この記事を書いた人
オタク歴25年、アニメレビュー歴13年、YouTube登録者11万人。
個人的な視点で語るアニメ批評です。
評価 ★★★★☆(68点) 全12話
あらすじ 日本は軍閥割拠の戦国時代を経て、大和・武凰・聖夷の三国時代に突入する 引用- Wikipedia
武力0知力100威厳1000
「日本三國」に似てるアニメレビュー
原作はマンガワンで連載中の漫画作品。
監督は寺澤和晃、制作はスタジオカフカ。
未来
この作品は架空の未来を舞台にしている。
疲弊した日本、世界では核戦争が起き、パンデミックも起き、
悪政に苦しめられた国民は「暴力革命」を起こす。
結果として「日本」という国は崩壊し、三国に分かれたというところから
物語が始まる。
創作物において日本は分割、統治されやすい(笑)
コードギアスしかり、仮面ライダービルドしかり、境界戦機しかり。
この作品もそんな分割統治されている日本が舞台だ。
1話早々かなりクセがある。
キャラクターや海など以外はあえて「白黒」で彩られており、
まるで動く漫画でも読んでいるような気分になる。
キャラクターデザイン自体がかなりクセがあり、
そのクセを全開に活かす作画と美術は素晴らしいものがある。
核戦争やパンデミック、暴力革命により
三つに分割したことで文明は退化しており、人々は明治初期くらいの
レベルの生活をしている。
一部の特権階級はその地位と力を利用し、容赦なく民衆を支配している。
彼らの気分を害すればあっさりと死刑にされる。
主人公はそんな光景を目にしても理性を保っている。
妻には改革、日本統治を勧められているが、彼が動くわけではない。
だが、彼の妻は違う。
理不尽な暴力に、理不尽な支配に、理不尽な今に「抗う」意思がある。
暴力ではなく「対話」を求める主人公と、武力をもって制しようとする妻。
この時代においてどちらが正しいとも言えない。
現状維持を求める主人公と変化を求める妻。
この時代において「変化」を求めることには代償が伴う。
権力に逆らった妻はあっさりと権力者に処刑される。
主人公は冷静に、物事を考える。
今にも煮えたぎりそうな復讐心を無理矢理押さえつけ、
妻の血の上で、妻の首を前にして、冷静に「知」をもって対処する。
「力」ではなく「知」で冷静に復讐を誓う主人公の覚悟。
妻の血だけが赤く染まる画面、それ以外をあえて白く染め上げることで
彼の「冷静さ」の心理描写にもなっている。
未来も希望もない世界、色のない世界。
妻の死で絶望した彼の心を表すかのようだ。
火をつけたタバコは赤く色づく。
「この理不尽な世を変える」
彼の人生に目的が生まれ、画面にも色が一気に生まれる。
皮肉にも妻が死んだことで彼の人生が色づく。
復讐という感情が、この理不尽を変えるという情熱が、
物語の主人公を生む。
試験
日本では戦いが常に起こっている。
支配者同士が日本統一を求めて、群雄割拠の戦いに挑んでいる。
この時代に生きる猛者たちはクセが強い。
この時代を生き抜くためにまともではいられない。
兵を率いる者たちは誰も彼も狂っている。
令和の、現実の日本を皮肉るようなセリフやキャラクターも多い。
同調圧力に屈する者、メディアで横文字を使い、わけの分からぬ言葉を使う者、
自らの承認欲求のために「奇行」を演ずる者。
そんな中で主人公もブレない。
奇行を演ずる者を理性的に制止し、自らの目的のために
己を貫き通し、仕官のために試験へと訪れる。
主人公に「武の心得」はない。彼にあるのは口だけだ。
その言葉を武器とし、日本を変えようとしている。
会話劇の中で大胆な演出を混ぜている。
1話ではあえて部分的にモノクロにしていたが、
2話ではそのモノクロな世界が色づいたかと思えば、
文字演出や、モノローグの中の心理描写であえてカラーフィルターをかけ、
その「色」そのものを心理描写にも繋げている。
試験そのものの内容も面白い。
