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「ルパン三世 THE FIRST」レビュー

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評価 ★★☆☆☆(34点) 全93分

あらすじ ルパン一世が唯一盗むことに失敗したという伝説のお宝「ブレッソンダイアリー」に挑むルパン一味の活躍を描く。引用- Wikipedia

カリオストロ風ラピュタ、ナチスを添えて

本作品はルパン三世としては10作目の映画作品。
監督は山崎貴、制作は トムス・エンタテインメント
マーザ・アニメーションプラネット。

3DCG


引用元:(C)2019『ルパン三世 THE FIRST』製作委員会

本作品の最大の特徴であり、1番評価すべきポイントは
3DCGのクォリティの高さだろう。
これがもしルパン三世のキャラクターが出ていなかったら
「ディズニー製作の映画です」と言われても信じてしまいそうなほどのレベルだ。

日本の3DCGの技術もここまできたのかと思うほどのクォリティは
ヌルヌルと動き、細かい表情の変化まできちんと描かれている。
アクションシーンの動きも激しく動き「ルパン三世」らしい
アクションをきちんとフルCGで表現しきれている作品だ。

ただ、その一方で気になる部分は多い。
特に「テカテカ」してる感じはかなり目立つ。
特にルパンの愛車でもある「FIAT」はアニメだと自然な色合いで
特に気にならないのだが、3DCGでの表現だと無駄にテカテカしている。
まるでディーラーから受け取ったばかりのような
テカリ具合はかなり気になってしまう。

アクションシーンでも「きれいすぎる」シーンが多いせいか、
どうにもワクワクしない。確かに激しく動いている、凄いアニメーションだ。
これが2Dの作画でのアニメーションならワクワクしたのだろうと感じる動きが
3DCGだとどうにも軽く、違和感を感じてしまう。

3DCGで表現した際の軽さは永遠のテーマだ。
この作品でも音やエフェクトなどの演出面でその軽さをカバーしているが、
それでもワクワクしない。
2D奈良違和感を感じない超絶アクションも3DCGというリアルな表現だからこそ、
違和感が生まれているのかもしれない。

ルパンの赤いジャケットも暗いシーンなどで「革でできてるのかな?」と
思うほどテカっていることがあり、色々と気になる部分は多い。
それでもこのクォリティの高さは評価したいところだ。

ストーリー


引用元:(C)2019『ルパン三世 THE FIRST』製作委員会

この作品の問題点の1つがストーリーだ。
今作は「ブレッソンダイアリー」という謎の本があり、
その謎を解くとお宝を手に入れると言われている。
ルパン三世は自身の祖父が盗めなかったと言われる秘宝を手に入れるために
「ブレッソンダイアリー」という話だ。

分かりやすい感じの話である一方で、ぶっちゃけていってしまえば
この作品でやってることは「天空の城ラピュタ」+「カリオストロの城」だ。
恐ろしいいまでに何の新鮮さもないこすりまくったストーリー展開と
要素をてんこもりにしているといってもいい。

裏を返せば「無難」とも言えるストーリーだ。
見てる側の予想を超えることも下回ることのない、予想通りの展開を見せられる。
あくまで今作は「フルCG」でルパンを作ることが目的であり、
ストーリーは二の次だったのだろう、そう感じてしまうほどのレベルが低い。


引用元:(C)2019『ルパン三世 THE FIRST』製作委員会

「ブレッソンダイアリー」を解くにはとある暗号を入れないといけない。
ルパンは今回のヒロインとともにその暗号を「爆発する仕掛け」が作動する前に
解かないといけない。ちなみにヒロインは「ブレッソンダイアリー」に
縁のある人物であり、彼女の名前は「レティシア」だ。

おそらく多くの方がヒロインの名前が暗号であることは予測できる。
それを長々と見せられる。予想できる展開を予想のまま見せられる。
何の意外性もない展開は盛り上がりもなく、ワクワクもしない。

肝心の「ブレッソンダイアリー」を解くことで得られるお宝は
古代文明が残した超技術であり、重力を操ることができる装置と、
その重力を用いた超絶兵器だ。飛行石とラピュタそのものであり、
古代兵器で地上を焼き尽くすシーンなどムスカの影がちらついて仕方ない。

