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たった70分の名作「北極百貨店のコンシェルジュさん」レビュー

4.0
北極百貨店のコンシェルジュさん 映画
北極百貨店のコンシェルジュさん
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評価 ★★★★☆(70点) 全70分

映画『北極百貨店のコンシェルジュさん』予告編

あらすじ 新人コンシェルジュの秋乃(人間)は、⼀癖も⼆癖もある個性的な動物の「お客様」たち相手に悪戦苦闘しながらも全⼒で仕事ち向き合う引用- Wikipedia

たった70分の名作

本作品の原作はビッグコミック増刊号にて
連載されていた漫画作品。
監督は板津匡覧、制作はProduction I.G

世界観

この作品の世界観は不思議だ。
タイトル通り「北極百貨店」を舞台にした物語なのだが、
この百貨店に訪れるのは人間ではない。お客様はすべて「動物」だ。
彼は人間のように言葉を喋り知能を持ち、買い物を楽しんでいる。

その一方で人間は彼らに「尽くす」立場だ。
百貨店の従業員は全て人間であり、彼らの1番上の上司たる
百貨店の支配人だけは動物だ。
普段、人間は動物を「消費」して生きている。

きている服、食べ物、装飾品etc….
我々人間は動物を買い、消費することで生きている。
しかし、この世界の「北極百貨店」に訪れている動物は違う。
肉食も草食も済んでいる場所も関係ない、
人間の従業員に尽くされ「消費」を楽しんでいる。

非常に不思議な世界観であり、同時に皮肉めいている。
決してその裏にあるメッセージ性を押し出すわけではない。
ある種の動物愛護的なメッセージはある。

普段、消費している動物に人間が尽くす。
もしかしたら、この作品の世界は消費された動物たちの
「魂」の行き着いた世界であり、
そんな世界の中にこの「百貨店」はあるのでは?と
感じてしまうようなメッセージがある。

ある種の人類の贖罪の場所だ。
すでに現実世界では絶滅した動物たちも訪れている。
日本にかつて存在したニホンオオカミや、
「マンモス」までも、この北極百貨店のお客さんだ。

見る動物園

大人はそんなこの世界の意味や設定を
深掘りしたくなるような不思議な世界観と、
その世界観を紐解くようなヒントだけが
ときおりキャラクターのセリフから飛び出るが、
あくまで、そこは大人の目線で見た場合だ。

子供の目線で見るとコレほど楽しい作品はない。
まるで「見る」動物園だ。
楽しそうに動物たちが買い物をしており、
色々な動物が自分の欲しい物を求めてこの百貨店にやってくる。

アニメーションだからこそなしえる表現も息吹いている。
特にキャラクターの描写はやや誇張したような表現が多い。
制作こそProductionIGであり、監督も板津匡覧さんなのだが、
まるでサイエンスSARU制作、湯浅監督の作品のような
コミカルなキャラクターの動きがより、
一人ひとりのキャラクターへの愛着を持たせてくれる。

そして音楽も秀逸だ。
「北極百貨店」の店内BGMはスーパーなどで流れていそうな
耳に残る店名を歌詞にしたものであり、
そのBGMがより北極百貨店の印象を強めてくれる。

そんな世界観の中で主人公は新人のコンセルジュだ。
やる気はあるものの経験はなく、
ドジな彼女を主人公に物語が綴られる。

やる気

彼女はやる気だけは1人前だ。
憧れの北極百貨店に試験雇用された彼女の初日から物語は描かれる。
北極百貨店に訪れるお客さんは一癖も二癖もある、
まるで「クレーマー」のようなアザラシ、
接待をしているフェレット、プロポーズしたいニホンオオカミ。

ありとあらゆる動物がこの北極百貨店には訪れ、
人間たちを困らせている。だが、彼らはお客さんだ。
お客様は「神様」だ。
そんなお客様に失礼があってはいけない。

ときおり上司に注意されながらも、
主人公はがむしゃらに、ただただひたすらに
「お客様」のためを思って行動している。
最後には笑顔で帰ってもらいたい、それが彼女の心情だ。

そんな一生懸命な主人公の姿に
見ている側も自然と感情移入してしまう。

人情噺

この作品のベースにあるのは人情噺だ。
訪れる動物たち、一匹一匹に事情があり、そこに「ドラマ」がある。
そんなドラマを描きながら、徐々に主人公は成長していく。

ニホンオオカミのエピソードは秀逸だ。
ニホンオオカミは絶滅した動物だ、
他に彼らと同じニホンオオカミはこの世界にはおそらく
ほとんど存在しないのだろう。

オスのニホンオオカミはメスのニホンオオカミと付き合っている。
何度も何度もプロポーズをしようと思っているのだが、
なかなか踏み出すことはできない。
もしかしたら、自分以外のニホンオオカミが居ないから、
自分と付き合ってくれているだけではないのか。

