評価 ★★★☆☆(48点) 全12話
あらすじ 間と“あやかし”が共生する日本──。優れた能力と容姿を持つ“あやかし”は日本の中核を担っていた 引用- Wikipedia
整合性0の何もしないシンデレラ
原作は小説家になろう、アルファポリスで連載していた作品。
監督は大宮一仁、制作はColored Pencil Animation Japan
あやかし
この作品は世界大戦後の世界だ。
多くの人類が被害に遭う中で、影に隠れて生きてきた「あやかし」が出てきて、
不思議な力を持つ彼らは人間の復興を手伝った結果、
あやかしたちは「政治・経済・芸能」とあらゆる分野でトップに立っている。
「あやかし」たちは稀に人間の中から花嫁を選び、
特に「あやかし」の中でトップにいる「鬼」の花嫁に選ばれることは
名誉とされている。
そんな世界で主人公の彼氏は、花嫁に選ばれた主人公の妹のことを好きになり、
主人公を振るというところから物語が動き出す。
この1話の世界観の説明の時点で色々とツッコミたくなってしまう。
政治と経済だけならまだ納得なのだが、芸能までトップに立っているのは謎だ。
主人公は花嫁ですらなく、妹だけ花嫁に選ばれたせいで、
両親の関心は妹だけに向いている。
家庭でも居場所がなく、妹でさえ主人公に敵意を向けている。
そんな態度を彼氏であるあやかしの前でも晒しているのに、
あやかしのほうは我関せずだ(苦笑)
公式の紹介では「あやかし×和風シンデレラストーリー」と書かれており、
そんな紹介通り「シンデレラ」的な可哀想な状況を
作ろうとしているのはわかる。
両親の毒親っぷりは過剰であり、あやかしの花嫁の親であるということに夢中で、
主人公への態度が異常だ。
これで主人公の見た目が悪いとか、主人公の年齢が50歳くらいで
もう花嫁に選ばれる可能性がないなど、
そういう主人公になにかしらの原因があるならともかく、そういう要素はない。
あげく、妹と揉めて妹にビンタをかました主人公を見た「妹の花婿」は
主人公の右腕に火をつける始末だ。
露骨すぎる主人公の劣悪な状況づくりが、露骨すぎるがゆえに笑ってしまう。
あのシンデレラですらちょっとドン引きするほどの
劣悪な環境だ。
王子様
大爆笑してしまうのが1話の後半だ。
強引に主人公の劣悪な状況を作り出した後、強引に主人公の前に王子様を出す。
家から飛び出した主人公が街をぶらついていると、
唐突に「鬼」のあやかしである王子様が現れ、
「ずっと探していた」と言い放ちながら抱きしめる。
主人公はそんな鬼のことなど一切知らず、
見ず知らずの他人なのに、いきなり抱きしめられ優しい声をかけられると
即落ちする。
鬼はあやかしのトップであり、そんなトップの花嫁に唐突に主人公は選ばれる。
王子は王子でも、主人公を選んだ鬼の一族は鬼の中のトップだ。
歩道橋をぶらついていたら超絶玉の輿が降って湧いて出てきている。
とんでもねぇご都合主義だ。
鬼に限らず、あやかしは花嫁に対して絶対であり、裏切ることはない。
浮気や不倫をすることもないのだろう。
とんでもなく女性にとって都合の良い状況づくりがある。
火傷した腕を治してくれて、自分の家に連れて帰り、お姫様抱っこし、
いい子いい子してくれて、妹に破られた大切な洋服も直してくれる。
主人公の可哀想な状況も調査し、祖父母と養子縁組させることで
彼女を救い出す。
シンデレラもびっくりどころか、シンデレラがガラスの靴で
殴ってくるレベルのシンデレラストーリーだ。
理由
ここで重要なのが、なぜ主人公が選ばれたのかという点だ。
鬼は鬼であるがゆえに言い寄ってくる女性は多い。
だが、言い寄ってくる女性は彼の見た目と権力と金にしか目がない。
人間たちは知らないが「あやかし」にとって花嫁とは運命の人だ。
誰が花嫁なのかは自分自身にしか分からず、本能で見つけ、
出会った瞬間に吸い寄せられるようになり、二人の間に
生まれた子供は強い霊力を持つことになる。
簡単に言えばビビッとくるかどうかである(笑)
家を出てぶらついている主人公をたまたま見かけ、
ビビッときた鬼が主人公を花嫁に選んだだけで、
深い理由など1つもない。
あまりにも浅すぎる設定と、ご都合主義すぎる展開に笑いしか起こらない。
シンデレラもさすがに腹を抱えて大爆笑していることだろう。
ざまぁ
この作品を連載していたのは「小説家になろう」だ。