ヒトラー


引用元:(C)2019『ルパン三世 THE FIRST』製作委員会

安易な要素の1つとしてヒトラーが出てくる(苦笑)
もう創作物におけるヒトラーは日本の織田信長レベルでのフリー素材であり、
擦られまくり、使われまくった要素だ。
映画の冒頭からナチスが古代文明の研究に携わってることを示唆している。

登場人物の一人は「第三帝国」の復活を目論んでおり、
ヒトラーが生きているという情報を信じてナチズム全開の行動や言動を繰り返す、
正直安易すぎるナチス要素はワクワクするどころか思わず笑いが溢れるほどであり、
結局ヒトラーが生きてる情報自体も嘘情報だ。

これで超古代文明のちからでヒトラーが重力を操る能力を手に入れて
復活するなら超絶展開すぎて面白かったかもしれないが、
当然、そんな展開はない。
安易すぎるナチス要素や超古代文明の超技術など安易すぎて逆に笑えてくるほどだ。引き出しが浅すぎる。

これだけナチスの要素は出てるのに鉤十字やナチス敬礼は出てこないのも
違和感の極みでしか無い。

キャラクター


引用元:(C)2019『ルパン三世 THE FIRST』製作委員会

もう1つの問題点としてキャラクター描写だ。
ルパン三世や次元大介、石川五右衛門な峰不二子や銭形刑事といった
メインキャラクターはいつもどおりの彼らだ。ここに違和感はない。
ただ映画オリジナルキャラクターが問題だ。

ヒロインであるレティシアは特に魅力がない。
制作側としてはラピュタのシータやカリオストロの城のクラリスのような
ヒロインにしたかったのかもしれないが、生意気で高飛車な感じのキャラクターで
唐突に頭のおかしい行動をする。

ルパンがご丁寧に「ブレッソンダイアリー」には暗号をミスると
爆破する仕掛けがあると彼女に説明する。
そんな説明を聞いていたのにも関わらず彼女は「ブレッソンダイアリー」の
鍵穴に鍵をはめ込み爆破装置のタイマーが起動してしまう。意味がわからない。

これがルパンの説明がない状態なら分かるが、
説明されてるのに爆破装置が作動するかもしれない鍵穴に鍵を
差し込む彼女の行動理由が謎すぎる。

敵も敵で不快なだけのキャラクターだ。
ヒロインであるレティシアに考古学者としての才能が圧倒的に負けており、
彼女の祖父だと偽って彼女を育ててきた敵も小物中の小物であり、
力を手に入れた途端に「世界の王になる!」と言い出したときは
小物感バリバリの敵役でしか無い。

もうひとりはヒトラーバンザイのナチズム全開のキャラでしか無く、
視聴者も予想できる形でルパンに騙される姿は滑稽でしか無い。
結局、敵にカリスマ性も魅力もまるでない。

声優


引用元:(C)2019『ルパン三世 THE FIRST』製作委員会

今回はいわゆる芸能人声優を起用しており、
広瀬すず、藤原竜也、 吉田鋼太郎が出演している。
藤原竜也さんの演技はやや癖があるものの存在感のある声をしており、
吉田鋼太郎さんの小物感のある敵の演技はばっちりだった。

しかし、問題はヒロインを演ずる「広瀬すず」だ。一言で言えば下手だ。
抑揚がなく声による感情表現がまるでできておらず、
声を無駄に張るためうざくて仕方ない。
ヒロインの魅力をお幅に削るような演技は最悪でしか無い。

80歳を超える小林清志さんのいぶし銀な演技や、栗田貫一さんの安定の演技、
旧キャストからの変更である浪川大輔さんや沢城みゆきさん、山寺宏一さんといった
ベテラン揃いな演技をする声優さんが多く出演してる中で、
広瀬すずさんの抑揚のない演技は悪目立ちしすぎている。