試験官の膝を地面につけるだけでいい。方法は問わない。
武をもってそれをなす者もいる。だが、主人公に武はない。
あるのはその「口」のみ。彼は圧倒的な知識をもって、
現状を改善する案を提示する。
その「知」で主人公は試験官に膝をつかせる。
キャラクター
圧倒的な「キャラ立て」、ブレないキャラクター性が物語を生み、
主人公だけでなく、多くの者が立身出世を狙い、
群雄割拠の日本でトップに立とうとしている。
主人公もまた容赦なく悪政を行う者を罰していく。
時に敵を作り、時に味方を作りながら、
日本という国は混沌としつつ、クーデターも起き始める。
序盤からキャラクターも勢力も多く、あっさり死ぬキャラも多いため
ややキャラの把握がしづらい部分はあるものの、
テンポよく、どこかオシャレにこの混沌とした日本と、
そこに生きる者たちの狂気を描いている作品だ。
これをシリアスに重く描いてしまうと、
キャラやストーリーの理解の前にとっつきにくさが生まれるが、
この作品はオシャレな音楽と、どこかふざけたキャラクターたちが
物語をテンポよく綴るからこそ、人の死という悲惨なシーンですら
良くも悪くも、どこかギャグ的にすら見える。
三国志をモチーフにしているだけあって兵法の引用も多く、
そのあたりの分かりづらさもあるが、
キャラや立ち位置、流れを把握し始める中盤から
「天下」を取るために多くの者が動き出し、
キャラクターの突飛さだけでなく、物語そのものの面白さも増していく。
戦い
中盤で大規模な戦いが起こる。
クーデターが起きて女性が統治している聖夷と、主人公が所属する大和。
だが、大和側の将は子どもでありバカである(笑)
味方の中のスパイにも気づかず、呑気に宴会をしており、
あっさりと攻め込まれてしまう。
戦いの中で犠牲になるのは兵、優秀な部下たちだ。
そんな「ミス」、驕り高ぶりを子どもである将は実感する。
自らを犠牲にしようとした父に真意を確かめるために、
亀甲縛りにした部下とともに戦況を脱しようとする。
この戦闘のシーンでさえ宴会の音楽を流しながら描いており、
作品の重さというのを一切感じさせない。
大和側が大ピンチな状況で、主人公側の使える将
「龍門光英」はたった一人で敵の前に現れる。
龍門光英
この作品はあくまでファンタジーだ。三国志を土台にしながら、
文明が退化した日本で三国志的な戦いを描いている。
かつての日本の建築物が残る中、コンクリートでできた橋やビルはあるのに、
「電気」がない。戦いになれば馬に乗り、刀や銃を使って戦う状況だ。
そんな仮想戦記物、ファンタジーな中で
「龍門光英」はたった一人で敵の前に現れ、茶を点てる。
敵の将が一人で現れたのなら、こちらも一人で将を向かわせなければ
「小心者」と言われ、将の名が落ちる。
論理的ではなく感情的な行動だ。
敵の感情に、この時代の武士の生き方に訴えかける戦略、
「空城の計」だ。
圧倒的に不利な状況でたった一人、将がやってきて
茶を点て、自らに矢が突き刺さろうが動じず、自らに火をつける。
たった一人の将の存在、たった一人の男の「圧」のみで、
敵は「何かあるかも」と感じ撤退してしまう。
この「龍門光英」の「はったり」、
アニメ的なケレン味たっぷりな展開には思わずニヤついてしまう。
若い敵の将は兵の数ではなく「将の質」で敗北を喫す。
威厳
その敗北の代償は大きい。クーデターを起こし、
偽りの「威厳」を見せた若い女性の将が再び威厳を取り戻すために、
天下統一のため、国を変えるため、自らの理想のために、
時には部下の命、家族の命すら捧げる。
「威厳」というのはこういった状況において重要なものだ。
兵を率いて、民を従える。その素質、信頼、威厳がなければ
クーデターであっさりと武によって状況が逆転する世の中だ。
だからこそ、将たるものは武を、知を、威厳を示し続けなければならない。
目的のために今できることを、それぞれがなしていく。
