評価 ★★★★☆(60点) 全10話
あらすじ べてを手に入れるか、すべてを失うか――半端を嫌う街で、新たな物語が始まる。かつて名を馳せた伝説的サイバーパンク、ウィーク。 引用- Wikipedia
主人公不在の続編
本作品はNetflixオリジナルアニメ作品。
監督は五十嵐海、制作はTRIGGER。
サイバーパンク エッジランナーズの2期として制作された。
独立
サイバーパンク エッジランナーズは非常に素晴らしい作品だった。
サイバーパンクな世界観をTRIGGERが彩り、
今石洋之監督のクレイジーなアニメーションで見せる。
ドーパミンが最高潮に達する気分を味わえる、
最高にハイな作品だった。
そんな1期から4年後、監督は今石洋之監督から五十嵐海監督に変更され、
世界観は共通であるものの、別のキャラクターの物語が描かれる。
あの魅力的な世界観で、ディストピアなナイトシティに
生きる人々を描いている作品だ。
ただ、1話からあまりピンとこない。
前作はデイビッドという主人公を中心に物語が描かれ、
彼の成長と変化を描いている作品だった。
だが、今作は1話からドバドバっと多くのキャラクターが出てくる。
キングと呼ばれたインプラントを入れまくっているサイバーパンクと、
元恋人の娘であるタリア、復讐を果たそうとするDと、
彼を撮影する、映画を撮りたい少年でインプラントをほとんど入れていないロマン。
それぞれがそれぞれの目的で生きている。
そんなキャラクターたちの物語が視点を頻繁に変えながら描かれる。
主軸が多いせいで、1話の段階ではこの作品の面白みというのが
ややピンとこない部分がある。
コンビ
話が進むと、それぞれのキャラが絡み合うことにより物語に深みが生まれる。
1話ではざっくばらんにキャラクターを出していただけの印象だが、
2話ではDとロマン、キングと娘、それぞれの関係性が深まっていく。
特に興味深いのはキングと元恋人の娘の関係性だ。
キングは長い間、サイバーパンクとして生き、
体中に埋め込まれたインプラントのせいで限界に達している。
かつての猛者も今やただの体にガタがきたおじさんだ。
自らの命を絶とうとした瞬間に元恋人から連絡が来て、
体中にインプラントを埋め込んだ娘をなんとかしてほしいと頼まれるが、
全身にインプラントを埋め込んだ彼女に追いつくことすらできない。
ため息をつきながら錆びついた体を動かす光景には
独特の哀愁があり、彼と娘の関係性がどうなるのかがシンプルに気になる。
サイバーパンクな世界観ではあるものの、
構図としてはグレた娘を取り戻そうとする父だ。
ボコボコになりながら、ボロボロになりながらも、
娘を助けようとするドラマがある。
サイケデリック
ただ、その一方で3話になるとまたキャラが追加される。
キョウコというキャラはカプリというものを開発し、それをDが取り込む。
カプリはDの体を乗っ取り、凄まじい性能で暴れまわるものの、
そんなカプリをキョウコは母のように取り戻そうとしている。
また話がぶれる。
キャラクターが追加されることで話が進むというより、
新たな要素、新たな道が追加されるような感覚になり、
作品全体に散漫な印象を受けてしまう。
映像に関しては1級品であることは間違いない。
サイバーパンクな世界観、TRIGGERらしい色の使い方は素晴らしく、
サイバーパンク エッジランナーズでしか味わえない世界観は
シーズン1同様にしっかりとある。
ただ、その反面、アニメーションとしては弱い。
今石洋之監督が手掛けていないからこそ、彼のあの暴れまわるような
ドーパミン全開のアニメーションがシーズン2にはなく、
落ち着いたアクションと落ち着いたアニメーションばかりになっている。
一言で言えば狂気が足りない。
シーズン1ではエロスも要素の1つとしてあったのだが、
本作にはそれがない。
女性キャラクターはいるものの、セクシーさはなく、
シーズン1のルーシーのような蠱惑的な魅力があるわけでもない。
数は多いのに印象に残らず、キャラの魅力も弱く、ドラマも弱い。
積み重ね
前作はストーリーのテンポ、展開自体も早かったが、
今作はそのテンポも悪く、話がなかなか進まない。
前作は「死」へと向かっていく物語だったが、
今作は「死」から始まり、生に向かっていく物語のように感じる。
だからこそキャラへの感情移入に時間がかかる。
1話では散漫に感じ、2話の段階ではピンとこず、
3話で新キャラが出ることでまた散漫になるものの、
4話で方向性が見えてくる。
特別だと思っていたが特別ではなかったキングが、
自らの過去や経験をタリアという少女にぶつける。
自分の慢心、犯した間違いを悔いているからこそ、
タリアをまるで娘のように扱い、彼女の道を正そうとしている。
一方でタリアはもともと体の弱い子どもであり、
そんな弱さを受け入れきれず、親からの重圧もあり、
強く特別な存在になろうとしている。
一方でDの復讐劇は複雑だ。
復讐相手が誰なのかもわからず捜索し続け、
そのなかでカプリというものに体に侵入され、彼女の入れ物となる。
カプリのことを探るうちに、D自身の過去にも関わっていき、
徐々に謎が明らかになっていく物語がある。
