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「冰剣の魔術師が世界を統べる」レビュー

3.0
ファンタジー
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評価 ★★★☆☆(51点) 全12話

TVアニメ『冰剣の魔術師が世界を統べる』メインPV|2023年1月5日(木)から放送開始!

あらすじ レイ=ホワイトは強大すぎる自身の力に苦悩し、極東戦役を収めたのを最後に、深い心の傷と共に戦場から姿を消した……。引用- Wikipedia

なろう界のなかやまきんに君

原作は小説家になろうで連載中の小説作品。
監督はたかたまさひろ、制作はクラウドハーツ

過去

1話冒頭からシリアスな戦争のシーンが描写される。
悲惨な戦闘のさなかで少年は謎の力を使い、周囲を氷漬けにする。
そんなシリアスなシーンから一変、平和な学園シーンへと切り替わる。
この1話冒頭はやや説明的な描写が多い。

学園では「貴族」か「魔術師」の家系ではないと差別され、
それ以外のものは「オーディナリー」と呼ばれている。
主人公はそんな「オーディナリー」であり、
入園早々からつっかかってくる輩も多い。

だが、そんな「オーディナリー」でも差別しない存在もいる。
貴族でありながらオーディナリーを差別しない「アメリア」は
オーディナリーでありながら学園へ初めて入園した主人公に興味を持つ。
というところから物語が始まる。

この作品の世界観を説明しつつ、
学園の中にはびこる貴族の一般市民への差別意識も描きつつ、
丁寧にこの作品の基本的な設定を説明しているような印象だ。

魔術師たちもランクワケされており、
特にグランドと呼ばれるランクをもつものは7人しか居ない。
学園に通う生徒たちはそんな七大魔術師たちを目指している。

この世界における「魔術」の理論も裏付けされている。
なろう系作品の場合は魔法は魔法でゲーム的なMP概念だったりが
つきまとうものが多いが、この作品の場合は
世界に漂う物質をプログラミングのようにエンコードし使う。
魔術でありながら理論的なものであることが設定されている。

説明描写こそ多いものの、きちんと「ファンタジー」な
世界を設定しており、その設定を丁寧に見せている印象だ。

筋肉

ただ、そんな真面目の冒頭をすぎると様子がおかしくなる。
「筋肉」だ(笑)
主人公のルームメイトは主人公がオーディナリーだからと
差別しないものの、彼には唯一信じているものがある。
それこそが「筋肉」だ。

初対面で上半身裸で拳を傾け合う姿はなんともシュールさがただよっている。
この作品はどことなくズレている。
淡々とした描写の中に唐突な筋肉描写だったり、
唐突なキャラクターの登場だったりが、妙にシュールなズレを
序盤から感じさせる。

1話の時点で主人公にぶつかるキャラが二人も居たり、
ぶつかったシーンの演出が妙に古かったりと、
作画のクォリティ自体は悪いともいえるのだが、
その作画の悪さがシュールさを加速させている。

なにせツインテールのヒロインが出たかと思えば
「サンシャイン池崎」のパロディを噛ましてくる、
もはや意味不明だ(笑)
丁寧な世界観の描写に唸っていたら筋肉やらサンシャイン池崎やらを
ぶちこんでくるこの作品をどういうスタンスで見ればいいかわからなくさせる。

そんなヒロインのボケを主人公は「飄々」を流す。
キャラクターたちのボケをボケと彼は認識しておらず、
ろくに突っ込まないため、余計にシュールさが増している。

作画が悪いことは本来は欠点なのだが、
このシュールな雰囲気が作画の悪さと妙にマッチしており、
欠点をは言い切れないものがある。

筋肉

2話も筋肉である(笑)
主人公が魔術を使ってるシーンよりも、
肉体美をアピールしてるシーンのほうが多いと言っても過言ではないほど、
序盤は筋肉要素を押しまくっている。

彼が何をしたいのかがいまいち最初はわからない。
環境保全部に入ったかと思えば、園芸部に入ったりしながら、
いろいろな人出会いつつ学園生活を謳歌している。
それ以上でもそれ以下でもない。
倒すべき魔王がいるわけでも、世界を救うわけでもない。

彼はあくまで学園生活を謳歌しようとしているだけだ。
子供の頃から戦争の道具として利用されていた彼が、
普通の青春を謳歌しようとしている。

淡々としたストーリー展開ではあるものの、
そんな淡々としたストーリーをシュールなギャグで彩っており、
独特のテンポで物語が展開されていく。
多くのヒロインを天然でたらしこむ主人公も
わざとやってるんじゃないかと思うほどのジゴロぶりだ。

例えば3話でヒロインがいろいろな服に着替えるシーンが有る。
その際の褒め言葉がこれだ。

「キュート!ハートがチクチクする!」
「クール!クールがホットになってしまうな!」
「まさにローズパッションだな!」

意味不明である(笑)
これをギャグではなく本気でやっているのがこの作品の主人公だ。

サクサク

この作品は無駄に引延なさない。
本来なら1話かけてたっぷりと描いても良いような
内容でさえBパートやAパートだけでサクっと済ませている印象だ。
内容自体はそこまで大したことはない、なろう系ではよくみた展開であり、
そういう展開を冗長に見せずに、サクッと魅せることでテンポ感が生まれている。

例えば4話では1話から主人公に因縁をつけてきた貴族の
おぼっちゃまとの決闘があっという間におわり、
今までの事件の裏側に居た黒幕が出てきて主人公との戦闘になる。
そんな黒幕との戦闘も5話の冒頭であっさりと終わる(笑)

