「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」レビュー

評価 ★★★☆☆(58点) 全13話

あらすじ 4年間にわたる東西南北による大陸戦争が終結。その戦場で「武器」と称されて戦うことしか知らなかった少女、ヴァイオレット・エヴァーガーデンは、自動手記人形としてC.H郵便社で働きはじめる。引用- Wikipedia

自動手記人形は手紙を書く夢を見るのか

原作はライトノベルな本作品。
監督は石立太一、制作は京都アニメーション。

見出して感じるのは圧倒的な作画だろう。
髪の毛の一本一本からまつげの一本一本まで描かれるような細かい描写、
机の木目まで描き、紅茶の絶妙な透明感まで描くのは
TVアニメとしては「異質」といえるほどの作画だ。

もちろん作画がいい事に越したことはない、だが、
深夜アニメという放送媒体にここまでの作画が必要なのか?と
逆にそう感じてしまうほどに細かすぎる描写は
さすが京都アニメーションと言わざる得ない。
この圧倒的な作画により半ば強制的に世界観に飲み込まれる。


引用元:©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

この作品は非常に独特だ。
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」というタイトルの通り、
この作品の主人公はヴァイオレットという名前の女の子だ。
彼女は戦争孤児であり、かつては「少佐」のもと軍に所属し兵士として、
戦争の道具として戦い両腕を失った。

戦争が終わり平和になった世の中で道具だった彼女がどう生きるのか。
言われたまま、命令どおりに戦い続けていた彼女が
「郵便社」で働く中で人々の「手紙」を通し、普通の人の心に触れ、
変わっていくというストーリーになっている。

この作品はそれ以上でもそれ以下でもない。
メイドになってかつての敵が襲いかかってくるわけでも、
実は秘密任務についていて誰かを守っているわけでも、
彼女の出生に何らかの大きな秘密があるというような、
そんな壮大なストーリー展開はない。


引用元:©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

戦争が終わり、大切な人と離れ、命令どおりにしか生きてこなかった彼女が
手紙の代筆業を通じて人々の心を理解していき、彼女も変化していく。
この作品は非常にシンプルだ。
1話の1話のストーリーの積み重ねが主人公の変化に繋がり、
淡々としたストーリー展開が見ている側に染み渡るような感動を感じさせる。

それ故に退屈に感じるような話も多い。
特に序盤はこの作品のやりたいことや方向性がいまいちつかめず、
淡々としたストーリーは「作画がいい」からこそ見れるのだが、
話が進み「ヴァイオレット」という少女の成長が見る側に伝わって、
初めてこの作品の面白さが分かる。

中盤以降になると単発のエピソードも多く、
1話完結の短編集を読んでいるような感覚になる。
ちょっと毛色は違うが「キノの旅」にも少し似ており、
様々な場所に訪れ、1話一人ずつの手紙で物語が作られている。


引用元:©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

しかし、30分という尺をうまく使っていない。
1話30分という枠で各話のストーリーを収めるために、
綺麗にまとめ過ぎている部分が目立ちTVアニメという媒体上仕方ないのだが、
尺にいい意味でも悪い意味でも縛られてしまっている。
1エピソード2時間位で描いてほしいと感じる話や、
逆に15分位でまとめてほしいと感じる話もある。

序盤で出ていたキャラクターが後半で出番が少なくなることも多く、
せっかく魅力的なキャラが多いのに使いこなせていないもどかしさも感じる。
アニメにおいて原作には居ないキャラもかなり追加したようだが、
追加したわりには使いこなせていない。

ストーリー展開もかなり唐突だ。
4話まで堅苦しい文章しか書けなかったヴァイオレットが、
5話でいきなり王女の恋文を代筆するようになるまでになっており、
しかも恋文もとても優秀であり、恋心なども理解してるように感じさせる。
この成長の過程があまりにも急激でやや雑だ。


引用元:©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

ある程度1クールというストーリー構成上、
早い段階での成長が必要だったのは分かるがちょっと唐突過ぎる。
4話と5話では時系列が数ヶ月たってるようなのだが、
見てる側としては、その数ヶ月を知らないため違和感しか無い。

極論だが時系列通りではなく、
時系列を入れ替えて描いたほうが良かったのでは?と感じてしまう。
制作側の意図としては「成長物語」に重きをおいており、
だからこそ時系列通りに描いたいのは分かる。