そんななろうらしさもビンビンに感じる。
なろう系の主人公の場合、特に追放系の場合は
主人公の能力が使えないと追放されるという展開がよくある。
この作品の主人公もまさにだ。
花嫁に選ばれない主人公は主人公の両親にとって使えない存在であり、
可哀想な目に遭わされ、追放されるような目に遭う。
だが、そこでなろう系の場合は追放した側が「ざまぁ」と
言われるような展開にすることで爽快感を生む場合がある。
この作品もまさにだ。
実家に戻った主人公のもとに鬼たちが現れ、
主人公が祖父母と養子縁組をすることを発表する。
すると主人公の両親がブチギレる。わけがわからない(苦笑)
そもそも主人公の両親は主人公に対する愛情はなく、邪魔者扱いしている。
それならば祖父母との養子縁組に反対する必要はないはずだ。
鬼たちの態度に妹はブチギレて
「私は妖狐の花嫁よ!」とイキったかと思えば、
主人公の腕を燃やした妖狐が鬼に燃やされる(笑)
なろう系では主人公自体が「ざまぁ」的な展開にするのが常だが、
この作品の場合は主人公ではなく、鬼がなにもかもやってくれる。
主人公は何もしていない。ただただ偶然、鬼に選ばれただけだ。
狂気なのはそんな鬼の姿を見て、
母親が「どこかで見たことあるんだけど……」と一瞬顔を赤らめているところだ。
明らかに顔を赤らめるような状況ではないのに、
まるで恋する乙女のような表情をしている母親には狂気しか感じない。
両親は両親で主人公が鬼の花嫁に選ばれたことを知り、
どうにかならないかと画策しだし、
妹は妹で「よくもひどいことをしてくれたわね!言いつけてやるから!」
と小物感を全開にしている。
そんな妹にたぶらかされ、妖狐と妹は復讐を誓う。
基本的にこの作品に出てくる「あやかし」は設定の都合上、
完全に女性の言いなりである。
不安
主人公はその環境ゆえに自分に自信がない。
鬼から絶大な愛を寄せられても不安を感じ、
もし彼に捨てられたら……という気持ちを常に持っている。
鬼にも婚約者がいることが明らかになり、
戸惑うものの順風満帆だ。
ただ中盤、若干気持ち悪さが出てくる。
鬼が主人公にプレゼントを贈るのだが、
生まれてきてから今までの全ての誕生日を祝ってくる。
「1歳、この世界に生まれてきてくれてありがとう」
「2歳、もうおしゃべりできるようになったね」
と18歳の誕生日までの全てに手紙付きで、
その年齢に合ったプレゼントを唐突に用意してくる(笑)
一応、主人公がまともに誕生日を祝われた経験がないからという
バックボーン込みではあるものの、
なかなかの気持ち悪さを感じる行動だが、
この行動込みで面白くて仕方ない。
鬼の秘書が主人公に嫉妬していたり、婚約者だけでなく、
実は男の秘書が鬼の恋人説も出てきたりするのだが、
明らかに恋人ではないことが見ている側に分かってしまっているため、
その話自体はどうでもいいが、展開自体の愉快さはある。
妹
中盤で姉を取り戻すために妹と両親が画策し始める。
妹と両親が再び主人公の前に現れ、
「お姉ちゃん可哀想!鬼には恋人がいるのに!」と煽ってきたりするのだが、
主人公は一切動じない。
そんな奴らに板挟みになっているのは「妹の花婿」である狐だ。
彼は鬼の花嫁を傷つけたことで当主から警告されている。
狐が鬼にかなうわけもなく、勘当されるリスクがあるのに、
それでも主人公の妹のために行動する姿は男だ。
妹と両親の画策も失敗に終わるものの、
まだ妹は諦めず、さんざん自分が主人公をいじめ、ちょっかいをかけたのに
「全部お姉ちゃんが悪いんだ」
と恨みつらみを募らせる姿は、どこか昼ドラでも見ているかのようだ。
その恨みの末に主人公を階段から突き落とす(笑)
妹のこの極端な思考は両親の育て方による
半ば洗脳のような状況にあるのだが、
妹が赤子の段階から姉を不遇にし、妹を優遇する教育をしていたようで、
この両親がなぜ、主人公に幼少期から
ここまで愛情を抱かないのかが謎でしかない。
両親
主人公の両親がなにがなんでも「あやかし」の花嫁にするために
主人公と妹を教育していたというならばわかるが、
最初からそういうつもりはなかったようで、
妹が生まれてから明らかにおかしくなっている。
両親は裕福ではなかったようだが、
それでも家族で出かけて外食するくらいの余裕はある。
どうしてもお金欲しさに娘たちが花嫁に選ばれないといけない!
