「ペンギン・ハイウェイ」レビュー

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映画

評価 ★★★☆☆(58点) 全120分

あらすじ 小学4年生のアオヤマ君の住む街で、ある日突然、ペンギンの群れが出現する怪事が起こり始め引用- Wikipedia

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これは一人の少年がたどり着いた真実への物語

原作は「夜は短し歩けよ乙女」や「四畳半神話大系」の森見登美彦による小説。
監督は石田祐康、制作はスタジオコロリド。
スタジオコロリドの知名度は低いが台風のノルダなどを手がけている。
森見登美彦作品といえば監督は湯浅政明、キャラやイラスト原案は中村佑介の
イメージが強いが、この作品はそのどちらでもない。

主人公

森見登美彦といえば独白、モノローグだ。
主人公が自らの行動や心理を事細かく説明することによって、
森見登美彦作品らしい雰囲気が生まれており、圧倒的なセリフ量で
畳み掛けられるように飲み込まれる空気感を作り出すのがうまい。

この作品も例外ではない。
主人公は冒頭で「ボクは大変、頭がよく、努力を怠らずに勉強するのである」と
独白しだす。
傲慢なそのセリフはまさに森見登美彦らしい魅力を感じさせる主人公だが、
これまでの森見登美彦作品の主人公とは決定的に違う部分がある。

主人公が「小学生」ということだ。
癖の強い主人公の年齢が小学生という部分ややや好みの分かれるところだろう。
シーンによって生意気にすら見える。
頭のいい少年だからこその喋り方、言葉はキャラデザこそシンプルなのだが、
不思議な存在感を感じさせる主人公だ。

ペンギン

この作品はタイトルの通り、ペンギンが出る。
しかも海の存在しない街にどこからともなく現れて消える。
頭のいい少年である主人公は好奇心から、そのペンギンの謎に迫っていく。

序盤の物語の盛り上がりは薄い。
これは森見登美彦作品の特徴とも言えるのだが、
積み重ねて、積み重ねて、更に積み重ね得て、
その積み重なりが最後に生きてくるのが彼の作品の魅力でもある。

この作品もまた「ペンギン」が現れてなにかが起こるかと思えば、
起こりそうで起こらない。
少年の小学生という立場だからこその日常が描かれる中で、
ペンギンなどの非日常的要素が少しずつ少年の日常に侵食していく。

淡々としたストーリー展開は好みの分かれる部分でもある。
解けそうで解けないペンギンの謎はもどかしさすら感じさせ、
盛り上がりそうで盛り上がらない序盤のストーリー展開は
好みの分かれるポイントだ。

お姉さん

真面目で頭のいい主人公には自分でも抗えない「おっぱい」に対する興味がある。
自分が通う歯医者のお姉さんの豊かな胸は、
少年の論理的思考でも解けない謎だ。
なぜ自分が彼女の胸を見てしまうのか、頭のいい彼でもわからない。

そんな少年の好奇心を「お姉さん」は後押しする。
チェスの相手だったり、さりげない会話だったり、
少年の日常の中で彼の好奇心を刺激する。
そして、そんなお姉さんが「ペンギン」を生み出すことができる。

少年にとっての日常だったお姉さんが、非日常的存在へと一気に変わり、
少年にとって更に興味深い存在へと変わっていく。
なぜお姉さんは「ペンギン」を生み出すことができるのか?
それはお姉さん自身にもわからない。

少年はひたすら悩み、考える。
ときにはお姉さんと実験しつつ、お姉さんの謎にも迫っていく。
ペンギンは何なのか?お姉さんは一体どういう存在なのか?

