「えんとつ町のプペル」レビュー

映画
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評価 ★★☆☆☆(37点) 全100分

あらすじ 煙突だらけの「えんとつ町」。そこかしこから煙が上がるその町は黒い煙に覆われ、住人たちは青い空や星が輝く夜空を知らずに生活していた引用- Wikipedia

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普通

原作は2016年に発売された同名の絵本。
芸人である「西野亮廣」氏による監督脚本により分業で制作された。
アニメの監督は廣田裕介、制作はSTUDIO 4℃

親方!ゴミが空から!

アニメのボーイミーツガールにおいて
「空から」降ってくるパターンは定番中の定番だ。
しかし、この作品の場合、降ってくるのは女の子ではなく心臓だ。

「えんとつ町」と呼ばれる煙にまみれた街、
スチームパンクな世界観とはまた少し違う、雑多な工場地帯のような
街は空気が汚染され、ゴミにまみれている。

そんな街に降ってきた心臓は「ゴミ」を集め、ゴミ人間が生まれる。
自分が何者かすら分からず、名前も無い。
ハロウィンで盛り上がる街で仮装姿の子どもたちに紛れ、
唐突にダンスを踊りだすものの、特にこのダンスに意味は感じない。

あまりも唐突なダンスシーンに「ミュージカルでもやるのか?」と
思ったが、特にそういうわけでもなく、ただ踊っただけだ。
エンドロールによると「ハロウィンダンス」というものらしいが、
恐らくは流行ることを狙ったダンスシーンなのだろう。
冒頭から滑ってる感じは否めない。

そんな「ゴミ人間」が一人の少年「ルビッチ」と
出会うところから物語が始まる。

街並み

この作品で1番評価できる部分は「街並み」、美術背景だ。
えんとつ街という名前の通り、たくさんのえんとつからは煙が吐き出され
決して綺麗とは言えない街並み。
そんな綺麗とはいえない街並みを繊細に描き込み、作り込み、
それをこれでもかと見せているのがこの作品だ。

まだ子供な「ルビッチ」が小さい体で画面いっぱいに描きこまれた
街並みをちょこちょこと動き回る姿は可愛らしく、
雑多な街だからこそのアクションシーンが
コミカルなアニメーションとしての面白さをしっかりと生んでいる。
そんな街並みを見せたいという制作側の意図すら感じるほど
「街並み」を見せるシーンが多い。

恐らくは描きこまれてない部分、目には見えていない部分まで
しっかりと設定段階で作り込まれているんだろうなと感じるほど
街の描写が細かく、「VR」かなにかでこの街の中に入ってみたいと
思わせるほどの没入感を生んでいる。

街の周りを海が囲み、空は常に煙に覆われている。
この街の住人は「外の世界」を知らず、「星」すら知らない。
そんな街ではかつて「ルビッチ」の父親が紙芝居として
誰も見たことのない雲の向こう側の星について語っていた。

父親がなくなって1年、主人公であるルビッチは
父が居なくなった悲しみを抱きつつ、
父が夢見てた星があることを信じていた。

そんな少年が出会うのが「プペル」だ。

ダイジェスト

「君の名は」のヒット以降、テーマソングを流して
その間にダイジェストで一気にキャラの日常を描き
関係を進めるという手法を取る作品が増えた。
この作品もそんな有象無象な作品と同じ手法を取っている。

「ゴミ人間」という怪物のプペルは街では差別の対象だ。
見た目だけ、匂いだけで彼を嫌悪するものも居る。
だが、たまたまであったルビッチと友だちになったことで
彼は居場所と仕事を得る。ルビッチも「友達」ができる。
誰にも言えなかった自分の夢を語れる友達だ。

そんな二人の日常を挿入歌とともに描く。それが複数ある。
1回だけでも「あー、このパターンでダイジェストか」と
萎えるのにまた同じ手法で見せてしまっており、
制作側にそれ以外の手法はないのか?と引き出しの少なさを感じてしまう。
監督はこの作品が初監督であり、そういった部分をひしひしと感じる。

