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出オチ勇者とマンネリ姫「気絶勇者と暗殺姫」レビュー

気絶勇者と暗殺姫 ファンタジーアニメ一覧
画像引用元:©のりしろちゃん・雪田幸路(秋田書店)/「気絶暗殺姫」製作委員会
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評価 ★★☆☆☆(27点) 全12話

TVアニメ「気絶勇者と暗殺姫」メインPV/2025年7月12日(土)放送開始

あらすじ 勇者トトは、実力はあるが極度の人見知りのためパーティーが組めず、はじまりの町でくすぶっていた。 引用- Wikipedia

出オチ勇者とマンネリ姫

原作はチャンピオンで連載中の漫画作品。
監督は秋田谷典昭、制作はCONNECT

テンプレとマンネリ

この作品はいわゆる魔王と勇者がいる世界のファンタジーだ。
勇者は魔王を倒すために旅をしているのだが、
極度に人見知りでパーティーを組めずにいる。
そんな彼の前に唐突に美女が現れ、彼とパーティーを組みたがる。

死ぬほど人見知りで女性耐性0ですぐに気絶してしまう勇者と
「暗殺姫」たちの冒険が始まる。
3人のヒロインたちはそれぞれ事情があり、勇者を殺したがっている。
一人は魔王の娘、一人は殺し屋、一人はドSな女王様だ。

それぞれがそれぞれの理由で主人公である勇者を狙っているのだが、
そんなことは主人公は一切知らない。
彼女たちが本気を出して戦っても彼は「気絶」しており、
本性に気づかず、気絶から目覚めた主人公がヒロインたちを助ける。
基本的にこのパターンであり、1話からテンプレートが完成している。

1話のAパートでは3人のヒロインたちが争う中で
魔物に襲われた中でピンチになり勇者が助け、
Bパートでは殺し屋がピンチになり勇者が助ける。
1話の段階でテンプレートが出来上がってるが、
同時にマンネリを生んでいる。

勇者は女性に触れられるだけで気絶するので、
いつでも彼女たちは殺すことが可能なのだが、
攻撃こそすれど、殺しはしない。

勇者もずーっと気絶しており、ろくにセリフがない。
その気絶も頻度が多い上にワンパターンなため
序盤の時点で強烈なマンネリと飽きが生まれている。

勇者?

主人公は冒険者のパーティーとして最低ランクで
3人のヒロインとともに冒険を始める。
この時点で疑問なのだが、主人公は1話から「勇者」を名乗っている。
何を持って勇者なのか、そのあたりがあいまいだ。

主人公の顔には傷があり、そのせいで自分に自信がなく、
他者との交流がうまくできない。
だが、魔王を倒せば一人前になり、人と話す勇気が出るかもしれない
という何ともあいまいな理由で冒険者になっている。
つまりは勇者は自称である。

この世界には勇者がいっぱいいるようで勇者のバーゲンセール状態だ。
当たり前だ、主人公のように自称できる、
魔王を倒すことを目指すものは勇者と名乗れるなら
はいて捨てるほどいるのだろう。

その中でも勇者は魔王に狙われるほどの強者であるようだ。
確かに異様なまでに強い。
今までパーティーを組めず、一人でうじうじしていた勇者である主人公、
そんな主人公の存在を魔王はどう認知し、殺しを依頼した依頼主は
なぜ殺しを依頼したのか、そのあたりの裏付けがあいまいだ。

なれ合い

序盤を過ぎても1話からのマンネリ変化はなく、
交代交代でヒロインたちと主人公の関係性を掘り下げつつ、
4人の日常が描かれる。
普通ではなかった4人だからこそ、普通な日々を楽しんでいるというのは
分かるが、なれ合いをひたすら見せられているだけだ。

中盤になると魔王の勢力が魔王の娘を連れ帰ろうとするのだが、
結局、魔王の娘は勇者を殺せない。
それでも魔王の部下は「成長してるから良し!」と甘い判断で連れ戻さない。
この時点でほかの二人も結局殺せないという
パターンをやるのは想像できるうえに、その通りになってしまう。

