「境界戦機 第一部」レビュー

2.0
ロボット

評価 ★★☆☆☆(24点) 全13話

あらすじ 西暦2061年。経済政策の失敗や少子高齢化によって破綻した日本に対し、経済援助や治安維持を目的として「北米同盟」「大ユーラシア連邦」「アジア自由貿易協商」「オセアニア連合」の4つの世界主要経済圏が介入する。引用- Wikipedia

死屍累々

本作品はSUNRISE BEYONDとBANDAI SPIRITSによる
オリジナルテレビアニメ作品。
監督は羽原信義、制作はSUNRISE BEYOND。
SUNRISE BEYONDはXEBECをサンライズが吸収してできた部署であり、
実質XEBECといっても過言ではない制作だ。

残念ながら日本終了

1話冒頭から主人公によるナレーションでこの世界の根本的な
設定が明かされる。

「21世紀半ば、日本は終わった」

シンプルである(笑)
日本に隕石が落ちたわけでもなく、震災が起きたわけではなく
経済的な理由や政治的な理由が重なり、
そんな弱体化した日本に各国が実質的に侵略し、武力衝突の末、
日本は様々な国に分割統治されているという状況だ。

そんな中で「日本人」は差別対象だ。
日本人以外の国の人々は日本人を「守ってやってる」と思い、
日本人は彼らに支配されている。

この設定でどこか「コードギアス」を思い出す人は多いだろう。
あの作品は架空の設定として「エリア11」という名前に日本という
国が変わり、支配された日本、エリア11を主人公が
反逆を起こすという物語だった。

日本人に生まれただけでペナルティを背負っているようなそんな状況で
主人公は停滞した「今」に失望している。
未来も希望もなく、何かを変えようとするわけでもなく、
無機質に毎日を送るのみだ。

コードギアスのルルーシュと違い、この作品の主人公に
「ギアス」のような力はない。
彼の趣味といえるものは武力衝突の名残ともいえる残骸あさりだけだ。
夢も希望も未来もない日本人の主人公。
そんな彼が「自我持つAI」と出会う所で物語が動き出す。

残骸ロボット

主人公は別になにか目的が合るわけではない。
コードギアスのルルーシュのように復讐心に駆られているわけでもなく、
残骸あさりをし、自分が好きなロボットを組み立てているだけだ。ただの趣味だ。
自ら組み上げたロボットがいつか形になればいい。一言でいえば「ロマン」だ。

だが、そんな彼の前に「敵」が現れる。
友達とは言えないかもしれないが同じ「残骸あさり」の仲間が捕まり、
彼らを助けるためにも、テロリストの濡れ衣を着せられてしまったがゆえに
主人公はロボットに乗る。

何も目的がなく、ただ趣味で組み立てていたロボットに乗る理由ができる。
この理不尽な現実に立ち向かうために、抑圧された日本人であるがゆえに、
彼は自らの意思でロボットに乗り、戦うことを決意する。
自らの意思で、自らの愛機で、自ら戦う。
その姿は紛れもなく物語の主人公だ。

1話は非常に丁寧な1話だ。
いい意味でロボットアニメらしい導入であり、
無人機が当たり前の世界で有人機な主人公機「ケンブ」の
操縦方法を学び、不慣れな戦闘に立ち向かう。

彼が出会った「AI」はかなり感情的なAIであり、
どこか無機質ともいえる主人公を焚きつける。
ろくに武装なんて無い、戦おうとすら思っていなかったから当たり前だ。
故に愛機の戦う手段は「拳」しかない。

敵を殴り、投げる荒々しさすら感じる戦い方、
操縦が不慣れなことを感じる「足取りの不安定さ」の描写は
手書きだからこその「重み」を感じさせてくれる。
そんな中で放たれる必殺技。

「バルディッシュブレイカー!」

リアルロボットアニメなのにまるでスーパーロボットアニメのように
必殺技を叫ぶ主人公の姿と、音声認識しか受付けないようにしたAIのロマンを
主人公が感じることで彼もまた実感する。

「間違いなく世界が変わったんだ」

何もでもなく特別でもなく、抑圧された日本人というだけだった
主人公がどうかわり、何をなすのか。
1話にはきちんとした期待感があった。

淡々

かなり序盤から淡々としている1話の駆け出し自体は悪くなかったものの、
2話からは「指名手配」されてしまった主人公が各地を転々とする、
老夫婦の畑仕事を手伝ったかと思えば、ふわっとした感じで
レジスタンスに所属したかと思ったら出ていったり、
そうかと思えばで戻ったりとフラフラしており、
1話1話の話が淡々としており、やや盛り上がりが薄い。

