立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花、「干物妹!うまるちゃん」レビュー

2015年10月1日

評価/★★★★☆(63点)

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立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花、
寝転べば干物、這いずる姿はハムスター

原作は週刊ヤングジャンプで連載中の漫画作品
監督は太田雅彦、アニメーション制作は動画工房

見だして感じるのは冒頭の1分の素晴らしさだろう。
超絶美少女で品行方正で成績優秀、
立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花を絵に描いたような
「外の姿」が描かれた後、家に入った瞬間に2頭身のキャラクターへと変貌する(笑)

この作品のヒロイン「うまる」ははっきりといってダメ人間だ。
横になりながら地面においたデスクトップパソコンを使いながら
「兄」に甘えまくるダメ人間ライフ、干物のようなぐうたらな生活を送っている。
いわゆるギャップ萌えの逆バージョンと言ってもいい、ギャップ萎えだ(苦笑)

素敵すぎる完璧なヒロインを見せられた後に、
あっさりと「ダメ過ぎるヒロイン」を見せられる。
そんなダメな様子を「可愛い」と思ってはいけない、
はっきりいって彼女は「クズ」だ(笑)

兄に対する甘えっぷりが半端じゃなく、
ダダのこね方は高校生とは思えないほどのヒステリックなものだ
金にも汚く「干物ライフ」を送るためには「自分の可愛さ」すらも利用する。
自分が可愛いとわかっているのをきちんと自覚し行動するさまは
女性キャラクターとして素直に好感が持てるとは言いがたい。

普通のヒロインの「可愛さ」は「うまる」にはない。
どっちかというと、この作品のヒロインを見て湧き上がる感情は
「保護欲」だろう(苦笑)
あまりにもダメ過ぎる、あまりにもクズすぎる、だが美少女。
そんな彼女の「干物ライフ」は可愛いという次元とは正反対の
「自分がどうにかしないと」と見ている側の焦りすら湧き起こさせるほどの
ダメっぷりだ。

そのダメさを兄という立場のキャラクターを通して
視聴者と同じように「保護欲」から彼女を「世話」する兄の様子に感情移入する。
兄というフィルターを通して「干物妹」のダメ加減を見ることによって
それが「面白さ」にきっちりと変換されており、
ダメ過ぎるヒロインを思わず「可愛い」と感じてしまうはずだ

逆にこのヒロインに対して「兄フィルター」が効かずに
嫌悪感を抱いてしまう人もいるだろう。
いや「兄フィルター」が効きすぎて、兄が可哀想に見てしまう人もいるはずだ
それほど「うまる」の甘えっぷりは半端無く、ダダのこね方もかなり厄介だ。

しかし、そんな「クズ」なヒロインが居る中で
非常に正統派なヒロインである「海老名ちゃん」が居ることで浄化される
ダメダメなヒロインを味わう中で正統派のヒロインが
ちょこちょこっと話の中に現れることで「癒やし」が生まれ、
「海老名ちゃん」というヒロインの可愛さが
「うまる」というヒロインのゲスさにより際立つ。
逆に海老名ちゃんのせいでうまるのゲスさが際立っているとも言えるのだが(苦笑)

この作品は「キャラクター」の使い方が上手い。
日常作品やギャグ作品というのは「ネタ切れ」になるとキャラを増やしたり、
最初からネタ切れしないように大量のキャラを配置する場合も多いのだが、
この作品の場合、適度にキャラクターが居て、適度にキャラクターが動く。

正統派のヒロイン、ダメなヒロイン、振り回される兄。
この3人で序盤はきっちりと話ができており
絶妙なキャラクターのバランスで描かれる日常が独特の面白さを醸しだしており、
「うまる」というヒロインの日常から生まれるギャグ、
「海老名」というヒロインの日常から生まれる萌え。
きちんと「日常アニメ」としての要素を確立して描いている。

