評価 ★★★☆☆(58点) 全12話
あらすじ 突如2年2組に巨大な魔法陣が現れ、高校生の織田晶とクラスメイトたちは、まばゆい光に呑まれて異世界へ召喚されてしまう 引用- Wikipedia
これが90年代なろう系!?
原作は小説家になろうで連載されている小説作品。
監督は羽原信義 、制作はサンライズ
集団
この作品はいわゆる「集団異世界転移」ものだ。
アニメでも数多くの学校のクラスが異世界に飛んでおり、
そこですったもんだしている。この作品もクラス丸ごと異世界転移する。
主人公は影が薄く、クラスメイトにもろくに名前すら覚えてもらっていない。
そんな彼をはじめとするクラス全員が異世界に転移し、
魔族を倒すための「勇者」候補としてクラス全員が召喚されている。
お約束のステータスや職業、スキル、レベルといった
RPG的概念ももちろんある。
タイトル通り、主人公は勇者ではない。
「暗殺者」な主人公ではあるものの異様にステータスが強く、勇者よりも強い。
あるあるなわかりやすい始まりではあるものの
「サンライズ」製作のせいなのか、やたら作画、キャラデザが濃ゆく、
作画のクオリティも高い。
そのおかげで独特の雰囲気、空気感が生まれており、
あるあるなテンプレ的な設定で物語は始まるものの、
アニメーションのクオリティの高さゆえに引き込まれてしまう。
この線の太さや影のつけかた、デジタルな作画ではあるものの、
セル画時代を思い起こさせる部分がある。
ダークファンタジー
なろう系アニメ特有の「なよなよ」した感じや、
お気楽な感じ、そういったものがない。
いわゆる「ダークファンタジー」な雰囲気にあふれており、
そんな雰囲気だからこそ「命の重み」がしっかりとある。
主人公は職業としては暗殺者だ。
だが、だからといって「人を殺す」ということを躊躇なく行えるわけでもない。
元の世界では日本に住む普通の高校生だった、
そんな男が簡単に殺しをできるわけではない。
それはクラスメイトも同じだ。
「勇者」に選ばれた男も、勇者としてクラスメイトを守ろうとするが、
それでももとは普通の高校生だ。恐怖し、足がふるえ、立ちすくむ。
一歩間違えば死ぬ、そんな「緊張感」がきちんとある。
設定や世界観、展開自体はなろう系あるあるな部分が多いのだが、
それをアニメーションによる空気づくり、
90年代のダークファンタジーアニメでも見ているかのような雰囲気で
覆い隠すことでこの作品らしい独特の面白さが生まれている。
追放
この作品はいわゆる「追放」ものでもある。
最近のなろう系アニメでの流行りではあるものの、
この追放に至るまでの流れもきちんとおぜん立てされている。
主人公たちを召喚したのは「国王」であり、そんな国王は何かを企んでいる。
騎士団長はクーデターを企んでおり、主人公と意気投合するものの、
騎士団長は何者かに殺されてしまい、しかも、主人公は冤罪をかけられてしまう。
追放系といえば「お前は使えない!」と言われて追放されるというのが
最近のパターンだが、この作品はそうではなく、
テンプレ的な展開ではあるものの裏付けがあることで納得でき、
冤罪をかけられた主人公が一人、ダンジョンで強くなる過程も
ダイジェストではあるもののきちんと描かれていることで納得できる。
メインヒロイン
ダンジョンの中でエルフの王女様に出会ったり、
従魔を手に入れたりと、展開自体はよくあるなろう系だが、
丁寧に描写しているがゆえに「ツッコミどころ」も生まれづらく、
「エルフなヒロイン」というのも90年代ファンタジーっぽさが強く、
平成リバイバル的な面白さを感じることができる。
安易にハーレム的な展開にもならず、
メインヒロインは基本的に一人であり、
そんな彼女の事情を解決したりしながらも旅は続いていく。
この「冒険」「旅」というのも90年代ファンタジーっぽさが強く、
話の展開自体は遅いのだが、その遅さもまた90年代じみている。
そんなエルフが主人公に惚れ、主人公とともにいるために「強く」なろうとする。
従魔との関係、ヒロインとの関係がきちんと描かれており、
