新海誠という名の変態「君の名は。」レビュー

評価★★★★☆(76点)全107分

あらすじ 東京の四ツ谷に暮らす男子高校生・立花瀧は、ある朝、目を覚ますと岐阜県飛騨地方の山奥にある糸守町に住む女子高生・宮水三葉になっており、逆に三葉は瀧になっていた。2人とも「奇妙な夢」だと思いながら、知らない誰かの一日を過ごす。引用 – Wikipedia


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新海誠という名の変態

本作品はアニメオリジナル映画作品。
監督は新海誠、制作は制作会社 コミックス・ウェーブ・フィルム。
2016年に大ヒットし、興行収入250億円というとんでもない売上をあげた。

見出して感じるのは驚くほどに書きこまれた背景だろう。
新海誠監督の前作「言の葉の庭」も背景描写と雨の描写が素晴らしかったが、
それ以上に細かい背景描写のこだわりはもはや病的と言っても過言ではない。
ほんの1シーン、時間としては1秒にも満たないようなシーンの背景でさえ
細かすぎる描写をすることで作品の世界観に一気に入り込ませる。
もはや新海誠の意地みたいなものすら感じるこだわりだ。

新海誠と言う監督は変態である。
これは新海誠作品を見たことが有る人ならば共通認識だと思うが、
前作の言の葉の庭における「年上のお姉さんと年下の男の子」という関係性や、
「足」にこだわりまくった描写は強いフェチズムと変態性がなければ
描けないものだ。
その変態性がこの作品でも生きており、それは背景描写にまで現れている。

そしてエロ(笑)
この作品は「入れ替わり」を描いており、
いわゆるTS、性転換的な要素を含んでいる。
主人公は朝目が覚めると自分が地方の街で暮らす女子高生になっており、
女子高生は都会で暮らす男子高校生になっているという入れ替わりが起こる。

健全な男子ならば女子の体になった瞬間にすること=胸を揉むという
どストレートなエロスが冒頭で描かれる。
自分の目線から入れ替わった女子の胸を上から覗き谷間を確認し、自分の胸を揉む。
逆のパターンもきっちり描かれる。
女子高生が男子高校生の体になって股間の違和感に気づき触る(笑)

見た目は男子高校生だが中身は女子高生
見た目は女子高生だが中身は男子高生。
どちらのパターンでも反応の可愛らしさや素直なエロが描かれており、
男子高生を「神木隆之介」が演じることで中身が女の子な男子高生の演技に
全く違和感がないところか滅茶苦茶可愛く見えてしまう。

セクシー要素の代表とも言えるのが「口噛み酒」だろう。
米をかんで吐き出したものを発酵させて作る世界最古の酒だ。
その描写を生々しく描く(苦笑)
もはやフェチを超えてマニアなレベルのシーンの描写だ。

随所随所に新海誠監督の変態性が盛り込まれており、
見た目は健全なアニメ映画なのだが、
そこかしこに変態性を感じさせることでニヤニヤしながら見てしまう。

ストーリーも徐々に面白くなっていく。
何度も入れ替わりを経験する中で、それが夢ではなく現実だと気づく。
しっかりと序盤でそこまでの過程を描いたあとに、
その序盤が終わると有名にもなった「あの曲」が流れる中で
ダイジェストチックに軽くストーリーをまとめる。

もっとこの部分をじっくり描くことも出来たはずだ、
だが敢えてダイジェストチックに何度も行われる入れ替わり描くことで、
TVアニメなら2,3話書けて描きそうな内容を凝縮して描いており、
互いの入れ替わりの中でのノートやスマホに記載した中でのメモ書きでの
会話を見せることで、一気にストーリーの盛り上がり、
キャラクターへの愛着も深めることができる。

だからこそ後半のストーリーが盛り上がってくる
ベタベタな入れ替わりが急に途切れ、電話やメールも通じない。
夢の中で入れ替わっていた彼女は確かに存在したはずなのに、
彼女が暮らしていた街は災害で3年前に無くなってしまっており、
彼女が残したメモも消えていく。

青春ものかと思わせといて急激にSF展開へと変わっていく流れは、
1時間半という尺をダレさせず飽きさせないストーリー構成になっており、
やや唐突な展開な感じはあるものの、
言い方を変えればドラマチックにストーリーが展開していく。

