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「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」レビュー

2.0
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評価 ★★☆☆☆(35点) 全102分

「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」本編プレビュー

あらすじ 豊かな国「アヴァロニア」に暮らすサーチャー・クレイドは伝説の冒険者として称えられているイェーガー・クレイドの息子。引用- Wikipedia

赤字200億円のポリコレ映画

本作品は、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ製作による
オリジナルアニメ映画作品。
監督はドン・ホール。

冒険

冒頭からわくわくさせてくれる。
二人の親子が冒険するさまを描いており、
雪山の中で困難な道を、時に危険が襲いながら冒険をしている。
そんな冒険譚は「インディージョーンズ」を見ているかのような
ワクワクとした少年心を刺激してくれる。

だが、親子の仲は決して良くはない。
父は冒険を求めるものの、息子は冒険が目的ではなく
調査のほうが好きな少年だ。しかし、そんな彼に父は冒険を押し付けてしまう。
そんな親子の関係を描き、25年の月日が一気に流れる。

息子は大人になり妻を得て子供も生まれている。平和な家庭だ。
だが、そんな平和な家庭は「THEポリコレ」だ。
最近のディズニー映画はどれもポリコレを意識したものになっている。

人種による差別、生まれによる差別、性的指向による差別をなくそうとする
試みは大変素晴らしいものの、それを無理に作品に入れ込むことで
それが最近のディズニー映画の批判の的になってしまっている。

ポリコレ

この作品も「白人の主人公」に「黒人の奥さん」だ。
あたりまえのように主人公はイケメンでもなく、奥さんも美人ではない。
息子もそんな両親後を強く受け継いでおり、
キャラクターデザイン的な「かっこよさ」や「かわいさ」はない。

ここまでなら別に気にしない。そこに「犬」がいる。
平和な家族に犬はつきものだが、そんな犬が「3本足」だ。
冒険の中で足を失ったのか、生まれてからそうなのか、
一切、そのことに対しての説明やシーンはない。

3本足という障害を持っていても当たり前である、
その「当たり前」をこの作品は描いているのはわかるのだが、
やはり犬の足が3本なのはどうしても気になってしまう。
せめて生まれてからそうでしたというようなシーンがあれば
そこまで引っかからないのだが、一切描写がないせいで気になってしまう。

イケメンや美少女が出ないことが悪いことではない。
だが、そういう「美しいもの」に対する憧れは誰しもがある。
美人だからと美男だからと優遇されるのはダメかもしれないが、
昔のディズニー映画にはあった「憧れ」がなくなっているのを
この作品で如実に感じてしまう。

パンド

主人公の祖父は行方不明になってしまっている。
冒頭で描かれた旅の中で彼は「パンド」という
エネルギー物質を見つけ出しており、
そのおかげで国中のエネルギー問題が解決し豊かな生活になっている。

だが、そんなパンドがなぜか急激に枯渇してしまう。
パンドが枯渇してしまえば、それに依存している国は成り立たなくなってしまう。
パンドの問題を解決するために主人公とその息子とかつての仲間は
再び冒険に出るというところから物語が動き出す。

ストーリー自体はかなりシンプルだ。
CGのクォリティも非常に高く、ディズニー映画らしい
ややオーバーな動きがキャラクターの魅力にもつながっていいる。
バンドというエネルギー物質が存在する街並みの描写も独特で、
冒険にいった先の場所の雰囲気も素晴らしいものがある。

脈打つような根っこはゲーミングデバイスのように緑に光っており、
そんな地下には謎の赤い鳥のような生物も存在する。
様々な生物が存在し、未知の植物が存在する地下の世界は
ワクワクできる世界観だ。

そんな地下世界をいくつものトラブルを乗り越えながら
進んでいくさまはワクワクする冒険譚が描かれている。
そんな中で主人公は行方不明だった父と再会する。

未知の生物

地下世界の未知の生物は不思議だ。
ときに人間を襲い、草を焼いて道を切り開こうとすると
別の生物がそんな草を再生する。
まるでなんらかの「意思」をもつかのように植物や生物が行動している。

この不思議な世界感は独特な魅力があり、
特に他の生物になにか命令している「スライム」のような存在は
顔や口があるわけじゃないのに「体」だけで感情を表現しており、
愛嬌があるキャラクターだ。

無害な生物もいれば人間を襲う生物もいる。
この地下世界はなんなのか?パンドはなぜ枯渇しているのか?という
話の謎に対するう期待感は強く、
そんな大量の生物に襲われながらのアクションは
冒険譚の盛り上がりどころにもなっている。

同性愛

この作品の主人公は同性愛者だ。
ただ、それに特に意味はない。
告白できないという悩みがあるだけで、彼の性的指向が
異性なのか同性なのかこの作品においては些細な事でしか無い。

別にキスシーンがあるわけでも告白シーンがあるわけでもない。
序盤でいちゃついいてたりすることはあるものの、
なんというか「義務感」のように同性愛者要素を盛り込みましたという
適当さで盛り込んでいる感じが強い。

ペットの犬が3本足であることと同じでそういう要素を盛り込むという
義務感だけのためだけの設定になってしまっている。
彼が同性愛者だからこその悩みがあるわけでもない。
犬が3本足であることの悩みがあるわけでもない。

同性愛者であることも3本足であることも当たり前であり、
当たり前だからこそ掘り下げない。
その「掘り下げない」モヤモヤが生まれてしまう。

別に主人公が想い人に告白できずにいるということは
この作品においてどうでもいいことだ。
彼が異性愛者だろうが同性愛者だろうが、この作品には特に必要ない。
犬自体も別にキャラとしてストーリーに必要なわけでもない。
無駄に3本足の犬というキャラを存在させている。

