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「魔法少女特殊戦あすか」レビュー

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評価 ★★☆☆☆(38点) 全12話

あらすじ 人間界が異世界 地冥界(ディスアス)の侵攻に遭い、別の異世界 精霊界(フェアト)各国の軍事同盟である精霊環境条約機構の軍事支援を受けて誕生した魔法少女達の活躍により、地冥界を撃退した大戦 ディストニア戦争から3年が経っていた引用- Wikipedia

ここまで腕がぶっ飛ぶアニメが初めてかもしれない

原作は月刊ビッグガンガンで連載中の漫画作品
監督は山本秀世、制作はライデンフィルム

ラストバトルの後


引用元:©深見真・刻夜セイゴ/SQUARE ENIX・「魔法少女特殊戦あすか」製作委員会

1話早々に最終決戦が描かれる。
この世界は異世界であるディスアスから侵略を受けており、
そのディスアスとは別の異世界であるフェアトは人間に協力している。
フェアトの協力のおかげで人間は精霊と契約し、
いわゆる「魔法少女」となって戦う力を得ている。

そんな彼女たちが多くの犠牲を払いつつもディスアスを撃退して
3年が経っていたというところからストーリーが始まる。
本来の魔法少女の場合は物語の始まりから描かれることが多い、
だが、この作品は「戦いの後」から描かれている。

今作における魔法少女は魔法少女とはいっても、昔ながらの魔法少女ではなく、
いわゆる「魔法少女まどか☆マギカ」以降から一気に増えた
ダークかつシリアスなタイプの魔法少女であり、
1話から「人体破損」を含む表現が多く描かれている。

大きな戦いを経て主人公である「あすか」は色々なものを失い、
心にも傷を負い、魔法少女を引退した立場になっている。
決して明るい始まりではなく、雰囲気としては重くシリアスだ。

しかし、引退した彼女ができたばかりの友人を守るために
また魔法少女になり、かつての異世界の敵ではなく、
「同じ人間」と戦う状況へと巻き込まれていく流れは、
今後のストーリーへの期待感を募らせる。

作画


引用元:©深見真・刻夜セイゴ/SQUARE ENIX・「魔法少女特殊戦あすか」製作委員会

ただ、作画はあまり良くない。
原作に寄せたキャラクターデザインやダークな雰囲気を出すためもあるが
キャラクターデザインにはやや癖がある。
作画崩壊はしていないものの、予算をかけていない感がでてしまっており、
デジタルの作画にしては塗りがアナログ作画のような雰囲気になっている。

特に戦闘シーンではそれを如実に感じやすく、
せっかく「肉弾戦」の多いアクションなのにもかかわらず、
作画枚数が少ない事でいまいちアニメーションとしての面白みを出せておらず、
漫画のコマをそのままアニメに持ってきたようなシンプルな動きになっており、
演出の甘さをところどころに感じてしまう。

一歩間違えば作画崩壊しそうな危うさを常にいだきつつ描かれるシーンも多いが、
この作画の低予算感をよく言えばこの作品のダークかつ怪しげな雰囲気を
後押ししており、「グロテスク」なシーンの多い本作品では
この低予算感のおかげで逆にグロさが抑えられてるとも言えなくはない。

ただ、本来、この作品ではそこは抑えてはいけない要素だろう。
大胆に人体が破損し、血が吹き出し、容赦なく突き刺さる刃物や
魔法によって過剰に撃ち込まれる強力な銃弾の数々の迫力までも
抑えられてしまっており、もったいなさを感じる。

容赦ない攻撃や魔法の数々のグロテスクさを
ゾクゾクと感じさせてくれる排他的な魅力というよりは
作画の質の悪さのせいで淡々と見せられている感じが
強まってしまっているのは残念でしか無い。

なぜか無駄に「焼き肉」の作画だけ気合が入っていたのは
謎でしか無い、シリアスなシーンなのに焼き肉作画に力が入りすぎてて
笑ってしまうのは罠だ。

淡々


引用元:©深見真・刻夜セイゴ/SQUARE ENIX・「魔法少女特殊戦あすか」製作委員会

ストーリーもかなり淡々としている。
主人公である「あすか」が魔法少女として戦う事を嫌がっているものの、
友達や仲間のためには仕方なく力を振るう。
その一方で人間同士の争いも過酷になっていき、
裏で暗躍する組織の影も話が進むとちらつき出す。

そんな中で「あすか」の友人が襲われたりさらわれたりするのだが、
そこになにか大きな盛り上がり所がない。
このストーリーの盛り上がりの薄さをグロテスクなシーンでごまかしている。

特に「拷問」シーンはある意味でこの作品の最大の山場だ。
だがアニメ的なグロさというよりは拷問されているキャラを演じている
「高橋李依」さんの演技力によるところが大きく、
アニメーションとして面白みがあるとは言えない。

ストーリー的にはシリアスかつ悲惨なことになってるのに、
「アニメ」としてそれを最大限に表現できていない。
演出の甘さのせいで、淡々とした感じが常に漂ってしまう。
展開の遅さとテンポの悪さも致命的だ。

主人公が再び魔法少女として戦う決意をするまで5話もかかってるのは
1クールのアニメではやや遅い展開と言えるだろう。

ワンパターン


引用元:©深見真・刻夜セイゴ/SQUARE ENIX・「魔法少女特殊戦あすか」製作委員会

序盤をすぎると、そんなグロテスクなシーンもワンパターンだ。
同じようなあっさりとした人体破損描写ばかりで中盤以降は見飽きてしまう。
序盤の盛り上がりところである拷問シーンは
高橋李依さんのおかげで印象に残るグロテスクなシーンだが、
中盤以降のシーンの印象は薄い。