だが、ある程度、自動書記人形としての彼女の仕事ぶりを序盤で描いた後に、
彼女は一体何者で過去に何があったのか?と1話からの話を描くような
構成のほうがこの作品の面白さがもう少しストレートに伝わっただろう。
後半のエピソードが序盤にあればなと感じることも多い。


引用元:©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

終盤ではヴァイオレットと少佐の過去も描かれるのだが、
それまで断片的に描かれていた話も多く、
わざわざ全体像まで描かなくとも見てる側は大体のことはわかっており、
きちんと描くのを焦らした割には意外とあっさりと
「ヴァイオレット」が過去を乗り越えてしまう。

話としても山場は10話で迎えてしまい、
そのあとの11話~13話ははっきり言って微妙だ。
新作エピソードの制作も決まっているようなのだが、
正直ある程度の成長と変化が終わってしまった彼女の話を
この後どう広げるのか?と考えると割と蛇足な感じも否めない。

すでに11話以降のストーリーが蛇足になっている感じもあり、
原作とは違いアニメでは「未帰還兵」となっている「少佐」が
実は生きてましたという展開などが予想できてしまうのが残念な所だ。


引用元:©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

総評

全体的に見ていろいろと惜しい作品だ。
戦争孤児で命令されて生きてきた少女が戦場を離れ
一人の人間として成長していくというストーリーは悪くはなく、
美麗な作画による雰囲気と細かい動きや表情で感情を見せる演出は
ときおり涙腺をくすぐられるような出来栄えになっている。

その反面で多数のキャラクターを使いこなせておらず、
唐突な成長や序盤で見たかったと感じる話が中盤にあったり、
終盤のストーリーが心底微妙だったりと、
ストーリー構成の部分で甘さを感じるところが多々ある。

色々と原作から改変して描いているのは分かるのだが、
調べた所、このレビューで書いた不満点の多くがその改変点のようだ(苦笑)
キャラクター自体の性格やキャラ同士の関わりの描写も削られていたりと、
これだけいろいろと改変していれば違和感を感じる部分や、
ストーリー展開の唐突さも生まれて当たり前だなと感じてしまう。

原作はKAエスマ文庫という京都アニメーションが発行するレーベルだ。
同じ「境界の彼方」も同レーベルで同じ監督だが、
同じように改変しまくっている。

その結果、作品の「整合性」を無視して監督のやりたいこと、
見せたいことが先行してしまい、原作が持つであろう面白さが
どうにもスッキリと見てる側に伝わらなくなってしまっている。
演出家タイプの人が監督をやるとありがちな事なのだが、
監督の自己満足と自己主張が作品本来の面白さを押さえつけてしまっている。

色々ともどかしさを感じる出来栄えになってしまっている事が残念であり、
決して駄作ではなく感動できるエピソードもあるのだが、
ところどころ感じる違和感が素直に
「面白い」といえなくしてしまっている作品だ。


引用元:©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

個人的な感想

個人的に、石立太一監督は京都アニメーションを離れるべきでは?と感じてしまった。
境界の彼方のときにも感じたが自分のやりたい演出を
京アニの作画の質に甘えて描きまくってるだけで、
原作の面白さを最大限に引き出せていない。

演出家としては優秀だが監督してはいまいちだ。
元ジブリの「米林宏昌監督」と似たようなタイプだ。
作画能力が高い制作スタジオの作画能力に甘えており、
もっと面白くなる作品を面白くできておらず変な方向に描いてしまう。
監督して続けていくなら京アニから離れるべきだろう。
せっかくの京アニの作画能力がもったいない。

なお、超個人的な余談だが10話はしてやられた。
予想できる展開であり予想通りの内容だったのだが、
手紙を「川澄綾子」さんに読ませるのは卑怯である。
あの声であのシチュエーションであの手紙は
涙腺をくすぐられない人は居ないだろう。

売上的には5500枚前後と売れてはいるのだが、
京都アニメーションの作品としては物足りない部類だろう。
「新作エピソード」がOVAなのか2期なのか映画なのかわからないが、
このモヤモヤっとした面白さをすっきりと
「面白かった!」といえる作品に仕上げてくれることを期待したい。

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