別に私は同性愛者に関して否定的な訳では無い。
だが、この作品を見ていると制作側が
「義務」だからその要素を入れているように感じてしまう。
障害や同性愛という要素を適当に扱っているような感覚だ

同性愛に関してはそれが「当たり前」の世界と飲み込めるが、
3本足の犬だけは本当に飲み込めない。

農家か冒険家か…

主人公は冒険者の父をもち、そんな自由すぎる父のせいもあって
彼は今、農家になっている。だが、そんな彼の息子は違う。
祖父の話に憧れ、地下世界にときめき、冒険家になりたいと思う。
父のようにはなりたくない、父の言う通りに農家にはなりたくない。
自分らしく、自分がしたいことをしたい。

「ありのままのー」だ(苦笑)
ここ最近のディズニー映画はもうほとんど、
こういう生まれや家柄や親に縛られずにありのままに
自分らしく生きようというテーマが描かれており、この作品も同じだ。
何度同じようなことをやるんだと思うような
こすり倒されたテーマをまたやっている。

冒険譚部分や世界観は面白いものの、
描かれるテーマはここ最近のディズニー映画のテンプレであり、
流石に飽きてしまう。

真実

終盤で世界の真実が明らかになる。
彼らは「巨大な生き物」の背中に住んでいることが明らかになる。
地下世界は体内そのものであり、地下世界の生物は細胞だ。
はたらく細胞である(苦笑)

マクロな世界かと想ったらミクロの世界だった。
そういう真相が明らかになる展開も
かなりあっさりとしており、あまり衝撃的ではない。
どこか「淡々」としている印象だ。
冒険譚なのに淡々としているせいでどうにも盛り上がりに欠けてしまう。

パンドは心臓につながっており、血液のようなものだ。
使い続ければ彼らが生きている世界である生物ごと死んでしまうかもしれない。
それゆえにメインキャラクターたちはバンドを使わないという選択をとるのだが、
なぜか、それまで味方だった研究チームが
「パンド」を復活させるためにここまでやってきたんだ!と敵対する。

もう少し丁寧に説明すればそんな敵対など起こらないのに、
無駄な敵対シーンも生まれている。
環境か暮らしか、環境問題的なテーマを盛り込もうとしたのかもしれないが、
その当たりもいまいち掘り下げきれていいない。

パンドがなくなれば今の暮らしの豊かさはなくなるはずなのに、
1年足らずで「風力発電」的なものも存在したりと、
かなりご都合主義であっさりと解決してしまった印象だ。

総評:赤字200億円のポリコレ映画

全体的にみて世界観は悪くない作品だった。
ディズニー版はたらく細胞的なミクロの世界観は独創的であり、
個性豊かな地下世界の生物たちと、そんな地下世界の冒険は
ワクワクと少年心を刺激してくれるものだった。

ただ、その一方でそれ以外の要素が掘り下げ不足だ。
親子三代の関係性や、息子の生き方の描写など、
結局はいつもの「ありのままのー」な展開であり、
それ自体もあっさりしている。

この映画はポリコレ映画と批判されることがあるが、
そんなLGBTなどの要素を「当たり前のもの」として描かれている。
当たり前に描かれているのは別にいいのだが、
主人公の息子が異性愛者だろうが同性愛者だろうが別にどうでも良く、
そのシーンの必要性もいまいち感じない。

同じシーンを異性愛者だった場合に置き換えても必要性を感じないシーンだ。
3本の足という障害を持つ犬に関しても、当たり前に描かれており、
それがずっと気になって仕方ない。
犬自体も別に必要性のないキャラクターであり、
色々と配慮して「盛り込みました」的な義務感を強く感じてしまう。

実は彼らが生きている世界が大きな生き物の背中の上でしたという
真実自体は悪くないのだが、色々とポリコレ要素しかり
親子三代の問題しかり、世界観然り、掘り下げ不足な感じが強く、
最後は国にとって重要なエネルギーが無くなってしまったのに
1年足らずであっさりとその問題も解決してしまっている。

作品として練り込み不足を感じる作品だ。
もう1歩掘り下げてほしいのに掘り下げてくれない。
だからこそ、み終わった後の印象も薄い。
別につまらない訳では無いが、面白いとも素直に言えない。
そんな微妙な後味が残ってしまう。

制作費は250億円で興行収入が約50億円と
200億円の赤字を叩き出してしまっているのも納得の映画だ。
確かに映像は美しいし世界観も良い、
だが、ポリコレ要素を抜いたとしてもストーリーや
キャラクターがぱっとしない。

興行収入が伸びなかったのも納得してしまう作品だった。

個人的な感想:うぅーん…

序盤こそワクワク感があったのだが、
序盤をすぎるとそのワクワク感もなくなり、
3本足の犬がずーっと気になって仕方ない作品だった。

同性愛や障害が当たり前の世界であるということはいいのだが、
それにしても3本の足の犬は流石に気になってしまう。
これももしかしたら私の中にある偏見や自覚していない
差別的な感情からくるものなのかもしれないが、
それを正すような気持ちにすらなれず、ずーっと気になってしまった。

ストーリー的にもいまいちぱっとしないまま終わってしまう。
ディズニー版はたらく細胞的な世界観自体は面白いのだが、
それだけの作品だった

「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」は面白い?つまらない?

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