サスペンス

「[C] The Money of Soul and Possibility Control」レビュー

サスペンス
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評価/★★★★☆(60点)
あらすじ
近未来の日本。密かに混じるミダスマネーによって日本経済は回復しつつあったが、その恩恵は国民に反映されず、不可思議な事件や自殺は次々と起こり、不安な時代が続いていた。 大学生・余賀公麿は、突然現れた金融街の使者・真坂木に「未来を担保に、ご融資させていただきます」と言われ、多額の金を銀行口座に振り込まれる。公麿はその金に何気なく手をつけるが、そこで公麿を待っていたのは金融街にて自身と周りの人々の未来を代償にしたミダスマネーの奪い合い『ディール』を強制される『アントレプレナー』としての道だった。

今を生きるために、未来担保にしませんか?

本作はノイタミナ枠で放映されたアニメオリジナル作品
制作は竜の子プロダクション。
主人公はバイトを掛け持ちしている大学生、彼は金のない大学生だった
そんな彼のもとに奇術師のような格好をしたミダス銀行の銀行員が現れ
「もっと効率良くお金を稼ぎたいと思いませんか?」と言われる
彼は未来を担保にお金を貸すから金融街で運営してほしいと彼に問いかける
翌日、口座を調べると50万もの金が振り込まれていた
という所からストーリーは始まる

この作品は「金」を題材にしたアニメ作品だ
未来を担保に無条件で多額の融資するミダス銀行、
しかし、そのミダス銀行が融資する金はダスマネーと呼ばれ
知らない人にとっては普通のお金、しかし知っている人には黒い紙幣に見える。

一度、ミダス銀行による融資を受けた場合、
融資を受けた者同士がミダスマネーを奪い合う「ディール」と呼ばれる
自らの金を使った勝負を定期的にしなければならない。

ジャンルで言えば・・・東のエデンが雰囲気としては近いかもしれない。
序盤は現代の日本の経済や個人個人が抱える金の悩みを描きつつ、
同時に仮想空間のような金融街でのディールを描く。

このディールが序盤はルールがわかりづらく、ストーリー内での説明も少ない。
要は自分が持っているお金を使い魔法を出す。
剣だったり弾だったりと、この攻撃を相手に当てると自分の利益になり、
攻撃があたった相手は損益になる。

他にも株だのなんどのと若干細かいルールもあるが、 戦闘シーンが激しく描かれており、アクションシーンも悪くはないので
明確にルールがわからなくても「雰囲気」でストーリーにはついていけた
詳しく知りたい方はwikiや公式サイトを見るといいだろう

基本的に戦闘はアセットと呼ばれるまるでデジモンのようなパートナーと共に行われる
アセットはパートナーに攻撃が当たらないようにパートナーを守り、
相手のパートナーを自らのパートナーの命令と金を使い攻撃し、
相手のパートナーに直接攻撃があたるようにする。

このアセットは能力差があり、同じ10万を使った場合でも能力が異なる。
このせいで強いアセットを使っている方が有利になる場合が多く、
せっかく「金」を扱ったアニメなのに、こういったデジモンやポケモンのような
個体差が影響する戦闘でお金が動くというのが、うまく噛み合っていない。

ただ基本的にアセットが必殺技を使ってディールの戦闘を終わらせるパターンが多く、
勝敗の勝ち負けをわかりやすいようにこのような戦闘方法にしたのかもしれない
尺的にも1クールしかなく、本格的な頭脳戦や駆け引きのある戦闘であれば
明らかに尺不足になる可能性もあった。
だが、同時にもう少し「金融」を扱ったアニメらしく、
駆け引きのようなものが見たかったという気持ちが残ってしまう。

序盤、主人公は最初のディールに勝利したことにより
「3000万」もの大金を手にする。
だが、主人公は別にバイトを辞めるわけでもなく散財するわけでもなく、
昼飯の素うどんが「とんかつ定食+ラーメン」に変わったくらいだ
普通ならば3000万手にしたら、もう少し変わると思うのだが・・・

特に序盤は主人公の目的や主人公の行動に感情移入することができない。
ストーリー的にも淡々と進む印象が強く、
主人公がカネを手に入れたことによりもっと変わってしまうシーンなどがあれば、
視聴者的にも感情移入ができ、のちの展開にイカせたのではないかと思うのだが
この主人公は金に対して常に冷静だ。

原因は主人公の家庭環境による所が大きい。
親が事業に失敗し両親が亡くなったことが原因で、普通に生活することを望んでいる
だからこそ彼は大金を手にしても、ちょっと食生活が豪華になるくらいで、
根本的にディールを辞めたがっている、

主人公としてそういう方向性を貫く彼もまた魅力ではあるのだが、
カネに汚い主人公のほうが視聴者の感情移入を煽ることはできただろう
いまいち終盤間際まで彼に感情移入できない。

しかしながら、この作品の本筋のあるストーリーはかなり挑戦的かつ深い。
この物語の根幹にあるミダスマネーは未来を担保にしている、
破産すれば未来を失うことになる。
しかし、未来を失うことになってもディールに挑む人にとっては現在を救うことになる。

