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オタク歴25年、アニメレビュー歴13年、YouTube登録者11万人。
個人的な視点で語るアニメ批評です。
評価 ★☆☆☆☆(31点) 全13話
「二十世紀電氣目録-ユーレカ・エヴリカ-」本予告 – Netflix
あらすじ 「二十世紀電氣目録」に、思い描く電氣の発明を書き込む主人公・坂本喜八。
憧れの兄・坂本清六と共に夢の実現を誓う喜八だったが、
清六は「二十世紀電氣目録」を持って戦争に行き、帰らぬ人となる。 引用- Wikipedia
イカレタ狂気のBLアニメ
原作は結城弘によるKAエスマ文庫の小説作品。
監督は太田稔、シリーズ構成は浦畑達彦、
制作は京都アニメーション。
スチームパンク
アニメにおいて「スチームパンク」という題材は憧れであり、
理想形の1つだ。
スチームボーイをはじめとする様々な作品で描かれ、
「電気」のない蒸気による世界観は、
アニメにおける到達点の1つだと私は感じている。
そんなスチームパンクの世界を京都アニメーションが描く。
誰しもが期待することだろう。
電気に関わる科学者たちが早死にし、
文明は20世紀になっても蒸気に頼っている。
だが、主人公は兄とともに「電気」の研究をしており、
新たな20世紀の幕開けが起ころうとしていたというところから
物語が動き出す。
ちなみに、この作品は原作から相当な改変が行われている。
そもそも原作は、電気が存在しないスチームパンク世界ではない。
原作は明治時代の京都を舞台に、
電気が普及し始めた時代の少年少女の恋愛を描く物語だ。
そこからしてアニメオリジナルであり、
作品の根幹となる世界設定そのものが変更されている。
ただ、私は原作改変そのものが悪いとは思わない。
原作を改変したことで面白くなったアニメはいくらでもある。
問題は、その改変によって何が面白くなり、
何が失われてしまったのかということだ。
パッと見だと京都アニメーションらしさはあまり感じない。
キャラクターデザインもそうだが、光の演出がかなり独特で、
カメラをあえてぼかしたり、
大胆にキャラクターの表情を崩したりしている。
背景の作画に関してはかなり洗練されているものの、
洗練されすぎていて逆に違和感すら感じる部分もある。
その背景のリアルさとアニメのキャラクターの境界をぼかすために、
光を強くしていると感じる部分がある。
背景美術の美しさとキャラクターのアニメーションが
必ずしも噛み合っておらず、
1つの画面の中で妙な違和感が生まれてしまっている。
主人公
主人公もかなり癖がある。
蒸気機関が当たり前な社会で、彼は電気を研究している。
先に電気の研究をしていた兄は、
主人公が書いてた電氣目録を持ったまま戦争へ行き、帰ってこない。
4年の月日が経っても世界は変わらず、
電気が当たり前になるわけでもない。
そんな世界で主人公は変わり者だ。
電気のこととなると饒舌になるが、
普段は鬱々として斜に構えている。
あまり好感が持てる主人公ではない。
そんな主人公がたまたま酒造の娘であるヒロインと知り合う。
ヒロインの家には何故か兄が持っていた「電氣目録」があり、
それを狙っているやつもいるという状況だ。
1話からあまりピンとくる部分がなく、
背景の作画だけにやたらと目が行ってしまう。
世界観そのものは魅力的なのだが、
その世界で生きる主人公の魅力が弱い。
スチームパンクという題材の面白さが、
キャラクターやストーリーの面白さに
つながっていない印象だ。
ドタバタ
2話ではドタバタアクションが描かれる。
「電氣目録」を狙っている御曹司は、
ヒロインを無理やり婚約者にし、
電氣目録を奪って逃げてしまうのだが、
それを主人公が追ったり、御曹司が追いかけてきたりする。
自分に自信がない主人公が、
他人を信じることのできるヒロインと出会い、
自分に自信を持っていくようになる。
その過程自体は王道ではあるものの、
このドタバタアクションがどうにもジブリ臭く、
京都アニメーションらしさを感じない。
