ファンタジー

可愛いだけじゃ駄目ですよ「My Melody&Kuromi」アニメレビュー

My Melody & Kuromi ファンタジー
画像引用元:(C)’25 SANRIO 著作(株)サンリオ
スポンサーリンク

評価 ★★★★☆(70点) 全12話

『My Melody & Kuromi』予告編 – Netflix

あらすじ マリーランドでケーキ屋を開いたマイメロディ。森でハートに出会ってから、マイメロディの周りでは不思議なことが起こるようになっていた。引用- Wikipedia

可愛いだけじゃ駄目ですよ

本作品はNetflixアニメ作品。
監督はPUIPUIモルカーでおなじみの見里朝希。
タイトルで分かる通りサンリオの人気キャラである
マイメロとクロミが主人公の物語だ。

もっふもふ

見里監督といえばPUIPUIモルカーだ。
羊毛フェルトで作られたモルカーによるストップモーションアニメは
とてつもない人気になり話題性も凄まじかった。
そんな見里監督だからこそ、今作も羊毛フェルトによるストップモーションアニメだ。

もふもふでふわふわな質感のマイメロたち。
その様子を見ているだけで楽しい。
優しく温かい世界、誰からも愛されるマイメロと違って、
クロミはそんなマイメロの人気に嫉妬している。

愛されるマイメロと愛されないクロミ。
クロミが和菓子屋を開けば、マイメロはケーキ屋を開いて人気になる。
愛される女と愛されない女、この対比とキャラの関係性が
マイメロとクロミが多くの人に愛されるキャラになった理由が
見ているだけで伝わる 。

マイメロの台詞回し1つにしても恐れおののいてしまうほどだ。
「仮眠」や「「お昼寝」というような言い方はしない。
マイメロは愛される女だ。

「ちょっとちっちゃく寝るね」

これぞ愛される女の言葉である(笑)
そんなマイメロが森の中で不思議なものを発見し、
夢の中で見た雲の上の世界へと誘われる。

ストップモーションアニメ

羊毛フェルトで作られたキャラクターによる
ストップモーションアニメだからこその
表現は驚いてしまう。非常に細かい表情の変化でさえ脅威だ。
本当に細かく目と口が動き、体全体でキャラクターたちが
まるで舞台俳優のごとく演技している。

これをストップモーションアニメでやっている。驚愕だ。
ストップモーションアニメは現実に作られたキャラクターを
少しずつ動かしながら1枚1枚撮影することでアニメーションにしている。
少し表情を変えるにしても表情を変えたあとに撮影し、
また元に戻して撮影するという手間が発生する。

もちろん、普通のアニメを作るのも大変だが、
そんな普通のアニメとは違った大変さ、
地道な作業の積み重ねがストップモーションアニメにはある。

見里監督らしい「アクション」をクロミが見せつけつつ、
細かい表情や体全体での感情を表すような演技を
ストップモーションアニメという表現でこれでもかと
見せてくれる。

クロミ

クロミちゃんは誰かに認められたいだけだ。
自分の好きなものを組み合わせた和菓子を作ろうとするものの、
らっきょのあんみつだったりとズレている。
自分の好きなものを好きになってもらいたい、
大勢の人に自分と同じように美味しいと思ってほしい。

裏を返せば承認欲求そのものだ。
いろいろな人に愛され認められているマイメロは
彼女にとっては間逆な存在であり対抗意識を燃やしている。

自分ばかりうまく行かない。
そんな悩みを抱える中でマイメロのSNSが燃える(笑)
ファンタジーな世界なのにどこか現実的な要素がある
世界観がこの作品らしい魅力になっている。

クロミはみんなを虜にするマイメロのケーキの秘密を知るために
様々な行動をしながらも、マイメロは我関せず。
森の中で見つけた不思議なハートを気にしつつも、
いつも通りな日常を描いている。

ハート

マイメロが森の中で見つけたハートは不思議な存在だ。
マイメロたちはお菓子作りのコンテストに参加し、
ハートはマイメロのお菓子を勝手に変えてしまう。

マイメロのお菓子は人を虜にする。
それは味ではない「なにか」がハートによって
マイメロのお菓子に与えられているからだ。

まるで洗脳されたかのようにマイメロのお菓子を称賛する
街の住民、だが、ハートの秘密を知っている審査員である
ピスタチオはクロミをコンテストの優勝者にしてしまう。

ピスタチオはクロミの承認欲求につけこみ、彼女の心を操る。
もうホストにハマる女性を見ているかのような展開だ(笑)
あくまでもピスタチオの目的はマイメロからハートを奪い、
クロミの作ったお菓子にハートの力を使っているだけで、
クロミのお菓子も、彼女のお菓子もどうでもいい。

利用されているだけだ。
クロミのお菓子によって街の住民はどんどんおかしくなってしまう。
見里監督らしい可愛らしい雰囲気と「ホラー」さが
話が進んでくるとにじみ出てくる。

