評価 ☆☆☆☆☆(7点) 全12話
あらすじ ドミナの町近くに住む少年シャイロは、あるときから夢の中で謎の声を聞くようになる引用- Wikipedia
コロナのせいにするな
原作は1999年に発売されたゲーム作品。
監督は神保昌登、制作は横浜アニメーションラボ、グラフィニカ
唐突
1話の冒頭、強烈なまでに唐突な展開だ。
主人公が空から降ってくる中で「女神」のような存在が彼に語りかける。
彼には使命があり、世界を見つめ人々の選択に手を差し伸べるなければならない。
最終的にその選択を女神のような存在に伝える使命がある。
もう意味不明である。主人公自体もその使命を理解していないから仕方ないが、
見ている側もそれだけの説明では何も伝わらず、
唐突な始まりに困惑するしか無い。
調べたところ、原作はいわゆる「フリーシナリオ」型のストーリーであり、
全68話の独立したイベントをクリアしていくと
全体が見えてくるような仕組みになっている。
この作品はそんな68話の中から
「宝石泥棒編」のストーリーを抜粋してやっているような感じだ。
壮大なストーリーの中から一部を選び1クールで描く。
ゲーム原作にありがちなアニメにおけるストーリー構成と
脚本ができていないことを1話冒頭からビンビンに感じさせてくれる。
「これまでのお話」を回想シーンで1話の序盤から描いているものの、
特に描かれたからと言って何の面白みもなく、
この作品の世界観やキャラクターを理解できるわけでもない。
1話から二人の子供はいつのまにか主人公を師匠と呼んでおり、
草にまみれた妖精のような存在もそばにいる。
主人公は魔物をヒナのころから育てていたりと、
1話の冒頭から、1話の序盤の「間」である
物語の「導入」部分をろくに描いていないせいで、
原作ゲームをやっていない人にとっては蚊帳の外だ。
そんな状態なのにもかかわらず、
まるでソーシャルゲーム原作アニメのように
1話から大量のキャラクターが出る。
一体どこの誰で、どんな名前なのか、主人公との関係性も
よくわからないキャラクターばかりだ。
そんな中で人を探している人物がいきなり現れて戦闘になる。
ゲームのイベントや会話をそのまま抜き出してつなげているだけのような
脚本は「アニメ」で見せるということができていない。
脚本家の頭の中だけで物語が完結してしまっている。
1話からゲーム的なクエストを進めてる感覚が非常に強く、
キャラクターと会話し、アイテムを手に入れ、
それまで行けなかった場所に行けるようになり、
受けたクエストをクリアするためにダンジョンに赴くような感じだ。
ダンジョン
2話では解放されたダンジョンに赴く。
このダンジョンの風景や背景自体はゲームっぽさはあるものの、
きれいに描かれており、戦闘シーンもそれなりによく動いている。
ただ展開が本当に頭を抱えてしまう。
ぽっと出のキャラのために命をかけて戦う主人公や、
いきなり主人公をお兄様と呼ぶ真珠姫というヒロインなど、
展開がものすごく唐突だ。
彼女たちは「ジュミ」と呼ばれる種族であり、
核となる宝石を胸に持つ種族だ。
そんな彼女を助けると主人公は「謎のアイテム」をもらう。
ちなみにこのアイテムの説明を彼女は一切しない(苦笑)
主人公も特に気にすることなく受け取ってしまうものの、
見ている側としては「いや、それなんなん?」と
突っ込みたくなってしまう。
ジュミという種族のために「涙を流す」と石になるという
伝説があるようなのだが、
こういった「思わせぶり」な台詞が非常に多く、
見ていてストレスに感じてしまう。
旅立ったジュミたちではあるものの、
ジュミたちを殺して回っている怪盗「サンドラ」がおり、
主人公はジュミを救うためにも旅立とうとする。
するとジュミからもらった謎のアイテムが砕ける。
意味不明だ。
あまりにも説明不足な部分が多すぎて、
視聴者が「原作ゲームをプレイしていることを前提」とした
ストーリーになりすぎている。
説明説明…
場所を移動すると新しいキャラクターが現れて、
色々と説明してくれる。
ゲームの設定やキーワードを会話劇で説明されており、退屈でしか無い。
宝石泥棒サンドラを追い、寺院に行く。
そこには「癒やしの炎」と呼ばれるものがあり、
そんな癒やしの炎の説明を淡々とし、
サンドラから癒やしの炎を守るというクエストが始まる。
ゲームの会話パートをそのまま見せられているようなストーリー構成だ。
あるところに特定のキャラがおり、そんなキャラと会話したら
クエストが発生し、クエストをクリアするとアイテムを手に入れて
別のクエストが発生し、別の所のキャラに会いに行き…と
いかにもなゲームイベントが繰り返される。
序盤の作画のクォリティはそれなりだが、
独特のキャラクターデザインや背景による作品の雰囲気づくりは素晴らしいが、
ストーリーが心底つまらなくなってしまっている。
