評価 ★★★☆☆(58点) 全12話
あらすじ 太平洋戦争後、GHQによって解体された忍者組織は、紛争やテロの時代になり消滅したかに見えたが、再び多くの忍者が日本国内の官民、あらゆる組織に潜伏し、暗躍していた。 引用- Wikipedia
使い捨ての主人公
原作はヤングマガジンで連載中の漫画作品。
監督は桑原智、制作は手塚プロダクション。
忍者
この作品はタイトル通り、「忍者」が出る作品だ。
本来、忍者が出る作品といえば戦国時代だったり、
少なくとも「現代」ではない時代を舞台にしていることが多い。
しかし、この作品の舞台は現代日本だ。
しかも、ただ現代に忍者がいるだけではない。
日本国内の官民、あらゆる組織に多くの忍者が潜伏し、暗躍しており、
約20万人もの忍者が日本に存在している。
石を投げれば忍者に当たる。
そんな日本で、主人公は「雲隠れ一族」の一人だ。
だが、決して優秀な忍者ではない。
むしろ落ちぶれている。
そんな彼に「高校」への潜伏任務が下る。
24歳の無精髭を生やした男が、17歳の高校生になって、
忍者として任務を遂行する。
彼の最初の任務は、トイレの中にいる女性に
トイレットペーパーを届けることである(笑)
この時点で、もう普通の忍者ものではない。
独特な空気感とノリで淡々と描かれる日常には、
原作を手掛ける「花沢健吾」さんらしい雰囲気があり、
一気に作品の世界観に引き込まれる。
時系列
この作品は、アニメとしての見せ方がうまい。
主人公が高校に潜入した時点から物語を始めつつ、
ニートでだらしない主人公の「過去」を少しずつ見せていく。
過去と現在を交互に描くことで、
日常のゆるさと、忍者同士の戦いが持つ緊張感が交互に押し寄せる。
この構成によって、淡々とした作品の空気に独特のリズムが生まれている。
この作品の日常には、忍びがそこかしこに潜んでいる。
ボロアパートに住むニートも忍者。
公園で子供に母乳を配ろうとする変態おじさんも忍者。
コンビニのおばさんでさえ、忍者かもしれない。
そんな「日常」をしっかりと見せながら、
同時に忍者としての戦闘も描いていく。
だからこそ、この世界における忍者の異常さと当たり前さが際立つ。
忍者同士の戦いが描かれているのに、
その横には母乳を配るオジサンがいたり、
下着を盗む少年がいたり、
夜職のお姉さんが飲んだくれていたり、
陰茎を切る不審者がいたりする。
普通ならバラバラになりそうな要素が、
この作品では不思議と同じ空気の中に収まっている。
この異物感こそが、『アンダーニンジャ』という作品の大きな魅力だ。
その忍者アクションもケレン味たっぷりに描かれている。
キビキビとした動き、現代的な装備、そして「最新技術」を使った忍者アクション。
古典的な忍者像と現代兵器の組み合わせが、なんともたまらない。
UN
忍者も一枚岩ではない。
主人公たちが所属する組織、海外組織、敵組織。
様々な勢力が、それぞれの思惑で水面下に暗躍している。
しかし、主人公は任務の目的すら知らされていない。
だからこそ、視聴者にも開示される情報は少ない。
誰が何のために動いているのか、
誰が敵で、誰が味方なのか。
その境界は常に曖昧だ。
複雑な組織同士の争いに加えて、
この作品は時系列までシャッフルして見せてくる。
本来ならわかりにくくなりそうな構成だが、
この作品の場合、それが淡々とした描写への刺激になっている。
過去と現在、バラバラに見えていた時系列がつながるのが5話だ。
そこまで見たとき、序盤に描かれていた何気ない場面の意味が少しずつ変わってくる。
この時系列シャッフルがあるからこそ、
独特なテンポの序盤にも引っかかりが生まれ、
いわゆる1話切りや3話切りをさせない構成になっている。
水面下で動き出すアンダーニンジャ。
果たして誰が忍者で、誰が敵で、誰が味方なのか。
この不透明さが、作品全体にじわじわとした不穏さを与えている。
戦場