あるものは生活費のため、あるものは会社のため、あるものは家族のため・・・
様々な事情を抱え金に困って現在を失いそうな人たちが未来を失う覚悟をしディールを挑む。
この作品はその根幹を描くためにキャラを作り世界観を作り
1クールという尺に収めるためのアセットによるディールの戦闘描写にしてある。

終盤では日本にミダスマネーがどんどんと溢れ出す、
日本で未来を失った人間が増えだし、主人公の目の前で子供が消えるシーンなども描写される
子供は未来の象徴であり、金のかかる存在だ。
もし、子供の両親がミダスマネーを使いディールに負ければ子供も失われる

この描写はギリギリなリアルだ。
日本でも現在、国債という未来のお金=ミダスマネーをどんどんと発行し毎年かさんでいる。
そして未来が見えない国となれば、破綻する。
それをミダスマネーという言葉や、アセットなどのファンタジー要素で濁してはいるものの
現在の世界経済を濁しつつも実は本質で描いている

それゆえに1クールではわかりづらい部分も多く出てしまい、
用語解説や詳しいルールの説明などがアニメ内ではなくwikiや
公式サイト頼りになってしまっている点は残念だ、
濁した結果としてストーリーの流れはわかるが、きちんとした内容は理解出来ない
という人が多発してしまった。

最終話まで見ても結果的にどうなったのかがわかりづらい部分があり、
各キャラが今後がどうなったのかなども、描かれていないのも
1つの作品を「見終わった感」の少ないものになってしまった。

全体的に見てテーマは斬新だ。
ただ、 描きたいテーマや伝えたい本質が作品の表面上に出すぎてしまっており、
そこにキャラクターの魅力や心理描写が感じにくく、
ストーリー的にも尺が短いためわかりづらい部分や勢いでごまかしている部分が多かった。
また逆にわかりづらい部分を知ろうとして詳しく解説を見ると
もう一歩金融や経済に踏み込んだ描写が欲しかったと感じる部分も多い

しかしながら、ノイタミナ枠の挑戦的な作品はいい刺激だ。
経済や金融という、描くのは難しい題材をアニメとしてここまである程度まとめたものは少ない。
他のアニメとは違う、何かの模倣ではないオリジナルアニメは最近では少なく
こういった作品を作り続けて欲しいと感じる作品ではある。
意欲作ではあるのだが、その意欲が前に出過ぎていて細かい部分であらが出てしまった作品だ

ただ、独特なセンスを感じる作画的な魅力は大きく、終盤の戦闘シーンの描写は迫力があり
1クールという尺の中で「金融」というのをよく描けている作品だ。

細かい部分や金融描写で気になってしまう人もいるとは思うが、
面白くない、微妙だと感じても視聴者側が自分のこの作品に対する意見や経済、金融に対する
私見を書きたくなる、言いたくなる作品だ。
良い意味でも悪い意味も刺激的な作品といえるだろう。

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  1. 匿名 より:

     このアニメは、設定がちょっとむずかしかったから、なんともいえないんですが・・・。ストーリーの斬新さが評価されていて、嬉しかったです。
     個人的には、真坂木が好きでした。声とか、動作がツボで・・・(笑)ちょっとつかみどころのない喰えないキャラに惹かれるんですよね(´∀`)

  2. 匿名 より:

    ツッコミ所満載のアニメだった
    アイデアはいいが金融のことやストーリーはいまいち
    結局在り来たりな展開で終了で微妙だった

  3. 匿名 より:

    とても大好きな作品です
    ディール(バトル)を行う人々も大学教授やら青年実業家やら多様で
    彼らの内面や事情を知った主人公公麿の葛藤などがよく描かれていました
    個人的には公麿とパートナー真朱の可愛らしい関係性が最高だと思いますw

  4. 匿名 より:

    私はこの作品を中学時代に生タイムで見てました。そして初めて心奪われたアニメでもあり高校受験にて私をアニメーターになろう決めさせてくれたとても思い入れのある作品です。中学時代のころの私でわ理解はできない内容が一部ありましたがそれでも心を打たれました!!今年からアニメを見る側から作る側へなるための勉強が始まります!!皆さんから評価されるような作品をがんばって作っていきたいので応援よろしくお願いします!!

  5. 匿名 より:

    私にとって非常に好きな作品で、興味深く記事を拝見しました。
    「金融」を扱う作品といえば、この作品の数年前にNHKで「ハゲタカ」というドラマが有りましたよね。私はそちらも好きだったので、この作品が放映された当初は、管理人さんがおっしゃっているように「ディール」を通して「ハゲタカ」のような駆け引き、頭脳戦が行われるのかと思っていました。
    実際には、「ディール」のルールをすべて明かさなかったり、マネーゲームに焦点を当てず、作中での金の流れはおおまかな説明で済ませたりと、この作品では金融やマネーゲームそのものについて描くのではなく、それらをあくまで舞台装置として使うことで、メインとなるテーマを描いていましたが、結果的にはそれらが却ってそれぞれの登場人物の思想、目的、「未来と現在の選択」に関するアプローチが浮き彫りになり、よりはっきりとメインテーマが伝わったので、個人的にはこの作品の作り方は理にかなっていたのかなと思います。

    最初は覚めていた主人公が成長する様や、一貫して描かれていた「未来と現在の選択」などについては考えさせられるところもあり、なにより戸松さんの演じる真朱が可愛くて、本当に好きな作品です。