サスペンス

「アキバ冥途戦争」レビュー

サスペンス
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評価 ★★★★☆(62点) 全82分

TVアニメ「アキバ冥途戦争」本PV

あらすじ 1999年の秋葉原。ごく普通の少女、和平なごみは雑居ビルの一室にあるメイドカフェ「とんとことん」で憧れのメイドになる引用- Wikipedia

なんなんだこのアニメぇ…

本作はCygamesとP.A.WORKSによるアニメオリジナル作品。
監督は増井壮一、制作はP.A.WORKS

たまぁ貰い受けます

P.A.WORKSといえば「お仕事もの」と想像する人は多いのではないだろうか。
SHIROBAKOや花咲くいろは、白い砂のアクアトープと
PA.WORKSはオリジナルアニメで数々の「働く女性」を描いてきた。
この作品もそんなお仕事モノといえる。

キービジュアルの時点ではメイドものをやるのかな?と想像させる、
しかし、タイトルをよくご覧になって欲しい。
メイドはメイドでも「冥途」である。
1話の冒頭、1985年の秋葉原から物語は始まる。

「黒塗りの車」から妙齢の女性が降り立ち、雨がふりしきる中で
自らの店に向かう最中、これまたひとりの「メイド」が現れる。
彼女が手に持っているのは「拳銃」だ(笑)
メイドアニメが見れるかと思ったらヤクザアニメがはじまる、
とんでもないファーストインパクトは思わず笑ってしまうほどだ。

親分という名の店長の「玉」を取られた舎弟は復讐を誓う。
とんでもないアニメが始まったことを1話冒頭から感じさせてくれる作品だ。

おかえりなさいませ、豚小屋へ

主人公は「メイド」に憧れて、わざわざ上京してまで
秋葉原のメイドカフェに住み込みで就職している。
しかし、彼女はこの世界における「現在」のメイドカフェの事情を知らない。

「おひねり」という名の「上納金」を請求されるのは当たり前、
やらかしたメイドは「指」ではなく「ツインテール」を詰め、
他店にお使いにいけば「抗争」が始まり、メイド同士が殺し合う。
この作品はそんな世界観である(笑)

乱立するメイドカフェ同士での争いが過度化し、
それがいつのころからか「抗争」に発展し、
他店を潰すために「殺し合う」ことが当たり前になった。
そんな世界観がこの作品の中では確立されている。

かなり荒唐無稽な作品ではある。
秋葉原の町中で銃弾をぶっぱなしまくって、
毎話のように大量のメイド被害者が出てくる。

こんなぶっ飛んだメイドの世界を視聴者と同じく「主人公」も知らない。
この作品のストーリーがどこへいくのか、主人公はいったいどうなってしまうのか。
先の展開が全く読めない1話の期待感は素晴らしい。

闇社会

メイドを通して基本的にはコミカルに描きつつも、
この作品は日本の「闇社会」を描いている。
メイドカフェという名のヤクザ同士の抗争だったり、
メイドカフェが運営する「裏カジノ」があったりと、
メイドに置き換えてはいるものの、8割型「ヤクザ」ものである。

偽造ブランドバッグという名の偽造萌えフィギュアだったり、
地下闘技場的なのがあったりと、
序盤はそういった「メイド」の世界という名の「ヤクザ」の
世界を描きつつ、各キャラクターを掘り下げているような印象だ。

そんな、それぞれのキャラクターたちが
なぜこんな「メイド」という名の任侠の世界で働いているのか。
ヤクザとほぼ変わらない世界、いつ死ぬかもわからない。
それでも彼女たちはこの世界から逃げない。

そこにあるのは義理か、人情が、自分らしさを表現するためか。
それぞれの「任侠道」という名の「メイド道」が綴られる。
特に「万年嵐子」は35歳、前科有りのメイドだ(笑)
年齢も過去も色々とメイドとしてアウトな彼女の
メイド道が主人公に徐々に影響を与えていく。

みんなと出会えて良かった、メイドカフェ とんとことんで働けてよかった。
しかし、そう思いながらも彼女は「暴力」を振るうことはできない。
そんな中で「友達」が抗争の中で死んでしまう。

固めのラーメンの盃を交わし、姉妹の絆を結んだメイドが(笑)
話自体はかなりシリアスな展開になってくるのにもかかわらず、
こういう笑いどころがあるため、シリアスにはなりきらない。
この絶妙なバランスが狂った世界観を構築しているものの、
見る人によってはどういうスタンスで
見ればいいかよくわからない感じにもなっている。