彼らが今しようとしていること、したことが正しいかどうかは分からない。
それが分かるのは後の歴史だけだ。
そんな歴史の中で終盤、主人公が動き出す。
主人公
主人公にまだ権力と言えるものはない。後ろ盾もない。
彼は一志願して兵となっているだけだ。
だが、その「知」からハッタリという名の威厳が生まれる。
自らを舐めてくる者を「知」で制し、
自らの復讐相手を目にしても「日本」のため、自らの目的のために
滾る炎を抑え込む。
序盤は主人公の出番が多かったが、中盤は戦が始まり彼の影が薄くなる。
そこから終盤、一気に主人公の存在感が出てくる。
彼とともに試験を受けた「ツネ」も彼に対して心の中で嫌味を言いながらも
彼の知に、彼の才覚に、彼の威厳に飲み込まれている。
主人公は帝に謁見し、復讐相手と敵しかいない中で
「討論」のみで場を制しようとする。
主人公の国の帝は、主人公の復讐相手の威厳に飲み込まれてしまっている。
帝には権力や立場はあるが、上に立つべき威厳がない。
この戦国の世の中で上に立つ者とはどういうものなのか。
1クールかけてそれを丁寧に描いている。
自らの権力、立場を余すことなく使い、自分の感情のまま動く者、
権力や立場があっても「威厳」のない者、
クーデターで無理矢理、権力と立場を手に入れ威厳を得た者、
権力と立場、そして威厳のある者。
その「威厳」を主人公は帝の前で見せる。
この威厳、はったりこそが天下を制す。
そう感じさせる「圧」をこの作品の主人公は見せてくれる。
戦は常に作戦通りになるとは限らない。
主人公の存在が、新たな威厳を示す者の存在が
戦況を大きく変えることになる。
だが、何もかもが主人公の思い通りになるわけではない。
彼にはまだ権力も立場もない。終盤、ひっくり返され、
主人公が「投獄」されて終わるラストは素晴らしいものがあった。
総評:
全体的に見て素晴らしい作品だ。
1話の衝撃的な展開、あえて一部を白黒にする演出から
2話では一気に色がつき、基本的に会話劇な物語に
これでもか!と演出をつけて盛り立てるアニメーション、
そしてベテランの声優陣の台詞の掛け合いがたまらない。
近未来の日本、文化が衰退してしまった日本で描かれる三国志の中で、
それぞれの「武勇」があり、上に立つ者としての威厳を見せる姿、
そして最後に主人公の威厳を見せ、そこからさらに主人公の復讐相手の
威厳と権力と立場を見せつけてくる展開は見事の一言だ。
クセのあるキャラクターも多く、物語的にあっさりと死ぬキャラも多い上に、
序盤は「勢力」やキャラの立ち位置がいまいち分かりづらく、
キャラクターのセリフも兵法を引用したりと、このあたりの
知識がある前提で描かれている部分もある上に、
大きな流れ、いわゆる大局はナレーションベースで片付けてしまうため、
やや視聴カロリーが高い作品ではある。
だが、ナレーションベースで片付けてテンポよく描いたことで、
シリアスかつ小難しい話をテンポで押し切っている部分もあり、
いざ戦が始まってもシリアスさを感じさせない、
一見合っていないのでは?と感じるようなBGMをあえて起用することで、
この作品だからこその世界観を作り上げていた。
かなり尖った作品であり、好みは分かれる作品だが、
きちんと個性、独自性のある作品だ。
まだ見たことがないという人は、ぜひ1話だけでもご覧いただきたい。
個人的な感想:2期
1期の区切り、あのラストからどう主人公が動くのかを
気にならせてくれる素晴らしいストーリー構成になっており、
まだ2期が決定していないのが残念なところだ。
アニメは原作の4巻ほどまで描いており、
現在、原作の最新刊は7巻だ。ストックが足りない(苦笑)
2期があっても早くて2年か3年後なのが
もったいなくはあるが、いつかあるかもしれない2期を期待したいところだ。
ポチップ
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