おそらく原因は背景があまりにもキレイすぎることと、
キャラクターの表情を崩しすぎることだろう。
あまりにも崩しすぎて違和感を覚えるほど
妙なギャグの空気が流れ、
背景の美麗さとのギャップが生まれてしまう。
もちろん、デフォルメそのものが悪いわけではない。
ただ、この作品の場合は背景美術の方向性と
キャラクター演出の方向性が違うように感じてしまう。
1話になっても2話になっても、ろくに話が進まず、
電氣目録とヒロインを奪い合っている。
御曹司は主人公の兄と知り合いのようで、
奪い合っていた電氣目録は偽物だったというのが2話でわかる。
御曹司に罵倒される主人公は再び自信をなくすが、
ヒロインは無条件で主人公を信じる。
この無条件で主人公を信じるという部分も弱く、
主人公にとって都合の良いヒロインでしかない。
なぜ彼女がそこまで主人公を信じるのか、
なぜ主人公に惹かれていくのか。
その積み重ねが弱いまま物語が進んでしまうため、
主人公とヒロインの関係性に魅力を感じにくい。
御曹司
実は電氣目録は本物で、
3話で主人公がそこに記されたものを実現する。
だが、主人公よりも御曹司のほうがキャラが立っている。
主人公の兄に明らかに特別な感情を抱いている御曹司。
その狂った様子そのものが、
この作品の面白さになっているのはややズレを感じる。
初めて街に電気が灯ったことよりも、
御曹司の狂い方のほうに目が行ってしまう。
4話になると日常回的に主人公が電氣目録を使って
トラブルを解決したりするが、
そんな話の面白み自体よりも、
御曹司の奇々怪々なアクションや行動のほうに目が行ってしまう。
主人公が電話的なものを開発している中で、
御曹司はジャグジーのような泡風呂に入りながら、
「あぁああ!僕が主人公の兄と
電氣目録を再現するはずだったのにぃ!
電氣目録の秘密は僕と君のものだけなのにぃ!」
とでも言わんばかりに狂喜乱舞している(苦笑)
4話も5話も6話も、
別に見なくても問題ないように感じる話が続く。
日常回としての面白さがなく、
キテレツ大百科みたいなことをしているだけだ。
ギャグに関しては好みが分かれるものの、
個人的には滑っている感が強く、
面白みが生まれなかった。
見どころは作画と背景だけだ。
いや、違う。
御曹司だ(笑)
このあたりから、私は主人公が何をするのかよりも、
御曹司が次に何をしでかすのかということのほうが
気になり始めていた。
本来ならば主人公とヒロインの関係性を
深めるべき中盤で、
御曹司だけがどんどん面白くなっていく。
作品としてはどうなのかと思うが、
キャラクターとしては妙な魅力がある。
婚約
7話でようやく話が動き出す。
ヒロインと御曹司の婚約話が動き出したかと思えば、
電氣目録の失われた部分が滋賀にあることがわかり、
探しに行く。
その中でもどうでもいい話が展開している。
ヒロインの婚約問題や、
兄とともに戦争に行った人物の物語など、
引っ張っている割にはどうでもいいエピソードが多い。
特に兄の死因に関しては、
普通に戦争で亡くなっているだけで、
引っ張った割には驚きがない。
もちろん、戦争による死という事実自体が
軽いものだというわけではない。
ただ、物語として謎を引っ張ってきた割には、
その真相が明らかになったことで
大きく印象が変わるわけでもないのだ。
終盤になってもサブキャラの恋愛絡みの話をしているが、
心底どうでもいい感じが凄まじい。
ヒロインの婚約話も「こうなるんだろうな」と
予測できる展開でしかない。
そんなことより主人公の兄と御曹司の、
もはやBLとしか思えない関係性のほうが
話の中心になっている。
主人公とヒロインというメインの2人が、
御曹司と亡くなった主人公の兄に
完全に負けてしまっている。
主人公とヒロインの恋愛は予定調和なのに、
御曹司の行動だけは予想がつかない。
だからこそ、御曹司のほうが面白い。
この作品で最も魅力的なキャラクターが、
本来の物語を食ってしまっているのだ。
頭脳
終盤は電気による頭脳、CPUを作るという話に急に飛ぶ。
御曹司の目的もそれであり、