この作品は最終話の後に「第二部」の発表があり、
第三部や第四部がなければ分割2クールを想定して作られている。
それを考慮しても話がなかなか進まない感じが強く、
主人公の「目的」のようなものも見えてこない。

彼が何をしたいのか。物語の主軸に居るはずの彼が
自立型AIやテロリストたちの言われるがままや
唐突に襲いかかってくる敵に対処しているだけで、
彼の「意思」と呼べるようなものを感じず、何がしたいのかと思ってしまう。

抑圧され支配された日本人だったからこその目的意識の無さ、
「やりたいことが何かわからない」今の若者を投影している
主人公とも言えなくはないのだが、そんな主人公の成長や変化が
なかなか見えてこずヤキモキしてしまう。

レジスタンス組織である「八咫烏」の「鉄塚 ガシン」のほうが
きちんと目的意識があり、手塚の登場で
余計に主人公の存在感が薄れてしまう。

一応中盤で日本人を守るという覚悟は決まるものの、
どうにも盛り上がりに欠けてしまう。
毎話のように有る戦闘シーンでなんとか盛り上がりを保っている感じが強いが、
1話や2話のような戦闘シーンの良さも段々と無くなっていく。

ゴースト

序盤をすぎると「ゴースト」という敵が現れる。
ゴーストは所属不明であり、とてつもなく強い機体だ。
そんなゴーストが何の前触れもなくいきなり襲いかかってくる。
主人公たちレジスタンスだけでなくアジア軍や北米連合も襲っており、
目的も不明だ。

本来ならばアジア軍や北米連合という敵と戦っていく流れになりそうだが、
ゴーストという目的不明の第三勢力が現れることで
ストレートにその流れにもならず、
ストーリーの方向性がいつまで立っても見えてこない。

日本自体もいろいろな国に分割統治されているせいもあるが、
統治している国によって日本人への扱いも違い、
その中でも露骨にアジア軍はひどい(苦笑)

勢力争いをしているせいも合ってゴーストや
主人公たちが所属するテロリストたちそっちのけで
勢力争いに発展することも多く、
基本的に主人公は出来事が起こってから対処する。

アジア軍や北米連合といった日本を統治している敵がいるのに、
そんな敵とはあまり戦わずに、共通の敵であるゴーストとの戦いが
主軸になってしまっている。
各軍を襲うゴーストのほうがよっぽどテロリストとして活動をしており、
ゴーストを倒すのではなく放置しておくほうが日本解放への近道なのでは?
とすら思ってしまう。

死に設定

複数の国による分割統治という設定を活かしきれておらず、
ゴーストという存在の存在意義も1クール目の段階ではよくわからず、
レジスタンスたちも「日本人を守りたい」と主人公と同じ目的なのはわかるが、
なにかこの状況を変えるような根本的に行動をしているわけでもない。

戦国武将よろしく統治されている国をレジスタンス達が
次々と開放していき日本人による日本人のための政治と統治を行うわけではない。
この作品では「政治」が見えていないというか描けていない。
政治的な問題は有るのに、そこに向き合う話があまりにもなく、
主人公にそんな頭があるようにも見えない。

序盤で出てきた要素や世界観、設定が
話が進めば進むほど、どんどんと死んでいくような感覚だ。
各組織、国のキャラクターはどんどんと増えていくが増えるだけで
ろくに減らず、話が進んでるのか進んでないかもよくわからない感じだ。

レジスタンスもレジスタンスで日本人だけの村を
ひっそりと作っていたりとのんきなことをしており、
そんな見つかったらヤバそうな村なのに電気を復興させて
遠くから目立たせたりとやってることが色々とちぐはぐだ。
細かい部分をツッコミだしたらきりがない。

AI

主人公たちが乗るロボットはかなりオーバースペックであり、
硬い装甲に加え超高性能なAIもついている。
そんなロボットやAIを開発しているのがブレンゾン社であり、
終盤にはブレンゾン社の人間も出てくるが、明らかに
「私が黒幕です!」感ビンビンだ(苦笑)

2クール目からは彼らが実は全ての出来事を企んでいましたみたいな
展開になりそうな予感がビンビンに漂っており、
後の展開を予想できてしまうがっかり感もつきまとう。

そもそも主人公が出会ったAIやほかのロボットのAIも
異様なまでに高性能であり、しかも感情まである。
その感情のあるAIという要素も活かしきれておらず、
マスコットキャラクター的な存在にしかなっていない。