そんな関係性が構築されてるからこそ主人公が
大切なものを守るために戦う展開に納得できる。
その戦いの末に「魔族」を殺すかどうかの選択に迫られる。
暗殺者である彼にその選択をとることはたやすい、
だが、その選択肢を安易には取らないのがこの作品の主人公だ。
命
主人公は勇者よりも強いステータスを持っている。
だが、だからといってチートというわけではない。
魔族には主人公と同等、それ以上の実力を持つ者もいる。
「死」というものは常に彼の、そして仲間たちのそばにある。
何度も主人公は死にかけている。
しかし、そのたびに彼の中にある「影魔法」が強制的に発動し、
彼の命を救うものの、何度も何度も彼は実際死にかけている。
そんな目にあうからこそ、彼はそのたびに実感する。
今ここで死ぬわけにはいかない、まだ自分は何もなしてはいない。
「死」への恐怖、「成し遂げられない」恐怖を主人公自身が味わうことで、
命を奪う意味を考える。
彼らがこの世界に来たときにも多くの命が犠牲になっている。
自分の命、他者の命、命の責任を主人公は様々な出来事の中で感じる。
元の世界に戻ること、それが主人公の目的ではあるものの、
この世界で生まれたつながりも彼にとっては失いたくないものだ。
限りある命を「暗殺者」という立場で考える。
暗殺者
終盤、主人公の恩人の命を奪った原因たる存在と、
ヒロインを狙うものが同じ人物であることがわかる。
多くのものがその人物の「暗殺」を主人公に望んでいる。
主人公が人を殺す理由というものを1クールかけて描いている作品だ。
悪人だから、むかつくから、そんな衝動的な理由ではない。
「命を奪う」という意味を主人公自身が体感し、
その果てに彼が暗殺者になるまでの物語が
ものすごく丁寧に描かれている作品だ。
殺すことは簡単だ、だが、そのあとに元の世界に戻った時に
彼は家族と堂々と顔を合わせることができないかもしれない。
迷いに迷った彼の選択、そんな選択までを描く
一本筋がとおったストーリーは肝が据わった作品だった。
総評:サンライズがなろうアニメを手掛けた結果
全体的に見てまっすぐなダークファンタジー作品に仕上がっている。
序盤、特に1話の段階では「なろう」的な要素が強く出ており、
拒否感は出やすい部分があるのだが、話が進めば進むほど
腰を据えたダークファンタジーがしっかりと描かれていることが伝わる。
いかにもなタイトルで「俺つえー!」な作品に思えるが、
この作品はそういう作品ではない。
確かに主人公は強い、だが、同時に弱い。
弱いからこそ命を奪うことを、奪われることに怯えている。
人を殺すという事実をきちんと考え受け止め答えを出す。
そんな主人公の物語が1クールかけて丁寧に描かれている。
1話切りしてしまえばこの面白さは伝わらない、
そういう意味でも現代的なアニメの作り方とは少し違う。
そこもあえてなのだろう、キャラクターデザイン、作画、演出、
どれも最近のアニメというよりは90年代のアニメのような
雰囲気をあえて取り込むことでこの作品らしい世界観が生まれており、
それが一周回って新しい、ある種の平成レトロ、
平成リバイバルのような現象をアニメに取り込んでいる作品だ。
あの頃のアニメを楽しんでいた人にはどこか懐かしい雰囲気がしっかりとあり、
そこに懐かしさを感じる人もいれば、
逆にあの頃のアニメを見たことがない人には新鮮に感じられる。
そんな平成リバイバルな要素も味わえる、実験的な部分もある
面白い作品だった。
個人的な感想:影
この影のつけ方は本当に懐かしく、作画のクオリティも高い。
セル画ではなくデジタルであえてこの影をつけまくる手法をやるのは
個人的には非常に楽しめた部分であり、この手法がもっと
流行ってもおかしくないのでは?と感じる部分だ。
あのサンライズだからこそ、老舗のアニメ制作会社だからこそ
出来たという部分はあるかもしれない。
「なろう系」というジャンル自体に疲労感を覚える昨今ではあったが、
ここにきてこういった工夫、アニメとして楽しめる作品が増えてきており、
まだまだなろう系も捨てたものではないのかもしれない。