そんな思いが彼の中にはある。
そんな彼のために主人公と北極百貨店の従業員たちは
プロポーズを成功させようとする。

そんな彼のデートシーンにはおもわずニヤニヤしてしまう。
現れた彼女は明らかに彼に好意を持っている。
彼が食事中にフィンガーボールの水を
指をあらための水と知らずに飲んでしまっても、
彼女は同じようにフィンガーボールの水を美味しそうに飲んでくれる。

決して他のニホンオオカミがいなかったから
彼と付き合っているわけではない。
二人の言葉にしない「愛」に従業員と同じくニヤニヤしてしまう。
そんな彼のプロポーズはロマンチックの塊だ。

令和の時代に百貨店のレストランでプロポーズをする人は少ないだろう。
そもそも「百貨店」というものに特別感を感じていたのは
昭和か平成初期の世代だけだ。
だが、この世界の動物にとって北極百貨店は
あの頃の日本人と同じような憧れのある場所だ。

泣かされる

序盤から中盤までそういった温かいエピソードが連なって描かれており、
色々なお客様との接客の中で主人公も成長していく。
私としては涙腺を若干刺激されるエピソードこそあれど泣きはしなかった。
だがラストのエピソードではおもわずやられてしまった。

北極百貨店にはマンモスのお客様も訪れる。
彼は「彫刻家」であり、永久凍土の氷を使って
様々な芸術品を作り上げている。
そんな彼の作品がパティシエのネコのせいで壊れてしまう。
決して壊したくて壊したわけではない、ちょっとしたハプニングだ。

ネコが壊してしまった作品はマンモスの妻が愛した作品だった。
そんなマンモスの妻はもうなくなっている。
形あるものはいつか壊れる、
妻を亡くした彼には痛いほどわかっていることだ。
だからこそ、怒ったりはしない。

そんな彼への謝罪、彼の思いに答えるようにパティシエの「ネコ」は
自身が今できる精一杯のことを成し遂げる。
彼と奥さんの形をもしたケーキだ。

もう見ることはできない二人並んだ姿のケーキ、
そんなケーキを見てマンモスも、見ている側もおもわず涙をこぼしてしま
う。
そんな優しく温かい作品だった。

総評:名演に浸る70分

物語としてはシンプルだ。
だが、この作品に隠れたメッセージ性と
動物たちのドラマ、そしてそんなキャラクターを演ずる声優の
「演技力」がひかり、コミカルなアニメーションがそれを盛り上げ、
最後はおもわずなみだをこぼしてしまうような作品だ。

面白かった。素直にこう言えてしまう作品だ。
大人が見ると世界観が引っかかる部分があるかもしれない、
だが、それは大人ゆえの「邪推」だ。
メッセージ性や作品に秘めたテーマは確かにあるものの、
まるで動物園に訪れたように楽しい気持ちで帰れる作品だ。

物語のストーリーとしてはシンプルなのだが、
そのストレートなストーリーを声優の演技がもりたてている。
この作品にいわゆる新人声優や中途半端な芸能人声優は居ない。
多くの作品に出演し、確かな演技力と声の魅力をもっている
本物の声優しか出ていない。

川井田夏海、入野自由、花澤香菜、福山潤、中村悠一、福山潤、
村瀬歩、寿美菜子etc….
そしてマンモス演ずる「津田健次郎」さんの演技力は流石の一言だ。
声の魅力だけではない、しっかりとした演技力があるからこそ、
最後の彼のセリフにおもわず涙を誘われて知っ舞う。

この作品はたった70分しかない。
だからこそ大人も子供もダレず、飽きずに楽しめる。
70分という短い尺に秘められた動物ドラマの数々に、
おもわず心打たれてしまう素晴らしい作品だった。

個人的な感想:良かった

事前情報をほとんど入れずに見に行った作品だったが、
予想以上に素晴らしい作品だった。
事前情報がなかったからこそ、どういうストーリーなのか
世界観すらもよくわからないからこその、
先入観0からの作品の面白さのギャップが、より作品への高い評価に繋がった。

この作品の監督である板津匡覧さんは
長編映画初監督のようだが、カラフルな色使いやアニメーションにおける表現など
湯浅監督あたりを意識した演出も面白く、
今後期待したい監督さんだ。

あまり世間的に流行ってる感じもなく、
興行収入も厳しそうだが、
ぜひ、まだ見てない方は劇場に訪れてほしい作品だ。

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