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「100万の命の上に俺は立っている 第二期」レビュー

2.0
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評価 ★★☆☆☆(22点) 全12話

「100万の命の上に俺は立っている」第2シーズンPV

あらすじ 合理的で単独行動が好きな中学3年生四谷友助は、ある日ゲームじみた異世界に転送されたー。引用- Wikipedia

煮崩れ

本作品は「100万の命の上に俺は立っている」の2期。
原作は別冊少年マガジンで連載中の漫画作品。
監督は羽原久美子、制作はMAHO FILM。

実質分割2クール

本作品の1期の評判は最悪と言っていい。
戦闘シーンが多いのにも関わらず作画は基本的に悪く、
それだけならともかく1話は全編いらすとやの絵に差し替えたものを放送したり、
唐突に実写EDになったり、魔法少女パロを3分ほどやったりと、
制作側が面白いと思ってやっていることが全てお門違いな作品だった。

一言で言えば制作側のセンスがずれている作品だった。
2期決定!などという告知も出してはいたものの、
「最初から決まっていた2期」だったことは明らかだ。

グダグダなストーリー構成、演出の悪さの数々、
この作品でやりたいことやみせたいことが制作側のセンスのせいで
霞んでしまっていると言えばわかりやすいのが1期だった。
話の盛り上がりも薄く、多くの視聴者が序盤で視聴そのものを
やめてしまっていた。

そんな作品の2期だ。監督や制作会社の変更もない。
ストーリー的には1期の最終話で
仮想空間だと思っていた世界が「並行世界」であることをしったところから
物語が続く。

それぞれの処世術のある思春期なメインキャラたちが、
並行世界でのデスゲームな状況でどう成長していくのか、
それがこの作品の根幹部分でもある。

人間が嫌いな主人公であり、合理主義を貫いた彼が
並行世界とはいえ「殺人」をした事実をどう受け止め、
どう変化していくのか。

コラボ

1期では「いらすとや」や「100回死んだ猫」とコラボしていたりと
謎の要素があったが混作ではVtuberとコラボしており、
OPに起用され、更に1話の冒頭でちらっと出てきたりもする。
しかし、この点に関してはコラボしているとしらなければ
全く気づかないレベルで気にならない部分だ。

1期はこういったコラボや実写EDなどの「お遊び」要素が
非常に目立っており、その要素が全く面白くなかったが、
今作ではそのお遊びがVtuberとのコラボくらいでほとんどない。
そういった意味では一期から改善されていると言えなくもない

しかし、肝心の作画は1期のクォリティとほぼ変わらない。
分割2クールで最初から予算をくまれていたのだろうと感じるほど
この作品の最大の欠点である「作画」のクォリティは1期と同様に悪い。
作画崩壊とまではいかないものの、純粋にクォリティが低く、
アニメという媒体なのにアニメーションで魅せてくれない。

特に戦闘シーンは顕著であり、戦闘シーンが多い作品なのに
バタ臭い戦闘シーンは見ていてがっかりさせられてしまう。
キャラのバストアップで誤魔化しまくりな動きのない戦闘シーンは
本当に見ていてがっかりしてしまう。

いくら話的に盛り上がっても、
それをアニメーションという媒体で活かしきれていない。
1期と同様に「制作にやる気が無いのでは?」と感じてしまうクォリティだ。

15年

しかし、ストーリーは序盤から興味を惹かれる展開だ。
1期の終盤でゲームの世界だと思っていた世界が並行世界であることを
知った主人公たち。
だからこそ、並行世界と彼らの世界での「時間の流れ」の違いが生きてくる。

1期でクエストを手伝ってくれた異世界の住人である「カハベル」。
時間の流れが違うからこそ異世界では15年の月日があっというまにたっており、
騎士だった彼女は片手を失い、結婚をし、子供を生んでいる。
かつて主人公に思いを寄せていた彼女の「15年の変化」を
きちんと感じさせてくれる。

