「まちカドまぞく」レビュー

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ファンタジー
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評価 ★★★★☆(69点) 全12話

あらすじ 家族と共に家賃の安いアパートに住む女子高生、吉田優子は、幼い頃から病弱で家がとても貧しいこと以外、ごく普通の女子高生を自認していたが、ある日角としっぽが生えて闇の一族「まぞく」としての力に覚醒する。引用- Wikipedia

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きららアニメの新境地

原作はまんがタイムきららキャラットで連載中の漫画作品。
監督は桜井弘明、製作はJ.C.STAFF

汝は闇の血を引くもの!


引用元:©伊藤いづも・芳文社/まちカドまぞく製作委員会

主人公である「吉田優子」は普通の女子高生…だった(笑)
目が覚めると彼女の頭には角が生え、お尻にはしっぽが生えており、
慌てふためく彼女に「母」は冷静に彼女に説き伏せる。
彼女は「魔族の血筋」であり、封印されし闇の一族の末裔だと。

そんな重大な設定を母親の口からづげられているのに、
その設定よりも「貧乏」な彼女の家の方に目が行く。
米を買う金すらなく、家は明らかにボロボロ。

重そうな設定なのにそんな彼女の貧乏な状況と、
可愛らしいキャラクターたちのコミカルな動きと会話、
文字による演出などのおかげで不思議な空気感を醸し出している。
先祖返りを起こした主人公は「魔法少女」を倒し、
生き血を邪神像に捧げることで闇の一族の封印を解くために奮闘する。

「暗黒役所」に魔族としての活動開始届け出を出したり、
邪神像がドアストッパーだったり、
ファンタジーな設定の中での細かいギャグが非常に多く、
「オヤジギャグ」にも似た言葉遊びまである。

違う、魔法少女


引用元:©伊藤いづも・芳文社/まちカドまぞく製作委員会

魔族である吉田優子と魔法少女である「千代田 桃」。
彼女たちは同じ街であっさりと出会い、
魔法少女は魔族を助けてパンまで与える。

どこのアンパンマンだと言いたくなるような施しと
魔族の「これで勝ったと思うなよ~!」という逃げ口上は
まさにアンパンマンとバイキンマンの構図だ(笑)

いきなり魔族になってしまった少女と、そんな彼女と戦う運命にある少女。
描き方次第ではとんでもないシリアスなファンタジーストーリーに
なりそうな所を、この作品はあくまでコミカルかつ軽く描いている。
角も尻尾も普通の人間に見えており、事情をクラスメイトに話しても
彼女たちはなんのそのだ。

それどころか「魔法少女」の存在まで知れ渡っており、
それをみな、当たり前のように受け入れている。
何とも不思議な「空気感」を出しながら世界観が描かれており、
言葉にするなら「ぽわぽわー」っとした世界観だ。

だからこそ優しい雰囲気が生まれている。
宿敵であるはずの「魔法少女」から
「シャミ子」というあだ名までつけられる始末だ。

様式美


引用元:©伊藤いづも・芳文社/まちカドまぞく製作委員会

1話の段階である意味での「様式美」が生まれている。
そもそもパワーバランスが圧倒的だ。
魔法少女は片手でダンプを止めるほど強く、
シャミ子は角としっぽが生えたかくらいでパワーアップは一切していない。
この「パワーバランス」が不思議な百合関係を生んでいる。

敵にパンチの打ち方を教わり、施しを受け、情けを受ける。
あまりにも「くそ雑魚」すぎるシャミ子は毎回毎回、魔法少女に対し
「これで勝ったと思うなよ~!」という捨て台詞を残し去っていく。
このパターンが1話の段階から完成させており、
ある種の様式美のようなパターン化を生んでいる。

シャミ子のクソ雑魚っぷりがギャグになっており、
それがキャラクターへの愛着を生んでいる。
勝負を仕掛けてもあしらわれ、例え勝負になっても勝負にならない(笑)
そんな二人の関係性、敵対してるはずなのに
徐々に仲良くなっていってしまう感じも微笑ましい。

