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「マブラヴ オルタネイティヴ」レビュー

1.0
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評価 ★☆☆☆☆(17点) 全12話

#マブラヴ TVアニメ マブラヴ オルタネイティヴ 第二弾PV

あらすじ 白銀武が目覚めるとそこは自宅だった。「元の世界」に戻れたと浮かれていた武だったが、家の外には3年前に見た光景が広がっていた。引用- Wikipedia

妥協の果てに

原作は2006年に発売された成人向けゲームな本作品。
監督は西本由紀夫、制作はFLAGSHIP LINE、ゆめ太カンパニー×グラフィニカ

映像化不可能

原作はもともと映像化不可能とまで言われた作品だった。
そもそもマブラヴは三部作の作品であり、
マブラヴエクストラ、アンリミテッド、そしてオルタネイティヴと続く。
三部作目だけでもプレイ時間は60時間であり、三部作全てあわせると100時間を超える。
それほどまでのストーリーの量あり濃密かつ重厚なゲームだ。

それをアニメ化する場合は一体何話かかるのか。
4クールでもたりない、おそらくは8クールはかけないと無理とまで言われ、
実質的にアニメ化は厳しいと言われてきた。

これがマブラヴが発売された当時や発売して2,3年ならまだ
マブラヴ自体の人気も後押しし、2000年代後半という時代ともあい、
2クール以上の1期、2期、3期とアニメ化することも出来ただろう。
しかし、マブラヴ発売から12年の時を経てアニメ業界も変化している。
よっぽどの作品でなければ2クールで放送はされず、
良くて分割2クール、悪くて1クールが当たり前の時代だ。

そんな中でアニメ化される「マブラヴオルタネイティヴ」。
ファンの間でも放送前から不安視する声は大きく、期待はある一方で
「大丈夫なのか?」と思った方は多いはずだ。

しかも、三部作の三部作目からアニメ化している(苦笑)
過去にマブラヴオルタネイティブのスピンオフ作品はアニメ化されたものの、
この本編のアニメ化は無謀と言わざる得ない中でのアニメ化だ。

ナレーションベース

1話早々にナレーションベースで世界観が語られる。
この世界は「BETA」と呼ばれる侵略者が宇宙から飛来し、
地球はそんなBETAと人類は戦争中だ。
多くの人類が死にゆく中で、日本はすでに「九州から京都」まで侵略されている。
絶望的な状況の中で3000万人の日本人が死亡する。

ナレーションベースでの世界観の語りはやや気になるものの、
この「マブラヴオルタネイティヴ」の世界観をわかりやすく描いており、
「BETA」という絶望的な存在の脅威、そんな脅威に立ち向かう人類の兵器の
戦闘シーンは迫力がありインパクトとしては悪くない。

その一方でキャラクターの作画のクォリティはあまり良くない。
1話からどこか「古さ」を感じるキャラクターデザインとあわせて
シーンによってはギリギリな作画であり、
現代兵器とロボットを用いたBETAとの戦闘シーンとのギャップが凄まじい。

戦闘シーンのクォリティは素晴らしいのに、キャラクターの作画は微妙。
このギャップのせいでいまいち1話から作品の盛り上がりについていけない。

2周目

この作品は簡単に説明するとループものだ。
最初は学園ラブコメの世界に居た主人公がいきなり
BETAに襲われている世界に飛ばされる。
そしてその世界で更にループし2周目から始まるのが本作品だ。
しかし、アニメではその学園ラブコメは描かれず、1周目は回想シーンでさくっと片付ける(苦笑)

原作をやっていれば理解はできる。
しかし、原作をしていない人にとってはわけのわからない状態だ。
そもそも原作をやっていても「ダイジェスト」的なストーリー展開は
かなり気になるところであり、ところどころ飛ばしながら進んでいく
ストーリーへの違和感は半端ない。

本来マブラヴという作品は学園ラブコメ、そして1周目の中での
積み重ねとキャラクターとの関係性から生まれる、
主人公やメインキャラクターたちへの思い入れや感情移入が重要な作品だ。
しかし、その積み重ねを回想シーンでぱっと描いたり、
そもそも描かれていなければ、思い入れは生まれない。

学園ラブコメな世界からいきなり絶望的な世界に飛ばされ、
その世界で何も出来ず後悔している中で2周目が始まる。
その過程が重要な作品で過程をすっ飛ばしてしまっているがために
淡々と物語を見てしまううえに、重要なイベントだけを見せられている感覚だ

原作をやっていればカットとダイジェストがきになり、
原作をやっていないとそもそも意味不明という最悪なものになっている。
原作向けと割り切るなら少なくともこのダイジェストな展開でなければ、
もう少し擁護のしようはあるが、細かい部分が気になって物語に集中できない。