淡々とストーリーを進め、挿入歌とダイジェストで一気に進める。
ようやく話が盛り上がってきたと思える終盤でさえ
この手法を取られると流石に萎えてしまう。

飽きる

面白い、面白くない以前に演出がワンパターンだ。
だから見ているうちに飽きてしまう。
思わず上映中に「今何時だろう?」と腕時計を見てしまったくらいだ。

原作が絵本であり、映画ではそんな絵本では描かれなかった部分を
描いているようだが、101分という上映時間にするための
話の「膨らまし方」がたりていないような印象を受ける。

その割にはサブキャラなどの掘り下げが甘い。
この世界では「外の世界」に関することは異端だ。
異端審問官に捉えられると何をされるか分からず、
街にとって有害と判断されれば暗殺されかけるくらいだ。

町の住人は星なんてあるわけねぇ!とプペルや
ルビッチの父に殴りかかってきたりする。
唐突な暴力描写のやや過剰な表現はちょっとこの作品の世界に
見合っていないと感じてしまう部分だ。

それでもルビッチは「星」を目指す。
父が信じていたものを信じ、嘘つきではないということを証明するために。

ラピュタは本当にあったんだ!父さんは嘘つきじゃなかった!

要はこの作品でやりたいのは「天空の城ラピュタ」だ。
あの作品でもパズーの父親は「ラピュタ」について詐欺師と
言われていたものの父親がなくなった後もパズーはそれを信じつつも、
炭鉱夫として働いている。

この作品のルビッチもほぼ同じ立場であり、
違いと言えば炭鉱夫ではなく「煙突掃除屋」であることくらいだ。
冒頭ではトロッコによるアクションシーンなどもあり、
かなり「天空の城ラピュタ」を意識している部分が多い。

ゴミ人間である「プペル」は飛行石&シータだ。
彼はルビッチを空に送るための「船」を呼び、
彼とともに星を見に行くために船に乗り、
まるで「龍の巣」のような煙の雲をくぐり抜け、
ラピュタという名の星を見つける。

物語の構図がほぼ天空の城ラピュタであり、目新しい要素がない。
パクリとは言わないものの、構図として似ている部分がありすぎるため
見ている間に「あ、これラピュタか」と意識してしまうと
先の展開も読みやすく、より飽きてしまう。

良く言えば王道、悪く言えばベタで使い古された要素を
そのまんま、この作品は見せている。
そのせいで色々な作品に触れている人ほど、
この作品の「ありきたり」な部分から飽きが生まれてしまう。

経済システム

この作品で唯一個性を感じた部分が「エル」だ。
エルという通貨は時間がたてばたつほど劣化し、それに伴い価値が下がる。
人々に「お金をためさせない」「お金で争いを産ませない」ための
経済システムであり、内部留保やタンス貯金がよく問題視される
日本を皮肉っている部分なのかもしれない。

この経済システムが生まれたのは
この世界ではかつて人がお金で争ったからだ。
そんな争いをやめさせるために「エル」という通貨を生んだが、
中央銀行から睨まれてしまう。

そこで「えんとつ街」の住人の先祖とも言える人々は
海に囲まれた島に街を作り、空を煙で覆い隠すことで
外部からの接触や交流を経ち、通貨で争いを産まないための街を
作り上げていたというバックボーンがある。

この世界観の設定は非常に面白いものの、
この作品はそこを掘り下げてはくれない。
外の世界も「本当にありました」ということがルビッチによって
証明されただけで、外の世界の現状がどうなってるかなどは描かれない。

本来はここからが面白い。
天空の城ラピュタもラピュタを発見し、
ラピュタの中に入ってから物語佳境を迎える。
しかし、この作品はラピュタに入らずに終わってしまう。

外の世界を知られたくないと暗殺まで行っていた異端審問官や
街で1番偉い人などもあっさりと諦めてしまっており、
「暗殺の実行犯」としてサブキャラ的な立ち位置にいた人物の
その後も一切描かれない。

お金で滅びなかった「えんとつ街」と
お金で滅びた「外の世界」という構図が合っても良かったはずだ。
外の世界を町の住民がしってしまったがゆえに
外の世界と同じになるかもしれない、
それでも主人公は外の世界があるということをみんなに知らせたいのか。

そういった考え方のぶつかり合いなどは一切ない。
面白そうで独特な世界観の設定があるのに、
ありきりたいな物語になってしまっているちぐはぐさは
もったいなさも生んでいる。