ラスト


引用元:(C)2019『ルパン三世 THE FIRST』製作委員会

結局、敵も全て死んで古代文明が残した技術も消え去り、
ルパンはクラリスのようにレティシアを残して去る、
銭形頸部から逃げ去るルパンの背中をレティシアは見つつつ、
銭形警部は彼女に何故か敬礼して終わる。

この敬礼が意味がわからない。
そもそもレティシアは物語の冒頭で命令されたとはいえ
「ブレッソンダイアリー」を盗んでおり、
その際に警備員に催涙スプレーをかけている。つまり窃盗罪と暴行罪だ。
クラリスとはまるで違う。

「貴方の心です」的なセリフがなかったことだけは制作側も流石に
ブレーキが働いたのかもしれないが、そう言いたげな銭形の表情は
見ている側を苦笑させたまま終わらせてしまった。

総評:ストーリーで冒険してくれ


引用元:(C)2019『ルパン三世 THE FIRST』製作委員会

全体的に見てフル3DCGでルパンを描くということが目的なだけの作品だ。
確かにCGのクォリティは素晴らしく、ややテカテカな質感は気になるところもあり、
3DCGで描く超絶アクションに違和感を感じる部分はあるものの、
それでも「おっ!」っとなるようなシーンも有る。

だが、そんな映像面のクォリティに対して脚本のクォリティが浅すぎる。
ラピュタとカリオストロの要素やストーリー構成を抜き出して
言葉や順序を入れ替えただけのような脚本は新鮮さがまるで無く、
予想外の展開というのが1つもない。一言で言えば「無難」だ。

ラピュタやカリオストロを知らない子供なら楽しめるのかもしれないが、
予想できすぎる展開の数々と安易な要素の数々は苦笑いしかできず、
引き出しの浅さを象徴するような中途半端な「ナチス」や「古代文明」要素も
もう少しきちんと掘り下げれば面白くなりそうな部分を掘り下げずに終わっている

言葉は悪く、あまり私は使いたくない表現の1つだが
一言で言えば「大衆向け」な無難さだ。
ルパン三世だからこそ、この作品だからこそという面白さはなく、
有名人を起用したゲストキャラで彩り、フル3DCGという映像の迫力で
無難かつ浅いストーリーをごまかし、なんかいい感じのラストで終わる。

いい意味でも悪い意味でも大衆的であり、子供と見る分には楽しめるかもしれないが
おとなが楽しむにはもう2歩足りない、そんな作品だった。

個人的な感想:うぅーん


引用元:(C)2019『ルパン三世 THE FIRST』製作委員会

どうにも最後まで盛り上がらずワクワクしきれずに終わってしまった。
たまに「おっ!」となるようなシーンはあるが、その「おっ!」となった瞬間から
ワクワクが続かない、面白くなりそうでなりきらないまま終わってしまった作品だ。
最近のTVSPの脚本と比較すれば悪くない脚本ではあるものの、
もうちょっと1つ1つの要素を掘り下げてほしかった。

ナチス関連なら旧ナチスが密かに開発していた超技術でもよかったはずだ。
そこになぜか古代文明まで関わってくるためごちゃごちゃした感じもある。
映像面のクォリティは悪くなかっただけに、
そのクォリティにふさわしい脚本に至っていないのは残念だ。

同じ監督のSTAND BY MEドラえもんのようにもしかしたら
ルパン三世と仲間たちの出会いから描いた作品なのかな?と
予告を見る前には思っていたのだが、
そっちの方向で制作したほうが良かった作品かもしれない。

「」は面白い?つまらない?

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  1. OHANASI より:

    ちょうど見に行ったばっかですよ
    笠さんの感想とおおむね一緒な感じです

    作画は良かったけどもストーリーがありきたりすぎて全くワクワクできなかった
    ヒロインはそんなに不快でもなかったけど特に好きになる要素もありませんね
    ザ、キーパーソンって記号な感じ

    遺跡の謎解きしながらクリアしながら進んでいくとかどんだけ手垢のついた展開なんだよ!
    あの辺で完全に萎えたわ

    最後もイマイチ盛り上がりにかけたし、最近の面白くないテレビ版ルパンって印象でしたね
    期待してただけにだいぶ残念な印象でした