きちんとした会話劇でみせており、
「これで勝ったと思うなよ」という捨て台詞を毎回楽しみにしてしまう。

細かい背景


引用元:©伊藤いづも・芳文社/まちカドまぞく製作委員会

基本的に会話劇のため絵代わりしないことが多い。
だが、この作品はそんな絵代わりしない中でも
1シーンの中に細かい描写を入れ込んでいる。

例えば文字による効果音の演出や、
クラスメイトたちが何気なく遊んでいたり、シャミ子の尻尾で遊んでいたり。
絵代わりしない中でそういった細かい描写が1シーンの中に隠れているからこそ、
見ていて飽きない。

キャラクターの細かい行動も思わず目が行ってしまう。
例えば考え込んでるときに「髪」をさりげなくいじっていたり、
シャミ子の尻尾が細かく動いていたり、
アニメーションとして細かい動きもきちんと描写することで飽きさせず、
それがキャラクターの魅力の描写にもつながっている。

すぐ泣いちゃって、すぐ弱音を吐く。
そんな「シャミ子」の可愛らしさがたまらない。
だからこそ、彼女の敵なのに彼女をかわいがってしまう魔法少女や
彼女のクラスメイトたちの気持ちが痛いほど分かる。

「シャミ子」という主人公のキャラクターの魅力をしっかりと感じられるからこそ、
その周りのキャラクターの行動や台詞にも共感でき、
主人公を中心として、他のキャラやサブキャラの魅力も感じられる。

かつて魔法少女だったもの


引用元:©伊藤いづも・芳文社/まちカドまぞく製作委員会

魔法少女である「千代田 桃」は魔法少女として戦ってきた過去がある。
そんな過去がある中で最初は「魔族」として覚醒したシャミ子を
監視する目的も有り、彼女のそばにいたはずだった。
しかし、彼女の可愛さやポンコツさ、彼女自身の魅力に触れるうちに
放っておけなくなる。それは見てる側も同じだ。

だからこそ「千代田 桃」というキャラにも感情移入できる。
戦いを求められてるのに彼女とは戦いたくない。そう感じるのが痛いほど分かる。
彼女にも「魔法少女」として活動してきた過去があり、
その過去を匂わせながらも、徐々にシャミ子と仲良くなっていく過程が
可愛らしく微笑ましい。

自然と名前を呼ぶようになり、流れとは言え親友と呼ばれたり、
戦う運命にあるはずなのに彼女たちはどんどん仲良くなっていく。
それと同時に彼女の「過去」が匂わされたり、
シャミ子の力が徐々に開放され変身できるようになり、
本筋のストーリーも少しずつ進んでいく。

序盤から中盤までにメインの二人のキャラクターをきちんと掘り下げ、
二人の関係性をきちんと構築することで、
中盤からのストーリーの面白さがより増す。

特に6話は関係性としてはピークとも言わんばかりの描写であり、
そのピークからストーリーの転機につなげている。
戦って血を手に入れるのではなく、仲良くなったからこそ血を手に入れてしまった。
この作品らしいストーリーの進め方だ。

「これで勝ったと思うなよ」
この台詞をシャミ子ではなく、「千代田 桃」が言い放つ6話はまさに転機だ。

キマシタワー


引用元:©伊藤いづも・芳文社/まちカドまぞく製作委員会

6話以降の関係性はほぼ「百合」だ(笑)
顔を赤らめながらも心配したり、手料理を振る舞ったり、
街を守るために「共闘関係」が結ばれる。

話が進むと新しい魔法少女が街に現れる。
彼女も「百合要因」の一人であると同時に、ストーリーを進める存在だ。
魔法少女の秘密と過去を主人公であるシャミ子に伝えることで、
より、シャミ子と「千代田 桃」の関係性が強まる。

シリアスで重そうな設定なのに、それをきちんとこの作品らしい
優しい世界や空気の中でサラッと描写する。
そんな重要な設定が明かされつつも三角関係のような百合が描写されることで、
シリアスになりきらないのがこの作品のいいところだ。

出てくるキャラクターの殆どが「いい子」であり、
だからこそ優しい世界観が構築されている。

終盤


引用元:©伊藤いづも・芳文社/まちカドまぞく製作委員会

終盤になると色々と真実が明かされる。
なぜシャミ子は体が弱かったのか、なぜ貧乏な生活を強いられてるのか、
ずっと父親がいないのはなぜなのか。
シャミ子と「千代田 桃」が互いに秘密にし、
隠していたことをさらけ出したからこそ真実が明らかになる。