終盤、主人公が通う学校が戦場になる。
ろくに通っていないが(笑)
敵の目的も、誰が敵なのかも曖昧なまま、
戦いは一気に激化していく。
しかも敵は、主人公たちの組織よりも技術的に上だ。
部分的に透明化する主人公たちのスーツに対して、
敵は「刀」すらも透明化している。
忍者という古典的な存在が、現代技術によってアップデートされているのが面白い。
だが、この作品が本当に恐ろしいのは、
アクションの派手さではなく、忍びたちの命の軽さだ。
忍びは、いつ死ぬかわからない。
そして彼らは、死の間際でも恐怖に震えることはない。
自らの命にも、他者の命にも、どこか達観している。
片足を切られようが、刀を突き刺されようが、泣き叫ぶことはない。
ただ「次」を意識し、任務を達成しようとする。
忍び同士の戦いは、長きにわたるものだ。
戦後に2つに分かれた組織は戦い続け、技術を伸ばし、
主人公たちの組織は「衛星兵器」まで持っている。
組織のトップは「脳移植」までして権力を保持しようとしており、
もはや泥沼だ。
しかし、主人公たち下っ端の人間は、
そんな大きな目的すら知らされていない。
ただ命じられ、ただ戦い、ただ散っていく。
これぞ忍び。
そして、忍びの生き様を最終話で見せつけられる。
それは主人公も例外ではない。
普通の物語なら、主人公は特別な存在だ。
物語の中心にいて、何かを変える存在として描かれる。
だが、この作品は違う。
主人公でさえも、組織に使われる一人の忍者にすぎない。
任務の中で消費され、あまりにもあっけなく散っていく。
あまりにも儚く、あまりにも唐突。
しかし、それこそがこの作品における忍びの命の軽さなのだ。
総評:あまりにも儚く、あっけない主人公
全体的に見て、素晴らしい作品だ。
原作からストーリー構成を若干シャッフルすることによって、
日常のゆるさと物語の不穏さをうまく両立させている。
だからこそ、序盤の淡々とした空気にも引き込まれ、
終盤の衝撃的な展開に至るまで、
飽きずに物語を追うことができる。
現代に生きる20万人以上の忍びたち。
石を投げれば忍者に当たる時代だからこそ、
忍者たちの命はあまりにも軽い。
任務の目的も、真意も知らされず、
ただ命じられるままに戦い続ける忍者たち。
その中で「主人公」でさえも、特別な存在ではなく、
一人の忍びとして使い捨てられていく。
このラストのインパクトは凄まじい。
普通の作品なら、主人公の死は大きな悲劇として描かれる。
しかし、この作品では、主人公が死んでも世界は何事もなかったかのように続いていく。
サブキャラたちは明るく元気に飲み会を開き、
主人公の弟や妹が急に出てきたりもする。
悲劇なのに、どこか乾いている。
そのあっけなさが、逆に強烈な余韻を残している。
先が読めない展開は、最初から最後まで続く。
そして最終話が終わってもなお、物語はまだ何かを隠している。
とんでもない作品だ。
2期があるかどうかはわからないが、
この続きを見てみたいと思わせてくれる作品だった。
個人的な感想:2クール
原作が完結していないということもあるが、
本来、こういう作品は2クールくらいでガッツリと見てみたい。
20年くらい前のTVアニメだったら、
オリジナル要素はありつつも、
アニメ独自のifルートで完結するような形も見られたかもしれない。
だが、今どきのアニメ事情的には、
1クールで基本的に原作通りに終わってしまう。
それ自体は悪いことではないが、
この作品に関しては、もう少し長くこの世界に浸っていたかった。
最近の深夜アニメらしいわかりやすさや、
一般受けする要素こそ少ないかもしれない。
だが、そのぶん少し懐かしい深夜アニメの香りがある。
奇妙で、不穏で、淡々としていて、
それでいて妙に目が離せない。
そんな良いアニメだった。
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