主人公と目的が噛み合うことになる。
一方でヒロインは亡くなった母の思いを継ぎ、
母の残した酒を作ろうとする。
この酒と電気というもののつながりが弱く、
ヒロインのエピソード自体が
メインストーリーから蚊帳の外になっている。
主人公は兄の残した電気頭脳を作ろうとしており、
御曹司は兄の電気頭脳を作ろうとしている(笑)
この違いは大きい。
主人公は兄が残した夢を実現しようとしている。
だが、御曹司は兄そのものを取り戻そうとしているのだ。
同じ技術を追い求めていながら、
その目的は根本的に違う。
未来を作ろうとする主人公と、
過去を取り戻そうとする御曹司。
本来ならば、この対比こそが
作品の中心になってもおかしくないほど面白い。
その中で主人公と御曹司のBL感も強まるものの、
ヒロインは蚊帳の外のままだ。
ヒロインが主人公のことを思いながら酒を作っているのに、
主人公は御曹司とイチャイチャだ(笑)
御曹司の執着の末に、
彼はアンドロイドとなった主人公の兄を作り上げてしまう。
主人公の兄にこだわった末の死者蘇生である。
もう主人公やヒロインなどどうでもいい。
御曹司があまりにも面白すぎる。
だが、完成したばかりのCPUでは
簡単な受け答えができるのみで、完璧とは言えず、
御曹司は「魂」を入れることを思いつく。
終盤は一周回ってこのぶっ飛び具合が面白くなり、
主人公にわざわざ花嫁衣装を着せて
生贄に捧げようとする展開など、
意味不明すぎて面白い。
本来は救われる立場であるはずのヒロインではなく、
主人公がヒロインになってしまっている。
もはやボーイ・ミーツ・ガールどころではない。
一体、私達は何を見せられているんだろうか(笑)
原作改変
囚われの花嫁となった主人公を
無事にヒロインたちが救い出す。
その後、御曹司を助け出すために
主人公とヒロインが動き出す展開も滅茶苦茶であり、
ラピュタよろしく主人公とヒロインが空を飛んでも、
特に盛り上がりが生まれるわけでもない。
「御曹司」のキャラが強すぎて、
主人公とヒロインだけでは
この作品が成り立っていない。
自らが生贄に捧げられそうになっても、
主人公は御曹司を救い出そうとする。
もちろん、敵対していた相手を救うという展開自体は
王道の1つだ。
ただ、この作品の場合は、
そこに至るまでの主人公と御曹司の関係性が
妙な方向に濃く描かれすぎている。
ヒロインそっちのけで、
主人公が御曹司の手を握る展開は、
もはやNTRというワードしか浮かばない(笑)
そんな状況なのに、
最後は主人公とヒロインの恋愛要素を持ち出してくる。
明らかに御曹司との関係性のほうが濃く描かれていたのに、
今更主人公とヒロインの恋愛要素を押し出されて、
ハッピーエンドにされても何も納得できない。
そもそも、この作品の原作では
主人公とヒロインのラブストーリーが主体だ。
原作における御曹司の立ち位置や、
主人公の兄に対する関係性もアニメとは異なっている。
調べれば調べるほどアニメオリジナルの設定や
改変要素が多く、
悪い部分での京アニ仕草が出てしまっている作品だった。
そもそも原作とアニメでは、
スチームパンクという世界設定からして異なる。
原作の要素を使って新しい物語を作り直したと言っても
過言ではないほどの大改変だ。
だが、先ほども述べたように、
私は原作改変そのものを否定するつもりはない。
問題は、その改変によって生まれた要素が
本来の物語とうまく噛み合っていないことだ。
主人公とヒロインの恋愛を描きたいのか、
電気によって新しい時代を切り開く物語を描きたいのか、
それとも失われた兄を取り戻そうとする
御曹司の執着を描きたいのか。
どれも物語の中心になり得る要素なのに、
それぞれが十分に噛み合っていない。
特に御曹司の狂気は突出して面白く、
そのせいで本来の主人公とヒロインの物語が
どうでもよくなってしまっている。
キャラクターを魅力的に描くことには成功している。
だが、そのキャラクターによって
作品全体のバランスが崩れてしまっているのだ。
総評:私達は何を見せられているんです?
