TVアニメと聞いて多くの人が頭に浮かべるのは
1話30分・全12話 の1クール、もしくは2クール、4クールでしょう。
時代にあわせて徐々に4クールのアニメは減り、2クールのアニメも
かなり減っており、今や1クールがメインとなってます。
壮大なストーリー、キャラクターの成長、複雑な伏線 、
「物語」を描くうえでどうしても「尺」、時間というものは必要で、
1クールだと短い、2クールや4クールで見たかったという
作品も最近は数多くあります。
しかし、現代人は時間がない。
アニメ以外のコンテンツも溢れ、
アニメ自体も1クール70本以上放送される異常事態。
「タイパ」を求める現代人においてアニメというものは
いささか効率が悪くなってるのかもしれません。
あなたの知らない短編アニメの世界
しかし、安心してください。
日本のアニメ文化には、短編というもう一つの豊かな土壌があります。
1話数分、時には1話完結、あるいは実験的な1本限りの作品。
短い時間の中にギュッと凝縮された構成と演出で、
むしろ長尺作品にはない強烈な印象を残すものが少なくありません。
特に近年は強烈な印象を残す作品も多く、
短編アニメだからこそ、短い尺だからこその表現を積み重ね、
パンチのある作品が増えてきました。
かつてはただただ詰め込むだけ、ただただテンポが速いだけ、
ただただ1話30分のアニメを分割しただけのような作品もありました。
そんな試行錯誤の果てに、名作と呼ばれる作品が生み出されています。
この記事では、そんな短編アニメの魅力を象徴する10作品を取り上げ、
それぞれの面白さをご紹介します。
時間がない現代人だからこそ、通勤、通学の時間に
サクッと1本楽しめる。そんな作品ばかりですので、
ぜひ気になる作品があれば隙間時間にお楽しみいただければと思います。
八十亀ちゃんかんさつにっき

アニメには聖地という要素があるります。
舞台となった場所、地域が取り出されて、そこにファンが訪れる。
それを狙った作品も数多く生まれ敗退してきました。
この作品はそんな聖地アニメでありつつ、
名古屋を舞台にしたご当地コメディでした。
東京から転校してきた主人公が、地元の女子である八十亀ちゃんと出会い、
名古屋弁や独特の文化に驚きながら日々を過ごす。
1話はわずか3分。毎話、名古屋のご当地ネタや文化をテーマにし、
テンポで畳みかけてきます。
基本的にはキャラ同士の会話のみで笑いを作る構成は、まるで漫才のよう。
長尺作品で同じことをやると、この作品は濃ゆすぎます。
しかし、1話3分半ほどの作品だからこそ、
その濃ゆさがインパクトになり、飽きを生ませないまま
走りきることができます。
短編ならではの潔さとテンポ感があり、
名古屋という場所を学びつつ、キャラクターたちの
心地の良い漫才のような会話劇に聞きほれることのできる作品でした。
ぬるぺた

1話5分でも名作は生まれる、そんなことを裏付けたのがこの作品。
序盤はドタバタSFギャグのようでいて、
実は終盤で感情を大きく揺さぶる構成が特徴的で、
「死んだ姉の記憶を持つロボット」を作る天才少女の物語を描きつつ、
そんな物語の中で徐々に違和感を出し、世界が壊れ、自己を確立する。
この1話5分の中での変化、物語の積み重ねが非常にうまく、
ギャグをやりつつシリアスをやり、それを怒涛のテンポで描くことで
強烈なインパクトを与えた作品でした。
1話5分とゲームにつなげるための要素もあるため、
描写不足な部分はありつつも、そこを考察したくなる面白さもあり、
1時間足らずでSFであり哲学でありつつ
姉妹愛を描き切ったのは本当に見事な作品でした。
短編はギャグアニメが多いのですが、
そんなギャグをやりつつもSFをしっかりとやっており、
タイトルやキャラデザからは想像できないような深い作品に仕上がってます。
OneRoom

萌えアニメという言葉自体がもはや死語になりつつありますが、
この作品はそんな萌えアニメでした。
一人暮らしの主人公の家に
各ヒロインが訪れるというオムニバス形式になっており、
1話5分×4話で3人のヒロインを1クールで描いています。
そんなヒロインたちがシンプルにかわいい、
隣に引っ越してきた女子高生、上京してきた妹、主人公の幼馴染。
ベタな設定なヒロイン達ではあるのですが、
そんなベタを1話5分ほどの尺で味わうからこそ程よく、
フェチズムを感じるセクシーシーンもあります。
各ヒロインごとに専用のエンディング曲まである気合の入れっぷりで、
1度見ると忘れられない素晴らしい短編萌えアニメ作品でした
へやキャン△

有名なアニメ作品のスピンオフやミニアニメ的なものも
短編アニメというジャンルでは多い傾向にあります。
この作品も「ゆるキャン」のスピンオフ的な作品であり、
普段はいろいろな場所にキャンプに行く作品なんですが、
この作品ではそういう要素はなくシンプルな日常アニメとして描かれています。
本編とは違った角度で描くからこそ、より
キャラクター描写が深まる部分があり、
本編を見ている前提ではあるんですが、
野外活動サークルの3人の日常をさっくりと楽しむことができます。
1話5分ほどではあるものの、ゆるキャンらしさは変わらず、
序盤は聖地要素が強い作品ですが、
最後にはゆるキャンらしい優しい世界が広がっている作品でした
土下座で頼んでみた

