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オトナ帝国の三番煎じ「クレヨンしんちゃん 奇々怪々!オラの妖怪バケ〜ション」レビュー

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映画クレヨンしんちゃん 奇々怪々!オラの妖怪バケ~ション 映画
画像引用元:©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2026
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オタク歴25年、アニメレビュー歴13年、YouTube登録者11万人。 個人的な視点で語るアニメ批評です。

評価 ★★☆☆☆(25点) 全101分

大ヒット上映中!『映画クレヨンしんちゃん 奇々怪々!オラの妖怪バケ~ション』<TVCM:なんかようかい?編>

あらすじ ある夏の日、日本各地で怪奇現象が相次いで目撃され、世間を騒がせていた。そんな中、野原家は秋田県にあるひろしの実家に帰省することになる 引用- Wikipedia

二番煎じどころか三番煎じ

本作品はクレヨンしんちゃんの映画作品。
監督は渡辺正樹、制作はシンエイ動画。
クレヨンしんちゃんとしては34作品目の映画となる。

序盤の導入はテンポがよく、かなり自然だ。
夏の景色、夏の雰囲気をビンビンに感じる中で、
いつもの「しんのすけ」の日常が描かれる。
そんな日常の裏で「妖怪」たちの世界の扉が開き、
彼らが人間界にやってきてしまう。

人間に姿を見られてはいけない彼らは人間から姿を隠すものの、
たぬきの妖怪である「まめ太」は犬に見つかって襲われてしまう。
そんな場面に出くわしたしんのすけが彼を助けるところから、
物語が始まる。

日常から非日常へ。
これはドラえもんやクレヨンしんちゃんの映画における
「定番」の王道展開だ。

冒頭からスムーズに日常へ非日常を混ぜていく展開は素晴らしく、
そこから「野原一家」が秋田に帰省するという流れも自然だ。

秋田

本作品の舞台は妖怪たちの国と秋田だ。
秋田には野原ひろしの実家があり、ひろしの父や母、兄が出てくる。
これはクレヨンしんちゃん映画では非常に珍しい展開だ。
特に野原せましは映画初登場であり、彼の家族も初登場だ。

ひろしの父、しんのすけの祖父である「銀の介」は、
映画初登場ではないものの、過去の映画ではちらっと出る程度で、
ほとんどセリフがなかった。
しかし、本作ではガッツリとセリフがある。

シリーズ34作目にして、初期から登場していた
「銀の介」というキャラクターがメインになる可能性を序盤で感じ、
個人的にはかなり期待が高まっていた。

前作は「ボーちゃん」をメインにしたインド映画テイストの作品であり、
ギャグに振り切りながらも、かすかべ防衛隊とボーちゃんの
友情を描いた素晴らしい作品だった。

それだけに、今度は「銀の介」というキャラクターを
掘り下げる作品になるのではないかと、
おのずと期待感が上がってしまう。

しかし、その期待は的外れに終わる。

妖怪

妖怪たちは、とある事情で60年前に鎖国している。
人間たちとの関わりを断ち、
60年間、妖怪たちは人間界を訪れていない。

人間たちにとって妖怪は空想上の存在であり、
ひろしやみさえ、多くの大人たちはそう思っている。

しかし、「銀の介」はそうではない。
彼が子どもの頃には妖怪がそこらじゅうにいて、
一緒に遊んだ記憶まである。

これは間違いなく伏線だ。
ここまでの展開は非常に期待できたのだが、
ここからが問題だ。

しんのすけたちは「まめ太」たちに導かれるかたちで、
妖怪たちの国へ行ってしまう。

しかし、妖怪たちの国には人間が入ってはならず、
入った人間は「おしり玉」を抜かれて妖怪になってしまう。
さらに、次の満月の夜になると人間だった頃の記憶を失い、
完全に妖怪になってしまう。

ひろしとみさえは「おしり玉」を抜かれて妖怪になってしまい、
しんのすけたちは父と母を助けるため、
おしり玉を取り戻しに妖怪たちの城へ向かうことになる。

ロードムービー

クレヨンしんちゃんにおいて、
ロードムービーはお約束ともいえる展開だ。

目的地までの道中でさまざまなトラブルや敵が現れ、
それを「しんのすけ」たちが、
映画特有の何かを使って乗り越えていくというのが定番だ。

そういう意味では、この作品には初期作品のテイストを感じる部分がある。
しんのすけも妖怪の格好をし、
仲間の妖怪から特別なうちわをもらっている。

だが、そのうちわはほとんど役に立たない。

何より、この道中が非常に退屈だ。
しんのすけたちは大きな障害に直面することもなく、
だらーっと目的地へ向かってしまう。

途中で崖から落ちそうになり、
靴下になってしまったひろしを使って助かったり、
仲間の妖怪たちと宿に泊まり、一緒に風呂に入って遊んだりする。
そうした出来事を通して、少しずつ仲を深めていく。

