「炎炎ノ消防隊」レビュー

アクション

評価 ★★★☆☆(41点) 全24話

あらすじ 太陽暦佰九拾八年、東京皇国。この世界は、とある大災害を境に始まった人体発火現象「焔(ほむら)ビト」による脅威に苛まれていた。引用- Wikipedia

1クール耐えろ!耐えるんだ!

原作は週刊少年マガジンで連載中の漫画作品。
監督は八瀬祐樹、製作はdavid production。

消防隊


画像引用元:炎炎ノ消防隊 1話より
©大久保篤・講談社/特殊消防隊動画広報課

タイトルでも分かる通り、この作品は消防隊の話だ。
だが彼らが消すのが普通の火ではない。
人体自然発火現象が起こる世界、
そんな自然発火から生まれる「焔ビト」という怪物。
この世界における消防隊はそんな「焔ビト」の対処をしている。

1話早々に主人公の前に「焔ビト」が現れて消防隊が対処をする。
よくわからない能力、シスターの「祈り」という謎の要素、
そして主人公が脚から火を出しシスターのピンチを助ける。
彼もまた「消防隊」の新人であり、そんな彼の入隊から話が始まる。

やや淡々とした始まりはあまり「面白さ」というのは感じない。
本来はインパクトを出すべき1話の冒頭の戦闘シーン、
作画こそしっかりしておりよく動いているのだが、
シンプルに言えば「ワクワク」しない。

よく動いてるだけで、そこに戦闘シーンにおける面白さがなく、
特に主人公やキャラクターの魅力も感じず、インパクトがない。
淡々と静かに粛々と。本来は盛り上がるべき部分が盛り上がらず、
会話の間も気になる部分が多く、小石に躓くようなテンポの悪さを感じさせる。

例えばヒロインの一人が主人公を見て「運命」と顔を赤らめる。
そんなヒロインを見てもうひとりのヒロインであるシスターが
頭にチョップを叩き込む。いわゆるツッコミだ。
そんなツッコミですら間が悪い。

チョップを受けてから5秒だ。5秒間、無言だ。
ツッコミを受けてから5秒間も無反応という意味不明な間のとり方のせいで、
ギャグの締りが悪くなってしまっており、笑えるものも笑えない。

会話と会話の間が1秒ないし2秒おそく、
1つ1つの台詞もゆっくりと声優さんが読み上げている。
特に1話は世界観の設定の説明が多い為余計にそう感じやすく、
なぜ大切な1話がここまでテンポが悪いんだ?と思うほどだ。

1話の時点でなぜ主人公が消防隊に入り「ヒーローを目指してるのか」まで
過去回想をたっぷりと入れながら描かれる。
もうこの過去回想ですら台詞読みが遅い。
過去回想もぶつ切りにいれるため、いいかげんにしろと思うほどだ。

2クール構成の作品であるがゆえに尺の余裕があるのはわかるが、
この躓くようなテンポの悪さは、作品の面白さを素直に感じさせてくれない。
1話から演出の悪さ、脚本の出来栄えの悪さを感じさせてくれる。

ヒロインの一人も明らかに周囲のベテラン声優から浮くほどに
新人感ビンビンの演技をしており、違和感が凄まじい。
アニメーションとしてのクォリティは高いのに、
そんなクォリティを押し殺すようなテンポの悪さや演技が残念でならない。

演出


画像引用元:炎炎ノ消防隊 2話より
©大久保篤・講談社/特殊消防隊動画広報課

カメラワークや台詞の間も本当に謎であり、
なんでその場面でそのカメラワークなの?と思うようなシーンや、
思わず台詞と台詞の間が伸び過ぎて膝カックンを食らったような感覚になる。

1話こそ作画の質がよくグリグリ動いている戦闘シーンが描かれており、
間の悪さや演技などは気になったものの、
アニメーションしてのクォリティは高い1話だった。
物語の導入であるがゆえに説明しなければならない部分も多く、
テンポが悪くなるのも致し方ないのかもしれないと思う部分もあった。