だから二人の娘にきつくあたっていたとかいうならばわかるが、
そうではないのに圧倒的に格差をつけて二人の娘を育てている。
かなり謎でしかないのだが、
整合性のある設定が基本設定の段階からできていないのだから、
過去や設定を掘り下げてもまともになるわけでもなく、
ツッコミどころしか生まれない。
ちなみに過去が描かれる11話は作者監修のアニオリ回のようだ。
わざわざ作者が監修した結果、新たなツッコミどころが生まれる。
こんな愉快な作品はなかなかない。
姉への執着を捨てられなかった妹は、
あやかしの花嫁ですらなくなってしまう。
ラストツッコミ
妹も両親も遠い地へ送られることになり、
主人公にとっての障害と言えるものは最終話でなくなっている。
最終話では1話で主人公を振った元彼が
急に主人公に告白してきたりするが、ざまぁ的な展開で終わる。
それだけなら主人公が「恋」というものを自覚し、
自分自身に自信を持てるようになったという展開で、
最終話らしいとも言える。
しかし、まだそこから10分ほど尺がある。
そこで何をしだすかと思えば「鬼の婚約者」が出てくる。
婚約者は鬼と鬼の秘書が恋人同士だと勘違いし、
BL同人誌的なものまで作っていたキャラクターだ。
婚約者が最終話で再登場し、なぜか鬼の秘書と婚約する(笑)
そんな要素やフリは一切なかったのに、
唐突に婚約するどころか、実は婚約者は
鬼の秘書のことを好きだったという設定まで飛び出てくる。
この作品に整合性を求めるのが大きな間違いではあるものの、
最後の最後までとんでもない作品だった。
総評:2026年NO.1トンチキアニメ
全体的に見て大爆笑な作品だ(笑)
1話の冒頭の世界観の説明の段階からツッコミどころがあったのだが、
そこから強引すぎるシンデレラ的なシチュエーションづくりが始まり、
そうかと思えば降って湧いたように王子様が現れ、
あとはなろう系らしく「ざまぁ」で何の努力もせずに
主人公がとんとん拍子で成り上がっていく。
主人公が何もせずとも、鬼や妹や両親が行動し、
鬼は主人公に無条件の愛をもって尽くしまくり、
妹や両親は勝手に自滅していく。主人公は一切何もしていない。
だからこそ印象に残るのは敵たる妹や両親であり、
彼らが転がり落ちていく様を楽しむアニメともいえる。
あのシンデレラでさえ「ガラスの靴」を落としているのに、
この作品の主人公は何も落としてすらいない。
棚からぼた餅どころか、棚から金塊が降ってくるレベルだ。
なにもしていないのに成り上がる、
これぞなろう系の真髄なのかもしれない。
鬼が主人公に惚れた理由も激烈に浅く、
妹がなぜ主人公を敵視しているのかという理由も強引だ。
まともな設定を作れていないからこそ、
トンチキなストーリーと予想できない展開の数々に
腹を抱えて笑ってしまうほどだった。
2期があるかどうかはわからないが、
正直、見てみたいと思ってしまう自分がいる。
個人的な感想:実写映画
この作品はアニメの前に実写化もされていて、映画になっている。
評価を見るとそこそこ高いようなのだが、
原作ファンや映画ファンというよりはキャストのファンの感想が多く、
あてにならない。
実写映画の配信も始まるようなので、
そちらでもう一度「鬼の花嫁」のトンチキワールドを
楽しみたいところだ。