それだけだ。

敵がやってきて襲ってくることもなく、
大きな緊張感が生まれないままロードムービーが続いていく。
ギャグこそあるものの、物語全体が間延びしてしまっている。

キャラクター自体は悪くない。
仲間の妖怪である「まめ太」としんのすけ、
「唐蔵」とシロ、「ピン子」とひまわりの関係性は
しっかりと描かれている。

妖怪は怖いもの、人間は怖いものと、
互いを「偏見」で見ていた者たちが、
その偏見をなくして友だちになっていく展開は素晴らしい。

しかし、キャラクター同士の交流に時間を使う一方で、
肝心の物語がなかなか進まない。

敵がほぼ拠点から動かず、
しんのすけたちを追ってくる存在もいない。
ロードムービーでありながら、道中に緊張感がないというのは致命的だ。

野球

もう少しで目的地というところで、
しんのすけが「カレイ」の妖怪を間違えて踏んでしまい、
なぜか野球をすることになる。

かなり唐突な展開であり、なぜ野球なのかも分からない。
3回裏までの短い試合ではあるものの、
この野球が妙に長く感じられ、特に面白みもない。

一応、「やこ」という妖怪が野球を得意としている設定があり、
その過去を掘り下げるための展開なのは分かる。

60年前、やこは人間界で出会った少年と野球を楽しんでいた。
しかし、唐突に妖怪の国の入り口が閉じられることになり、
その少年にボールを返せなかったという過去がある。

この時点で「ああ、銀の介のことね」と大人なら分かってしまい、
実際にそのとおりだ。

このあたりのエピソード自体は悪くない。
銀の介とやこの過去は、本作品の中でも重要な要素だ。

しかし、そのエピソードを見せるための野球が長く、
物語のテンポをさらに悪化させてしまっている。
良い設定があっても、それを見せる方法が効果的ではない。

野球が終わり、目的地に着くと、
ようやく敵との戦いになる。

クレヨンしんちゃんらしい戦闘シーンが描かれてはいるものの、
今作は作画のクオリティがあまり高くなく、
アニメーションとしてのスピード感がない。

クレヨンしんちゃん映画といえば追いかけっこがよく描かれるが、
この作品にもそれに近いシーンがある。
しかし、疾走感がなく、ダイナミックさにも欠けてしまう。

作品全体としても、微妙に作画のクオリティが低い。

これは私が見た映画館の問題だったのかもしれないが、
とあるシーンで妙に画質や解像度が落ちたように見える場面があり、
思わず目をこすってしまったほどだ。

アクションシーンは終盤に集中しているものの、
そのアクションも面白みに欠け、
見せ場自体が短いという印象を受ける。

本作品の監督である「渡辺正樹」氏は、
『SAKAMOTO DAYS』なども手がけている。

『SAKAMOTO DAYS』でも、
本来なら迫力が生まれるはずのアクションに
スピード感やダイナミックさが足りない場面が多かった。

本作にも同様の物足りなさがあり、
動きの見せ方やアクション演出に、
この監督の特徴が出ているのかもしれない。

オトナ帝国かよ

ひろしとみさえの記憶は徐々になくなり、
しんのすけの年齢や、自分たちのことすら
少しずつ認識できなくなってしまう。

この「記憶喪失」的な展開も、もう何度目だという話だ。

『オトナ帝国』では、
懐かしい匂いによって大人たちが子どもに戻り、
自分の仕事や子どもを忘れてしまうという展開があった。

『オタケベ!カスカベ野生王国』でも、
動物にされてしまったひろしとみさえが
子どもたちを忘れるという展開があった。

何度目の記憶喪失だとツッコミたくなってしまう。

『オタケベ!カスカベ野生王国』の時点で、
『オトナ帝国』の二番煎じと呼ばれていた。
それなのに本作では、再び親が子どもの記憶を失うという
似たような展開を繰り返してしまう。

二番煎じどころか、三番煎じだ。

しかも、それだけではない。
終盤では『オトナ帝国』とほとんど同じような感動演出まで行われる。

大量の「おしり玉」が集まる場所へ行き、
しんのすけは時間がない中で、
ひろしとみさえの「おしり玉」を探すことになる。

しんのすけは目をつぶり、
目には見えないものを感じ取って、
二人のおしり玉を見つけようとする。

そこで思い出すのは、
これまでの5年間に積み重ねてきた「家族」の思い出だ。

これは『オトナ帝国』で、
ひろしが自らの35年間の人生を思い出す展開とほとんど同じだ。
描かれるのがしんのすけの思い出か、
ひろしの思い出かという違いでしかない。