しかし、2話から明らかに作画の質が落ちる。というよりも手を抜いている。
キャラを後ろから映す、遠いアングルから映すなどの作画の省略化も目立ち、
シーンによってはキャラの眼の描写すらない。

1話は気合の入ったアニメーションで魅せていたのだが、
2話以降は明らかに息切れしており、
そんな息切れをごまかすためのカメラワークや演出が目につく。
まるで必要のないスロー演出や、無音になるシーンも多く、
無駄な演出があまりにも多い。

テンポも悪ければ間のとり方も悪いのに余計な演出が多い。

ギャグ


画像引用元:炎炎ノ消防隊 3話より
©大久保篤・講談社/特殊消防隊動画広報課

基本的にこの作品のギャグは滑り気味だ。
前述したテンポの悪さと間の悪さのせいで笑えるものも
笑えなくなってる部分はあるが、正直理解しにくい部分も多い。
特にメインキャラの一人の「ラッキースケベられ」体質。

ちょっとしたことでラッキースケベ的な状況になってしまうという
謎の体質らしいのだが、自分からこけたりして抱きついたかと思えば
お尻を触られてしまったり、胸を触られてしまったりする。これだけだ。
「ラッキースケベられ体質」と言葉は変えているものの、ただのドジっ子でしかなく
特にその体質だからこその新鮮なラッキースケベシーンがあるわけでもない。

日常シーンでのギャグの中で描かられるだけならまだ理解できるが、
シリアスなシーンでもその「ラッキースケベられ体質」から巻き起こる
ラッキースケベシーンを入れるのもたちがわるい。

消防士ってなんだっけ?


画像引用元:炎炎ノ消防隊 4話より
©大久保篤・講談社/特殊消防隊動画広報課

序盤こそ世界観の設定通り焔ビトが現れて、それに対処する主人公たちが描かれる。
しかし、その中で「敵」が暗躍する。
主人公の過去の事件に裏があるのでは?と主人公に匂わせたり、
同じ消防隊でも隊によって軍が仕切っていたり、政府が仕切っていたり、
1企業が仕切っていたりと違いがあり、それぞれに思惑がある。

なぜ人体自然発火現象が起こるのか。人体自然発火現象とはなんなのか。
焔ビトとは?というものの謎に迫っているのはそれぞれの隊の共通目的であるが、
隊によっては怪しい動きや裏がありそうな感じのある隊も多い。
話が進めば進むほど新しい隊が出てきて、そこに所属する隊員も出てくる。
新キャラが名前を覚える暇もなくどんどん出てくる。

結局、消防活動そっちのけで内輪揉めだ。
怪しい行動をしている隊に主人公たちの隊がカチコミをかけて
ぶっ潰すと言い放つ始末だ。同じ消防隊同士で焔ビトなにそれおいしいの?
状態で消防隊同士で戦い出す。

内輪もめしてる間に町中に焔ビトが出たらどうするんだという
ツッコミはしてはいけない。この作品の7割は内輪揉めだ。
焔ビトなど無視して、内輪もめを優先するのがこの作品だ。

能力バトル


画像引用元:炎炎ノ消防隊 9話より
©大久保篤・講談社/特殊消防隊動画広報課

結局、この作品でやってることは能力バトルだ。
消防隊員は「火を操る能力」を持っており、それぞれ火の使い方が違う。
主人公は脚から炎を出し飛び回り高速で移動する。
シンプルな能力であるものの、応用が効く主人公らしい能力だ。

炎でプラズマを作り出し剣にするものや、熱を操作して失神を起こさせたり、
基本的に「熱」や「炎」を操ることで各々がそれぞれの技にしている。
これ自体は面白いものの、ある意味で縛りプレイのような状態であり、
消防士なのに水の能力は誰ひとりとして持っていない。
炎縛りの能力バトルだ。

能力バトルはある意味で頭脳戦や駆け引きが重要だ。
しかし、この作品は基本的に脳筋だ。
相手が熱で目眩させるという技を使ってくる、すると主人公は
「動機や息切れや目眩はどれも勘違いだ!」とよくわからない理論で
気合で耐える。

