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「Dr.Stone STONE WARS」レビュー

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評価 ★★★★☆(85点) 全11話

あらすじレコードに封じられていたリリアンの歌声を聴いたゲンは、自身の声帯模写とレコードの歌を使って司帝国の人々に「アメリカは既に復興している」という偽の希望を持たせ、司帝国を瓦解させる作戦を立案する。 引用- Wikipedia

目指すは無血開城

本作品はDrr.Stone2期。
監督や制作陣に変更はないが、
2クールだった1期とちがい1クール(全11話)となっている。

むかーしむかし


画像引用元:Dr.Stone STONE WARS 1話より
©米スタジオ・Boichi/集英社・Dr.STONE製作委員会

1話冒頭「昔話」から始まる。
ゲンによるDr.Stoneの世界観の説明とこれまでのお話が語られる。
この作品は2期だ、
本来は1期や原作を見た人を意識した始まりでも問題ない。

だが、この作品はわざわざ2期1話の冒頭で1期でやった
ストーリーを「ゲン」の視線と口調で語られる。

「俺だったら何も出来ずに即死かな、
 でも千空ちゃんはゴイスーなら化学大好き少年!」

1期を知らない人でも完全には理解できないものの
少しは分かるあらすじであると同時に
「ゲン」の視点で語られる1期のあらすじは
原作や1期を見た人ならば楽しめるファンサービスにもなっている。

2期1話を見る人がいるかも知れない。
そんな配慮とこの作品に対する制作陣の愛情を
1話たった3分ほどで感じてしまう。

1期は石の世界はじまり物語だった。
石の世界で千空は化学王国を作り上げた。
一方で霊長類最強と言われる高校生である司は
汚れた大人ではなく選ばれた若者のみの世界を作りあげようしている。

対立している彼と戦うために千空は
石化時代のようなこの作品の世界ではありあえない
「宇宙食」を作ろうとしているところから2期が始まる。
1話のたった5分で、1期のワクワクを感じさせてくれる。

組み合わせ


画像引用元:Dr.Stone STONE WARS 1話より
©米スタジオ・Boichi/集英社・Dr.STONE製作委員会

1期と基本的にやってることは変わらない。
作り上げたものを「組み合わせて」新しいものを作る。
この作品はその繰り返しだ、だが、それが面白い。

1期以上の段階で色々なことが可能になっている。
1期の最終話では石器時代みたいな状況から「携帯電話」を
この作品は作り上げた。
1期の序盤と違い2期の序盤は色々なことが可能になっている。
しかし、それでも千空が「○○を作る」と宣言をすると視聴者は驚かされる。

宇宙食を作るために、ラーメンを凍らせ「真空」にし
フリーズドライにする。
お湯を注げば「熱々のラーメン」の出来上がりだ。

千空による「擬音」を使ったわかりやすい説明は
大人も子供も科学的な知識がなくても理解しやすく、
その結果も「見せて」伝えてくれる。
美味しい「カップラーメン」の味に驚き、食べ、感動する。

しかし、その技術も「戦争」のために用意されたものだ。
人類が発展すれば「戦争」はつきものだ。
人が人である限り、知識を求め、争いは生まれる。
人の悪無く知的欲求は戦争をも利用し、科学が発展してきた。

戦争のおかげで科学技術は発展する、
まるで現代のように千空たちの技術もどんどんと発展していく。
科学技術が発展している「千空達」は「情報戦」を始める。

情報を有するものは戦に勝つ。これぞ千空なりの兵法だ。
力に対して、科学で立ち向かう。
ストーンウォーズが始まる。

情報戦


画像引用元:Dr.Stone STONE WARS 2話より
©米スタジオ・Boichi/集英社・Dr.STONE製作委員会

司たちは力で世界を支配しようとしている。
だが、そんな彼らに科学で挑むのが主人公である千空たちだ。
彼らはなるべくなら争いたくない、殺し合いたくはないと思っている。
だからこその「情報戦」だ。

無駄な争いを避け、効率的に敵を拿捕し、
情報を交換し、人が傷つかない道を模索する。
甘い考えともいえる。誰も殺さずに戦争を終らせる。

それは理想ではあるものの現代では悲しいかなかなわない。
情報戦をやる技術はあっても、同時に大量破壊兵器というものを
両者が持っているゆえに現代の戦争は激化し、疲弊し、
多くの犠牲者を生む。