声優

これも原作をやっている時になるのだが
本作品は原作とは声優が違う。
原作では主人公は保志総一朗さんなのだが、アニメでは神木孝一さんに変更されている。

原作から12年も経過し、ギャラなどの予算の問題も合ったのかもしれない。
声優の変更自体は致し方ない部分はあるものの、
神木孝一さんの演技が完全に「保志総一朗」という声優のモノマネだ。
そういった演技指導で意識的に似せているのはわかるものの、
ずーっと「保志総一朗」のモノマネを聞かされるのは流石に厳しく、
モノマネに集中するあまり演技が浮ついている。

ダイジェストなストーリーでストーリーに集中できないのに、
モノマネ演技のせいでキャラクターへの感情移入を余計に阻害される。
中途半端なモノマネなんかやらずに、普通に声優変更だけでよかったはずなのに、
なぜか「保志総一朗」さんに寄せた演技と声真似をしてしまうのは悪手でしかない。

原作をやっている人にとっては「保志総一朗のモノマネ」をずっと聞かされ、
原作未プレイの人には「演技が浮ついている」主人公の演技をずっと聞かされる。
アニメを見て「不快感」を感じたのは久しぶりだ。

ダイジェスト

特に気になるのが序盤のダイジェストチックな展開だ。
恐らくは現作をやっていなければ3話で見るのを辞めた人が多いと
感じるほど、特に3話は酷い。

2話では主人公にとっての2周目が始まるところから始まる。
実質的な1話が2話だ。
彼はこの先起こるべきことを認識しており、認識しているからこそ行動をする。
主人公が涙ながらに軍の上層部にいる
ゆうこ先生に訴えかけるシーンは本来ならば盛り上がるシーンだ。
しかし、原作をやっていない人からすれば積み重ねが全く生きてこない。
話の流れ自体はわかるものの、キャラクターの感情についていけない。

軍に入り、次々と主人公にとっては「見知った」キャラが居る。
だが、原作をやっていない人にとっては見知らぬキャラだ。
キャラクターの名前もテロップで出たりはするものの、
それだけではキャラの名前も印章もまるでつくはずがない。

主人公とプレイヤーが経験したあの「40時間」がアニメの視聴者にはない。
キャラクターの作画も危うく、作画崩壊ギリギリのクォリティで
「いつもの」会話劇を繰り広げられても面白さはまるで伝わらない。

特に3話では急に「霞」というキャラが謎の脳が浮いている部屋におり、
更には主人公の口から「純夏」という名前が出てくる。
もうこの時点で原作未プレイは置いてけぼりだ。
霞がそもそものなんなのか、あの脳はなんなのか、純夏って誰やねんと。

原作をやってる方にいえば3話で描かれるはずの総戦技演習はダイジェストだ。
もうこの時点で「ええ…」となってしまう原作プレイヤーも多いだろう。
キャラの関係性の構築やキャラの掘り下げもほとんどなく、
とんでもないスピードで話が進んでいる感じが強く、
原作の細かい部分を忘れていたりする人ですらついていけなくなる。

これはオルタネイティヴのアニメではなく、オルタネイティヴのアニメの総集編だ。
本来は2クールないし4クールかけて描かれるもののを
1クールにして総集編で見せられている。そんなストーリー構成になっている。
もはやなんのためのアニメ化なのか、アニメ化の意図すら考えてしまう。

重要なシーンや重要な台詞ですら「さらっ」と描かれてしまい、
作画もひどく、話が進めば進むほどキャラクターの作画は悪くなる。
アップや引きでごまかしているのはわかるが、
ごまかせないほどにクォリティの悪さが際立ってくる。
その分、戦闘シーンだけは一級品だ

戦術機

キャラクターの作画は死んでいるが戦闘シーンはその分、生き生きとしている。
1話の戦闘シーンもグリグリと動いていたが、
5話の戦闘シーンの迫力は本当にすばらしく、
3DCGだからこその「高速」な動きと同時に市街戦だからこその土煙や
建物の崩壊できちんと重みをだしつつ、動きまくる戦闘シーンは思わず
「おぉ!」と唸ってしまう。

主人公の記憶によって変更されたOS,そんなOSを搭載した戦術機による
戦闘シーンの面白さがきちんと「アニメーション」としての
面白さを感じられるようになっており、
立体的な動き、そして「刀」と銃を使った戦闘シーンは
マブラヴオルタネイティヴという作品の面白さの片鱗を感じさせてくれる。

ただ戦っているのは「人同士」だ。
マブラヴオルタネイティヴとしてはまだまだ序盤の物語であるがゆえに
仕方のない部分ではあるのだが、原作を読んでいない人にとっては
BETAを放置して人間同士ばっかり争ってるイメージだろう。

主人公はほとんど先生に「なんとかしてくれ!」とわめきたてまくるだけ。
他のメインキャラクターは「空気」だ。
本来なら描かれる部分が描かれず、メインストーリーに影響のない部分は
ばっさりカットしまくるためにキャラへの感情移入の思い入れも
いつまでたっても生まれない。