1話の冒頭もそうだったが、イベントがあまりにも唐突だ。
主人公がとあるキャラの噂を聞き、会いに行き会話をすると
イベントが発生し、いきなりサンドラが現れて、そのキャラを殺す。
ぽっと出のキャラとぽっと出のキャラが争って
主人公も見ている側も蚊帳の外で話が進んでいく。
1話毎に新キャラが登場するため、キャラ数も多いのに、
こんなストーリー構成では多すぎるキャラクターの印象も残らない。
主人公も主人公で特になにかするわけでもなく、
言われるがまま、誘われるがままだ。
装備
中盤になってもストーリーの面白さは出て来ない。
敵と戦い負けてしまった主人公は剣を折られ、
その剣を直すために鍛冶師を訪ねるものの、素材が足りずに素材を探しに行く。
THE RPGなストーリーは中盤になっても変わらない。
そもそも主人公の目的もふわふわしており、
敵である「サンドラ」というキャラの目的も中盤になってもわからず、
その他のキャラは掘り下げ不足でどうでも良さが強い。
キャラクターの主軸がいつまで立っても見えてこない。
そんな主軸が見えてこないのにどうでもいい
サブキャラのエピソードやクエストが繰り返されるため、
シンプルに「つまらない」という感情が湧いてくる。
ジェミの一族を探しつつ、彼らの亡骸とも言える宝石を探しつつと、
どうでもいいエピソードが続く。
中盤になってもクエスト感はかわらず
どこかの街に行ってキャラクターに会いクエストが発生し、
そのクエストを進めるためには別のなにかやキャラを探せと言われたりと、
もういい加減にしろと言いたくなる。
裏切り
中盤を超えるとようやく話に面白さが見えてくる。
ジェミの一族を探したり宝石を探したりする中で、
主人公の仲間である「セラフィナ」がなぜか唐突に裏切り、
彼らの仲間の一人の宝石を奪い殺してしまう。
彼女が何故裏切ったのか?とようやく話が盛り上がってくる。
ただ主人公は相変わらず弱く、役に立たない。
しかも逆ギレしてくる(苦笑)
ジュミの3人のうち一人は主人公の中まであるセラフィナの
裏切りによって殺され、もうひとりは行方不明だ。
そんな中で残った一人が「お前は関係がない」と主人公に言い放つ。
彼としては信頼していたはずの人間に裏切られ、
仲間も一人は死に、一人は行方不明だ。
主人公のことを信じられないのも当たり前の状況だ。
しかし、主人公はそんな彼に逆ギレしてくる。
弱いのにも関わらず(苦笑)
唐突な展開やゲーム的なストーリー構成や
説明不足なだけでなく、原作ゲームでは基本的に選択肢部分以外は
喋らない主人公であるため仕方ないかもしれないが、
主人公の魅力も圧倒的に欠けている。
終盤になると「真珠姫」だの「宝石王」だの色々と
唐突に出てくるのだが、説明が不足していて
ふわっとしかキャラクターを把握できず、
1クールで話をまとめるために駆け足の展開になっているせいで、
説明や積み重ねが足りていないことをビンビンに感じる。
涙石
終盤になるとようやく話がわかってくる。
「涙石」というものはジュミたちを宝石の状態からでも
生き返らせる力がある、しかし、ジュミたちの中でも
「涙」を流せるものが限られており、かつては蛍姫と呼ばれる存在が
涙を流し作り上げていた。
しかし、それは自らの命を削る行為だ。
「サンドラ」はジュミであり、
蛍姫のために行動していることが終盤で明らかになる。
ようやく物語の流れが終盤で把握できるが、
原作未プレイの人がここまで見続けている可能性は限りなく低いだろう。
それでもストーリー構成は本当に駄目すぎる。
「蛍姫」という超重要人物がいるのだが、
この超重要人物を主人公が町中をふらついていたときに発見する(苦笑)
なにかストーリーの流れがあったり、居場所の手がかりを手に入れるような
クエストを受けたわけでもなく、ふらついてたら見つかる。
もう意味不明すぎて脚本家の頭の中は
どうなっているんだろう?と考えてしまうほどだ。
一応「蛍姫」が見る悪夢に主人公が引き寄せられたという
理由付けはされるものの、納得の行くものではない。
そんな蛍姫と出会った主人公の中から「ベル」という謎の存在が
いきなり出てきて、蛍姫の悪夢を退治するために主人公と
蛍姫は夢の中に送られる。
もう唐突な展開すぎて一切ついていけない。
そんな夢の中で今まで主人公が出会ったジュミたちを主人公が説得していく。
なぜか蛍姫の夢の中のジュミたちの性格が悪く、
そんな性格が悪い彼らを諭す。
そもそも「蛍姫」の夢の中の存在ならば、
10話で出会った主人公と10話までに出会ったジュミたちの
関係性など知らないはずなのだが、なぜか出会ったことになっており、
彼らの過去と人柄を知っている主人公が浅い言葉でさとしていく。
ちなみにこのあたりのストーリーはアニメオリジナルのようだ。
一体、何がしたいのだろうか(苦笑)
そんな浅い展開で蛍姫の悪夢問題があっさりと片付く。
はぁ?
