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「彼方のアストラ」レビュー

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評価 77点 全12話

あらすじ 西暦2063年、「大自然の中、生徒だけで5日間を過ごす」という惑星キャンプの目的地である惑星マクパで、ケアード高校の生徒たちが遭難する。引用- Wikipedia

完成されたSFミステリー

原作は漫画な本逆打品。
監督は安藤正臣、制作はLerche。
1クールのアニメであるものの1話と最終話は1時間構成という
やや特殊なストーリー構成になっている。

惑星キャンプへ行こう!


画像引用元:彼方のアストラ 1話より
©篠原健太/集英社・彼方のアストラ製作委員会

物語はヒロインが学校の「惑星キャンプ」に
旅立つところから始まる。
出発地点に向かう中、自然な流れでメインキャラクターが集い、
一人ひとりのキャラクターがわかりやすく印象付けられる。

ヒロインはどこかおっちょこちょいで抜けてて、
主人公は脳筋肉っぽい体力に自信のあるタイプ、
そこに暗そうなメガネの女性や背の小さな女の子と
「わかりやすい」キャラクターが集まる。

キャラクターデザインも非常に優秀で女性キャラは可愛らしく、
髪型や髪色でしっかりとキャラ分けしており、
序盤からコミカルかつギャグが多い。

そんなコミカルな雰囲気から一気にシリアスな雰囲気へと変わる。
訪れた惑星に現れた「謎の球体」に吸い込まれ、
彼らは宇宙へと投げ出されてしまう。
登場人物たちにも見てる側にも何が起きているかわからない。

わからないからこそワクワクさせてくれる。
1話から「主人公」の主人公らしい自己犠牲的な行動,、
メインキャラクターたちのよる「協力」でトラブルを乗り越える姿は
まるで1本のSF映画を見ているような気分にさせてくれる。

5012光年も離れた惑星に飛ばされた9人、
3日分しか食料もない中で彼らは無事生還できるのか、
なぜ彼らは飛ばされたのか。
1話を1時間構成にしたことで物語における起承転結の起を
しっかりと見せ、先の展開が自然と気になるようになっている。


画像引用元:彼方のアストラ 2話より
©篠原健太/集英社・彼方のアストラ製作委員会

1話1話、手に入れた食料で行ける惑星をめぐりながら彼らは
自分たちの惑星に帰ろうとしている。
人類と呼べる存在の居ない、未知の惑星に降り立ち、
食料と水を確保しながら彼らは星をめぐる。

そんな中でトラブルが起ることもある。
未知の惑星ゆえに未知の植物や生物がいる、そんな動植物に
襲われたりしながらも彼らは協力して立ち向かう。
一人ひとりができること、一人ひとりがやれることを、
協力して乗り越えることで困難に立ち向かっていく。

まっすぐなストーリーだ。
王道と言ってもいいくらいに心地よささえ感じさせ、
そんな王道のストーリーを「コミカル」に描きつつ、
時にはメインキャラクターたちの過去を掘り下げるシリアスを描きつつ、
互いに互いの理解を深めていく。

1話1話で描きたいこと、焦点を当てる部分がしっかりしており、
話が進む度に登場人物たちの印象が深まり、彼らの旅路が面白くなる。
本来は危機的状況でシリアスな雰囲気がもっと出ても
おかしくない状況だが、ギャグシーンが多く、軽いノリで
描かれることで変に重くなりすぎない。

人狼


画像引用元:彼方のアストラ 3話より
©篠原健太/集英社・彼方のアストラ製作委員会

そんな適度なギャグとシリアスの中で
「裏切り者」の存在が匂わされる。
意図的に壊されていた通信機、
襲いかかってくる何らかの意図を感じる謎の球体、
誰が、どうして、なぜ、こんなことをしているのか。

ミステリーの要素が物語としての引きを生んでおり、
王道なストーリーを王道に見せるのではなく、
ミステリー要素を足すことで王道の裏側を見せるような
ストーリーになっている。

主人公の目線で「裏切り者は誰なのか」を探らせる。
やや「人狼」のような要素がこの作品にはある。
話が進めば進むほど彼らが巻き込まれているなにかが紐解かれていく。

ランダムに選ばれたはずのメンバーではなく、
意図的に「一斉殺処分」されそうになった事実。
閉鎖空間という逃げ場がない中で、裏切り者がいる。
疑心暗鬼が強まり、もっとシリアスがになってもおかしくないのに
この作品はさらっとギャグを入れ明るくする。

キャラクター本来の性格や明るさから生まれるギャグが、
ギスギスした雰囲気を長引かせず、話としては重いはずなのに
この作品のコミカルさが、
いい意味でこの作品を軽く見やすいものにしている。

裏切り者がいるかも知れない中でキャラ同士の関係性が深まり、
彼らの成長と変化につながっている。
毎話毎話、気になるところで話が終わる区切りの良さも素晴らしく、
自然と次の話を見たくなる。

話が進めば進むほど自然とこの作品の世界観が明かされていき、
それがよりこの作品を深いものにしている。
最初は何もわからない世界観、何もわからない状況、
彼ら自信さえ知らない「彼ら自身の正体」が点と点を結び、
きれいな直線が生まれるようにすべてが繋がっていく。