敵が千本桜のような必殺技のようなものを使ってもこれまた「気合」で耐えて、
敵を思いっきり殴って終わりだ。
能力バトルのはずなのにヤンキーの漫画の喧嘩のような描写しか無く、
演出自体は派手だが、戦闘シーンの面白みがない。

内偵


画像引用元:炎炎ノ消防隊 9話より
©大久保篤・講談社/特殊消防隊動画広報課

主人公たちが所属する部隊は消防隊の内偵をし、
各隊が隠している情報や客体の中にいる裏切り者を探し
「焔ビト」を人工的に生み出している人物を探し、その人物に目的を聞き、
焔ビトがなぜ生まれるのかを突き止めていく。

話自体は盛り上がってくる。だが、そんな盛り上がりの腰を折るのがこの作品だ。
せっかく強敵が出てきて、せっかく盛り上がってるのに
「ラッキースケベられ」というギャグ要素を入れてきて
そんな盛り上がりを台無しにする。

真剣な戦いで、真剣な雰囲気のシーンなのに余計なラッキースケベられを
入れることで見る側を呆れさせる。
この作品を楽しめそう、面白くなりそう、ワクワクしそうと画面にのめり込むと、
ラッキースケベられというどうでもいい要素のせいで台無しにする。
ちょっと意味がわからない。

日常シーンでラッキースケベられなシーンを入れるのはギャグにもなり、
セクシーな要素で女性キャラの魅力を際立たせる意味合いもあるだろう。
だが、戦闘シーンでは全く必要がない。
1クールの終盤、中ボス的な敵との戦いまで
それをやられるのはさすがに萎えてしまう。

せっかく盛り上がりそうな中ボス的な存在との戦いも短く、
短いならラッキースケベラレなんてどうでもいいシーンを入れずに、
一気に決着まで描いてしまえばいい話だ。
その後でたっぷりラッキースケベられをやればいい。

「空気を読まないギャグ」がこの作品の面白さの腰を折っている。
せっかく戦闘シーン自体が面白くても、そんな戦闘シーンを
ラッキースケベられで台無しにしてしまう。


画像引用元:炎炎ノ消防隊 5話より
©大久保篤・講談社/特殊消防隊動画広報課

この作品のキャラクターは基本的に癖が強い。
ラッキースケベられもそうだが、自分を騎士と思いこんでるキャラだったり、
ドSな女王様みたいなキャラだったりとピーキーとも言える極端な
キャラ設定のキャラが多い。

キャラクターが多い作品だからこそ、そういった癖をつけることで
出番が少なくても印象付けられるようになっており、
キャラは多いものの印象に残るキャラは多い。

キャラクターはカッコイイキャラも可愛いキャラもいるのに、
それを序盤から中盤までの「ストーリー」の中で
うまく魅せられていない歯がゆさを感じさせる。
敵キャラも癖が強く、狂ったキャラクターも多く本来は魅力的だ。

浅草編


画像引用元:炎炎ノ消防隊 12話より
©大久保篤・講談社/特殊消防隊動画広報課

中盤をすぎるとようやく敵サイドも本格的に動き出し、
主人公たちの前に現れてくれることも多くなるため、
内輪揉めが減り、戦闘中のラッキースケベられなんていう
余計な要素がなくなる「浅草編」からこの作品の面白さがようやく出てくる。

なぜ最初から浅草編のような真っ直ぐな戦闘シーンが描かなかったのだろうか?
話のテンポもどんどん早くなっていく。
早すぎて展開が慌ただしくなってる部分もあるものの、
17話辺りからの怒涛の展開は「見ていて面白い」ストーリー展開と
「見ていて面白い」戦闘シーンをきちんと描写している。

もっと序盤でこの作品における「能力バトル」のきちんとした
面白さが出てくれば作品全体の印象は違ったのに、
序盤から中盤までがあまりにも色々な部分で怠け過ぎだ。

強敵との戦いで圧倒的力の差を感じ、修行をし必殺技を身につける。
こういった「王道」の展開を18話でようやく見せてくれる。
ラッキースケベられ要素も19話にしてようやくうまく使ってくれる。
尽く、本当に尽く中盤から「序盤からなぜこういうふうにできなかったんだ」と
思わせてくれる要素ばかりだ。

