「星を追う子ども」レビュー

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映画
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評価 ☆☆☆☆☆(9点) 全116分

あらすじ 幼い頃に父を亡くした明日菜は、母と二人で暮らしている引用- Wikipedia

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偽ジブリ

本作品は新海誠監督によるアニメオリジナル映画作品。
制作は コミックス・ウェーブ・フィルム。

ジブリ感

この作品は賛否両論…というより否定的な意見を言う人の多い作品だ。
そういった意見が出ることもわかる、なにせこの作品は
作品全体でとんでもないほどの「ジブリ」臭がする作品だ。
監督のインタビューいわく、ある程度意識してそうしているらしいのだが、
意識どころかパロディにすら見えるような部分が多い。

冒頭、主人公の少女が田舎道を走り、
山奥の秘密基地のような場所に食料を溜め込み、
景色のいい場所で「水筒」からお茶のようなものをのみながら
サンドイッチを食べるシーンから始まる。

これだけでとんでもないジブリ臭がする(苦笑)
キャラクターデザインもジブリみたいな何かを感じさせるデザインであり、
少女のもとに「ミミ」という小さい猫が近づいてくるのだが、
これもまたナウシカの「テト」や魔女の宅急便の
「ジジ」のような見た目をしている。

背景描写に関しては新海誠監督らしい繊細に描きこまれた描写になっているものの、
彼が得意とする「都会」の雑多な風景ではなく、
今作では田舎ということもあり、自然の描写が多い。

そのせいもあって繊細に描きこまれた自然の背景という
いつもの新海誠監督らしい背景描写でありながら、
同時に同じように繊細に背景を描きこむ「ジブリ」と似たような
空気感が作品全体から漂ってきてしまっている。

風の谷のナウシカ、となりのトトロ、耳をすませば、魔女の宅急便、
ハウルの動く城、もののけ姫と、見ていると
色々な「ジブリ」作品の名前が頭の中で自然に浮かんでは
こびりついて離れない。

最大の原因はおそらくキャラクターデザインにある。
ジブリヒロインのような主人公の見た目、
そんな主人公が唐突に乙事主のような謎の獣に襲われるところを、
ハウルみたいな見た目のキャラに助けられる。

キャラクターデザインを抜きにすればそこまでジブリ臭はしないのに、
キャラクターデザインのせいでジブリ臭が
蓋を開けたシュールストレミングのごとくただよってしまっている。

意味深

主人公を助けた男性は意味深な言葉を吐きまくりながら死んでしまう。
彼は「アガルタ」という場所から誰かに会いにやってきたのだが、
満足げな顔をして死んでしまう、

そんな意味深な言葉をはかれた主人公は彼の死を受け止めきれない。
彼女は幼いながらも「死」を経験している。
幼い頃に父をなくし、シングルマザーな家庭で彼女は育っている。
母は忙しく、夜勤続きで、どこか孤独感を彼女は抱えている。
そんな中で出会ったどこの誰とも知らない青年の「死」を彼女はひきずったままだ。

彼女は「死」を覆したいと願っている。
失われた神々、人類の知らない地下世界で
「人を生き返らせるかもしれない」ということを知ってしまう。
本当か嘘かもわからない、どこにあるかもわからない
「アガルタ」という場所を彼女は探そうとする。

描きたいことややりたいことはわかるものの、
設定の文字が横文字だらけだ。
地下世界アガルタ、神であるケツァルトル、
アガルタへの鍵となる「クラヴィス」など
頭に定着しない横文字だらけの用語でストーリがいまいち飲み込めない。

逆ラピュタ

序盤をすぎると逆ラピュタみたいなストーリーになる。
飛行石のような「クラヴィス」という鉱石で
地下にあるラピュタのような場所である「アガルタ」へ訪れる。

アガルタは金銀財宝や不死や
死者を生き返らせる方法が眠っているといわれており、
主人公や、主人公の先生は「死」を否定したいという思いからアガルタへと旅立つ。

どういうストーリーなのか、何がやりたいのかはわかるものの、
もう常に「ジブリ」という言葉が頭から離れない。
ジブリ大集合な要素やキャラクターの数々、
ジブリ作品の各作品のいいところどりして再構成したような内容は
見ているだけで謎の疲労感にすら襲われる。

特に中盤で序盤に出てきた「偽ハウル」の弟が出てくるのだが、
彼が一族のお役目を受け覚悟を使命を果たしに行くというシーンで、
彼はわざわざ「髪」をナイフで斬り短髪になる。