しかしながら、この作品のネタ切れは早い。
3人の状態で描かれる序盤はヒロインの好き嫌いはわかれるかもしれないが
きっちりとした「オリジナルの面白さ」があるのだが
「干物妹」という設定だけではそれ以上話を広げらることが難しかったのか
早々にキャラクターが増えだす。

「うまる」という特殊なキャラクターに特殊なキャラクターをあてがうことで
物語を創りだしている。しかしながら、それが決して悪いことではない。
「3人」のキャラクターだけではマンネリになってしまうのを防ぐために、
新しいキャラクターを増やすのだが、
前述したようにこの作品のキャラクター使いは非常にうまい。

だからこそ自然に「3人」の日常から「4人」の日常になり「5人」になる。
キャラクターが増える事でごちゃごちゃした感じは強くなるが、
それがネタ切れからくる「無駄」なキャラクターではなく、
きちんとした新しい「立ち位置」のキャラクターであり、
新しい立ち位置のキャラが出ることで違った目線のストーリーが生まれる

同時に「動画工房」というアニメーション制作会社の良さが生きてくる。
この「動画工房」という製作が会社は「女の子の細かい」描写に関しては
他の製作会社より頭1つ抜きでたこだわりがある。

その「こだわり」が女性キャラクターが増えることで生きてくる。
特に少し注意深く見て欲しいのだが「口」の絶妙な形だ
キャラクターの「心情」が口の形にしっかりと現れており、
その口が絶妙に動き、絶妙に形を変えながら描写される事で
「キャラクター」の可愛さが物凄い引き立つ。

キャラクターの感情描写が「口の形」で表現する。
文章にすれば1行ほどの演出ではあるものの、
それがきちんと全てのシーンで「妥協」せずに演出されていることで、
一人ひとりのキャラクターの魅力が余すこと無く表現されている
単純な「○」や「△」ではない、なんとも言えない口の形に気づくと
この作品の「魅力」がしっかりと伝わるはずだ

全体的に見て非常に安定している日常アニメ作品だ。
「うまる」というキャラクターの好き嫌いが出てしまうところが欠点ではあるものの、
その欠点こそが「うまる」とぃうキャラクターそのものであり、この作品そのものだ
それを受け入れられるかによって評価は大きく違うと思うが、
受け入れられさせすれば間違いなく「面白い」作品だ

いい意味でも悪い意味でも1話から最終話まで非常に安定している
ややダレたりマンネリを少し感じてしまう部分はあるものの
「日常」作品だからこその空気感にもなっており、
その「ゆるーい」日常の中で「うまる」の干物ネタが生きており、
女性キャラクターたちの可愛さも際立つ。

ダメな妹、正統派ヒロイン、お嬢様、コミュ症と
ちぐはぐなヒロインたちの日常は爆笑こそしないものの
クスクスと適度に笑えて、適度に癒される。
「うまる」のようにこの日常をずっとだらーっと味わいたくなるような
そんな良い意味で「肩の力」を抜いてくれる作品だ

アニメーションとしても良く出来ている。
短い話を複数つなげて1話としており、
それが「だらーっ」とした日常の中でメリハリがついており、
あまり「面白くない」と感じる話でもすぐ終わるため
小気味よくストーリーが展開していくテンポはこの作品に適していた。

これが無理にオリジナル要素を入れまくって
話を引き伸ばしてしまえばテンポが崩れ、
逆に5分アニメなどでやってしまえば慌ただしくなってしまう。
複数話構成だからこそ、この作品の「味」が出ていた。

作画部分でも妥協はない。
前述した「口」の細かい描写や可愛らしいヒロインたちの表情の描写、
「うまる」の干物バージョンと美人バージョンの差など
きちんとした「作画」があるからこそ、作品の持ち味を活かしていたといえるだろう

売り上げ的にも5000枚前後と十分2期ができる。
原作ストックも充分あるようなので、
いっそのこと朝アニメなどで4クールくらいガッツリ見たい作品だ。