夢は信じれば叶う

この作品で言いたいことはこれだ。
誰かにバカにされようが、信じ続けて目指し続ければ夢は叶うはずだと。
そういった普遍的なテーマだ。

「夢は諦めなければ叶うよ」
というのを誰が言ったかはわからないが、
日本にいれば聞いたことがないという人は居ないはずだ。
それは正しいメッセージではある、諦めたらそこで試合終了だ。

ただ、そんな耳にタコができるほど聞いたようなテーマを
この作品はしつこく魅せている。

誰かに理不尽に殴られようが、バカにされようが
誰も信じてくれなくても、信じ続ければいつか一緒に夢を叶えてくれる
仲間が現れて、夢が叶うかもしれない、
バカにしてた人も見返せるかもしれない。あなた次第だよと。

ルビッチとプペルが必死に煙の雲をどうにかしようとしてる中で
彼の父親によるナレーションでしつこいくらいに
このメッセージを押し付けてくる。

作品全体でのテーマの押し付けがましさがすごい作品だ。
台詞の説教臭さ、一言余計、しつこいまでに押し付けてくるテーマが
普遍的でありきたりなものにすぎない。

その押し付けがましさがなければある意味で王道な
この作品をもっと素直に楽しめる部分があったかもしれないが、
顔にテーマを常にぐいぐいと押し付けられているような作品だった。

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総評:面白くもなくつまらなくもない

全体的に見て極端につまらないわけでも面白いわけでもないという、
評価に困る作品だ。本来はレビューというものでこういう言葉を使うのは
ご法度なのは分かるものの、あえて使わせていただくと
この作品は「普通」だ。名作でもなければ駄作でもない。

STUDIO 4℃が手掛けてるがゆえにアニメーションのクォリティは高く、
特に街並みの描写は、思わずこの街を探検したいと思うほど
作り込まれており、その街並みをしっかりと見せてくれている。

その反面で演出面ではワンパターンに感じる部分も多く、
前半で絵に慣れてしまうことで、
後半はアニメーションとしての面白みが薄い。
「印象に残る」シーンが殆どない。

ストーリー面は良くも悪くも王道だ。
大好きだった父を嘘つきと言われ、それでも父と自分の夢を信じた主人公が
プペルと出会うことで夢を叶える物語。
努力は必ず報われる、夢は諦めなければかならず叶うよという
テーマを伝えている作品だ。

ただ、それ以上でもそれ以下でもなく、
キャラクターが多い割には使いこなせておらず、
主人公とプペル以外のキャラの魅力がない。
本来は主人公とは正反対に居る敵キャラたちも魅力がなく、
プペルが夢を叶えると、あっさりと外の世界の情報開示に至る流れも
やや拍子抜けであり、もう1展開ありそうなのにそれがない。

ただ、王道であり、普遍的なテーマゆえに
それを強く否定することも出来ない。
しかし、「大人」は今更、耳にタコができるほど聞き飽きたことを
言われても響くことはない。

そういった意味では子供向けな作品と言えるかもしれない。
普遍的なテーマとストーリーはそれなりに楽しめる部分があり、
映像面でもわかりやすい面白さがある。

ただ、大人が、特に「オタク」と言われる
色々な作品を見てきた人にとっては
この作品はありきたりに感じやすい作品だ。
もう一歩踏み込んでほしい、もう一歩踏み込んでこそ面白さがあるのに
そこに踏み込まずに終わってしまう。

パズーがラピュタを見つけて家にとんぼ返りした。
そんな印象で終わってしまう作品だった。

個人的な感想:窪田正孝

個人的には窪田正孝さんの演技が光る作品だった。
彼が演じるプペルだからこそ、プペルというキャラがたっており、
存在感のあるキャラクター像を後押しする素晴らしい演技だった。
それだけに終盤で窪田正孝さんでなくなるのが残念でならないが(笑)

色々と作品の内容の是非より、
外野でのプロレスが目立っている作品だが作品としては普通だ。
過度な暴力描写はやや気になるところではあるものの、
子供向けの映画としてば無難な仕上がりと言えるかもしれない。

「」おもしろい?つまらない?

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