同級生

主人公には当然、同級生がいる。
自分と同じように好奇心に満ち溢れる男友達、自分よりチェスの強い女の子、
いつもつっかかってくるいじめっ子。
小学生の彼らにとっては当たり前の光景と当たり前の日常だ。

そんな彼らとともにもう1つの謎である「海」についても調べていく。
森の奥に存在する宙に浮く水の塊のような「海」は物体を飲み込んだり、
「ペンギン」に反応したりと謎でしかない。

ペンギンは何なのか?海は何なのか?お姉さんは一体何者なのか?
少年はひたすら思考する。仮設を立て論理づけるが答えがなかなか出ない。
中盤までの展開はひたすらこの繰り返しだ。
謎が謎を呼び、盛り上がりそうで盛り上がらないもどかしさは、
人によっては「つまらない」と感じてしまうかもしれない。

真実

少年は真実へとたどり着く。
2時間という尺で真実にたどり着くのは本当に終盤だ。
もしかしたら少年はもっと早く真実に気付けたかもしれない。
だが頭の良い少年は自分の中でも説明できないお姉さんへの
「恋」にも似た感情のせいでその真実へとなかなか
たどり着けなかったのかもしれない。

分かっているのかもしれないが分かりたくない。
真実を知ってしまえば、それは「お姉さん」との別れでもある。
ペンギンも海の秘密も明確な言葉としての表現は難しい。
だが見てる側には「何だったのか」が何となく伝わる。
それは少年のたどり着いた思考の結果と同じだ。

物語の主人公でさえ「100%」分かっていない。
それは彼が小学4年生だからであり、恋をした男の子だからだ。
ひと夏の不思議な出来事で少年は成長し、はかない恋も終わる。
良い余韻を残して映画は終わる。

総評:ラスト30分のための1時間半。

全体的に見て最後まで見ると面白かったと言える作品だ。
その反面で序盤から中盤は終盤の展開のためのストーリーの積み重ね感が強く、
非常に淡々としている。
序盤から中盤までは演出面での遊びやアニメーションとしての遊び心も少なく、
テンポの悪さや中だるみを感じてしまう部分もかなり多い。

だが、ラストの30分のストーリー展開と怒涛のアニメーションを見ると
そのつまらないとすら感じかねない淡々とした序盤から中盤までの展開が生き、
映画が終わると思わず「面白かった」と言ってしまう作品だ。

ストーリー的にも少しややこしい部分がある。
明確に「何だったのか」ということは語られないペンギンや海やお姉さんの謎など
語られないからこそ、少年が主人公の物語としてはちょうどいい半面で、
子供が見ると理解しきれない、飲み込みきれない部分も多いかもしれない。
キャラデザや雰囲気的に子供向けなのだが、大人の方が楽しめる作品だろう。

「森見登美彦」作品らしい良さは感じる半面で、
もう少し序盤から中盤まで「アニメ的」に魅せる部分があれば違ったかもしれない。
良くも悪くも生真面目にアニメ化してしまったという印象が強く、
せっかくストーリーが良く出来てるだけに勿体無いと感じてしまう。

ただ、最後まで見れば面白い作品だ。
淡々と積み重なっていく少年の日常と非日常と謎が解き明かされる瞬間、
ひと夏の少年の不思議な恋の物語ともいえるストーリーは、
青春を過ぎ去ってしまった大人だからこそ突き刺さる内容だった。

個人的な感想:おっぱい

この作品が上映されたときに「女性の性的消費だ」と騒ぎ立てる輩がいたのだが、
正直、そこまで露骨に胸がぷるんぷるん描写はされていなかった。
あくまでも少年の視線に入り込み、見てしまう、
抗えないモノのように描かれており、
なぜあんなに目くじらを立てたのか謎でしか無い。

序盤から中盤までの淡々とした展開はちょっとつまらないなと
感じてしまうくらいテンポが悪かったのだが、
ラストの30分にはしてやられてしまった。
森見登美彦作品のファンならば間違いなく楽しめる作品だが、
「森見登美彦」という人の作品の傾向が分かってる分かってないかでも
楽しみ方が違いそうな作品でもある。

もう少し演出面で大胆な部分や淡々としすぎているストーリーが
どうにかなってれば大ヒットした作品だったかもしれない。
色々と細かい部分で残念さを感じてしまう作品だった。

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