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世界よ、これが日本流ポリコレだ「ぬきたし」レビュー

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画像引用元:© Qruppo/青藍島観光協会

評価 ★★★★☆(69点) 全11話

TVアニメ『ぬきたし THE ANIMATION』第1弾PV|2025.07 ONAIR

あらすじ 常夏の孤島・青藍島(せいらんとう)。 この島に生家のある橘淳之介は、両親の死をきっかけに妹・橘麻沙音と共に帰島することになった引用- Wikipedia

世界よ、これが日本流ポリコレだ!

原作はアダルトなゲームな本作品。
監督は長山延好、制作はパッショーネ

1話から右ストレート食らってんのよ

1話冒頭からやばい。
この作品の原作はアダルトなゲームであり、過激なセリフやシーンの多さゆえに
「アニメ化できるのか?できたところで地上波で放送できるのか」と
色々な意味で話題になっていた作品だ。

アダルトなゲームでも、いわゆる「泣きゲー」のようなものは
数々アニメ化している、だが、この作品は純粋な泣きゲーではない。
それゆえにどうやってアニメ化するのかが疑問だった。
そんな疑問を抱く視聴者の顎を右ストレートでぶん殴ってくる。
1話の冒頭の台詞はこれである

「全国のド◯ケベ◯態◯ックスを愛するみなさん、こんにちわー!」

どうだろうか(笑)
当サイトの都合上、伏せ字にしてあるが、アニメでは伏せ字にはなっていない。
声優さんがマスコットキャラとともに堂々と
「青藍島」でのみ適応される特別な条例に付いて解説している。

この条例をかいつまんで説明すれば、性人を迎えた男女は
島中のどこでもパコパコすることを推奨している。
ありとあらゆる娯楽施設という名のとんでもない施設があり、
規制がかかっているバージョンでは何も見えないが、
見えなくてもそのキーワードの強さでやられてしまう。

そんな日本とは思えない場所に主人公と妹は引っ越すことになる。
町おこしのための特別な条例、ド◯ケベ条例がある島だ。
常に下ネタなのか狂っているだけなのかよくわからないセリフを
常に耳に浴びせられるだけで頭がおかしくなりそうになる(笑)
ちなみにそんな島だからこそ、担任の教師は胸を当然のように露出している。

先生トイレ!なんて学校では当たり前のように聞こえるセリフでさえも、
この作品は一味違う。

「はいはい、先生はみんなのトイレですよ」

とんでもない島に引っ越した主人公と妹、
そんな主人公にはまともな倫理観がある。

倫理観

この島の島民の倫理観、価値観はおかしい。
現実の日本人なら不特定多数と行為に及ぶことは
あまり良くない行為として否定される。
それが「マジョリティ」、大多数の価値観であり、
このレビューをお読みの方もそういう価値観を持ってる人が多いはずだ。

しかし、この島では違う。
この島の島民の多くはそういった価値観が根付いていない。
子供の頃からそういう環境で育ち、それが「当たり前」に育ったからこそ、
不特定多数と行為に及ぶことが当たり前なのだ。
逆に不特定多数と行為に及ばない人は罰せられる。

いわゆる「因習村」に近いものがある。ド◯ケベだが(笑)
この島においてまともな価値観を持つ主人公は「マイノリティ」な存在だ。
強制的に初モノを奪われそうになりながら、彼は逃げ、
逃げた先で戦う異手段を手に入れる。

自らの倫理観を、妹の貞操を守るために彼は
「ド◯ケベ条例」をぶっ潰すことを決める。
でてくるワードや描かれるシーンの数々は下品そのものなのだが、
ストーリーだけを冷静に「抜き」だすと王道の少年漫画のような
熱いストーリーが描かれており、まともなんだか狂っているんだか
よくわからない世界観に見てるこっちの頭までおかしくなりそうだ。

トラウマ

思春期の男子にとっては夢のような島だ。
だが、主人公にはトラウマがある。
自らの3本目の足、息子がでかいことをいじられた過去があり、
そのせいで誰かにマイサンを見られることを拒んでいる。

男女に対する価値観もピュアで前時代的であり、
そんな彼の妹は「同性愛者」だ。
この島で推奨されているのはあくまで「男女」の行為だ。
同性愛は推奨されていない。彼女もまた「マイノリティ」な存在だ。

この作品はふざけてはいる、だが、同時に
マイノリティな価値観というものを描いている。
社会においては正しいと言われる行為以外の価値観を持つことは難しい。
同性愛しかり、特別な性的な価値観や嗜好は受け入れられづらい部分がある。

そんなマイノリティな価値観を持つものが、マジョリティに挑む物語だ。
主人公や妹以外にも、自らの見た目にコンプレックスを抱くものもいる。
海外では「ポリコレ」の名のもとに同性愛や様々な人種が
フィーチャーされ、差別や偏見を描き、多様性を尊重した作品を作り上げている。

この作品はまさにそんなポリコレだ。
同性愛、ルッキズム、マイノリティな価値観を描き、
そんなマイノリティな価値観を持つものの社会での生きづらさを描き、
マイノリティがマジョリティな社会に「革命」をする物語でもある。

愛なき行為を撲滅するための反交尾勢力を立ち上げ、
革命の白い狼煙を噴出する。
やってることはかっこいいのだが、飛び出るセリフは下ネタばかりだ(笑)
とんでもないというか、ピンク色に染まった語彙力から生み出されるセリフの数々は、
聞いているだけで大爆笑してしまう。

ときには頭脳を、ときには息子を使いながら
主人公はドスケベ条例をぶっ壊すために画策する。
ちなみに中盤であっさり貞操を奪われる(笑)