最後の最後でようやく「聖剣」という言葉が出てくる。
ジュミという種族を、蛍姫を救うために「奇跡」のような力を持つ
聖剣を彼女たちは探していた。聖剣要素は以上である(苦笑)
聖剣伝説というタイトルの通り、聖剣の伝説がちらっと出てきて終わりだ。
序盤こそ作画のクォリティも悪くなかったが、
中盤からはやや息切れしてしまっている。
それなのに最終決戦が描かれる。
相変わらず主人公はくそほどに弱く、レベル上げしろよと
思わず突っ込んでしまうほど最後まで弱い。
最終話で最大の謎であった「セラフィナ」が
なぜ裏切ったのか?が明かされる。彼女はいわば「女主人公」だ。
本来はプレイヤーの選択によっては存在しない存在であるののにも限らず、
アニメでは設定をもりもりにしてしまっている。
その結果意味不明だ。
彼女は「ジュミ」に育てられた人間であり、
そんなジュミを滅びから救うための行動であり、
育ての恩人のために行動していたのはわかるのだが、
やってることが悪人の限りを尽くしている。
ジュミの宝石を奪い殺し、男主人公である「シャイロ」にも
槍をぶっ刺している(苦笑)
お腹に槍をぶっ刺されてるのに普通に喋っている主人公の絵面の
違和感も凄まじく、もはやシュールギャグなのかとすら感じてしまうほどだ。
唐突に中盤で出てきた「宝石王」も謎であり、
彼がジュミたちの宝石を食べると1つの宝石にできるのはわかるのだが、
「実は悪役」のような見た目をしていて悪役ではないうえに
掘り下げが足りずに「そういう設定のキャラ」でしかなくなっている。
最後の展開の酷さも凄まじい。
二人の主人公は最後に「ジュミ」のために涙を流す。
ジュミのために涙を流せば石になってしまう。
石になった二人の涙はなぜか「涙石」になり、
全てのジュミたちが「復活」する。
最初から最後まで意味がわからない作品だった。
総評:素材を台無しにする最悪の料理人
全体的にみて何がしたかったんだろうかという作品だ。
1999年のゲームを2022年にアニメ化する、
ファンも多く、聖剣伝説というネームバリューもあるのに、
この作品はそんな素材を見事に台無しにしている。
キャラクターデザインや背景は雰囲気があり、
序盤の作画こそ悪くなかったのだが、
中盤からは明らかに失速してしまっており、
終盤はそんな作画をごまかすための演出も非常に多い。
このあたりは制作側が「コロナウイルス」の影響があったことを
告知しているものの、ストーリー部分の酷さに関しては
コロナのせいではないだろう。
1話の冒頭から唐突な展開であり、
原作未プレイの人にはついていきづらい状況から物語が始まっている。
すでに多くの登場人物との関係性を結んでいる主人公や、
ろくに説明もしない要素の数々のせいで置いてけぼりであり、
脚本家の頭の中だけで物語が完結してしまっている。
ストーリー構成もひどく、どうでもいいサブキャラや
サブクエストをひたすらこなすような展開を繰り返しており、
本来はそんなサブクエストも「積み重ね」として
生きてくるのかもしれないが、
この作品では積み重ねどころか砕け散ってバラけている印象だ。
終盤の展開もひどく、歩いていたら重要な人物に出会ったり、
ご都合主義で全てのキャラが復活したりと、
話の展開についていけず、つっこみどころだらけになってしまっている。
本来はほとんどセリフのない男主人公や女性主人公を、
アニメにする上でキャラ付けした結果、崩壊している部分も多い。
1話から最終話までろくにレベル上げもせずに負けてばかりの男主人公、
裏切りまくり、殺しまくり、男主人公も腹をやりでぶっ刺している女主人公と
物語の核にいるはずの二人の主人公にまるで魅力がない。
結局は脚本とストーリー構成が大きな原因だ。
しかも、この作品は監督もシリーズ構成も脚本も
監督である「神保昌登」氏が手掛けている。
制作サイドいわく、最終話はコロナのせいで
「監督が意図」していたものと違ったものになってしまったため、
ディレクターズカット版を改めて配信するようなのだが、
そもそも最終話がどうにかなったところで、
11話までの話もひどいのでどうにかなるとは思えない。
作画のクォリティに関してはコロナウィルスのせいだったのかもしれないが、
脚本やその他の部分に関して「コロナ」のせいにするのは違うだろう。
こんな出来栄えなら最初からアニメ化しなければよかったのにと
ひしひしと感じてしまう作品だった。
この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください
この記事に激しく同意。
アニメ化が告知されてから放送を指折り待ち、毎週ドキドキして追っていたのが馬鹿らしくなったアニメは初めて。
原作ゲームのリアルタイム世代でずっとファンだった者ですが、途中で切りました。
概ねレビュー通りで戦闘も動かない、主人公も弱い、登場人物の掘り下げがないままどんどん人だけ出てくる。挙げ句の果てには、オリジナルストーリーで訳のわからない尺を取り説明は不十分。よくも思い出を汚してくれました。アニメ化してくれない方が良かった作品でした。