「推しが武道館いってくれたら死ぬ」レビュー

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コメディ
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評価 ★★★★★(82点) 全12話

あらすじ フリーターのえりは、岡山県で活動している7人組の地下アイドルグループ「ChamJam」の人気最下位メンバー・舞菜の熱狂的ファンで、自他ともに認める舞菜トップオタ引用- Wikipedia

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ファンが主役のアイドルアニメ!?

原作は月刊COMICリュウで連載中の漫画作品。
製作はエイトビット、監督は山本裕介。

アイドルに恋をして


画像引用元:推しが武道館いってくれたら死ぬ 1話より
©平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

1話冒頭で描かれるのは20歳の女性がとある
地下アイドルのライブを見るところから始まる。
些細なきっかけで「アイドル」にはまり「推し」に殺されかかる。
アイドルアニメにおいて、本来主役は「アイドル」だ。
アイドルたちのそれぞれの物語を描くのがアイドルアニメだ。

しかし、今作はやや異色とも言える。
なにせ物語の主役たる女性は「ファン」だ(笑)
収入のすべてを推しに貢ぎまくり、私服すら高校時代のジャージという
「ガチ勢」すぎるファンだ。

この作品はアイドルアニメでありながらアイドルではなく、
ガチ勢すぎるファンを主人公にした作品だ。
彼女はライブ中に応援していて興奮のあまり鼻血を出すほど
推しに熱心なファンだ。

アイドルアニメが多く生まれる中で「ファン」を描写する作品は
「ミリオンドール」などの作品もあったものの、
あの作品は色々と問題も多く、正直駄作でしか無かった。
しかし、この作品は1話からそんな「ミリオンドール」ができなかった
「アイドルファン」の面白さをひしひしと感じさせてくれる。

ファンの多いアイドルとファンの少ないアイドルのファンが
1話から取っ組み合ってるようなアニメだ。
美人では20歳な女性がガチ勢なファンという面白さもあり、
そんな主人公と典型的なオタクが一緒に同じファンとして仲良くしている
違和感が笑いにつながっている。


画像引用元:推しが武道館いってくれたら死ぬ 1話より
©平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

アイドルの5秒を1000円で買う、それがアイドルファンである(笑)
お金を出してこその快楽を彼らは味わいつつ、
主人公はそんな推しの時間を独占するために握手券を買い占める。
しかし、そんな主人公が推している「舞菜」は塩対応だ。
ファンが少ない彼女は同じグループの事比較しても明らかに人気がない。

唯一のファンと言ってもいい主人公が最前列に居座っても
目線すら合わせてくれない。握手でも主人公に笑顔すら向けてくれない。
「なぜ彼女は塩なのか?」という部分が気になりつつも、
この作品がどういう方向に話が進んでいくのか?というのが気になる。

エンディングテーマが「桃色片想い」のカバーなのも、
アイドルを題材にして、なおかつ片思いなファンを描く
この作品にマッチしている。
ただそれと同時に「桃色片想い」がわかるのは20代後半以上なのでは?
という疑問は生まれる(笑)

塩対応をしてるはずなのに楽屋では主人公に対しての思いをつのらせている。
典型的な気持ち悪いとも言えるオタクなファンたちの生態を描写しつつ、
そこに美人では20歳な女性が紛れ込むことで、
この作品はしっかりとした面白さが生まれている。

ファン同士の交流


画像引用元:推しが武道館いってくれたら死ぬ 2話より
©平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

この作品は本当に、ある意味で生々しいとも言えるファン同士の会話をしている。
主人公が応援している「まいな 」は主人公があまりにも熱心に応援するため、
逆にファンが増えない原因にもなっており、グループの中では人気が低い。
逆に主人公と同じアイドルグループのファンでもある「くまさ」が推してるのは
グループでも1番人気の子だ。

同じグループでも応援しているメンバーによってはファンの立場にも違いが出る。
イベントに出演となれば当然人気のメンバーは優先される、
応援している「くまさ」もそれを当然と思い、逆に人気のないメンバーを
応援している主人公も「どうせ私が推しているアイドルは出る可能性が低い」と
やさぐれる。

そんな「ファン同士」の立場による会話がきちんと描かれており、
彼らが喫茶店でだべってるだけのシーンも多い。
だが、そんな「だべり」がこの作品はしっかりとした面白さがあり、
「アイドルのファン」という「アイドルのファン」を知らない人にとっては
未知の世界をどこか生々しくリアルに描いてるからこそだ。

特に「くまさ」は見た目こそ、いわゆる「キモオタ」だが、
彼がある意味でアイドルのファンの鑑ともいえる行動や、
名言とも言えるような台詞を放つ。

「僕は誰の1番になれないって分かってますから、
せめて僕が1番レオのことを好きでいたいんです。」

自分自身の外見や性格、世間から見た自分の評価をわかっているからこその
自己評価の低さではあるものの、そんな自分自身を自覚している中で
彼がなぜ「アイドル」を応援するのか。
そんな彼の生き様が少し涙腺を刺激されるほどだ。