同じようなパターンでしか話を作れず、新しいパターンを生み出しても、
それを同じように3回やるだけだ。
最初こそ本気で殺そうとしていた3人だが、同じような境遇の二人に出会い、
勇者との旅の日々の中でこの日常がかけがえのないものになっていき、
この旅が終わることを、勇者を殺すことに戸惑いを感じてしまう。

ようはこの作品、出オチだ。
勇者の仲間が実は暗殺者だったという出オチを
ずーっと引き延ばしてるだけにすぎず、それだけに内容が薄い。

4人の日常自体は悪くはないのだが、悪くないどまりで、
「コレ!」というような面白さやキャラの魅力があるわけでもなく、
淡々と見てしまう感じが強い。

ラブコメ

それぞれの話でヒロイン達の過去を掘り下げ、
勇者がピンチを救い、ヒロインの心が少しだけ動く。
これを繰り返している印象だ。

このちょっとずつ距離が縮まる描写は一見ラブコメ的ではあるものの、
勇者が気絶しているせいで感情のキャッチボールが成立しておらず、
互いが意識するというよりはヒロインだけが一方的に
感情を変化させ、募らせている感じが強い。

勇者を殺さない限りヒロインたちの目標は基本的に達成できず、
勇者が気絶し続ける限り恋愛的な関係性も進まない。
少しずつ変化しているのはわかるが、そういったキャラの掛け合いを
いくらえがいても、物語の核たる部分がずっと膠着しているため、
根本的に大きな変化を作りにくく、マンネリになっている。

終盤で勇者が殺される。
1クールで最大の盛り上がりどころだ、4人の仲間たちとともに冒険をしてきた。
本来は殺さないといけない相手となれ合い、ライバルとなれ合う。
そんな「なれ合いの日々」に4人は幸せを感じていた。
だが、そんな日々が終わった光景を見せられる。

幻術だ、分かりやすい展開ではあるものの、
疑似的に目標を達成したらメインキャラがどうなるのかという
ifを見せるのは悪くない。
自分にとって都合のいい夢の世界、だが、そんな理想の世界より、
3人は現実を選ぶ。

勇者をいつでも殺せるのに、この旅を終わらせることもできるのに、
彼女たちはそうしない。今を、この日々に「満足」してしまっている。
だからこそ話が進まないのはわかるが、
テンプレとマンネリを繰り返しているのが目立ち、
出オチ感が否めない作品だった。

総評:出オチを1クール引き延ばす

全体的に見て微妙な感じが残る作品だ。
最強な勇者な主人公ではあるものの人見知りで女性が苦手で、
少しの接触で気絶してしまう。
そんな彼の命を狙う3人のヒロインたちとの冒険の日々であり、
序盤の段階でテンプレートが出来上がっている。

主人公を殺そうとする、主人公が気絶している間に色々とする。
主人公が気絶から目覚めてヒロインを助ける。
ヒロインは主人公に、仲間たちに情がわき、どんどん殺せなくなっていく。
基本はこの繰り返しだ。

作画のクオリティはそれなりに高く、
メインキャラ4人もきちんと掘り下げられているものの、肝心の話が進まない。
コメディとしても序盤でマンネリ感が生まれており、
中盤からは惰性で見ている部分が強い。

マンネリ感とテンプレ感、出オチ感はあるものの、
惰性ではあるものの何となく見てしまう魅力はある。
最終話もだらーっと終わり、締まりがなく、
ある意味でこの作品らしい締め方ではあるものの、
2期が期待できるかといえばそうでもない感じだ。

1クールで完結すればこう言った感覚がなく終わったかもしれないが、
原作はいまだに続いており13巻も出ている。
1クールでは原作の4巻あたりまでアニメ化されており、
この先、同じようなことをしていると考えると、
さすがに2期があっても厳しいかもしれない…

個人的な感想:90年代ラノベ

若干ではあるものの90年代のラノベアニメっぽさも感じる部分がある。
主人公のマッチョなところと女性3人という組み合わせから
「リウイ」を想像してしまってるだけかもしれないが、
あの時代に生まれていたらもう少し別の角度で描かれ、
時代に名を刻むような作品になったかもしれない。

それを考えると2期、
2クールくらいやって味が出てくる作品なのかもしれないが、
原作を読もうとまでは思えない作品だった。

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