だが、この作品の場合は違う。
司たちは確かに強いものの科学的な技術や大量破壊兵器は
持ち合わせていない。だからこそ「情報」が最大限に生きてくる。

現代ではかなわない「血を一滴も流さない」理想的な戦争。
いつの時代も、どんな状況も、人が人である限り争うことはやめられない。
しかし、争いは起きても誰も死なない戦争は
このストーンワールドならば、「千空」ならば可能だ。

彼の甘いともいえる不殺な志。
こんな時代に生きている彼らではあるものの、
平和な「現代」を生きていたからこその倫理観があり、
それがあるからこそ、千空は人を殺すという道を選ばない。

相手を「殲滅」すれば確かに戦争は終わる。
千空の知識ならばそういう手段を取ることもできるだろう。
だが、彼はあえてそうしない。
彼が目指すのはいわば「無血開城」だ。

友情


画像引用元:Dr.Stone STONE WARS 3話より
©米スタジオ・Boichi/集英社・Dr.STONE製作委員会

「大木 大樹」は1期の1話で石化から目覚め千空とともに居た友だ。
彼はあえて敵である司のもとへいき1年という月日が経過している。
そんな月日が経っても千空に対する信頼は変わらない。
約1年ぶりの会話、作戦の細かい詳細など全く伝えていない。
しかし、彼を信じているからこそ、それに従う。

主人公である千空の知識という名のちからは確かに強大であり、
この作品の核だ。しかし、彼だけではなし得ない。
多くの仲間と友が居て初めて、その知識と技術は生きてくる。

情報戦は嘘と本当を混ぜることで成り立つ。
いわば詐欺だ。一歩間違えば誰かが死ぬかもしれない。
そんな緊迫した状況でありながらも、
この作品はさらっとギャグを入れてくる。

これが本当に誰かと誰かが戦ってる最中のギャグならば
好みが分かれるところだが、会話という名の戦闘だ。
嘘と本当、虚像と真実を織り交ぜながら新たな仲間を得ていく。

千空は天才だ。だが不器用だ。
そんな不器用な天才だからこそ多くの友と仲間が彼を支える。
彼一人では色々な素材を集めることも出来ない。
彼の知識があり、仲間がいるからこそ「蒸気機関」も作れる。

千空も「仲間」のために蒸気機関を作った。
彼は本当に不器用で優しい人間だ。
仲間に差をつけない、たとえお年寄りでも彼は仲間として
守ろうとする。だからこその蒸気機関だ。

科学を「正しく」「人のために」使おうとする。
それが石神 千空だ。
彼が主人公だからこそ、彼についていく人がいる。
モブキャラの、名前も知らないようなおじいさんが
千空にかける台詞にうるっとしてしまう。

しかし、敵も強くかしこい。
「千空」が仲間を見捨てない優しい人間と分かっているからこそ罠を張る。
主人公と敵である「司」の視点もきちんと描くからこそ、
どういう展開になるのかより予測できなくなる。

きちんと緊張感はありながらもギャグを入れる。
真面目なシーンとコミカルなシーンが交互に描かれることで
見ている側の感情が自然と沸き立ってくる。

受け継がれし技術


画像引用元:Dr.Stone STONE WARS 6話より
©米スタジオ・Boichi/集英社・Dr.STONE製作委員会

「クロム」は千空たちとは違い、
ストーンワールドの中で生まれた人類だ。村では変わり者の妖術使い。
そんな彼は千空と出会い科学を知り、彼から多くのことを学んだ。
科学は受け継がれし先人の知恵だ。

彼もまたそんな知恵を活かす。6話は彼が主人公といってもいい。
捕まってしまった彼がありとあらゆる「経験」を活かし脱獄する。
たとえ科学をバカにされようとも、彼は仲間のために、
自らの力を最大限に活かし脱獄する。

科学だけではない、話術、戦術、彼はありとあらゆるものを吸収していた。
彼もまた科学者だ、自身が生きてきた中のことを活かし、
それを自分の技術へと変える。
これぞストーンワールドで生まれた人類の科学者だ。

そんな彼の本領発揮とも言わんばかりの6話の活躍ぶりは
この時代のもうひとりの主人公を見せられたような気分になる。

誰もが欠けてはいけない


画像引用元:Dr.Stone STONE WARS 7話より
©米スタジオ・Boichi/集英社・Dr.STONE製作委員会

杠が1期の時に千空から受けた極秘ミッション、
それはあまりにも信じがたいと同時に途方も無いものだ。
司は石化した「大人」は問答無用で砕いている。
彼が理想とする世界に大人は要らない。