メイドや秋葉原といった要素がなければ、
途端にガチでシリアスなヤクザな任侠ものになってしまうところを、
この作品は絶妙なバランスでカオスな世界観で描かれている。

覚悟

盃を交わした姉妹がなくなったからこそ、彼女は覚悟する。
メイドとはなんなのか、メイドを続ける意味はあるのか。
迷った彼女は一時は「忍者」になりつつもメイドであることをやめない。
ちょっと意味がわからない展開ではあるものの、
忍者やメイドをカタギやヤクザという言葉に置き換えれば納得はできる。

置き換えているからこそカオスだ(笑)
秋葉原でメイドと忍者が戦う姿はシュールな絵面を生んでいる。
だが、主人公である「和平なごみ」は成長している。
血で血を洗うメイドカフェ同士の抗争、それは憎しみの連鎖だ。
殺し殺され、殺し合う。その果てに何があるのか。

彼女は義姉の意思を受け継ぎ、そして自らの「メイド道」を見定める。

「生きろよ!殺すなよ!アンタもメイドなら萌え萌えキュンキュンしろよ!」

復讐の相手を許しはしない、だが、殺しはしない。
それが彼女が貫く「メイド道」だ。
この世界を彼女は変えようとする、血ではなくケチャップで、
オムライスを彩れるメイドになれるるように。
そのために「暴力」も振るう、殺すためではなく、守るために。

戦わずにいざこざを解決したい。
そんな思いが彼女をこの作品の主人公にする。
彼女に影響された変わろうとするものもいる、だが、
そう簡単には変わらない。

メイドにとって恋は厳禁だ。
使えるべきは「ご主人さま」たちであり、特定の誰かではない。
だが、「万年嵐子」は「恋」を知る。
多くのものを殺し、長年、牢屋に打ち込まれ、尊敬したメイドももういない。
そんな彼女の目の前には「復讐の相手」がいる。

しかし、彼女もまた、この「メイドカフェ とんとことん」で働く中で、
「和平なごみ」という主人公のメイド道を目にしたからこそ変わった。
殺し殺し合うメイドである必要はもうない。
「和平なごみ」に影響された彼女は殺すことよりも「生きる」ことを選ぶ。

そんな「情け」が彼女の恋を終わらせる。
もしかしたら「カタギ」になれたかもしれない、
復讐の炎が再び彼女の中でも燃えゆく。
だが、彼女は彼女なりに「けじめ」をつけることを決意する。

憎しみの連鎖

「万年嵐子」は悩む、自身の過去の因縁が故に店が巻き込まれ、
殺すかを悩む。しかし、それでも彼女は誰も殺さない。
「和平なごみ」が変えようとするメイド界、家族としての彼女の姿、
彼女の信念と「仁義」に彼女は強く強く影響されている。
彼女は変わった。

だが、簡単には許されることじゃない。
過去の因縁が、過去の罪が、彼女に帰ってくる。
彼女の「死」をもって償わされる。
絶とうとしても憎しみの連鎖は簡単には途絶えない。
変えようと思っても変えられない。

そんな中で「和平なごみ」という主人公はどう足掻くのか。
大事な人が二人なくなり、それでも彼女は
「生かす」メイド道を貫けるのか。

命を持って

「和平なごみ」は命を持って「メイド道」を貫こうとする。
もうこれ以上の犠牲は必要がない、もうこれ以上、誰かが血を流す必要はない。
たとえ自分たちを殺しに来るメイドたちがいようとも、
復習に燃えるメイドたちが目の前に現れて銃口を向けられても、
彼女は「メイド」としてお客さんを迎えもてなす。

たとえ撃たれても、たとえ暴言をはかれても。
メイドとしての「真髄」を、最初に憧れたメイドの姿と
メイドとしての意味を彼女は改めて思い出し、それをメイドたちに突きつける。
どこかで歪んでしまった「メイド」というものを彼女は正そうとする。

メイドカフェに訪れた人は誰であろうと「ご主人さま」であり「お嬢様」だ。
メイドとして彼女は命を持ってご奉仕する。

萌えと狂気の果てに。彼女は「メイド」そのものを守った。
荒唐無稽な1クールではあるものの、
そんな荒唐無稽さを1クールで貫きつつ、最後にはそれを正す。
最初から最後まで「和平なごみ」というメイドは、
正しいメイドであり続けたことを感じさせるラストだった。

