れ
一人の人間として成長していくというストーリー、一見地味な内容だが、
美麗な作画による雰囲気と細かい動きや表情で感情を見せる演出で
ときおり涙腺をくすぐられるような出来栄えになっている。

1話1話の積み重ねのストーリーが「ヴァイオレット」という少女の成長を
感じさせる一方で急に数ヶ月時間がたってしまったり、
引き伸ばしを感じさせる終盤のストーリーは欠点と言わざる得ない。

多数のキャラクターもいまいち使いこなせておらず、
色々と原作から改変して描いているのは分かるのだが、
調べた所、このレビューで書いた不満点の多くがその改変点のようだ(苦笑)

キャラクター自体の性格やキャラ同士の関わりの描写も削られていたりと、
これだけいろいろと改変していれば違和感を感じる部分や、
ストーリー展開の唐突さも生まれて当たり前だなと感じてしまう。

原作はKAエスマ文庫という京都アニメーションが発行するレーベルだ。
同じ「境界の彼方」も同レーベルで同じ監督だが、
同じように改変しまくっている。

その結果、作品の「整合性」を無視して監督のやりたいこと、
見せたいことが先行してしまい、原作が持つであろう面白さを
どうにもスッキリと見てる側に伝わらなくなってしまっている。
演出家タイプの人が監督をやるとありがちな事な現象が起きてしまっている。

作画の良さや声優さんたちの演技で、そういった欠点が覆い隠されているものの
ふと終盤や5話の始まりなどでそこを感じてしまうのがもったいないと
感じてしまう作品だった。

個人的な感想:惜しい


画像引用元: ヴァイオレット・エヴァーガーデン 13話より
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

個人的な余談だが10話はしてやられた。
予想できる展開であり予想通りの内容だったのだが、
手紙を「川澄綾子」さんに読ませるのは卑怯である。
あの声であのシチュエーションであの手紙は
涙腺をくすぐられない人は居ないだろう。

2020年現在、外伝、そして劇場版と制作されており、
TVアニメ版の違和感や欠点がなくなってることを期待したい。

コメント

  1. MaSaNo より:

    ご指摘ごもっとも。ですが、次回作が見たくなる。これも京アニの圧倒的絵作りのなせる業かもしれませんね。私的には、最も感動し、印象に残った作品の一つとなりました。
    「これを見たときの、こういゆうの・・・ なんというのでしょう」 
    最後にはなりましたが、動画レビューも楽しく拝見させて頂いており、これからも応援しております。