評価 ★★★☆☆(57点) 全12話
あらすじ 沖縄に転校した中村照秋(てーるー)は、同じクラスの喜屋武さんを好きになった。 引用- Wikipedia
唯一無二の沖縄褐色女子祭アニメ
原作はくらげバンチで連載中の漫画作品。
監督は板垣伸、制作はミルパンセ。
うちなーぐち
この作品はタイトルの時点で内容が全てわかってしまうタイプの作品だ。
主人公は高校生になるタイミングで東京から「沖縄」に
引っ越してきており、そこで初めて好きな人ができる。
だが、彼女は「うちなーぐち」だったという作品だ。
この「うちなーぐち」とはなにか、沖縄の方言のことだ(笑)
その方言は本当に強烈であり、言葉の意味自体もわからないが、
早口であるがゆえに余計に何を言っているのかわからない。
「くるさーだーかむんな?」
黒糖食べる?という日常の会話でさえこれだ。
もはや日本語というよりは「異国」の言葉であり、
日常会話ですら難易度が高く、「喜屋武 飛夏 」のセリフには
ほとんど字幕で日本語が出るくらいだ。
この異国感のインパクトは素晴らしく、
好きな子はできたのにそんな好きなことの会話がまともにできない。
異文化交流に近い。
しかし、主人公には主人公に思いを寄せる「比嘉 夏菜 」さんがおり、
主人公にうちなーぐちを翻訳して教えてくれる。
いわゆる「沖縄あるある」を詰め込んだタイプの作品であり、
「八十亀ちゃんかんさつにっき」などが近いものの、
八十亀ちゃんかんさつにっきよりも「濃い」作品だ。
ただヒロインの名前である「かな」をさん付けで呼んだだけなのに、
イントネーションが少し違うだけで「愛している」という意味になってしまう、
もはや海外だ。
沖縄でに文字の名前を呼ばすときは「かーなー」というように伸ばして
発音する、そんな豆知識に思わず見ている側も
「へぇー」と言ってしまう雑学的な要素もある。
方言だけでなく独特の文化なども毎話大量に紹介される。
これだけで話が成立し、短いエピソードを1話の中に詰め込みつつ、
ラブコメ的要素がそんな雑学アニメにいい刺激を生んでいる。
ラブコメとしての進展はほとんどない、
作品全体で言えば沖縄雑学8割、ラブコメ2割くらいだ。
作画
それなのに作品が成立し、それを支えるアニメーションも秀逸だ。
ミルパンセは正直言って作画のクォリティは高くない、
近年はあまり評判の良くない作品も多く手掛けている。
だが、この作品は基本は会話劇であり、
アニメーションとしてゴリゴリに動かす必要性はない。
この作品で1番動いているのはOPであり、
OP以上に本編が動くことはない。
だからこそいろいろな演出で遊んでいる。
うちなーぐちがでてくるときの文字演出、
雑学を紹介するときの表現の数々。
2025年のアニメではあるものの色合い、テイストが
どことなく10年、へたしたら20年前くらい前のアニメを
見ているかのような感覚になる部分もあり、その「空気感」が
「沖縄」という場所の空気感とうまい具合にマッチしている。
制作のミルパンセ、そして板垣監督がここ最近手掛けていた
ファンタジーやバトル要素のある作品ははっきりいって
見ていて厳しいものも多かったが、ようやくミルパンセ、
そして板垣監督らしい、「てーきゅう」を彷彿とさせる
見ていて楽しい日常アニメが帰ってきた印象を受ける。
そしてパロディ。
1話はエヴァのパロディで終わる(笑)
だが、沖縄にそまりまくったエヴァのパロディが、
エヴァのパロディという使い古された要素ですら
この作品らしい面白みに変えている。
2話以降もこういったパロディもちょこちょこと目立つ作品であり、
このあたりは好みが分かれそうなところだ。
マンネリ
ただ沖縄雑学8割という構成故にマンネリは生まれやすい。
しかも、この作品は1話30分1クールという構成だ。
同じ地方雑学アニメである「八十亀ちゃんかんさつにっき」は
1話5分ほどの短編アニメだったことを考えれば6倍近い尺の違いがある。
名古屋よりも沖縄のほうがいろいろな意味で濃ゆいからこそ、
ネタ切れというのは起こらないものの、
マンネリ感はどうしても生まれやすい。
そのマンネリを打破するための要素がラブコメ要素だ。
主人公が思いを寄せる「喜屋武 飛夏 」に関しては
ほとんど主人公の思いに気づいていないのだが、
主人公もまた自身に思いを寄せる「比嘉 夏菜 」の思いには気づいていない。
この三角関係状況が物語にいい刺激を与えている。
特に「比嘉 夏菜 」は非常に可愛らしく、
恋する乙女としてヒロインらしいヒロインになっている。
だからこそマンネリ感を感じつつも、
それが飽きにはならない。絶妙なバランスだ。
変わらぬ日々
沖縄ネタというものに縛りはあるものの、
その沖縄ネタが尽きない。
台風1つにしろ、生えてる植物にしろ、食文化にしろ、
もうありとあらゆる要素が沖縄県民以外の人にとっては衝撃だ。
みんなで海に行くという日常や青春者では定番のイベントでさえ、
「毒をもつ生物」がたくさん住む沖縄だからこそのネタが生まれる。
普通の日常のはずなのに沖縄が舞台というだけで
全く持って普通な日常にならないことが面白さになっている。
こういった作品だと、マンネリを回避するために
新キャラを出すということをやりがちだが、
この作品はほとんどそういうことをせず、
序盤にでたキャラだけで話を作り上げている。
転校生である主人公が徐々に沖縄に馴染みつつも、
知らないことは多く、逆に内地の常識を沖縄県民である
ヒロインたちも知ることで驚く。
互いに互いの知らない常識をすり合わせながら仲良くなっていく。
終盤、一瞬だけラブコメが進展しそうな気配を見せるものの、
気配だけで終わるというのがこの作品らしく、
1クールしっかりと沖縄を満喫できる作品だった
総評:うちなーぐちゆむるいぃなぐわらべーしち?
全体的に見て、よくあり方言女子を扱った作品ではあるものの、
そんな方言が沖縄弁、うちなーぐちだからこその面白さが大爆発している。
北海道や愛知など比べるのもおこがましいほど、
共通語との差が凄まじく、メインヒロインが何を言ってるかわからない。
メインヒロインに字幕がつき、通訳がついているアニメなど
この作品くらいだろう(笑)
この作品を超えるためには津軽弁あたりを出すしか無い。
そんな方言だけでなく、沖縄という場所だからこその文化が
1話1話、1エピソード1エピソードのネタになっており、
それが尽きることがない。見ているだけで
沖縄という場所を観光しているかのような気分にもなる作品だ。
ミルパンセ制作ということで一抹の不安はあったものの、
安定した作画で、板垣監督らしいキャラの描き方やカメラワークがあり、
日常アニメではあるものの、きちんとアニメーションとしての面白みがある。
二人のヒロインもしっかりと可愛らしく、無駄にキャラを増やさずに
1話からブレない作品であり、1クールしっかりと楽しめた作品だった。
個人的な感想:へぇー
見ている間に何回もへぇーと頷いてしまうネタも多く、
沖縄という場所の奥深さを感じる部分だ。
パロディネタや沖縄ネタというマンネリネタゆえに
人によっては飽きてしまう部分はあるかもしれないが、
欠点らしい欠点はあまり感じず、好みの問題だ。
まだ見てないという人は試しに1話だけでも観てほしい。
沖縄観光気分で楽しめるはずだ。