人間が嫌いで合理主義を掲げる主人公が
知り合いの15年の変化を見て考える。
1期よりも丁寧な心理描写が目立つ。

「好きだった、先におばさんになってごめんね。」

そんな彼女の台詞、恋愛など興味もなかった少年に交わされる口づけ。
人間が嫌いな彼が知る「一期一会」の大切さの描写は素晴らしく、
異世界の人を殺したこともある事実がある反面で、
助けた人の変化を、その後の人生を知ることで
彼の考えにも変化が生まれていく。

グダグダ

しかし、そんな2クール目の始まりの良さとは違い
それ以降の話は1期と同じようなノリだ。
ゲームマスターから与えられたクエストをクリアしていく。
クリアすればこの世界の謎が明らかになっていき、
次のクエストではまた仲間が増える。

基本的に1期から話はこの繰り返しだ。
その繰り返しがもっと早く行われればそこまで気にならないが、
この作品は1期同様グダグダだ。

2期の最初のクエストはオークに支配された島をなんとかする
という話なのだが、主人公はレベル上げのために淡々と農業をし料理をする。
その過程で主人公が単純作業のおともにラジオや音楽的なものを
異世界の村人に求めると、新キャラの村人2人が歌い出す謎のパートまである。

メインのストーリーを進めずにこういった淡々と話を積み上げたり、
脇道にそれるようなシーンが多く、その1シーン1シーンが間延びしている。
1期にあった無駄な回想シーンがなくなったため、
その分、テンポは上がっているものの、
それでもまだテンポが悪いと感じてしまう。

そんなテンポの悪さの中でも「悪くない」と感じる部分がある。
異世界に来た勇者である主人公たちは基本的に死んでも生き返る事ができる。
しかし、異世界の人達は違う。
これまではゲームの世界の住人と認識していた主人公たちだが、
そうでないことをしっている。

限りある命を持つ人間、そんな命を「どう」使うのか。
何度も生き返られるメインキャラたちとは違い、
たった1つしかない命を異世界人たちが掛けてでも
何かをなそうとする姿がきちんと描かれている。

勇者といわれ、守るはずだったものを守れない。
そんな「現実」をメインキャラたちは目にすることで、
自分自身の命の掛け方、命の価値を見つめ直していく。

「馬鹿はひとり残らず死ねばいい、
本当は人間は価値が低い順に死ねばいいんだ」

1期ではそう吐き捨てた主人公の「命の価値観」と
自分自身の無力さを噛み締めていく。
ときには異世界で人間以外の種族も殺し、犠牲にし、
「合理主義」な行動をしながらも心の弱さを実感していく。

東京なんて滅びればいいと思っていた主人公が、
クエストの中で異世界人と関わることで考えを少しずつ変えていく。
このストーリーの流れは決して悪くない。

無慈悲なまでに失われる異世界人の命、
「100万の命の上にたっている」というタイトルが
話しが進めば進むほど生きてくる。

尺の使い方

1期が原作で言えば3巻の中盤までの内容であり、
1巻あたり4話以上使っていることになる。
こんな尺の使い方ではグダグダになるのは当たり前といえば当たり前だ。

2期は5周目、そして6周目のクエストがアニメになっている。
しかしながら、この6周目のクエストは原作とは違い
IFストーリーを描いた小説が元になっている。
本来、6周目のクエストは原作で言えば6巻~10巻までの内容だが、
そこがIFストーリーの小説1巻分で片付けられているのが2期だ。

結果的に3巻の中盤から6巻序盤までの約3冊分プラス小説1巻が
アニメになっているものの、
1期と同じようにグダグダなストーリー構成になってしまっている。

6巻からの内容が原作では「麻薬」が絡む話であり、
原作者さんのツイッターでは麻薬ネタがNGだったかららしいのだが、
そのせいで1クールという尺をつかいあましている。

