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回想地獄、作画も地獄「お嬢と番犬くん」レビュー

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お譲と番犬くん ラブコメ
©はつはる・講談社/「お嬢と番犬くん」製作委員会
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評価 ☆☆☆☆☆(9点) 全13話

【お嬢と番犬くん】放送直前PV【先行上映会コメント】

あらすじ 祖父が三代目瀬名垣組組長という家庭の事情で、周囲から恐れられて、友人も恋人もできずに生きてきた瀬名垣一咲。片思いしている若頭の宇藤啓弥をあきらめ、普通の恋愛をするために高校へ入学するが、過保護な啓弥は年齢を詐称しともに通学をする。引用- Wikipedia

回想地獄、作画も地獄

原作は『別冊フレンド』で連載中の漫画作品。
監督は高本宣弘、制作はproject No.9

ヤクザ

ヒロインは幼少期に両親を失い、
ヤクザである祖父に引き取られることになる。
そこで出会ったのは世話役である「宇藤 啓弥」だ。
彼女にとっての初恋の相手である彼、
高校生になってもそんな気持ちはかわらない。

少女漫画系において「やくざ者」というのはベタだ。
アニメでも同じようなジャンルの作品が多く、
あまり設定の新鮮味というものは薄い。

初恋の相手はヤクザだ。そんな相手との恋愛など未来はない。
大人になった彼女は「普通の恋愛」を求めており、
ヤクザであることがバレないように高校生活を送ろうとしている。
だが、そんな高校にはなぜか世話役であるはずの
「宇藤 啓弥」も入学してくる。

色々と無理のある設定だ。「宇藤 啓弥」は設定的に26歳だ。
若く見えるからといっても「おじさん」であることは変わりがない、
この時点で色々と突っ込みどころはあるものの、
ベタな少女漫画原作アニメの雰囲気は感じることが出来る。

友達を作ろうとしているヒロインではあるものの、
なかなかうまくできない。
そんな彼女と裏腹にヤクザである「宇藤 啓弥」は
多くの人とあっさりと仲良くなることが出来る。

そんな彼の本性を知るのは彼女のみだ。
片思いをしている彼、そんな彼に子供扱いされ、
片思いが敵わないことも実感している彼女の
恋愛事情の描き方はベタではあるものの悪くはない。

振り返り

そんなベタな1話から、2話以降色々と様子がおかしくなる。
まず2話冒頭で「これまでの話」が描かれる(苦笑)
長いクールの作品ならともかく、たった1クールの作品で、
中盤でもない2話の時点で前回の振り返りをするのも意味不明だ。

それだけでなく、この振り返りも3分近くある。
あまりにも長い「これまでの話」にこの作品は大丈夫だろうか?
と不安が募ってしまう2話冒頭だ。

ヤクザという要素もかなりノイズになっている。
彼は当たり前のように銃を持っており、事務所でぶっ放したり、
ヒロインに手を出そうとする男の頭を掴み
机に何度も押し付けたりする。
敵対する組や組織に命を狙われているほどガチなヤクザだ。

ヤクザであり保護者であり、子供の頃から見てきた彼女のことを
彼は徐々に気になってくる。
己の中の恋心を自覚していく、これまたベタな展開だ

序盤はヤクザであり保護者である彼を諦めようとしているヒロインだが、
ヤクザのゴタゴタに巻き込まれても彼への思いは揺れず、
彼を諦めきれず、彼もまた彼女への徐々に恋心を自覚していく。
ベタなストーリーは面白いと言えば面白いのだが、
色々と突っ込みどころも目立ち素直に楽しみづらい

作画

設定の強引さやストーリー展開述べたさ、
これだけならまだ気にならなかったかもしれないが、
2話以降から明らかに作画も劣化し始める。

特に「宇藤 啓弥」は元々のキャラデザから
特に目はハイライトがない感じでやや癖があるのだが、
彼の顔がシーンによって変わりまくる。

この手の少女漫画原作アニメにありがちな
面長な男性キャラなのだが、そんな面長なはずの彼が
シーンによって伸び縮みしている。
常に一定の無表情であることが多いせいで、
余計にその顔の変化が特徴的になってしまっている。

特に4話以降からの作画の劣化具合は凄まじく、
内容が頭に入ってこないほどだ。
ベタなヤクザとの恋愛ものなのに、
そのベタさを素直に味あせてくれない作画の悪さは本当に酷い。

例えば5話ではヒロインがさらわれるのだが、
その救助シーンで怒っているはずなのに顔が無表情だったりと
明らかな手抜きの作画も目立ち、シーンごとの
キャラの顔のクォリティの違いの凄まじさは
見ていられないほどだ。

話が進めば進むほど作画は酷くなる。
6話では二人が食べているのが鮭の切り身だったはずなのに、
カットがかかると別の魚の姿焼きになっていたり、
来ている服がパジャマからチャイナ服に変わったりもする。
こういった細かい作画ミスが目立ちまくっている。

このあたりは現在、作画ミスは
修正されたものが配信されているようだが、
放送時の作画は本当にひどい。

「宇藤 啓弥」の顔もどんどんひどくなり、
この手の作品にありがちなヒロインがときめくような
決めのシーンでさえ顔が強すぎて、
ときめきどころではない、むしろ恐怖で心拍数が上がる感じだ。
シンプルに怖い。