規制

作画のクォリティは非常に高い。制作は「パッショーネ」であり、
あの「異種族レビュアーズ」でおなじみの制作会社である。
この作品は3パターンにわかれており、
全面規制ver. 、配信限定ver、青藍島verがあり、
バージョンによって規制の度合いが違う。

地上波で放送されたものはかなり規制が強く画面も
音声の規制もかなり厳しいものになっており、
この作品の面白みを4割くらいしか味わえない。
配信限定verでも規制は強いものの、ギリギリ規制されていない部分もあり、
これでようやくこの作品を楽しめる土俵に立つことが出来る。

青藍島verに関してはAT-Xか円盤のみであり、私はチェックしていないが、
本来はこれで味わってこその作品なのだろう。
放送中も2度ほどBPOからのご意見をもらっており、
最後まで放送できたのは奇跡的だ。

これが15年前の紳士アニメ黄金時代ならともかく、
規制の強い現代において、ものすごい挑戦作だ。
そこらじゅうで交わってる男女がいる島での物語、
この設定の段階で地上波で放送することは不可能に近い。
それでも規制を強めながら、この作品を放送できたことは奇跡だ。

確かにセクシーではある、だが、そのセクシーさをどストレートな
セクシーさではなく「ギャグ」にしつつも、日本的な「ポリコレ」イズムに
のっとった話に仕上げ、バカバカしくも熱くセクシーな作品に仕上げている。

思わず円盤を買いたくなる、そんな魅力がきちんとある。
ちなみに円盤は1万枚以上売れている、覇権だ。
ここ数年は円盤が売れなくなってきており、覇権と呼ばれるようなアニメでも
5000枚売れればいいほうだ。

そんな中でかつての紳士アニメのような売上を叩き出しており、
あの紳士アニメ黄金時代の再来を予期させる。
もっともこういう作品を毎クールやるのは無理だろうが(笑)

FS

主人公は戦いの中で敵組織とも言える「FS」に潜入することになる。
入ったからこそ争っていたときには知り得ない事実もある。
ド◯ケベ条例に従い、ド◯ケベを楽しむ島民たち、
そんな世界を守ろうとするFSは幸せそうだ。
敵の幸せを、正義を知ったことで、主人公も迷う。

まるでガンダムの主人公が抱えるような悩みをこの作品の主人公も抱えている。
同調圧力やルッキズム、ジェンダーバイアス、様々な現代的問題を描きながらも、
セリフにはピー音が交じる(笑)

ド◯ケベ条例は青藍島だけではなく、全国へと広まろうとしている中で、
主人公は自らのすべてを支配できる息子を差し出そうとする。
かつて守れなかったものを守るための自己犠牲、
だが、そんな自己犠牲を仲間は許さない。

ありのままの交尾を、誰にも縛られない、自らが望むイキ方で。
どこかの雪の女王様が歌い出しそうな終盤だ。

3割

主人公は終盤で覚醒する、居場所のない世界で居場所を作ることを求め、
3割な自分たちが受け入れられる世界を作るために。
だが、だからといって7割の人を無視し、消し尽くすわけではない。
お互いを少しずつ許容すれば一緒にいられる。

「俺は!俺達のお前たちとの日常を守る!」

様々な人物たちと関わり「多様性」を彼は身にしみて実感する。
自分達はこの島ではマイノリティかもしれない、だが、
だからといってマジョリティを否定するわけではない。

マイノリティかマジョリティかは多いか少ないかだけの話だ。
存在することに違いはない、手を取り合うこと、理解しあうこと、
否定せずに許容し合う世界を彼は作ろうとしている。
素晴らしい答えだ。息子はいきりたっているが(笑)

股を熱くし、わかり合う道が開ける。新たな道が、新たなド◯ケベの道が。
まだ道は開いたばかりだ、彼らの戦いはこれからが重要だ。
1クールでストーリーが終わっているとは言い難いものの、
区切りがいいところで終わっており、思わず原作をプレイしたくなる魅力と、
「幻の2期」を期待したくなる作品だ。

総評:これが2025年の覇権アニメだ!

全体的に見て攻めに攻めまくった作品だ。
規制が厳しく、セクシーなアニメがやりづらくなった現代で、
例えBPOに2度も怒られようとも、規制まみれで地上波では
よくわからない作品になってしまっても、この作品は最後までやり通した。

この作品はぶっ飛んでいる、ふざけているといってもいい。
下ネタの嵐、隠語の嵐だ。
だが、独特な台詞回しはとんでもない語彙力を感じるものになっており、
規制があっても耳だけでも楽しめてしまう。

そんなふざけた作品なのだがストーリー的には
「多様性」というディズニーもびっくりな内容をまっすぐに描いている。
因習村のようなぶっとんだ条例の有る島で、
その条例に従えないマイノリティな存在とマジョリティな存在がぶつかり合い、
最後には「相互理解」を生む流れは見事だ。

ふざけてはいるのだが真面目な部分があり、
ぶっ飛んだ部分があるのに熱いストーリーが描かれている。
この「日本のアニメ」らしいポリコレの描き方は清々しいものがあり、
強烈に人を選ぶものの、ぜひ、1話だけでも観てほしい。

きっと貴方も「ぬきたし」の世界観にハメってしまうはずだ。

個人的な感想:素晴らしい

1話の冒頭から殴られたような衝撃を味わい、
全11話堪能させていただいた作品だ。
これほど攻めに攻めまくった作品はなかなかない。
独創性という意味では群を抜いており、唯一無二の魅力がある。

セクシーなアニメであるがゆえに人を選ぶ部分があるのは確かだが、
それ以上にこの作品は挑戦心と皮肉と愛に満ち溢れている。
2期は流石に難しいかもしれないが、
続きがアニメで見てみたくなる作品だった。

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