本来は1話かけてもおかしくない内容を3分の1くらいの
尺でサクサクと勧めているからこそ、
不快感やダレが生まれずにこの作品を楽しめる。
言い方は悪いが「ジャンク」なお菓子ような作品だ。

変に気取らず、むしろこの作品のシュールさやギャグ要素を強めつつ、
そこはじっくりと魅せるのに本筋のストーリーと言うべき部分は逆にサクッと見せる。
なろう系作品だからこその「俺つえー」要素はあるものの、
普段、主人公は力を封印しており、いざという時にしか使わない。

力を封印していない状態でもかなり強いものの、
封印を解除したあとの姿の変化や凄さが演出によって
ダイレクトに伝わり、タイトルにもなっている
「冰剣の魔術師」が見ている側に印象がつく。

なにせ主人公がそんな「冰剣の魔術師」の解放するのは4話だ。
それまではほぼ筋肉と肉体による力のみで戦いつつ、4話で本気を出す。
見ている側には主人公が7大魔術師の弟子であることはわかるものの、
わかっているからこそ、この4話までの貯めが生きてくる。

最強の「冰剣の魔術師」ではあるものの、
その力を完璧には使いこなせていない。
最強ではあるものの「デメリット」もきちんとみせることで、
主人公の強さと魅力が強まっている。

主人公の過去も意外と重く、戦争孤児であり、
仲間を失い、師匠を傷つけながら、自身もいつ暴走するかわからない。
そんな生まれだからこそ「普通の学生」としての生活を過ごすために、
日々を送っている。

シリアスとギャグのバランスが程よく、
飽きさせないストーリー構成が生まれている。

訓練

そんな主人公の過去や世界観が序盤から中盤まで語られると、
そこからはヒロインの物語になってくる。
貴族の世界や魔術師の世界に生きている彼女たちの悩みを
主人公が彼女たちと接しながら解決していく。
だが、基本的には筋トレで解決である(笑)

謎の仮面をかぶりヒロインをしごきまくる。
魔術師の世界のはずなのに修行シーンは筋トレという
意味の分からないちぐはぐ感はこの作品らしい魅力がある。
半裸、ランニング姿で筋肉をさらけ出しまくる主人公が
中盤くらいからなかやまきんに君のようにみえてくる。

そうかとおもえば次は女装する。
色々な姿をいきなりみせまくる主人公のシュールな行動に
妙に笑いを誘われてしまう。

過去やトラウマに囚われて引きこもるヒロインを
主人公が優しい言葉をかけて説得する。
本来なら良いシーンのはずなのに主人公はランニング姿である(笑)
敵が潜入したというシーンでさえポージングをしている。
もう意味不明なアニメだ。

ベタ

展開自体はベタだ。特に終盤のヒロインの一人に
いきなり婚約者が現れて…という展開は何番煎じだと思うようなネタだ。
しかし、その裏で主人公たちはメイド喫茶を学園祭でやろうと奮闘している(笑)
ヒロインの一人が婚約について悩んでいるのに、
メイド喫茶関連のストーリーも同時進行しているのがこの作品の珍妙さだ。

終盤も主人公が力を開放して敵と戦ったりするものの、
かなりあっさりしており、
そんなことよりも姉妹の喧嘩だったりを描いており、
最後の最後まで独特の「シュールさ」を含んでいる作品だった。

最終話では2期を匂わせる要素もあり、
このノリのまま2期が描かれるならば期待できる作品かもしれない

総評:魔術?そんなことより筋肉だ!

全体的に見て描かれていることはかなりベタなラノベファンタジーであり、
この作品だからこその特色のある部分は薄く、
しかも、作画のクォリティはあまり高いとはいえず、
メインヒロインの作画でさえ素直に「かわいい」とは言えない
危うさが常に漂っている。

しかし、そういった欠点を覆い隠す「シュールさ」がこの作品にはある。
主人公は朴念仁でありながら無自覚にヒロインたちを謎の語彙力で
褒めまくり、ヒロインたちの悩みをフィジカルで解決していき、
主人公が魔術をつかってるシーンよりも筋肉を見せつけてる
シーンのほうが印象に残る。

ある意味でなろう界における「なかやまきんに君」的なノリがあり、
すべてをその「パワー」で片付ける主人公を
ギャグ的に描きつつ無駄なダレなどを産ませないサクサクとした
テンポで1クール描かれているのが好印象な作品だった。

決して名作とはいえない。駄作とも言えない。
だが、独特の味わいがある作品であり、
1話の時点でのノリと雰囲気がハマれば最後まで楽しめてしまう作品だ。

個人的な感想:パワー!

意外と主人公の過去も重く、俺つえーな主人公ではあるものの、
その力には制限やデメリットが有るという設定や
世界観もきちんと考えられており、下地がしっかりとしている作品だ。
そんな下地でベタなストーリーを展開しつつ、
そこにシュールさを振りまくことででこの作品は構成されている

なんとも独特な作品だ。
近い作品だと「進化の実」や「聖剣使いの禁呪詠唱」などがあり、
そういった作品が好きな方にはおすすめな作品かもしれない。
2期を匂わせまくる要素がラストに出まくっていたが、
果たして2期はあるのだろうか….

「冰剣の魔術師が世界を統べる」は面白い?つまらない?

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