制作の制作はproject No.9は同時期に3本も制作しており、
そんなしわよせがこの作品にも来ていることが
見て感じられるほどだ。

ライバル

そんな作画の悪さを味わっていると、
中盤からいわゆるライバルキャラが出てくる。
もうどこの僧侶枠かとおもうほどのテンプレ感のある
ストーリーは特に面白みはない。
しかも、このライバルキャラも不快感が凄まじい。

ヒロインに対して恋愛感情を抱いているわけでもなく、
ただ可愛い子にちょっかいをかけているだけであり、
そんなヒロインと「宇藤 啓弥」の関係性を知り、
「暇つぶし」と称してちょっかいをかけるだけだ。

いわゆるサイコパスなキャラであり、
二人の関係性を壊すために邪魔をし、
彼自身もヤクザであるために平気で刃物をもちだし、
ヒロインを人質に取ったりする。

ヤクザ要素が本作の特徴ではあるが、
そのあたりで色々と無理のあるストーリー展開も生まれており、
更に作画も悪いせいで、キャラクターへの不快感も増長しており、
やってることはベタに過ぎないのだが、
そのベタさをがたがたな作画で描くせいで不快感につながっている。

そんなお邪魔虫ライバルキャラもあっさりと
学校を去る、一体何だったんだという感じだ。

終盤

終盤になっても作画の悪さは変わらないどころか更に劣化している。
「宇藤 啓弥」はもはや別人ではないか?と思うほど
シーンによって顔が違いすぎるため、
それを見るたびに笑ってしまう。

ストーリー構成も悪い。
2話で長々と1話の振り返りをやっていたが、
中盤以降もちょこちょことそんな振り返りも有り、
終盤には回想シーンを挟みまくる。
明らかに尺を使い余している。

作画ミスもかなり目立つ。
二人が並んで立っているという何気ないシーンなのだが、
本来ヒロインのほうが背が低いはずなのに、
ほぼ同じ身長になっているシーンもあったりする。もうガタガタだ。
終盤でヒロインが彼に心も体も許そうとするという
決定的なシーンですら止め絵まみれで呆れ返ってしまう。

いざヒロインが告白しても、
「宇藤 啓弥」はいきなり彼女を押し倒してしまう。
ヤクザであるがゆえともいえるのだが、
そんな翌日には告白してきた別の女の子の頼みを聞いて
キスをしようとする始末だ(苦笑)

色々とややこしい終盤だ。

回想回想

そんな二人の気持ちのズレがある中での最終話だ。
もう呆れ返るほどの「回想」まみれだ(苦笑)
1話から12話までの総集編なのかな?とおもうほどに
回想シーンにまみれた最終話は呆れ返るしか無い。

1クールで原作のここまでやると決まっており、
そのままやれば1クールという尺を使い余すのはわかるが、
馬鹿みたいに作品全体で回想シーンを入れまくっている。
なにせ最終話のaパートの9割は回想シーンだ。

そんな回想シーンが終わるとようやく
話の続きが描かれ、二人の気持ちが通じ合って終わりだ。
ストーリーが完結しているという点だけみれば評価したいものの、
そこにたどり着くまでがひどすぎる作品だった

総評:これもう僧侶枠だろ

全体的にクォリティが低すぎる作品だ。
ストーリー自体はテンプレの領域を出ず、
少女漫画などにありがちなヤクザと少女の恋を描いており、
26歳のヤクザが高校に通うという無理のある設定や、
ヤクザ要素がでてくるとシリアスになりやすい部分もある。

ただ、そこはベタな部分もあり、本来なら楽しめるところだ。
しかし、1クールという尺を明らかに使い余しており、
2話の時点で冒頭で振り返ったり、作品全体で回想シーンも多く、
最終話などAパートほぼまるごと回想シーンという
意味不明なストーリー構成がストーリーを素直に味あわせてくれない。

作画に関しても最悪だ。
序盤はそこまで気にならなかったが、中盤からは作画ミスも頻発し、
「宇藤 啓弥」は毎シーン整形して登場してるという
設定があるのでは?と思ってしまうほど顔が変わりまくっており、
ガタガタで止め絵もかなり目立ちまくっている。

たとえ作画が良くてもストーリー構成の部分で
高い評価はしづらく、テンプレ的な内容は新鮮味を感じないものの、
そこにさらに作画の悪さが作品全体の足を引っ張っていた。

作画の悪さやストーリーの強引さ、
「宇藤 啓弥」の性欲に忠実なところなど、
どことなく「僧侶枠」を思わせる部分すらある。
僧侶枠でやるような内容とクォリティで
1クール描かれたような作品だった。

個人的な感想:どうにか…

もう少しどうにかならなかったのかと感じる作品だ。
最大の原因は制作のproject No.9が
同時期に3作品も抱えてキャパオーバーしたことだが、
本当にひどい。

アニメオリジナルならお好きにどうぞという感じだが、
原作のある作品でこのストーリー構成と
作画の悪さは目も当てられないほどだ。
原作からの問題点もあるのかもしれないが、
それ以上にアニメとして悪すぎる作品だった。

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