マイメロ

ハートという存在をかばい、隠した。
それはマイメロの優しさだが、そんな優しさが
大騒動にもつながっている。
子供向けのように見えて深いメッセージ性を感じる作品だ。

マイメロは多くの人に愛される存在だ。
だが、ハートのお菓子のせいでおかしくなった街の住民は
マイメロのことよりクロミに夢中になってしまう。

「マイメロのお菓子は時代遅れ」

そう言われ、愛されなくなったマイメロは寂しそうだ。
人の欲望は無限だ、それを抑えることが理性でもある。
そんな理性を取り払うのが「ハートのお菓子」だ。
ハートの力を与えられたお菓子は「欲望」を増幅させる。

マイメロとクロミ、終盤、
なくしてしまったものを取り戻す 二人が手に取る展開は
シンプルに熱い。

雲の国

マイメロとクロミはともにおかしくなってしまった住民を
もとに戻すために雲の国を再び訪れようとする
見里監督だからこそのアクションシーンの数々は
「マイメロとは?」となるようなものも多いのだが、
見ていて楽しいアクションシーンばかりだ。

雲の国はかつて存在した国だ。今は滅びてしまっている。
雲の国の王子は「親の七光り」と言われ、
偉大な父であり王のようになりたいと思いつつも、
そんな父に追いつけなかった。

そこで彼は「ハート」の力に頼ってしまう。
評判を気にしたあまり、承認欲求を満たすために、
欲望を開放してしまうハートの力を使った結果、
雲の国の住民は「王の味」をもとめて
「王」を食べてしまう。

とんでもない展開である(笑)
この闇とも言える部分はPUIPUIモルカーだけでなく、
マイリトルゴートを手掛けた見里監督 らしい展開だ。
ただただマイメロたちが可愛い、それだけでアニメを作らず、
「闇」を描くことでより作品に深みが生まれている。

欲望

かつての雲の国の王子だった「ピスタチオ」は
国を取り戻すためにもハートを求めている。それもまた「欲望」だ。
マイメロはハートの菓子を食べさせられてしまう。

この終盤の展開は本当に熱い。マイメロが倒れ、クロミは本心を語る。
クロミは嫉妬深い、マイメロに対抗心を燃やし、
マイメロに勝ちたいという思いを抱えている。だが、そんな日々が楽しかった。
クロミにとってマイメロはただの友達ではない、
ライバルであり、ずっと親友だ。

「あんたが居なくなったら誰と張り合えば良いんだ」

必死にマイメロを守ろうとするクロミがあまりにも尊い。
可愛い見た目だけじゃない、きちんと魂のあるキャラクター描写がある。
言葉を喋らなかった「ピアノ」が終盤喋りだし、
哲学的なことをいうだけで深いキャラの印象がつく。

ハートのお菓子を食べたマイメロは自らの欲望があらわになる。
マイメロがもっている欲望、そんな欲望はなんなのか。
睡眠欲である(笑)

マイメロというキャラクターらしいラストは幸せに溢れており、
いい映画を1本みたような気分になる作品だった。

総評:可愛いだけじゃ駄目なんです

全体的に見て素晴らしい作品だ。
マイメロのアニメというと想像してしまうのは
ゆるふわな日常系だが、この作品は映画のようなストーリーになっており、
「欲望」という闇が深い部分を描きつつ、同時にマイメロという
可愛いキャラクターをこれでもかと描いている作品だった

承認欲求という誰しも少なからずあるものを抱えるクロミと、
誰にでも優しいマイメロ。どちらにも欠点がある。
そんな二人だからこそライバルであり親友だ。
この関係性が徐々に描かれていけば行くほど「尊さ」を感じ、
キャラクターとしても深みが生まれている。

食べた人の欲望を増加させるハートのお菓子、
そんな欲望を描きつつ、どこかハートフルに、どこかダークに。
これぞ見里監督らしい 世界観がこの作品にはあり、
終盤は涙腺を刺激されるような展開まである。

羊毛フェルトで作られたキャラクターたちを
少しずつ動かしながら作られるストップモーションアニメも
驚愕でしかなく、本当に細かい表情やしぐさの変化から、
大胆なアクションシーンまで、シンプルにみていて楽しいアニメだ。

マイメロを知らなくても、子どもも大人も、男女問わず楽しめる。
本当に完成度の高い作品だ。
ただキャラクターが可愛いだけじゃない、魂のこもった名作だった。

個人的な感想:ストップモーションアニメ

PUIPUIモルカー、マイリトルゴートとストップモーションアニメといえばな
見里監督は本当にすごい。
マイリトルゴートでは闇を描き、PUIPUIモルカーはシュールですらあり、
そこから本作では闇とシュールと可愛いを融合させている。

まだまだ才能に磨きがかかり成長し続けている監督だ。
次は一体どんな作品を手掛けるのか…楽しみで仕方ない。

「MyMelody&Kuromi」に似てるアニメレビュー

「MyMelody&Kuromi」は面白い?つまらない?