中盤

6話あたりから、ややダイジェスト感が薄まる。
そのおかげでストーリーを楽しむことはなんとか出来るものの、
それでも原作のイベントを「消化」しているだけのような展開だ。
マブラヴで味わったあの積み重ね、キャラへの思いれ、
そしてカタルシスはまるで生まれない。

もうこれならば原作をやったほうが良い。
戦闘シーン自体はアニメーションとしてのおもしろさを感じられるが、
同じ内容ならダイジェストではない「マブラヴオルタネイティヴ」を
ゲームとしてもう1回味わったほうがよっぽど有意義だ。

結局、1クールでは「クーデター」で終わってしまい、
続きは来年の秋からの2クール目になってしまう。
この「クーデター」の意味や、クーデターにおける主人公の変化も
新規の人にどれだけ伝わっただろうか…

最初から2クール目をやることが決まっていたのに、
「2期決定」などと告知するのも呆れ果てるレベルであり、
このペースで「最後」まで描けるのかどうか意外は何も期待できない作品だった。

総評:妥協の果に生まれた総集編

全体的に見てクォリティの低い総集編を見せられているような作品だ。
ダイジェストに次ぐダイジェストとカットの嵐で、
本来なら原作では説明される部分も説明されず、描かれている部分も描かれていない。

エクストラ、アンリミテッドで描かれていた伏線やキャラ描写も
「アニメ」という媒体では殆ど描かれずに
オルタネイティヴが始まってしまい、エクストラやアンリミテッドの出来事は
たまに思い出したかのように回想シーンでさらっと語られるのみだ。

「マブラヴ」という作品はエクストラ、アンリミテッド、オルタネイティヴという
3作品が繋がっている作品だ。
1つ1つの作品をやりこみ、長いプレイ時間の果にオルタネイティヴという
三部作目をやるからこそのおもしろさと魅力がある。

そんな作品を三部作目からアニメ化してしまえばこうなってしまうのは仕方ない。
制作側に同情する部分はあるものの、色々な事情から
「妥協」しまくっただけの作品になってしまっている。

尺が足りないから「妥協」しストーリーはダイジェストで総集編、
予算が足りないからキャラの作画は「妥協」し戦闘シーンだけこだわる、
原作の声優は使えないから「妥協」しモノマネさせる。
妥協に次ぐ妥協で出来た総集編だ。

原作をやっている人からすれば、そんな妥協の数々が気になり、
原作をやっていない人は話についていけない。
結局、ファンもファンじゃない人にとっても誰も得をしないような
作品になってしまっている。

2クール目でどこまで描かれるのかはわからないが、
相当なダイジェストでないかぎりは後1クールで
マブラヴオルタネイティヴを描ききれるはずもない。
一体どんな有様になるのやら…

個人的な感想:戦闘シーンだけ

個人的にマブラヴオルタネイティヴは何年も前ではあるもののプレイ済みであり、
だからこそなんとか話についていけたが、
プレイしたのが何年前ということもあり細かい部分を忘れており、
そのせいもあって余計にダイジェストなストーリーを飲み込みきれない。

細かい部分を忘れている私でさえこんな有様なのだから
現作をやっていない人はもっとついていけないだろう。
主人公を演ずる声優さんの演技は終盤には慣れたものの、
それでもやはり「保志総一朗のモノマネ」をしているだけにしか
聞こえないシーンはなんともいえない気恥ずかしさみたいなのに襲われる。

おそらくは2クール目も全12話だとは思うが、
果たして終わるのだろうか…?
2期が見たい、先が見たいというよりも
「一体どうやってアニメでマブラヴオルタネイティヴを描ききるのか」と
ストーリー構成のほうが悪い意味で気になってしまう。

戦闘シーンのクォリティだけは本当にすばらしいのだが、
それ以外が本当に酷い。
せめて「アンリミテッド」からアニメ化することはできなかったのだろうか?
1話でエクストラをさくっと描き、1話の最後でアンリミテッド編に入り、
1クールかけてアンリミテッド編を描き終わる。

その後の評判次第で「オルタネイティヴ」を4クールくらいかけて
描けばマブラヴという作品はもっと面白い作品になったに違いない。
そう感じるだけに、本当にこの有様は1ファンとして残念でならなかった

「マブラヴ オルタネイティヴ」は面白い?つまらない?

この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください

  1. 匿名 より:

    放送前のPVがやたら戦術機推しでしたが、それにしても戦術機のCG以外ここまで残念な出来だとは思わなかった…。
    これじゃあ2期からの巻き返しに期待したくても出来ないですね。

  2. 匿名 より:

    概ね同意ですね
    2期からは、結末変えるっぽいせいか詰め込み感は減りましたが