全てがつながる


画像引用元:彼方のアストラ 9話より
©篠原健太/集英社・彼方のアストラ製作委員会

惑星をめぐるたびの中で彼らは自分のことを話してきた。
自身の過去、家庭環境、どんな親で、
これまでどんな人生を歩んできたか。
キャラクターの印象を掘り下げるための過去回想や雑談ではなく、
それ自体がこの作品の根本部分につながる。

なぜ彼らが殺さなければならなかったのか、
なぜ彼らが集まったのか。
なぜ彼らの親は彼らに冷たかったのか。
衝撃的な事実を知り、1度は落胆する彼らだが、
彼らはそれでも立ち上がる。

惑星をめぐる旅の中で生まれた9人のつながり、
新しい家族の存在が前に一歩進める勇気につながる。

ミスリード


画像引用元:彼方のアストラ 10話より
©篠原健太/集英社・彼方のアストラ製作委員会

この作品は1話からある種のミスリードを行っている。
彼らの名前の印象や、見ている側の当たり前の価値観。
彼らは最初からとある言葉を口にしていない。
自分たちの星に帰るんだ、家に帰るんだとこぼしている。

彼らが目指していたのは「彼方」の「アストラ」だ。
しかし、同時に「地球生まれ」の宇宙飛行士とも彼らは出会っており、
自分たちの歴史と彼女の歴史の認識のズレが生じている。
意図的に隠された歴史、意図的に「地球」の存在を秘匿している世界。

彼らにとっては「神」の知識すらない。
宗教概念や、もともとあった「国」もなくなっている。
地球からきた宇宙飛行士と彼らはある時点で分岐している。
第三次世界大戦が起きた歴史と第三次世界大戦が起きなかった歴史。

1クールの終盤、10話でこんなとんでもない事実が
明らかになってしまう。もう1クールあるのでは?と錯覚するほどに
10話で話のスケールが大きくなる。
そして、このミスリードと伏線は彼らを襲った「球体」の真実にも繋がる

この作品は1話から最終話まで考えつくされた伏線と
ストーリーを逆引きして描いているような作品だ。
キャラクターたちの何気ない台詞でさえ伏線になっている。
それが回収される終盤の展開にはぞわぞわとしたものすら感じる。

明るく言ったあの台詞、コメディのシーンの中での台詞。
それを仲間たちが覚えているからこそ「裏切り者」も変われる。
この作品に意味のない台詞はない。

最終話という名のエピローグ


画像引用元:彼方のアストラ 12話より
©篠原健太/集英社・彼方のアストラ製作委員会

ただ、最終話は意外なほどあっさりとハッピーエンドになる。
世界規模の「嘘」、彼らの出生の問題、本来ならもっと
壮大なストーリー展開になってもおかしくないが、
意外にもあっさりとトントン拍子に物事が解決してしまう。

しかし、綺麗すぎるくらいに話がまとまっており、
最終話は後半からほぼ「エピローグ」だ。
長い宇宙の旅を経て、世界と自らの真実を知った彼らの
それぞれが進む先。

夢を叶え幸せな未来を掴んだ彼らの幸せそうな姿と、
新たな旅路へと向かう姿はすっきりとしたエンディングを見せてくれた。

総評:怒涛の伏線回収


画像引用元:彼方のアストラ 12話より
©篠原健太/集英社・彼方のアストラ製作委員会

全体的に見て非の打ち所のないストーリーがこの作品にはある。
1話から物語の謎を提示し、それをメインキャラクターたちにも
見てる側にも説かせつつ、魅力的な9人のキャラクターを掘り下げ、
シリアスな状況のはずなのに前向きでコミカルな彼らに
感情移入し、最後のハッピーエンドにほっこりとしてしまう。

ミステリー要素としても、視聴者を騙すミスリードをうまく使い、
思わず「そういうことだったのか」と唸ってしまうような
伏線の数々、キャラの何気ない台詞が後の展開に繋がる伏線の使い方は
素晴らしく、純粋にストーリーが面白い。

アニメーションとしても1話冒頭の宇宙空間の描写や、
アクションシーンはしっかりと描かれており、
魅力的なキャラクターを演じる声優さん達の演技も光っている。

欠点を言うならば意外と壮大な設定で重いテーマで
最終話はもう1展開ありそうだったが、意外とあっさり解決し、
大団円になった部分はやや拍子抜けしてしまう部分はある。
ただ原作が全5巻ということを考えると変に引き伸ばさず、
すっきりと終わっている。

ぜひ、あまりネタバレを見ずにこの作品を見てほしいところだ。

個人的な感想:レビュー難しい


画像引用元:彼方のアストラ 12話より
©篠原健太/集英社・彼方のアストラ製作委員会

この作品の場合、ネタバレしてしまうと作品の魅力が半減だ。
ミステリーで犯人の名前とトリックを書いてしまうようなものであり、
あまりにも無粋だ。それゆえにレビューを書くのが難しい作品だった。

この作品の「トリック」を全部知った上でもう1度見返すと、
散りばめられた線に気付けるはずだ。
そういった意味でこの作品は2回見ることで
100%楽しめる作品かもしれない。

「」は面白い?つまらない?

この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください

  1. ヤチロウ より:

    スケットダンスの作者っていうのもあってコミカルに話は進むし重めのストーリー展開も伏線だらけになってて面白く見れた。

    回収した後のスカッと感スゴい!

    マジでオススメ!

  2. 中村博人 より:

    シュヴァルツェスマーケンとか、駄目ですか。