1クール目と2クール目で印象がガラリと変わる。

終盤


画像引用元:炎炎ノ消防隊 22話より
©大久保篤・講談社/特殊消防隊動画広報課

特に終盤の戦闘シーンは凄まじい。
他の作品で「暗い中での戦闘シーン」はあまり印象がないが、
この作品はそんな「暗い中」という状況をうまく使っている。
主人公が力を使う際に脚から吹き上がる炎が爆発し、
暗い空間が一瞬だけ明るくなり、キビキビと動き回るアクションシーンに
瞬きする暇もないほどの目まぐるしい戦闘シーンを見せてくれる。

主人公はハイスピードで動き回る加速の能力だ。
一方で敵は「時間停止」の能力だ。
自身の熱をたぎらせる主人公と、空間の熱を奪う敵。

二人は兄と弟だ。血のつながった兄弟が正反対とも言える力を持ち、
彼らの運命が敵対させる。燃える状況だ。
弟のために自らの限界を超え戦いの中で成長する。
「コレが見たかった」と思えるほど少年漫画の主人公として、
能力バトルとしてしっかりとした面白さが詰まっている。

2期を前提としたストーリー構成であり、
色々な謎が残っているものの、ここからより面白くなりそうな感じを
強く残したまま1期が終わっている。

総評:惜しい


画像引用元:炎炎ノ消防隊 1話より
©大久保篤・講談社/特殊消防隊動画広報課

全体的に見て惜しい作品だ。
序盤から中盤にかけて様々な部分で問題が非常に多く、
この作品の「面白さ」を素直に感じられないようになってしまっており、
妙な間、遅いテンポ、一部声優の演技、ラッキースケベられと、
序盤もしくは1クール目で切ってしまっている人も多いと感じるほど、
この作品を素直に楽しまさせてくれない。

ただ中盤をすぎると、序盤で感じた欠点がかなり改善されており、
妙な間は減り、テンポも早くなり、ラッキースケベられも正しく使われ、
戦闘シーンの激しさ、ストーリーの盛り上がりが中盤以降から出てくることで、
中盤以降は「能力バトル少年漫画原作のアニメ」らしい
しっかりとした面白さを感じさせてくれる。

本当に残念な作品だ。中盤以降のクォリティが序盤からきっちりとあれば、
恐らくもっと多くの人がこの作品を好きになったに違いない。
しかしながらTVアニメにおける「序盤」で蹴躓いてしまった感じが強く、
結果的に、もったいなさと惜しさを感じる作品だった。

恐らく2期は1期の段階ですでに決定済みだったのだろう。
2クール尺であり、尺にも余裕があったために序盤の妙な間やテンポの遅さで
尺稼ぎをしていた感じが否めない。
戦闘中のギャグやラッキースケベられは好みの問題はあるものの、
序盤の変な間やテンポの遅ささえなければとひしひしと感じてしまう作品だった。

2期ではこの盛り上がりのまま話が続くことを期待したい。

個人的な感想:よくよく考えると


画像引用元:炎炎ノ消防隊 4話より
©大久保篤・講談社/特殊消防隊動画広報課

中盤以降、ほとんど焔ビトの相手をしていない(笑)
人体自然発火現象であるがゆえに焔ビトは主人公たちの担当区域にも
出るはずなのだが、序盤のカチコミのときも浅草に行ったときも、
終盤の敵との戦いのときも、主人公たちの担当区域は大丈夫なのだろうか?
ほとんど彼らは消防隊として活躍していない。

能力バトルとして終盤かなり盛り上がってきたが、
戦闘シーンがすごかかったためごまかされた感じはあるものの、
あれこれ理屈はつけているものの流石に「時間停止」はやりすぎた感もある。
2期でどんな能力バトルを見せてくれるのか期待している部分もあるが、
その反面でこれ以上とんでも能力が出てくるとやや引きそうな自分もいる。

原作はそろそろ終わりのようなので、2期で完結することはあるのだろうか?
良くも悪くも2期に期待したい作品だ。

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