全体的に見て、何を見せられているのかわからない作品だった。
作画に関しては京都アニメーションらしく
一級品ではあるものの、
キャラクターの表情を崩すギャグ描写が鼻につき、
背景がキレイという印象ばかりが残る。
ストーリーも兄が残した電氣目録を中心に描かれてはいるが、
どうでもいいサイドストーリーが非常に多く、
そのサイドストーリーで引き伸ばしている感が否めない。
1クールのテンポ感ではない。
そんな中で、この作品で最も印象に残るのは
「御曹司」くらいだ。
主人公の兄への異常な執着。
彼の残したものだけではなく、
彼自身を復活させようとする狂気。
もはやBLとしか思えない関係性が
この作品で最も面白い部分になっている。
だが、そのせいで主人公とヒロインの関係性の描写が薄く、
別にヒロインはいらないのでは?と思うほど
蚊帳の外になってしまっている。
予想できるストーリーが序盤から中盤まで続き、
終盤は予想外のストーリー展開で
一周回って面白くはなるものの、
狂気の御曹司が暴れ回っているだけの作品だ。
本来ならば主人公とヒロインの物語を
盛り上げるために存在するはずのキャラクターが、
主人公とヒロインを完全に食ってしまっている。
この作品は、原作を改変したから失敗したのではない。
改変した結果、原作にはなかったような
強烈な魅力を持つキャラクターが生まれ、
そのキャラクターによって
本来の物語が食われてしまったのだ。
ある意味では、キャラクターを魅力的に描くことには
成功している。
だが、作品全体としてはうまくいっていない。
この皮肉こそが、
私が本作品に感じた最大の問題点だ。
もともとはボーイ・ミーツ・ガールな
ラブストーリーとして描けたはずの作品なのに、
そこにBL的な要素を強く盛り込んでしまった結果、
作品自体がおかしなことになってしまった印象だ。
主人公とヒロインの関係性をもっと丁寧に描くか、
いっそのこと御曹司と主人公の兄の関係性を
物語の主軸に据えてしまうか。
どちらかに振り切っていれば、
もっと面白い作品になっていたかもしれない。
もともと演出畑の人が初監督をすると、
無駄なシーンや、とにかくアニメーションを見せたい、
こだわった演出を見せたいという方向に走り、
ストーリーが疎かになってしまうことがある。
この作品にも、そういった印象を受けた。
一つ一つの場面を見れば、
アニメーションとしてのこだわりは感じる。
だが、それが物語全体の面白さに
つながっているとは言い難い。
BL的な要素のない原作に、
そこまで強い執着の描写を盛り込んでまで
何を描きたかったのだろうか。
もうそれならヒロインの存在を薄くするのではなく、
いっそのこと御曹司を中心にした物語として
描いたほうがストレートだったかもしれない。
結局、何がしたかったのかわけがわからない作品になってしまった。
そして皮肉なことに、
そのわけのわからなさの中心にいる御曹司こそが、
この作品で一番面白かった。
そんな印象を受ける作品だった。
個人的な感想:KAエスマ文庫
京都アニメーションは自社レーベルである
KAエスマ文庫の作品をアニメ化していることが多いが、
そんな原作を改変することも多い。
それでも今までの作品がうまくいっていたのは、
その改変がうまくいき、
作品としての整合性を保てていたからだろう。
要はセンスの問題だ。
原作の何を残し、何を変えるのか。
アニメーションとして何を見せたいのか。
そして、その改変によって作品がどう面白くなるのか。
京都アニメーションは、
そういった部分で高い評価を得てきた
制作会社だと私は感じている。
だからこそ、今回の作品には期待していた。
スチームパンクという題材も、
京都アニメーションの技術力であれば
素晴らしい映像作品になるはずだと。
実際、映像のクオリティは高い。
背景美術だけを見れば、
さすが京都アニメーションだと感じる部分も多い。
だが、作品全体を見たときに、
その技術力が物語の面白さに
つながっていないことが残念でならない。
原作改変によって生まれた御曹司の強烈な魅力は、
確かにこの作品だけの面白さだった。
しかし、その面白さが主人公とヒロインの物語を
壊してしまっているのだから皮肉なものだ。
京都アニメーションらしい作画の良さは感じるが、
作品全体から「京都アニメーションらしさ」というものを
あまり感じられず、
色々な迷いが見えてしまう。
もちろん、この1作品だけで
京都アニメーションの今後を判断するつもりはない。
ただ、これまで原作改変も含めて
作品をうまくまとめてきた制作会社だからこそ、
今回のようなバランスの悪さは気になってしまう。
技術力だけでは面白いアニメは作れない。
それを改めて感じさせられる作品だった。
今後の京都アニメーション作品では、
映像だけでなく、物語そのものでも
驚かせてほしいところだ。
「二十世紀電氣目録」に似てるアニメレビュー
ポチップ
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