評価 ★★★☆☆(50点) 全5話
あらすじ 中高一貫の男子校・鐘亀高校に通う江間譲二は、
ここ最近、風変わりなクラスメート・林美良から変な絡まれ方をされている。 引用- Wikipedia
林林林二階堂林林林
原作は短編マンガな本作品。
もともと同人誌だったものが商業展開した作品であり、
全8話からなる短編集となっている。
同じ原作者である「カラオケ行こ!」とともにアニメ化された。
監督は中谷亜沙美、制作は動画工房
可愛い人
1話で描かれる物語は不思議だ。
高校生である江間は、ある日をきっかけに不思議なクラスメイトである
「林」にことあるごとに絡まれるようになる。
男子校特有のふざけた空気感、かわいい要素なんて1つもない世界。
そんな世界で彼は借り物競走の中で「林」を「可愛い人」に選んでしまう。
それ以来彼は事あるごとに「林」に可愛いかどうかを聞かれる日々だ。
淡々とした主人公の独白、林という男のくせの有るキャラ描写が
この作品だからこその空気感を産んでいる。
なんてことのない男子高校生の日常だ。
林という男が少しだけ変わっているからこそ、
その変人っぷりがシュールな魅力になっている。
そんな林に徐々に江間 は惹かれていく、
同時に見ている私達も、の作品の空気感にほっこりとさせられる。
BL的なテイストがあるものの、2話では女性がメインキャラとなる。
林に夢中
2話で描かれるのは文学少女の物語だ。
本が好きで、そんな本の感想をSNSに投稿するのが日課だ。
別にバズるわけでもインフルエンサーというわけでもない。
そんな彼女が本の感想をツイートすると、とあるアカウントからリプライが有る。
町中の看板の文字を集めてコラージュするアカウント、
そんなアカウントの持ち主と偶然、町中で出会う。
風変わりな趣味を持つ男と、友達のいない文学少女、
この二人の会話に思わずニコニコしてしまう。
何気ない会話、顔も知らなかった二人の会話が、
どうでもいいのだが、そのどうでも良さに聞き惚れる。
ちなみに、そんな風変わりな男は「林」である(笑)
同じ本を好きな者同士だからこその会話劇、
決して恋愛感情ではない、友情、同志ともいえる関係性が構築される
会話劇にずっとニヤニヤしてしまう。
そうかと思えば美術部の男子が林をモデルにしようとする物語が描かれる。
誰も彼もが林に夢中だ。
「夢中さ、きみに」というタイトルの意味を2話で実感してしまう。
誰もが林に夢中だ。
2話以降でこの作品のスタンスがわかるだけに、
1話だけで切るのはもったいない。
二階堂
4話と5話はそんな林とは無関係な二階堂が描かれる。
猫背で怪しげで暗い二階堂。
気になる存在ではあるものの、触れることすら危ぶまれる。
彼と関わると呪いをかけられる、不幸な目に遭う、
様々な噂が飛び交う男だ。
そんな男に対し目高という男は思わず話しかける。
「伊藤潤二の漫画に出てたよね?」
そんな会話をきっかけに二階堂という男を目高という男が紐解いていく。
中学では王子様のように、アイドルのように扱われていた二階堂は
とある事件をきっかけに暗い青年になってしまっている。
そんな二階堂と目高の不思議な関係性、
運命とも言える関係性はBLや恋愛関係ではない、運命的な友情ともいえる。
林とは違った二階堂という男の物語は2話かけて丁寧に描かれており、
全5話という短い尺では有るものの、
作品としての個性と深みを感じる作品だった。
総評:林を巡る物語
全体的に見て2話以降から味がで始める作品だ。
1話だけだとBL作品かな?という印象だけが残るのだが、
2話になると「BL」ではなく、林というおもしれー男を巡る
男女の物語であることがわかる。
そんな林を中心とした様々な人間模様と会話劇が
独特の空気感を産んでおり、クスクスとした笑いを生んでいる。
タイトルの「夢中さ、きみに」というタイトル通りの内容だ。
林という男にどんどん夢中になっていく。
もっと彼を中心としたエピソードを見たいと感じるところで、
二階堂という別の面白い男の話に切り替わる。
これは原作が「短編」漫画ゆえに仕方ないのだが、
全5話で終わってしまうのはもったいない。
もっと林という男を、二階堂という男を見たくなる。
ギャグアニメでありつつ青春アニメ、
BL一歩手前の絶妙なバランスが素晴らしく、
好みが分かれる部分はあるものの、1話だけでなく
2話まで見て判断してほしいところだ。
個人的な感想:夢中
個人的には好きな作品だった。
和山やま先生がこの作品で第23回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞、
第24回手塚治虫文化賞短編賞など多くの賞を受賞したことも
納得できる作品としての力強さがあり、カラオケ行こ!含め、
和山やま先生の世界観を感じることが出来る作品だ。
いわゆる「作家性」というものを強く感じる。
短い原作が故にカラオケ行こ!も本作品も本来は1クールのアニメには出来ず、
特にこの作品の場合はアニメ映画に出来るわけでもない。
そういう作品は数多く存在する。
そういった作品がこういう形でアニメ化できることを
証明出来たのは素晴らしく、今後、多くの短編マンガが
アニメ化されることを期待したい。