ただ、この後半のストーリーはやや賛否が別れる所だろう。
主人公がどうしてヒロインを好きになったのか、
逆にヒロインがどうして主人公を好きになったのかという
恋愛のきっかけのようなものが分かりづらく、
SF的ストーリー展開が割りと怒涛な感じだ。

テンポが早いだけに「勢い」で誤魔化している感じも強く、
書きこまれた背景による作画の雰囲気と前半のキャラクター描写があったからこそ、
この後半のやや強引ともご都合主義ともいえる展開についていけるが、
深く考え出すとしっくりと来ない部分もあり、
後半にこのSFストーリーを詰め込んでしまったために分かりづらい部分もある。

特にあっさりと入れ替わっていることをヒロインの友人が信じるところなど
やや説得力に欠けると思ってしまうのだが、
そこをごちゃごちゃを説得力のシーンを描写するのではなく、
勢いのままに勧めている。

ただ、そういった細かい部分が気になってしまうのは
私が「オタク」だからであり、それ以外の普通の人ならば
こんな細かい部分は気にならず勢いのままに怒涛の展開を楽しめるだろう。

そして新海誠作品らしくないラスト(笑)
これほどまで清々しい分かりやすいハッピーエンドは
今までの新海誠監督作品ではありえず、
良い意味でも悪い意味でも「一般受け」を狙った作品だと感じさせるラストだ。

全体的に見て、これまで新海誠監督というのは
アニメオタクやアニメマニアに受ける作品を作ってきた人だ。
そんな人が普段アニメを見ない人にもう受け入れやすいようにわかりやすく、
テンポよく、ストレートに描いた事で多くの人に受け入れられた作品になり、
ここまでの大ヒットしたのだろう。

今までの新海誠ならもっと掘り下げたり、もっと台詞は少ないはずだ。
キャラクター同士の何とも言えない空気感や間でキャラの感情を察させるような
そんな演出はこの作品にはない。
物凄いわかりやすくキャラクターが感情のままに動き、
起承転結のスッキリとしたストーリーが描かれている。

それだけに今までの新海誠監督作品を好きな人にとっては
しっくりと来ない部分もあるかもしれない。
わかりやすく言うと今までの新海誠という人は
ミュージシャンで言えばシングル曲の「B面」ばかりを作ってきたような人だ。

そのミュージシャンのファンならば表題曲のA面よりもB面のほうが
良いという人も多いはずだ。
そんなB面ばかり作っていた人がA面曲を作ったことで
しっかりと一般受けする楽曲になったというような感覚の作品だ。

新海誠らしさを感じる部分は多い。
特にヒロインが主人公を探しに東京に来るシーンでの
「時間のすれ違い」など憎い演出であり、
単純な入れ替わりではなく「時間のズレ」があることによる切なさや
会えないもどかしさなどは新海誠監督らしい部分だ。

ただ、普段アニメを見ない人にも受け入れやすいようなテンポと
分かりやすい感情のままのセリフでストーリーを進めており、
RADWINPSの曲を頻繁に入れることで分かりやすく
盛り上がるような雰囲気作りをしている。

個人的にいえば「言の葉の庭」のほうが好きだった。
この作品ももちろん面白いのだが、オタク目線で見てしまうと
一般受けを意識した要素が非常に多く、
何度も見たいと思うような作品というよりは一回見れば十分な感じの作品だ。

いつもの新海誠監督のキャラクター同士の空気感もあまり感じず、
シンプルにキャラクターの感情をぶつけるのは悪くはないのだが、
新海誠監督らしい作品を求めると肩透かしを食う部分も大きい。

ただ私はしみじみと思ってしまった。
新海誠監督はことごとく「年上のお姉さん」が好きなんだなと。
主人公が最初に好意を抱いているのはバイト先のキレイなお姉さんだ。
そしてヒロインは入れ替わってるときは同級生なのだが、
再会したときは「年上のお姉さん」になっている。

新海誠監督の過去の作品も年上のお姉さんが多く出てくる。
その気持ちは非常にわかるが、一般受けを狙ってもこの部分だけは
絶対に引き下がらない新海誠監督のこだわりと言う名の変態ぶりに
思わず笑ってしまった(笑)

色々と書いてしまったがスッキリと楽しめる完成度の高い作品だ。
人気になるのも分かる丁寧な作り方をしており、
1度は見て損はない作品だろう。

新海誠監督の次回作はどうなるのだろうか。
どういった方向性に切り替わるのか、同じ路線で突き進むのか。
次回作が楽しみで仕方がない。