明らかに20話あたりから作画の質も更に落ちてしまっており、
せっかく話が面白くなってきても、
テンポの悪さと作画の悪さが邪魔をしてしまっている作品だった。

総評:制作会社ガチャに外れてしまった結果

全体的に見て最初から全24話で現作の10巻までの内容をアニメ化していれば、
1巻あたり2話~3話とテンポよくこの作品が描かれたかも知れない。
ところどころ「面白い」と感じる作品なだけに、
この尺の使い方とストーリー構成の悪さ、そして演出と
作画の悪さが作品本来のおもしろさを殺しまくっている印象だ。

1期の段階では尺稼ぎのような回想やシーンも多かったものの、
2期では回想シーンもほぼなく、話題性だけのためのシーンや要素もない。
そういった意味では2期から作品本来のおもしろさが見えてくる部分があり、
「合理主義」な主人公が自らの弱さを自覚し、
少しずつではあるものの仲間を信頼し、人を信じようとしている展開自体は悪くない。

しかし、テンポが悪くグダグダでグズグズになっているシーンも多く、
まるで煮すぎたじゃがいものごとく、作品全体が煮崩れしている。
1期よりもマシではあるものの、2期でも欠点は目立ち、
1期と2期通してみても色々と厳しい作品だ。

話自体は少しずつではあるものの進んでおり、
あと1クールないし2クールあれば物語も完結しそうなだけに、
「麻薬ネタ」の問題はあったかも知れないが、
アニオリ(if小説)ではなく原作通りにやっていれば
「3期」の可能性もあっただけに残念なところだ。

原作からの問題点もあるのかも知れないが、
それよりも「アニメ」という媒体での表現が最悪といってもいい作品だ。
アニメ制作会社ガチャという言葉は最近、たまによく聞く言葉ではあるが、
この作品はまさにアニメ制作会社ガチャにはずれてしまっている作品だ。

個人的な感想:1期よりも…

ストーリーが進んだおかげもあって2期からの
ストーリーは楽しめた部分があったが、それ以外が本当にひどい作品だった。
監督もこの作品が初監督作品であり、
予算も少なかったのかも知れないが、もう少し演出や作画がよければ
見れた部分もあっただけに残念な作品だった。

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出演声優 上村祐翔, 久保田梨沙, 和氣あず未

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  1. BIG-Oは神アニメ より:

    私はとても面白かった。原作のマンガを買う気になった。声優がベテラン揃いだったのも良い。あと一期のedの曲が大変気に入った。

  2. 立見尚文 より:

    まさにアニメ制作会社ガチャに負けたアニメ。原作は・・最初はちょっとおかしな主人公なんだが、どこぞで言われたように田舎者が東京に来たから陰キャになったのではなく、故郷の秘密基地のある山を東京の不動産・ゼネコンに買われて、良質な砂利を取るために更地にされたのを恨んで闇落ち。そして異世界でも仲間は見捨てて単独行動。レベル上げの効率重視と視聴者から共感を得難いキャラに尖っていく。

    原作でも、どういう経緯で東京に引っ越したかの描写は無いんだが俺は、あの山を潰したのは主人公の父親の務めている(経営している)会社だと思う

    人間不信・・というか全人類を敵に回して・・「古い価値観、欲望にまみれた自分勝手な屑どもは淘汰してやる」と言う中二病じみた歪んだ欲望を主人公は持っている。

    それを異世界でのクエストなどで命の価値の大切さ、仲間に頼ることの重要性を少しずつ自覚していき、人類を滅ぼすなんて夢はやはり間違っていたと主人公を更生させる作品だと思う。

    ちょうど原作では7週目のクエストが終了し、8週目では歌手志望のJDが仲間に加わった。彼女は戦闘ではコボルトに瞬殺されるほど弱いが、歌というスキルでお金を稼いだり、そのお金で難民キャンプの人たちに食事を焚きだしたりする。残念ながら食料の絶対量が足りないので暴動になりかけるが、そこで再び異世界の弦楽器を使って 歌で暴動寸前の難民を落ち着かせる。その姿に主人公は自分は完敗だなと自覚する。

    まあ、アニメの3期は絶望的だと思うが俺は個人的にはオッドタクシーや無職転生・スライムよりも、この俺100と言う殆どの人に見捨てられた作品の今後が気になります。