これならば高性能だが感情を感じないAIが
主人公とのかかり合い、戦闘の中で感情を得ていくというような
流れならば主人公の成長やAIには予想できない戦術を取ることで
パートナー感や主人公がいる意味も生まれるのだが、
基本的に主人公はAIの指示に従って戦闘に勝利しているせいで
余計に主人公の成長や存在感が薄まってしまっている。

傍観者

主人公も襲ってきたゴーストに対処したり、
レジスタンスの活動をぼけーっと見つめていたり、
1クール目の終盤になってもまるで主体性を感じない。

同じレジスタンス仲間の鉄塚 ガシンも知り合いの問題や、
それに絡んで自身のやってることの葛藤などがきちんと描かれており、
そんな彼が葛藤してる間にも主人公は何もしない。
主人公とは一体何なのかといいたくなるほど何もしない主人公だ。

主人公と同じくヒロインも何もしない。
彼女は中盤から出てくる3人目のパイロットなのだが、
彼女の掘りさげはほとんどなく、存在感もない。
彼女がいる意味はあるのか?と思うほどだ。

どちらかといえば主人公が鉄塚 ガシンであり、主人公がヒロインみたいな
立ち位置になってしまっており、余計にヒロインがいらない。
1話のあの主人公はどこへ言ったと思うほど、
主人公が主人公然としていないせいでストーリーもキャラも
いつまで立っても浮足立っている。

終盤

終盤になっても言われるがままのことしかしておらず、
新しいキャラは出てくるものの、そのキャラが出てくるからと言って
何か大きく物事が動くわけでもない。
第二部でこのキャラクターたちが活かされるのかも知れないが、
正直、活かされる想像は何も出来ない。

使いあました日本人が支配された世界観、
レジスタンス、各国のキャラクター、主人公たちと使いあましたキャラクターばかりなのに
ストーリーはまるで進まない。

どんどんと使いこなせない要素がゴミ箱という名の死体置き場に
積み重なっていくようなそんな感覚を覚えるほど、
1つ1つの要素を使い切れていない感じが強い。
物語の核たる主人公でさえ使いきれてないのだから仕方ないのかも知れないが、
結局、1クールでやった大きなことはゴースト1体の撃破くらいだ。

無駄にキャラクターのお風呂シーンだけは何故か多いものの、
キャラクターの作画は中盤以降やや不安定であり、
作画崩壊こそしないものの、ロボットの戦闘シーン以外の魅力がほぼなく、
第二部でここからどう巻き返すのかは気になるところでは有るが、
やや厳しいところだ。

総評:ギアスにもガンダムにもなれなかった

全体的に見て1話こそロボットアニメのロマンを感じる作品だったが、
2話以降は「必殺技」を叫ぶこともなく、盛り上がりの薄いストーリーが
淡々と進んでしまい、肝心の主人公に主体性がないため
言われるがまま流されるままで主人公としての魅力と存在感が薄まり、
「鉄塚 ガシン」に食われてしまっている。

本来、ヒロインのはずのキャラクターも陶芸家キャラくらいの
印象しかなく、本当に彼女は必要だったのか疑問だ。
「このキャラクターは必要なのか?」と思うようなキャラクターも多く、
陣営の多さがキャラの多さにも繋がっており、その陣営の多さが
ストーリーで活かされてるともいい難い。

4大経済圏に分割統治された日本、そして日本を取り戻そうとするレジスタンス。
構図としては悪くないが、その構図を活かさず、勢力バランスもほぼ変わらず、
1クールでやった大きなことは「ゴースト」という謎の敵を倒したくらいだ。
それも別に主人公自身の目的ではなく、どちらかといえば
父親を殺された「鉄塚 ガシン」の目的だ。

2クール想定だとしてもあまりにもおそすぎる展開であり、
そこに至るまでのストーリーも淡々としており面白みが薄い。
根本的にこの作品は「政治」を描くことが出来ておらず、
政治色が強い作品なのにも関わらず、政治が描けていない矛盾のせいで
作品全体がどこか地に足のついていないものになっている。

唯一評価できるのは手書きによるロボットの戦闘シーンくらいであり、
そこだけ見れば魅力的なシーンも多いのだが、逆に言えばそこしかない。
コードギアス的な設定を活かしきれず、ガンダムのような人間ドラマも描けておらず、
この作品だからこその何かがあるわけでもない。

第二部からは武器商人的なキャラクターという名の黒幕と
AIの秘密に迫る内容になるのかも知れないが、
ここからどう日本を取り戻す的な展開になるのかは逆に気になるところだが
正直余り期待はできなさそうだ…