全身ブランドで固めてもダサい、そんな「くまさ」というキャラクターが
ある意味で主人公より主人公をしている時がある。
彼がアイドルのファンとして「報われる」シーンは、
涙なしに見れない人は少なくないだろう。

すれ違い


画像引用元:推しが武道館いってくれたら死ぬ 3話より
©平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

主人公が推している「舞菜」は緊張してしまうがゆえに、
主人公に対して素直になれない。本来は自分だけを見てくれてる主人公に
対して想いがある。

そんな態度であるからこそ主人公も自分のことを
「好きじゃない」と勘違いしている。この互いの気持ちの勘違いが
「すれ違いコメ
ディ」のような会話劇を生み出している。
それがギャグにもなっているのだが、この作品の場合はどこか切ない。

シチュエーションが、性格が、ありとあらゆる要素が二人の想いを
ストレートに通じあわせてくれない。
他のファンとの関係性に嫉妬を抱いたり、推し変したんじゃ?と不安になったり。

自分の気持ちに素直になれないアイドルと、素直すぎる主人公。
そんな二人の通じない想いのすれ違いを笑えるのと同時に、どこか切ない。
なかなか実らない青春ラブコメでも見ているような感覚だ。

この作品はギャグアニメでもありつつ、
日常アニメでもありつつ、恋愛アニメでもある。

アイドルのファンである主人公たちの立場、アイドルとしての彼女たちの立場、
そんなそれぞれの立場には渡れそうで渡れない川が流れている。
そんな切なさに主人公たちは時折気づいて絶望するものの、
それでも主人公たちはアイドルたちを応援し続ける。

例え自分の思いが伝わらずとも、例え塩対応されても。
「アイドルのファン」とはなんなのか、
この作品で描きたいことが徐々に見てくる。

アイドル


画像引用元:推しが武道館いってくれたら死ぬ 4話より
©平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

この作品の主役はファンではあるものの、アイドルもきちんと描かれる。
アイドルである彼女たちはある意味で「理想的」なアイドルだ。
アイドルとしてファンとの恋愛は考えておらず、同じグループの子と
人気を争うことはあるものの、陰鬱な展開になるわけではない。
ファンが願う理想的な仲がいい岡山のアイドルだ。

主役たるファンたちが必死に応援するアイドルだからこそ、
見ている視聴者も応援したくなるようなアイドルでなければならない。
そんなことは百も承知だと言わんばかりの、理想的なアイドルである彼女たち。
そんな理想的なアイドルたちである彼女たちもアイドルとして
ファンの想いに答えようとしている。

そんな理想的で思いに答えようとしてくれているアイドルたちが
ファンの想いに必死に答えようと頑張り、アイドルとしてアイドルであろうと
する彼女たちの姿にも不思議と涙腺を刺激される。
アイドルたちもアイドルとして思うことがあり、
そんなアイドルの物語も描かれるからこそこの作品は面白い。

ファンの推し変に悩み、自分の立場や立ち位置に悩む彼女たち、
ファンにとっての1番になるにはどうすればいいのか。
アイドルたちの中にもアイドルに対するあこがれがあり、
アイドルとして「理想」な彼女たちの行動や台詞、
応援したくなるアイドルがこの作品には存在する。

一人一人にきちんと物語がある。アイドルとは物語だ。
そういわんばかりの「物語」をきちんと描き、
最初は印象が薄かったアイドルたちが一人一人きっちりと掘り下げられることで、
主人公たちと同じように彼女たちを応援したくなる。
アイドルであろうとする彼女たちはプロだ。

この作品はアイドルアニメであり、主人公はファンであるものの、
きちんとアイドルアニメとしてアイドルを描いている。
アイドル同士の関係性が「百合」っぽいのもある意味でファンの理想だ(笑)
そんな百合なアイドル同士の関係性をニヤニヤしてみてしまうのも
オタクであるがゆえの性だ。

それぞれのアイドルの物語を描きつつ、そんなアイドルを応援するファンを描く。
アイドルはなにか、ファンとはなにか。
そんなことをこの作品は描いている。

武道館


画像引用元:推しが武道館いってくれたら死ぬ 1話より
©平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

この作品のタイトルの「武道館」は推しの夢だ。
ローカルアイドルである彼女たちにとっては遠い夢であり、
現実味を感じてないメンバーも居る。

だけど、ファンにとっては純粋な願いだ。
応援しているアイドルが「武道館」に行く。
アイドルを応援している彼らにとって「武道館」は特別なものであり、
そんな特別なものだということがこの作品では痛いほど伝わる。

推しが武道館に行ってくれたら死ぬ。
1話ではギャグにしか聞こえなかったそんな台詞が、
話が進めば進むほどギャグではなく、彼らの本意であることが伝わる。

アイドルファン


画像引用元:推しが武道館いってくれたら死ぬ 11話より
©平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