そんな捜索を手伝うのがロマンであり、Dを撮り続ける。
彼らが同じ場所に集うのが4話だ。
この4話こそがある種の始まりであり、
カプリがタリアに自らの入れ物としての価値を見出すことで、
物語が一気に動き出す。
限界を迎えたタリアの体、何かができそうでできないキング、
撮ることしかできないロマン、カプリの力を取り入れ自らの過去を知るD。
複雑に絡み合う物語が1本の道へとつながっていく。
特別
誰しもが特別な存在に憧れる。
Dは復讐者として、ロマンは撮影者として、タリアは強い人間に。
だが、誰しもが特別な存在であるとは限らない。
それを「キング」はよく知っている。
それでも3人の若者は自らを特別視している。
タリアはそれを受け入れようとしたが、カプリの存在が彼女の肉体を書き換えてしまう。
ロマンはDの復讐映像を撮影し、ネットで公開することで、
彼の撮影、編集技術を認める者も出てくる。
Dはカプリの力を手に入れ復讐者として行動するが、
復讐相手も死んでいることを知る。
ロマンもまた、そんな彼の姿を撮影することに疑問を感じ、
タリアは半分しかないカプリのもう半分を手に入れようとしている。
3人は受け入れることができない。
自らの弱さを、思いを、特別ではない自分を。
前作とのつながりもしっかりと生まれ、
狂っていくDの姿がナイトシティという街を、
サイバーパンクという世界を象徴しているかのようだ。
タリアの母もそうだ。
体が弱い娘が自らの手足を切り落とし、
インプラントを埋め込んでいく姿を受け入れきれず、
終盤には「体ごと」入れ替えることもなかなか受け入れられない。
自らの子どもが死ぬこと、変わっていくことを彼女は受け入れきれていない。
この作品は受容することの物語だ。
人生において諦めないといけないこともある。
だが、諦めきれないことのほうが多い。
それに執着するせいで、より多くのものを失ってしまう。
Dはチップを、タリアは母を。
もっと早く受け入れていれば失うものはなかった。
終盤で彼らは多くのものを失い、失ったからこそ、
「受け入れる覚悟」をしていく。
受容
終盤、Dの顔はどこかスッキリしている。
復讐のために多くの人を殺し、その復讐に意味がなかったことを知り、
絶望し、彼は彼なりに受け入れている。
後ろを向いていたDが前を向いていく。
タリアもまた母を失い、自分すら失いかける中で「父」を救う。
後ろを向く者に、過去に囚われる者に、
それぞれが前を、未来を示そうとしている。
誰かの人生を、物語を記録し続けていたロマンも、
自らの未来と人生を切り開く。
1クール全10話で、もう一人のデイビッドの物語を
前向きに美しく描いている作品だった。
総評:狂気なきサイバーパンクの存在意義
全体的に見て前作ほどのインパクトはないものの、
それでも「ナイトシティ」という舞台でサイバーパンクな世界観を
きっちりと描いている。
前作と同じ感じを期待してしまうとやや肩透かしを食らう部分はあり、
アニメーションの魅力としては前作のほうが上回っている部分もある。
キャラクターも群像劇にしてしまったがゆえにやや散漫な感じは残っており、
ロマンを含む一部のキャラに関しては掘り下げ不足に感じる部分が
最後まで見ても残るところだ。
1話、序盤だけでは物語の掴みどころがなく、
話が積み重なることでこの作品の方向性と面白さが滲み出してくる。
この作品は、前作のように最初からキャラクターの魅力で引っ張る作品ではない。
それぞれの人生を少しずつ描き、互いの関係性を積み重ねることで、
ようやく登場人物たちの魅力が見えてくる。
序盤の散漫さは最後まで欠点として残るものの、
それが単なるキャラクターの多さではなく、
一つの物語へと収束していくための準備でもあったことがわかる。
前作のような狂気も、刺激も、疾走感もない。
正直なところ、アニメーションとしての魅力は前作のほうが上だと感じている。
だが、それは今作が前作の劣化版であることを意味しない。
前作が死へと突き進む物語だったのならば、
今作は死を乗り越えて生きていく物語だ。
同じナイトシティを舞台にしながら、まったく異なる方向性の物語を描いた。
この作品は、前作を超えようとした続編ではない。
前作とは違う答えを出そうとした続編だ。
そういう意味での対比が生まれており、
作品の方向性自体は180度違うといえる。
前作と同じ感じではなく、前作とは違う方向性で、
サイバーパンクな世界観を楽しませてくれる作品だった。
個人的な感想:3
序盤はピンとこない部分が多く、前作がわかりやすい
エンタメあふれる刺激的な作品だったがゆえに、
今作のどこかしっとりとした感じを受け入れるのに時間がかかったが、
中盤からはこの作品をしっかりと楽しむことができた。
前作は多くのものが死に、受け入れられない破滅の物語。
今作は多くのものが生き、受け入れることで前に進む物語を描いた。
ならば、もし次回作があるならばどうなるんだという好奇心も生まれ、
この世界観の優秀さを噛みしめるような作品だった。
ただ、個人的に言えばやはり前作のほうが好みという意味では
勝っており、好き嫌いは良くも悪くも分かれそうな作品だなーとも
感じる作品だった。