人体破損があっても腕や指がぶっ飛んだりするお決まりのシーンしかなく、
そこに工夫がない。2度も腕がぶっ飛ぶシーンを見せられたら
3度目は流石に飽きる。ある意味で「腕が吹き飛ぶ」というのは
この作品におけるお約束なのかもしれないが、
お約束シーンになるまでの魅力のある要素になっていない。

本来なら刺激的なシーンのはずなのにまるで刺激が無くなってしまっており、
見続けてくうちに麻痺してるだけなのかもしれないが、
序盤のような刺激を中盤以降は感じることができない。

8話では敵を「洗脳」するというシーンがあり、
セリフとしては「マジカルスパンキング」などの言葉の面白さはあるものの
ギャグ的な面白さであり、もう少し「洗脳」という要素にふさわしい
グロテスクなシーンになると期待していたのに期待ハズレで終わってしまう。
結局、序盤の拷問シーンを超えてこない。

終盤


引用元:©深見真・刻夜セイゴ/SQUARE ENIX・「魔法少女特殊戦あすか」製作委員会

ストーリー的には8話辺りからようやく盛り上がってくる。
かつて共に戦った魔法少女が集い、「沖縄」を舞台にした戦いが描かれる。
しかし、せっかく話として盛り上がってくるのに作画の質が更に落ちる。

せっかく大量の敵が街中にあらわれて、魔法少女たちが戦うという
盛り上がる要素満載のシーンなのに止め絵ばかりで何の面白みもない。
10話の戦闘シーンは本当に残念でしかない。
おそらくは11話の作画に気合を入れたかったのだろう、
ただ、その11話のレベルは他のアニメでは普通のレベルだ。

11話の作画のクォリティが1クールに渡って安定して描かれていれば
ずいぶんとこの作品の「圧」が違っただろう。
11話の作画も、ここからさらに1段階上のレベルならば
圧倒された戦闘シーンだったはずだ。

クォリティが1段階低い、もう一歩、要素への踏み込みが足りない。
そんなもどかしさを常に漂わせ、結局は俺たちの戦いはこれからだで
終わってしまうのは残念でしかなかった。

総評:ここから面白くなりそうなのに…


引用元:©深見真・刻夜セイゴ/SQUARE ENIX・「魔法少女特殊戦あすか」製作委員会

全体的に見て要素自体は面白い。
異世界からの侵略を守った魔法少女たちだったが、
人間同士の争いが止まるわけでもなく、友達や仲間を守るため
もう1度魔法少女として戦う。
かつての仲間の影や暗躍する組織、容赦のない人体破損描写など
この作品を構成する要素だけ見れば面白い。

だが、その要素を1クールのアニメと言う媒体で活かしきれていない。
作画の質の悪さ、予算があまりないせいか目立つ止め絵や
作画枚数が少ないことをごまかすためだけの演出は
戦闘シーンの多いこの作品ではやや厳しい。

ある意味で作品の芯ともいうべき「グロテスク」なシーンも、
その作画の悪さのせいでどうにもグロテスクさが弱まってしまっており、
序盤こそインパクトが有ったが中盤以降は刺激的なシーンのはずなのに
同じようなことを繰りしてるだけのシーンも多く、
最初のシーン以上にインパクトのあるシーンにはならない。

何度も吹き飛ばされる腕や、3度の拷問シーンもあるのに、
結局、腕がぶっ飛んでも魔法で治ってしまい、
つらすぎる拷問を受けても記憶を消去することで元通りになったりと
どうにもしっくりとこない。
終盤で「あすか」の腕までもちぎれるが、どうせ治ることがわかってるため
そこに何の衝撃もない。いつものというだけだ。

ストーリー的にも盛り上がりそうで盛り上がらない。
序盤から中盤までの淡々とした展開から終盤でようやく盛り上がるが、
作画がひどくなるせいで、せっかくの盛り上がりも盛り上がりきらない。
おそらくここから原作でも更に盛り上がってくるのだろうと感じる所で
ストーリーが終わってしまっており、色々と中途半端だ。

これが2クールか、もう少し予算があれば違ったかもしれない。
この作品に秘めている要素自体は面白いのに、
それを活かしきれていないもどかしさが常に漂ってしまう。
もったいない、そんな言葉が似合ってしまう作品だった

個人的な感想:残念


引用元:©深見真・刻夜セイゴ/SQUARE ENIX・「魔法少女特殊戦あすか」製作委員会

要素としては好きな要素が多い作品だったが、
結局、その要素の数々を中途半端にしか活かしきれていなかった
もう少し原作ストックが溜まってから
2クールでアニメ化すれば違ったかもしれない。
10年アニメ化が早ければ2クールアニメとして名作になったかもしれない。

最も原作が連載開始したのが2015年なので10年遅かったというのは
ありえない話ではある。
もう少し原作から話をカットしてテンポを上げれば、
原作のストーリー的にもう少し区切りがいい所で終わりそうだっただけに、
この作品に1番足りなかったのは「勢い」だったかもしれない。

売上的に2期は厳しいようだが、
原作の売上が上がれば2期もあるかもしれない。
ストーリーは気になるだけにもう少し巻数が出てから
原作の方も読んでみたいと思います。

「」は面白い?つまらない?

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