僧侶枠もそうですが、こういう短編枠だと
「セクシーなアニメ」も怒られる前にやりきることができたりします。
いわゆる一発ネタ、出オチに近いネタも、
マンネリになる前に1クール終われるということもあり、
キャッチーな作品も多い印象です。
この作品はまるでギャルゲーのような一人称視点で、
各ヒロインに主人公が土下座をします。
男子の理想、男子の夢をかなえてもらうためならば、
土下座でもなんでもする、そんな男の押しに負け、
ヒロインたちは様々なものを見せてくれます(笑)
非常にインパクトのある作品であり、そのテンプレを繰り返しながら、
最後にはそのテンプレを裏切るような予想外な展開も起こり、
1クールきっちりと楽しめる作品でした。
ヤマノススメ

この作品は短編アニメでも珍しいパターンで、
1話5分ほどの1クール作品なのですが、
のちに1話15分枠で2期、3期が製作され、
4期では1話30分のアニメになりました。
短編アニメはある種のパイロット版のような作品もあり、
ヤマノススメも1期の人気があったからこそ
4期まで続く作品になりました。
作品としてはいわゆる日常アニメであり、
JKなメインキャラクターたちが登山をする、
それ以上でもそれ以下でもない作品ではあるのですが、
まったりとした雰囲気とかわいらしいキャラの魅力に
癒される作品でした。
ワカコ酒

本当に一時期ですが、孤独のグルメのブームに乗っかって
アニメでもグルメアニメがやたら多い時期がありました。
この作品もそんな作品の1つですが、
短編アニメだからこその良さも現れている作品でした。
一人の女性が一人酒を楽しむ。
ただただこれだけ、これだけなのに染み渡る面白さがあります。
キャラデザはシンプルではあるものの料理の描写には気合を入れており、
おいしそうなおつまみを食べ、おいしそうに酒を飲む。
お酒を飲んだあとに「ぷしゅー」と決め台詞のように、
美味しそうな吐息を漏らし、1話1話がすっきりと終わる。
その繰り返しがたまらず、ときおり見返したくなる作品の1つです。
少しだけ明日の心の余裕を持つための一人飲み、
社会人なら刺さるものがあるはずです。
バーナード嬢曰く。

私が大好きな作品の1つです。
読書通ぶりたい女子と、読書通の女子、本好きの男子、図書委員の女子。
この4人を主軸に「読書あるある」な漫才を繰り広げている作品です。
村上春樹作品と距離感、ドグラ・マグラ好きのサブカル感 、
本好きなら「あるある」と共感してしまうネタにくすくすと笑えてしまいます。
そんな読書ネタだけでなく「百合」要素があるのもこの作品の
魅力であり、1話5分という短い尺の中で
きちんと関係性の変化も生まれている素晴らしい作品です。
思わず本が読みたくなる、彼女たちの会話に混ざりたくなる魅力があり、
何度見ても笑えてしまう作品です。
PUI PUIモルカー

短編アニメとしての知名度、人気度でいえば1位かもしれません。
モルモットと車が合体した存在が人間社会の中に存在する。
この時点でいろいろと頭がおかしい世界観であるのですが、
そんな頭のおかしさを感じさせないモルカーたちの可愛さが
たまらない作品でした。
羊毛フェルトで作られた彼らを細かく動かしながら1枚1枚撮影し、
アニメーションにする。
いわゆるストップモーションアニメでこの作品は作られており、
そんなこだわりのある技術で作られたアニメーションは
賞賛しかできないほど素晴らしいものでした。
セリフとよべるようなものはないからこそ、
アニメーションで演技し伝えなければならない。
だからこそ老若男女問わずにこの作品は人気になり、
中盤には考察要素まででてきます(笑)
1話5分のアニメ だからこそ
ストップモーションという時間がかかる技術によるアニメーションをやれる。
まさに短編アニメだからこその魅力を感じる作品でした。
銀河特急 ミルキー☆サブウェイ

この記事を作るきっかけにもなった作品です。
1話5分というのは短く、一瞬で終わってしまいます。
その一瞬にこれでもか!と詰めに詰め込んだ本作品は
多くの人を魅了し、ダークホースとして話題になった作品でした。
フルCGで描かれた世界は高いクォリティで描かれており、
どこかディズニーやピクサーなどの雰囲気を感じるものの、
基本は会話劇で彩られています。
様々な事情から捕まってしまったメインキャラ達、
そんなキャラたちが奉仕活動をしていると銀河特急が暴走を始めます。
暴走した銀河特急の中での会話劇は本当に素晴らしく、
詰めに詰め込んだ会話劇はほかのキャラのせりふにすらかぶせてしゃべりまくり、
1話1話の中でメインキャラをきちんと掘り下げ、
自然と全キャラに愛着が持てるようになっています。
1話5分未満、1クールの短い作品でありながらも、
キャラクターたちの成長と変化がきちんとあり、
次々と起こる展開と怒涛のテンポが見ている側の
脳内のドーパミンを過剰に放出させ、
見る快楽のような作品です。
私はこの言葉をめったに使いませんが、
この作品に限ってはあえて使いくなります。
「騙された」と思ってみてみてください。
1話5分の世界
どの作品にも違った魅力があり、1話5分未満の短い尺の中で
様々な工夫が見られます。
ストーリー構成1つにしても普通の30分アニメを分割するものもあれば、
詰め込むものもあり、内容も多種多様です。
そんな作品の数々をたった60分ほどで最終話まで見れる。
これぞ短編アニメの魅力であり、
時間の奪い合い、コンテンツの大量生産な現代において、
短編アニメは時代に適したスタイルといえるのかもしれません。
普通のアニメとは違った魅力が短編アニメにはあり、
短い尺だからと舐めてかかると、
ドはまりしてしまう作品も多くあります。
この記事をごらんいただいたみなさん、
1つでも気になった作品があれば、
サクッとご視聴していただければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。