キャラデザと彼がまたがる馬のせいで、もう「アシタカ」にしか見えない。
しかも、彼を思う女の子もおり、もののけ姫の序盤のシーンを
見せられているような感覚だ。
なんでここまでジブリ名シーン特集のような感じになってしまっているのか。
今までの新海誠監督作品を見ているだけに頭を抱えてしまう。

唐突

主人公は地下世界を旅しながら多くのものと出会い、
そして別れていく。
この世界での「命」の意味、「死」の意味を考えながら、
「アガルタ」の住民たちの死生観に触れながら彼女の中での
「さよなら」の意味を考えていく。

そういったストーリーをやりたいのはわかるが、驚くほど展開が唐突だ。
地下世界の冒険をしていたかと思えば、
よくわからない生き物に攫われて「偽アシタカ」と再会し
川に流されたらおじいさんと出会い、猫と別れたかと思えば、
猫がいきなり死ぬ。

やりたいことはわかるものの、展開を詰め込みすぎて
唐突な展開が連続して続くような感じで
見ている側の頭の中での情報の整理が追いつかず、
作品全体に漂うジブリ臭に頭の中を埋め尽くされる。

終盤

この作品で描きたいことは親しいものを味わった人たちが、
それをどう受け止め、前に進むかということだ。
「すずめの戸締まり」でも似たようなテーマが描かれていたが、
この作品ではもしかしたら死者が生き返るかもしれないという
甘い希望に登場人物たちが振り回されている。

人間は生きていく中で何かを失っていく、
その「喪失」とどう向き合うのか。
主人公の担任の先生は喪失が受け入れられず、
他のものを犠牲にしてもなくなった妻を取り戻そうとする。

一方で主人公はそんな担任の先生や旅路の中で、
自分の中にあった寂しさや喪失感を噛み締め、
喪失を受け入れ一歩進むことを決める。

この流れ自体は理解できるものの、
そこまでの過程やジブリがいっぱいなシーンの数々のせいで、
素直にこの作品のストーリーやメッセージを
受け止めきれない印象が残ってしまう作品だった。

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総評:新海誠監督唯一の失敗作

全体的に徹底した「ジブリ」オマージュの数々が鼻についてしまう作品だ。
ストーリー的には死生観や死の受け止め方を描いたものであり、
メッセージややりたいことは伝わるものの、
そんな本来はそれが一番前に来ないといけないところを、
この作品は最前線に「ジブリ」が出てしまっている。

ジブリを意識してジブリのような作品や世界観を描こうとしたのはわかるものの、流石にやりすぎだ。
見ているうちにありとあらゆるジブリ作品を彷彿とさせる要素や、
ジブリ作品の色々なキャラに似た人物が次々と
出てくるのは見ていて厳しいものがある。

なまじ作画のクォリティが高いだけに
背景美術はジブリに近いものもあり、
キャラデザが似すぎてしまっているせいで、
言われなければジブリ作品に見えてしまいかねない。

ジブリ、そして宮崎駿監督は偉大だ。
アニメを作る上で多くの人が多かれ少なかれ影響をうけ、
この作品以外でもジブリみを感じる作品はある。
しかし、この作品ほどジブリしゃないのにジブリみを
感じる作品はない(苦笑)

「もしも新海誠監督がジブリにいたら」というような
イフを感じる作品ではあるものの、流石にやりすぎだ。
この作品を構成する8割くらいがジブリ作品であり、
その程度がもう少し薄まれ違ったかもしれないが、
新海誠監督の唯一の失敗作と感じる作品だった。

個人的な感想:

最新作であるすずめの戸締まりは
この作品のセルフオマージュな部分がある。
そう考えるとこの作品は確かに失敗作であるが、
今の新海誠監督を作り上げる上で必要な失敗作だったのかもしれない。

猿も木から落ちる。
そんな言葉を浮かんできてしまうが、
2022年の「すずめの戸締まり」の公開のあとに
本作を見返すからこその魅力はあるものの、
作品単体としては評価しにくい作品だ。

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  1. 匿名 より:

    「2011年のアニメ」でのアニメコラムで地味に好きということでこの作品を挙げていましたが。どちらが本当の意見かわからないです。

    4.0 rating

  2. NC旋盤 より:

    確かに本作は端から端まで
    ▶ジブリの[パクリ]である◀しかし今作を観賞した時き、私が感じ取った[感動]は紛れもなく本物、断じて[虚構]では無い。[偽物の失敗作品]・・・到底受け入れられません、それは私の感性の否定と成るからです。

    3.0 rating