しかも、しんのすけの思い出は5年間であり、
ひろしの35年間の人生に比べれば、
どうしても積み重ねの重みに欠けてしまう。

本作最大の問題は、単に展開が退屈なことではない。
過去作で一度ならず二度まで使われた感動の型を、
ほとんど更新しないまま、もう一度繰り返していることだ。

終盤の泣かせようとする演出はかなり鼻につき、
かつての暗黒期に多かった「感動路線」を
思い起こさせる展開になってしまっている。

団扇

ラストでは敵が巨大化し、
妖怪たちが次々に人間のおしり玉を抜いて、
人間たちを妖怪に変えていく。

この展開も非常にまどろっこしい。

中盤で「よしなが先生」などの先生たちはすでに妖怪化している。
さらに終盤では、サブキャラクターたちが次々に妖怪にされ、
「○○妖怪!」とテロップ付きで紹介される。

だから何?と言いたくなる展開であり、
ただただ無駄に尺を使っているだけだ。

ラストのバトルもご都合主義全開だ。
しんのすけが「やこ」からもらった謎のうちわの風を受けると、
なぜかしんのすけが巨大化する。

本当に意味が分からない。

このうちわは「本当に必要な時」に風が吹いてくれるというもので、
それまでもところどころで役に立っていた。
そのため、うちわ自体が重要なアイテムであることは理解できる。

しかし、なぜその風を受けると
しんのすけが巨大化するのかは、まったく分からない。

巨大化した後の戦闘シーンもかなりもっさりしており、
あっさりと決着がついてしまう。
爽快感もない。

メインヒロインである「やこ」の妖怪の姿は
「九尾の狐」なのだが、
九尾の狐らしい能力や技はほとんど描かれない。

中盤までは天狗のように風を使っており、
これで妖怪の姿が天狗なら理解できるのだが、
彼女の正体は「九尾の狐」だ。

あくまでイメージの問題ではあるものの、
九尾の狐が風の技を使う印象はあまりない。
「九尾の狐が正体だった」という設定も、
物語や戦闘に効果的に作用していない。

ただし、ラストの展開自体は悪くない。

「銀の介」と「やこ」のエピソードは素晴らしく、
人間と妖怪の関係性、
しんのすけと「まめ太」の友情、
そして両者の未来を感じさせるラストは決して悪くない。

だが、そのラストに至るまでの展開があまりにも弱い。
そのため、素直に面白かったとは言えない作品だった。

総評:二番煎じどころか三番煎じ

全体的に見て微妙な作品だ。

作品を構成している要素自体は悪くない。
妖怪、和、秋田、ロードムービー、
「やこ」というヒロインや仲間たち、
久しぶりとなるギャルっぽいお姉さんの敵など、
要素ごとに見れば面白くなりそうな部分は多い。

しかし、序盤を過ぎると物語のテンポが一気に悪くなる。
ろくに襲ってこない敵、
なかなか進まない展開、
唐突に始まる野球。

キャラクター同士の関係性は丁寧に描かれているものの、
それによって物語まで停滞してしまっている。

終盤は完全に、
「『オトナ帝国』のようなことがやりたい」
という作品になってしまう。

『オタケベ!カスカベ野生王国』でも一度やったのに、
また同じような展開を繰り返すのか……という感覚になる。
親の記憶が消えるというネタも、
さすがに三度目となるとやりすぎだ。

さらに、しんのすけが家族との思い出から
ひろしとみさえを見つけ出す展開まで、
『オトナ帝国』のひろしの回想をなぞっている。

本作の問題は、
過去作と似ていることだけではない。
過去作の感動を超える新しい見せ方を作れないまま、
同じ型だけをもう一度使っていることだ。

作画のクオリティがあまり高くないことも気になる。
アクションシーンの妙にまどろっこしい見せ方や、
スピード感のなさなど、
アニメ映画としてかなり見劣りしている。

終盤の花火に関しては気合いが入っていたが、
映画のメインとなる要素ではない。
そこに気合いを入れられても……という感じだ。

素材は決して悪くなかった。
それを活かしきれない脚本とストーリー構成、
既視感の強すぎる感動演出が
気になってしまう作品だった。

個人的な感想:当たり外れ

本当にクレヨンしんちゃん映画は、
作品ごとの当たり外れが凄まじい。

去年は大当たりだったが、一昨年は大外れ。
今年は個人的にはハズレの部類だ。

一昨年のようなひどさはないものの、
作品としてシンプルに面白みに欠けており、
見終わった後に強く記憶に残るものもない。

悪すぎて記憶に残る作品ですらなく、
ただただ薄味で終わってしまうタイプの作品だ。

来年も、どうやらファンタジーで
魔法の要素が出てきそうな予告だったが、果たして……。

「クレヨンしんちゃん 奇々怪々!オラの妖怪バケ〜ション」に似てるアニメレビュー