しかし、それを「千空」は受け入れない。
受け入れないどころか砕かれた人もなんとかしたいとさえ思っている。
だからこそ手先が器用な「杠」を、女性であり、
決して力が強いとはいえない彼女を司のもとに送り込んでいる。

復元作業だ。砕かれた石化した人間をつなぎ合わせる。
粉々にされた人類ももしかしたっら復活できるかもしれない。
確実な保証はない、復元の度合いによっては復活も出来ないかもしれない。
そんな重荷を背負いながら「杠」は一人、人類をつなぎ合わせる。
欠けた部分をパズルのように組み合わせ、何時間も何時間も。

狂気とも言える行動だ。
本来は他人にかまってる余裕など無い時代であり世界だ。
しかし、千空たちは科学の力で世界全人類を救おうとしてる。
現実を科学でしっかりと見つめながらも、
最大限の理想を科学で求める。それが千空という主人公だ。

そんな彼らだからこそ仲間になる人間も増える。
主人公の理想と、その行動に共感する彼らの気持ちが
見ている側にも痛いほど伝わり、
短い回想の中で新しいキャラクターの「過去」が描かれることで、
そのキャラクターの印象もしっかりと深まる。

そして決戦の時は訪れる。
たった20秒で決まる全人類の命運。

20秒の戦争


画像引用元:Dr.Stone STONE WARS 8話より
©米スタジオ・Boichi/集英社・Dr.STONE製作委員会

誰の命も欠けてはいけない。そう決めたからこその作戦の数々だ。
相手を混乱させ、捕縛する。
相手との人数差を覆すための科学の技術兵器。
それを活かし、たった20秒だけの戦争を行う。

しかし、それを許さないのが「司」だ。
彼が現れた瞬間にそれまで流れなかった血が流れてしまう。
血も流さない、命も欠けさせない。
視聴者も千空たちの行動や台詞に共感しているからこそ
流れる「血」の印象は凄まじい。

あえて刃の先をアップにうつし、
血を印象づけることでより恐怖を煽る。
もしかしたら誰かが死んでしまうかもしれない。
犠牲がなければ理想はかなわないのかもしれない。

千空たちが築き上げた作戦の数々が破られる。
この主人公にして、このライバルといわんばかりの「司」の強さ。
この強さがあるからこそ「千空」という主人公がより際立つ。
「千空」と「司」、再び相まみえる。
だが、あのときとは違う、多くの仲間と復活した技術がある。

勝つのは自然が与えた人類の純粋な力か、
それとも人類自身が積み重ねた科学か。
雌雄を決する

Dr.stone


画像引用元:Dr.Stone STONE WARS 9話より
©米スタジオ・Boichi/集英社・Dr.STONE製作委員会

最初はせっけんで始まった戦いだ。
司の目の前で「千空」は石鹸という名のドクターストーンを見せた。
そんな科学を否定するのが司だ。
その戦いはせっけんで終わる。タイトルの意味がここでも生きてくる。

「ニトログリセリン」
Dr.Stoneから作られたその化合物は一歩間違えば大爆発だ。
人類の純粋な力だけでは到底かなわない圧倒的な破壊力をもつ化合物。
ギリシャ語で力を意味する「ダイナマイト」が出来上がる。

しかし、それを誇示するだけなのが千空だ。人には使わない。
ダイナマイトを使い多くの死者を出すことなど彼はしない。
それは「司」も分かっている。

交渉


画像引用元:Dr.Stone STONE WARS 9話より
©米スタジオ・Boichi/集英社・Dr.STONE製作委員会

だからこその「交渉」だ。戦争を終わらせる方法は3つある。
敵を殲滅するか、敵が降伏するまで戦うか、敵と交渉するかだ。
殲滅と降伏は圧倒的な力があれば可能だ。千空にはそれができる。
だが、彼はあえてそれをせず「交渉」という手段を取る。

相手が求めてるものを聞き入れ、それを叶える。
「司」の過去を「千空」が察するからこそ出来た交渉だ。
彼の妹は「植物人間」だった。そんな妹を親は見放そうとした。
兄である彼は妹を幼い頃からなんとか支えようと必死だ、
それゆえに「強くなる」しかなかった。