総評:つらぬけ萌任侠道

全体的にみて一言で言えば「快作」と言える作品だろう。
メイドというものを描きつつ、中身は「ヤクザ映画」そのものだ。
メイドカフェ同士の抗争から内乱、殺し殺され、
しのぎを奪い合う姿はメイドという皮を被りつつも、
本質は「ヤクザ映画」として描かれている。

かなり荒唐無稽な世界観だ。
特に序盤はぶっとんだ世界観と価値観を持つキャラクターに
振り回されながら、この作品をどういうスタンスで見ればいいかわからない。
あっさりと死にゆくメイドたち、血でそまるメイド服、
だが、そんな死の連続とは裏腹に狂気じみたギャグで彩られている。

そんな勢い任せに進みながらも、
「和平なごみ」という主人公の「メイド道」を描いている。
想像とは違ったメイドの世界、視聴者と同じ目線でそれを味わいつつも、
彼女は「メイド」そのものをやめない。

彼女は最初から最後まで誰も殺さない。
誰かを殺して成り上がることが当たり前のこのメイドの世界で、
彼女は最初から自分の中にあった「メイド」の価値観を崩さず、
そして最後までそれを貫き通し、
歪んでしまったこの世界の「メイド」を正しい物にしようとする。

やや終盤は強引に話をまとめた感はあるものの、
やりたかったことは伝わる作品だ。
ただ、この荒唐無稽さやラストの詰め込み感は賛否が分かれるところであり、
色々な意味で人を選ぶ「快作」といえる作品だったのかもしれない。

個人的な感想:うまく消化が…

1話のインパクトは凄まじく、そのインパクトの余韻が序盤残りつつ、
この作品をどう受け止め、どういうスタンスで見れば良いのか
よくわからない中で、中盤辺りから「和平なごみ」が
主人公として確立したことで、制作側のやりたいことが
くっきりと見えてきた作品だった。

しかし、終盤はよりごちゃごちゃした感じが強くなってしまい、
特に最終話は一瞬感動させられる一方で怒涛の展開すぎて
最後はどう消化していいかわからない作品だった。

この作品はPAWORKSのオリジナルアニメとしては
珍しく「2クール」ではなく「1クール」のアニメであり、
2クールならこのうまく消化できない感じも
うまく消化できるような作品になったかもしれない。

メインキャラのキャラ付け自体はしっかりしているものの、
掘り下げがもう少しあればと感じるキャラも多く、
細かい部分が練られていないor描かれていない部分を
勢い任せに1クール貫き通されたような作品だ。

何度か見直せばこの消化できない部分を消化できるかもしれないが、
何度もみたいとは思えない作品だが、
他の作品にはない独特な角度で描かれている作品ではある。

非常に好みが分かれる上に、好きと言える人でも
うまく消化できる人は少ないだろうと感じさせる作品だった。

「アキバ冥途戦争」は面白い?つまらない?

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  1. よしだま より:

    一話見ておもしろいかがまず1つ目のチェックポイント。
    カジノにボクシング、社畜研修に野球回、哀しいラブストーリーまで網羅したストーリーのパワフルさと狂気についていけるかが2つ目のポイント。
    そして話のラストで視聴者が、「萌え」と「暴力」の行き着く果てに何を思うのか。

    個人的には非常に楽しかった。どんなとこにも「笑い」が用意されてるのも興味深かった。なぜそうなる、とツッコまずにはいられないw

    まあ難しいことは考えずにとりあえず「万年嵐子36歳」というキャラクターを楽しんでもらいたい。
    ありがとんとん(⁠ㆁ⁠ω⁠ㆁ⁠)

  2. K より:

    狂気に満ちた荒唐無稽な作品。メイドの命が限りなく軽く軽く描かれている現実離れした世界。
    そんな物語の狂気の源泉であり中心にいるキャラである凪はまた、この世界のヘイトを一身に背負う役目も担っている。
    他方、ポリティカルコレクトが跳梁跋扈する現実世界に於ては、このようななんでもありの自由な表現が「時代や空気の要望」により制限され、こうした作品を支持する我々アニメファンも実は、過去の異物として時代の流れに飲み込まれていった凪の側にいるという皮肉。
    アキバ冥土戦争の製作陣には、この作品を通して「自由な表現に対する様々な圧」には決して屈しないという強い意思をも感じました。