個人的な感想:必殺技を叫んでほしい

1話であんなに高らかに叫んだ必殺技とはなんだったのか…
もちろんわざわざ必殺技を叫ぶという行為は不効率では有る、
リアルロボットアニメな世界観で必殺技を叫ぶというのは
ある種のご法度ではあるものの、そこがこの作品のおもしろさもでもった。

リアルロボットアニメなのに、どこかスーパーロボットアニメのノリを感じる。
そんな1話の魅力が1話しかない。
最終話の3体のロボットのエネルギーを1体に集めるという展開や
リミッターをはずす展開自体はかなり好きだったが、
肝心のキャラとストーリーがガバガバだ。

制作側がロボットアニメをやりたいのではなく
ロボットを描きたかっただけなのかなと感じる部分もあり、
その結果がリアルロボットアニメでありながら
スーパーロボットアニメ的なノリなのかもしれない。

その「ノリ」だけで突き進んでくれれば面白くなったかも知れないが、
変に小難しいことをしようとして失敗したような印象を覚える作品だった。
第二部で活かしきれてない要素の数々がどう活かされるのか、
期待したいところだ。

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出演声優 佐藤元, 藤原夏海, 上村祐翔

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  1. 日本人 より:

    見慣れないストーリーを批判するのは分かる。ファーストガンダムも最初から今の評価だった訳ではない。何回も見直して気が付いた。上手く言い表せないないけど、主人公は今の日本人そのものだった。この記事を書いてる人とこの人の評価する主人公がかぶる。お風呂が必須だったり。食べ物が美味しそうだったり、また13話の最後の嬉しい発言は日本人基質そのもの。てっ気が付いたらなんだか不思議な感動をかんじた。音楽も優秀。色んな箇所に日本人を感じる。そう言う目でみると、また自分は何だ?自分はなにじんだと思いながらみると違う面白さを発見出来るかもね。

    5.0 rating

  2. 匿名 より:

    たぶん境界戦機の視聴を途中で切ってしまう方はこのような感想を持つのではないかなというようなレビューですね。

    目的がわからないとかテンポが悪いと感じたならたぶん相当要点を見逃しているのではないかと。

    このお話は敵を倒してヒロイックに活躍する話ではないので…目的がハッキリして必殺技を叫ぶのでは演出として失敗ですよ…日本人を強調するための「日本人ってこうだな」や日本的な機微などをわかりやすく表現していると思います。AIであるガイが主人公に必殺技を叫ばせたのも日本人故の吹っ切れなさや抑圧された立場を押し切るための一押しであったり畑仕事のパートなども重要で主人公の多様な生き方の提示や古来の日本的な人情などを感じるいい話でした。老夫婦が主人公を見送る後ろ姿などになにも感じなかったのでしょうか?このような出会いなどを通して日本の復権や他国との共存を目指すのが本筋だと思います。レジスタンス組織の八咫烏が協商軍の人間を助けたりという描写もあるようにただ倒すのではなく復権や復興、共存が鍵なのがわかります。

    とにかく丁寧な描写のアニメだと思いますね。最近のアニメに慣れてしまうと無駄な描写やテンポが悪いと感じてしまうものなのでしょうか?主人公が目的がなくて意味不明みたいな感想はガッカリしますね…彼はヒーローではなく普通の日本人なのです。

    3.0 rating

  3. イグニット より:

    主体性だとか必殺技がとか言ってますが、ガンダムやコードギアスを使って批判するためだけに観てるんだな…と残念に感じました。
    主役となるロボットの造形から見てもガンダムはもちろん、ロボットの動かしかたから無人機&有人機の差別化、高機能AIとの連携、ラストバトルへの展開etc
    他の既存ロボットアニメとは被らないように境界戦機が腐心してたのがロボットアニメ好きならわかるはずです。

    新しいことをやろうとしてそれが受け入れられないのはどのジャンルでも全く一緒なので。
    そこを過去にウケた他所のロボットアニメを使って新規ロボットアニメを語らないでください。
    ロボットやロボットアニメが心から好きではない他所の畑の人がそういうこと言うのは甚だ不愉快です。

    5.0 rating

  4. 匿名 より:

    話しがダラダラし過ぎて次回の
    つづきにワクワク感が無く残念
    敵の軍機体デザインが残念過ぎる

    3.0 rating

  5. 匿名 より:

    確かに酷い世界観の割には善良な登場人物が多かったりあまり設定を活かした緊張感を感じない。
    制作陣がエンタメとして何を描きたいのか1期だけでは分からなかったので2期に期待したい。

    3.0 rating