彼らの行動や台詞はいちいち面白い。
推しに対する想い、イベントなどでの行動、
「アイドルファン」というものを知らないからこそ、
この作品で初めて知るようなことも多い。

そんな中で彼らや主人公の台詞が光る。

「なんで私は舞菜を生んでいないんだろう」

もはや意味不明だ(笑)愛が深いがゆえに、全てを知りたい。
そんなファンの重すぎる愛をセンスのある台詞でさらっとつぶやき、
そこに笑いが生まれている。

ローカルアイドルだからこそのファンとアイドルとの距離感の近さが、
よりアイドルとファンの関係性をより強固にする。
これが全国的なアイドルならこの作品の物語が描けない。
ローカルだからこそのシチュエーションをうまく活かしている作品だ。

フェス


画像引用元:推しが武道館いってくれたら死ぬ 12話より
©平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

ローカルアイドルたちがアイドルのフェスに出る。
1つの通過点だ、武道館に向けて避けては通れないフェス。
彼女たちは決して人気がすごいアイドルではない。
だが、フェスには多くの人気アイドルたちが出る。

だからこそ比べてしまう、自分たちと人気のアイドルの差を。
かつて同じグループだった子が「武道館」に出るという事実を聞いて
打ちひしがれることもある。だけど、彼女たちは諦めない。

「努力が必ず報われるわけじゃない、でも…
全部がムダになっちゃうわけないと思う」

1クールで見ている側も彼女たちのファンになっている。
そんな彼女たちの「努力」が最終話で描かれる。
いつも以上に大きな舞台、多くの観客たち。
だけど、いつものファンも居る。

彼女たちの精一杯のライブ、そんなライブを精一杯応援するファン。
アイドルとファンが一体になった「ライブ」シーンは
思わず声を上げて応援したくなるほどだ。

アイドルもファンも「最高だった」といえるライブ。
それが最終話で描かれる。アイドルの物語と、
ファンの物語を最終話でも感じさせてくれる。

そして最終話に思いが通じる。
すれ違いっぱなしだった主人公と「舞菜」の握手は
見てるこちらも笑顔になってしまうほど幸せな空間だ。
なぜアイドルを応援するのか、この瞬間のためなのかもしれないと
感じさせてくれるラストシーンだ。

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総評:アイドルファンの本質を問う


画像引用元:推しが武道館いってくれたら死ぬ 12話より
©平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

全体的に、笑って泣ける素晴らしいアイドルアニメだ。
アイドルアニメに置いて本来は主人公はアイドルなのが主流だが、
この作品は「ファン」に主軸を置くことでアイドルの物語に厚みを出している。
アイドルたちの物語を描きつつ、そんなアイドルたちを応援するファンの
物語も描くことで、より「アイドル」というものを好きになれる。

いや、地下アイドルグループ「ChamJam」が好きになれる作品だ。
アイドル一人一人に悩みや葛藤があり物語がある。
そんな物語を支えるのがファンだ。
彼らの熱心な思い、一途な気持ちがあるからこそアイドルは存在する。
ファンがあってのアイドルであり、アイドルあってこそのファンだ。
そんなアイドルとファンのつながりをこの作品では強く感じられる。

アイドルアニメでありながら主人公はアイドルファン。
そんな異質な設定のはずなのに、この作品はきっちりとアイドルアニメだ。
他のアイドルアニメに負けていないくらい「アイドル」というものの
本質まで描こうとしている。

だからこそ、ずっと彼らと彼女たちの物語をもっと見ていたくなる。
彼女たちが「武道館」に行くまで、彼らとともに見ていたい。応援したい。
そう感じさせるほど「アイドルアニメ」としての完成度が高く、
見てるうちに地下アイドルグループ「ChamJam」のファンになる作品だ。

なぜアイドルを応援するのか、なぜファンになるのか。
そんな疑問に答えてくれるような「アイドルを応援することの楽しさ」を
しっかりと感じさせてくれる作品だった。

個人的な感想:アイドルアニメはやっぱり良い。


画像引用元:推しが武道館いってくれたら死ぬ 12話より
©平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

この作品は地味にライブシーンにもこだわりがある。
アイドルアニメの場合、多くは「3DCG」による描写だ。
しかし、今作品はそんな3DCGに頼らずに描いている。
そこに制作側の強い愛情を感じる作品だった。

1話の時点では主人公がファンであることを主軸にしたギャグアニメか?
と感じたが、話が進めば進むほどいろいろな要素にあふれている作品だった。
アイドル同士の百合、アイドルの物語という青春、
ファンのセンスあふれる台詞や行動でのギャグ。
1つ1つの要素がきっちりと描かれており、それが1つの作品としてまとまってる。

笑える作品はある、泣ける作品はある。
だが笑って泣ける。そんな作品は意外と少ない。
この作品はそんな笑って泣ける作品だ。
キャラクターも、製作も、声優も、物語も、この作品は愛に溢れてる。

最終話のエンディングで涙腺が崩壊する。
そんな作品を是非見ていただきたい。

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