言葉の海に沈みたいのに腰までしか浸かれない「舟を編む」レビュー

2017年8月7日

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評価 ★★★☆☆(58点)全11話

あらすじ 出版社・玄武書房では中型国語辞典『大渡海』の刊行計画を進めていた。営業部員の馬締光也は、定年を間近に控えて後継者を探していた辞書編集部のベテラン編集者・荒木に引き抜かれ、辞書編集部に異動することになる引用 – Wikipedia

言葉の海に沈みたいのに腰までしか浸かれない

原作は小説な本作品。
2013年には実写映画化もされており、2016年にアニメ化された。
監督は黒柳トシマサ、制作はZEXCS、ノイタミナ枠で放送された

見出して感じるのは「ノイタミナ」らしさだろう。
このノイタミナ枠はアニメではあるものの、普通のアニメと違って
どちらかというと実写映画や実写ドラマで出来そうな内容の作品を
アニメにして放送している枠であり、
いわゆる普通のアニメオタクが見ないような一般受けしやすい内容の作品が多い。

ただ最近では甲鉄城のカバネリや乱歩奇譚、冴えない彼女の育てかたなど
アニメっぽいアニメのキャラデザの作品も多く、
久しぶりに「あ、ノイタミナっぽい」というのをスグに感じ取られる
等身が高いアニメアニメしていないキャラクターデザインや
岡崎体育が歌うOPも「オシャレ」な演出がされていたりと、
一般受けを意識した要素を要所要所に感じ取られる。

更に台詞回し。この作品は「辞書」が題材になっている作品だ。
そんな作品の中でのセリフの応酬がやや独特というよりも
言葉として難しいものを使っている。

例えば辞書でエッチな言葉を調べるというセリフなのだが、
「下がかった言葉を引きまくった」と、
下ネタやエッチな言葉と言うような表現ではなく「下がかった」という
言葉遣いになっている。

意味としては通じるがそういった言葉をあえてセリフに使うことは稀だ。
単純に伝わりにくい言葉をセリフとして使うのは見る側にとっては、
親切とは言い難く人によっては「むずいかしい」「わかりづらい」といった
マイナスな感情を生む原因ともなる。

しかし、この作品は「辞書」を扱った作品だ。
言葉の1つ1つの意味を調べるものを作り上げる人たちを描いた
この作品では「言葉」の表現や意味合いは大事なものだ。
だからこそ、普通では伝わりづらい言葉を登場人物も使う。
辞書というものに関わっているキャラクターだからこそ自然だ。
難しい言葉を使ったセリフもこの作品の世界観を構築するものの1つだ

この作品のセリフは面白い。
遠回しかつ回りくどい台詞が非常に多いのだが、
その回りくどく遠回しな表現がたまらない。
例えば主人公が「君は右を説明しろと言われたらどうする?」と問われる。
そんな問いに対し

「それは方向としての右ですか?それとも思想としての?」

なんて返してくる(笑)
1つ1つの言葉の意味と表現を考え返答する主人公は、
正直めんどくさいタイプの主人公なのだが、
そのめんどくさい主人公の思考とセリフがこの作品の
「辞書を作る」という主軸にピッタシだ。

ただこういった台詞回しは耳で「聞く」よりも文章で「読む」ほうが
面白かったのでは?と感じるポイントも有る。
アニメで見ることによる聞くだけ、見るだけでいい手軽さは有るが、
文章で同じ状況を読んで楽しんでみたいと思うシーンが多々ある。

それは演出不足という面でも大きい。
ストーリーの主軸は「辞書を作る」ということであり、
恋愛事情などももちろん描かれているが、それはあくまで補助的なものであり、
辞書を作ると言う作業を淡々と描いている。

序盤は辞書を作るという新鮮さなどから面白さもきちんと感じられるが
中盤からこの坦々としたストーリーを淡々と見てしまっている感じが強く、
絵的な派手さ、アニメーションとのしての迫力や魅力は薄く、
基本的に「会話劇」であるためアニメーションとのして
薄味になってしまうのは仕方ないのだが絵としては地味だ

これは「シャフト」あたりの癖のある演出で彩るならば
所々でアニメーションとのしての面白さを感じれたかもしれないが、
普段割りとお色気要素の多いアニメを作っているZEXCSでは荷が重く、
監督もこの作品画に作品目の監督だ。
手堅く作ってはいるのだが手堅く過ぎて遊び心が足りない

ストーリーもびっくりするほど時系列の進みが早い。
1話の中であっさりと数ヶ月たって、季節もあっさり巡っていく。
特に7話から8話の時系列は驚くほどの変化だ、
なにせ10年も一気に時間が経過している(苦笑)

ちょっとこの時間の経過の早さは受け入れがたいものがあり、
その間に色々なヒューマンドラマなどがあっただろうに語られない。
1つの辞書を作るのにそれだけの時間がかかるということは分かるのだが、
その時間の重みを感じないほど時間の経過があっさりとしていて唐突で、
物語として14年という時間が描かれては居るが、
1クール全11話という構成の中でその14年の重みをあまり感じなかった。

キャラクターもストーリーも悪くない。
だが、その1つ1つの掘り下げや描写が甘く、
どんどんと淡々とストーリーが進んでしまう感じが、
「もっと面白いはずなのに」というもったいなさを感じてしまった

総評

1クール全11話というストーリー構成が微妙だった。
キャラクターも愛着がわき、辞書づくりという主軸をきっちりと描き、
辞書づくりという知らない世界の話は素直に面白い。
だが、その面白さをきっちりと見せるだけのストーリー構成ができておらず、
盛り上がり所やアニメーションとしての面白さを感じる部分が少なく、
最初から最後まで淡々と進めすぎてしまった感じが強い。

これが実写映画のように2時間という尺で一気に見せてしまえば気にならないだろう。
原作のように一冊の本として読めば気にならないだろう。
だが、1クール全11話というストーリー構成で1つ1つの話の区切りが甘く、
あっという間に過ぎていく時間に徐々についていけなくなり、
過ぎていく時間の割には盛り上がり所や見所が少なくなってしまっている。

1話1話の中での盛り上がり所というのがない。
物語全体としてはいくつかの山場があるが、
その山場も大げさに描かれるわけではない。
だからこそ地味な印象が悪い意味でついてしまい、
一気に見る人はそこまで気にならないかもしれないが、
1週間毎に1話だと話の引きが弱い。

せっかくストーリーが面白いのにそれをアニメとして昇華しきれていない。
このもどかしさが本当に強く常に漂ってしまう。
特にアニメオリジナルの要素らしい「じしょたんず」は余計だ。
せっかくの作品の雰囲気を壊しており、
ED後のCパートとかでやるならば分かるが話の途中で入れられると
腰を折られたような、尺稼ぎのようにも感じてしまう。

面白そうなエピソードはたくさんある。
例えば実写映画では「ら抜き言葉」などについても言及しているようだが、
アニメではそういったものはない。
原作にあってアニメにはなかった話も結構あるようで、
「じしょたんず」をやるくらいならもっとこういう細かい話も
きちんと取り入れて描いてほしかったと感じてしまう。

個人的な感想

個人的には残念な作品だった。
序盤は非常に期待感が強かったのだが中盤以降の
ストーリー構成の甘さや時系列の速さなど気になる部分が多く出てしまい、
素直に楽しみきれなかった。
原作の良さをアニメで活かしきれていない、1アニメ好きとして
歯痒い思いを強く感じてしまう作品だった。

今から実写映画を見てみます(苦笑)

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