今までなんとなく戦っていたシャミ子にも戦う理由ができる。
自分自身の過去や存在を知り、運命を知ることで
彼女は1クールの最終話で自らが戦う理由を見つけることができる。
最終話は彼女の決意と、その決意から生まれる「魔法少女」への
プロポーズだ(笑)

魔法少女を倒すだけではなく、魔法少女を倒して自らの眷属にする。
彼女らしい「答え」だ。そして彼女らしい結末だ。
「千代田 桃」が好きだからこそ倒して消し去りたくはない、
むしろ自分の家族になってほしいと彼女は願う。

「シャミ子」という主人公の魅力、彼女自身の行動原理を
1クールでしっかりと描き、主人公と魔法少女の関係性を深めたからこそ
最終話の答えに納得できる。

はっきりいって何も解決していない。私達の戦いはこれからだという最終話だ。
だが、その何も解決していない感じもまたこの作品らしく、
これから「先」が気になるラストだ。

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総評:これで勝ったと思うなよ~!


引用元:©伊藤いづも・芳文社/まちカドまぞく製作委員会

全体的に見て非常に完成度の高い作品だ。
「きらら系」らしいキャラクターの可愛らしさ、
その可愛らしさを少ないメインキャラクターを集中的に一人一人丁寧に描くことで
よりメインキャラクターたちの魅力と良さがしっかりと際立つ。

特に主人公である「シャミ子」。この作品は彼女を中心とした世界だ。
彼女がある魔族になり、魔族になったからこそ魔法少女と出会い、
彼女だからこその答えを見つける。ヘタレですぐ泣いて弱い。
だけど、そんな彼女だからこそ愛くるしく可愛らしく愛着が湧いてしまい、
そんな彼女の魅力があるからこそ周りのキャラも放っておけない。

敵であるはずの魔法少女も、クラスメイトも、家族も、彼女が大好きだ。
そんな好意を受けるにふさわしい魅力が主人公であるシャミ子に
きちんとあるからこそ、彼女の周りのキャラにもきちんと感情移入できる。

主人公が魅力的。
という創作物においては当たり前にあって然るべき要素を、
この作品はきちんと芯に捉えている。

主人公が魅力的だからこそ、そんな主人公の日常が面白く、
主人公が魅力的だからこそ、そんな主人公の周りのキャラも愛着がわき、
主人公が魅力的だからこそ、ストーリーが面白い。

きらら系といえばいわゆる「萌え豚専用動物園」みたいな作品も多いが、
この作品はそんなきらら系の特徴からもう一歩踏み込んでいる。
ただの萌えアニメではない、ただのキャラ萌えではない。
きちんとしたキャラ同士の関係性があるからこそ発生する「百合」と、
バックボーンまできちんと設定されたキャラだからこそのストーリーがある。

萌えの先にあるキャラの「尊さ」を目指したからこそ、
萌えアニメにあるような「可愛い」だけには終わらない魅力がある。
これから彼女たちのストーリーが始まる、
そんなプロローグをこの1クールで描いており、続きが気になる作品だ。

個人的な感想:尊い


引用元:©伊藤いづも・芳文社/まちカドまぞく製作委員会

最初はコミカルな感じのいつものきらら系の日常アニメかなと思わせつつ、
それが徐々に百合な尊さへと変わり、ストーリーも面白くなる。
ややスロースタートの作品と言えなくもないが、
この作品は主人公の魅力があってこそであり、
だからこそ序盤から中盤まで丁寧に描いたのかもしれない。

驚いたのはこれで原作の2巻しか進んでいないところだ。
原作ありのアニメなら1巻あたり3話ないし4話くらいで描かれることが多いが、
この作品は1巻あたり6話もつかってる。
それほどまで丁寧に描いたからこそキャラクターの魅力もしっかりと感じられたが
原作の濃密さも伺える作品だ。

2期があるなら是非見たい、ないならないで原作を買ってしまいそうだw

コメント

  1. タナカコウタ より:

    レビューお疲れ様です。このアニメはコメディ要素にもハマりましたが、何より話が進むにつれて一見弱いシャミ子の強さと、一見完璧に見える桃の脆さ、そしてそんな二人の織り成す物語とあのラストシーンにうるっとさせられてしまいました。