人類最強の高校生と言われた彼のバックボーン、
「大人」に頼れないのに「大人の汚い金」を利用することでしか
妹を守れなかった。今の彼が大人を憎む理由が描かれ、
そんな彼に千空が提案をする。
そんな提案を聞き入れることで「和平」という停戦につながる。

科学という希望を司に提示したことで千空は戦争を終わらせた。
誰の命も欠けさせずに。

人類最強タッグ


画像引用元:Dr.Stone STONE WARS 10話より
©米スタジオ・Boichi/集英社・Dr.STONE製作委員会

殲滅以外の戦争の終わらせ方をすれば必ずつきものはある。
それは反乱だ。戦争相手への恨み、政府への不満、
思想の違いは反乱を生む。
だが、すでに科学と力は手を組んだ。
最強の知恵と最強の力が手を組めばそこに敵は居ない。

それでも怪我人は現れる。「今」は治療はできない。
放っておけば死んでしまう。それでも「千空」は見殺しにはしない。
あえて、彼はあえて「殺す」ことを選ぶ。
誰かの命が犠牲になるという選択は彼にとって苦渋の選択だ。
しかし、殺さなければ、1度命の火を止めなければ救うことが出来ない。

「コールドスリープ」だ。
現代の科学でも命の保証は確実にはされていない技術、
まだSFの技術でしか無い技術を千空はあえて
このストーンワールドで実現させる。

千空と司の何気ない無駄話。
1期と2期、これまでの話と自分たちを振り返るような会話、
無意味なようで意味のある二人の会話、
まだ闘う前だった二人の数日の思い出。
静かに、ゆっくりと「司」は眠りにつく。

いつの日か目覚めるその日のために。
コレで終わりではない、ここからが始まりだ。
司を救うために、もっと多くの人類を救うために、
千空達は「石化の謎」に迫るため地球の裏側へと旅立つ。

総評:素晴らしい1クール


画像引用元:Dr.Stone STONE WARS 1話より
©米スタジオ・Boichi/集英社・Dr.STONE製作委員会

全体的に見て素晴らしい1クールだ。1期と違い2期は全11話しかない。
しかし、あえて1クール、全11話にしたんだと感じられるほど
練り込まれたストーリー構成があり、1話1話にしっかりと意味があり、
その1話1話が積み重なって最終話へと至っている。
技術の積み重ねという名の科学を題材にした本作らしいストーリー構成だ。

全人類を救おうとする千空と選民思想をもつ司。
主人公とライバルがしっかりと魅力があり、
彼らを支えるキャラクターたちも活躍がそれぞれあり、
1期以上に魅力的に感じられるキャラクターが増えている。

2期でキャラクターが増えてはいるものの、
それぞれのキャラの回想を短い尺で見せることで
キャラの印象を深め、キャラを使い捨てにしていない。
敵も味方も魅力あふれるキャラクターが多く、
2期ではそんなキャラクター同士が闘う。

しかし、千空が目指したのは無血開城だ。誰の命も犠牲にしない。
そんな甘い考えとも言える主人公の思想に見ている側も共感でき、
知恵と努力と友情で勝利をつ編む。
ジャンプらしい「燃える」展開をしっかりと見せてくれる。

期待どおり、いや期待以上に面白い2期だ。
1期を見た方なら確実に楽しめる、確実に面白いと思える、
そんな素晴らしい出来栄えの2期だった。

大航海時代が幕を開ける3期が今から楽しみだ。

個人的な感想:同時期に..


画像引用元:Dr.Stone STONE WARS 11話より
©米スタジオ・Boichi/集英社・Dr.STONE製作委員会

奇しくも2021年冬に1クールという尺でジャンプ原作アニメで
2期をやった作品がある。約束のネバーランドだ。
Dr.Stoneが原作愛にあふれる素晴らしい2期になったのに対し、
約束のネバーランドはあの有様だ。
同時期にやっていただけにどうしても比べてしまう。

しかも、見終わった後に調べて分かったが
1話はほぼアニオリであり、他の部分でも
回想シーンなどでアニオリシーンを入れることで話を膨らませている。
本来はアニオリというと違和感を感じることも多いが、
この作品にはそれがまるで無い。

制作側が原作を読み込み、原作に対する愛があるからこその
アニメオリジナルの違和感が生まれてない。
本当に素晴らしい2期だった。

3期も楽しみで仕方ない。

「」は面白い?つまらない?

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