しっとり女性のひとり酒。「ワカコ酒」レビュー

2016年1月18日

評価/★★★★☆(62点)/全12話
アニメ「ワカコ酒」 [Blu-ray]

あらすじ
美味しいお酒と食べ物が大好きな26歳・OL村崎ワカコ。
仕事のあとの1人呑みが最大の癒しで、お酒と食べ物のためなら、偶然みつけたお店も躊躇うことなく暖簾をくぐる。
そして、人目を気にせずに1人でまっ~たりと料理とお酒を味わい、舌鼓をうつ。

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しっとり女性のひとり酒。
思わず、じゅるり。思わず、ぷしゅー。

原作は月刊コミックゼノンで連載中の漫画作品。
監督は山岡実、製作は Office DCI。
1話2分~3分ほどの作品だ。

見だして感じるのはあっさりとしたキャラクターデザインだろう。
最近のアニメでは非常に珍しいあっさりとしたキャラクターデザインであり、
色合いもどこか「あっさり」している。

恐らく視聴者層を意識したのだろう。
この作品は女性の「一人酒」をテーマにした作品であり、
会社帰りに一人で居酒屋に行き、お酒に合うつまみを嗜みつつ
お酒を楽しむOLの日常を1話3分ほどの尺で描いている。

だからこそ「一般人」を意識したキャラクターデザインだ。
アニメアニメしたキャラクターデザインではなく、
普段アニメを見たことがない人でも「見やすい」キャラクターデザインと
癖のない演出であっさりした作品に仕上がっている。

その分、「料理」の作画には気合を入れている。
鮭、からあげ、焼き鳥、かにみそetc…
深夜に見たら確実に「飯テロ」になる料理描写の数々は
思わず「じゅるり」とよだれをたらしたくなるほどしっかりと描かれている。

それを食べる主人公の「ワカコ」の反応も素晴らしい。
演じている沢城みゆきさんのさすがの演技力とでも言うべきか、
最近流行りの料理漫画の「過剰な反応」でも、
孤独のグルメのように「うん・・・うん・・・」という感じの反応でもない。

酒好きの普通のOLらしい「しっとり」と「あっさり」した反応であり、自然だ。
セリフや過剰な演出で美味しさを表現するのではなく、
料理の「見た目」と「声色」で美味しさを表現しており、
料理漫画にありがちな「癖」がない。
お酒を飲んだあとに「ぷしゅー」と決め台詞のように、
美味しそうな吐息を吐き、1話1話がすっきりと終わる。

だからこそ、引っ掛かりがなく誰しも楽しめる。
1話につき料理1品と、一杯のお酒。
ほとんど代わり映えのしない絵面ではあるものの、
料理とお酒が変わることによる反応の違いが妙に染み渡り、
最終話まで見てしまう。

料理やお酒について深々と知識を語るわけでもない、
人情物語があるわけでもない。
ただ、普通のOLが一人酒を楽しむ姿のみだ。
だが、だからこそ癖や好き嫌いが出ずに誰でも気軽に楽しめる作品に仕上がっている。

全体的に見て酒飲みならば恐らく全12話の中のワカコのセリフに
思わず「わかるわぁー」と共感してしまうことだろう。
美味しそうなおつまみと美味しそうなお酒をOLが一人楽しむ。
これだけの作品なのに、
その中できちんと「面白さ」と「美味しさ」が作品全体に染み渡っている作品だ。

沢城みゆきさんの演技も本当に素晴らしい。
声に出して誰かに語りかけるセリフではなく、
自分の舌で感じた美味しさをモノローグでつぶやく。
過剰になりすぎても、淡々としすぎた演技でもダメだ。
どちらでもない「しっとり」とした大人の女性の演技が
ピタッとこの「ワカコ」という主人公にハマっていた。

「ゆでたまご、はぁゆでたまご、ゆでたまごぉー」

このゆでたまごだらけのモノローグの演技は本当に絶妙だ。
美味しいでもない、うまいでもない。
美味しさの表現はセリフの中には一切ないのに、
「ゆでたまご」の言い方だけで美味しさが伝わる。

アニメの「絵」を見ずに、音だけ声だけ聞いてるだけでも思わず
よだれが口の中に溢れてくる。
それなのに美味しそうな料理な作画まできっちりと描かれるから
余計に見ている間にお腹が空いてくる、酒が飲みたくなる作品だ。

代わり映えのない絵面であるがゆえに1話を気に入れば最終話まで楽しめる。
逆に1話で気に入らなければ最終話まで楽しめない。
キャラクターデザインや作画面でのくどさがないため、
好き嫌いの別れにくい作品ではあるが、
あっという間に終わってしまうため、もう1クールくらい見たかったなと
感じる作品だ。

原作ストックもまだある作品なだけに、
もう少し長い期間放映していればもっとアニメオタク以外の人でも
目に止まり、もう少し流行ったかもしれない作品だけに
たった1クールで終わってしまったのが残念だ。

短編アニメのため高い評価はしづらいものの、
お酒好きならばぜひ見てほしい作品だ。