さくら荘のペットな彼女

評価/★★★☆☆(57点)

さくら荘のペットな彼女 Vol.8 [Blu-ray]

制作/J.C.STAFF
監督/いしづかあつこ
声優/松岡禎丞,茅野愛衣,中津真莉子ほか

あらすじ
水明芸術大学附属高校(スイコー)の学生である神田空太は高校1年の夏に学生寮で猫を飼っていたことが発覚し、校長に呼び出され、猫を捨てるか寮を出るかの選択を迫られた。大の猫好きで権威に逆らってみたかった空太は猫を取り、寮を追い出され、悪名高い「さくら荘」に移ることとなった。春になり、スイコーに編入してきた世界的天才画家の椎名ましろがさくら荘に入ってくるがあまりの常識の無さから空太を振り回すことに。

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リアルなジレンマを感じる青春作品

原作はライトノベルな本作品。
アニメに関しては「サムゲタン騒動」のせいで炎上、
レビューではそれに関してはあえて触れず、評価にも影響はさせてません。
知りたい方は検索してください。

基本的なストーリーは青春ラブコメ、
美術高校で普通科に通う主人公、寮ぐらしをしていたのだが
猫を拾ったことで寮を追い出され、「さくら荘」と呼ばれる問題児の集まる
アパートに移ることに。
移って早々、問題生徒&教師に振り回されてはいたが普通に暮らしていた主人公。
しかし、そこに「椎名ましろ」が引っ越してきたことで彼の日常は変化する。

見だして感じるのはパステル調の色合い。
画面が非常に明るくシーンによっては眩しいくらいだが、
作画は非常に丁寧で綺麗に感じるシーンが多い。

この序盤の最大の特徴は「ヒロイン」である「ましろ」の介護されぶり(苦笑)
彼女は誰かに世話してもらわないと下着は履かないわ、
勝手にコンビニのバームクーヘンは食べるわと、かなり世話してやらないとダメ。
茅野愛衣さんの儚げな声もあり、守ってあげたいオーラが物凄い出てるヒロインだ。
かなりズレた発言も多く、まともな主人公がテンション高くツッコムパターンも多い。

更に変人っぽいキャラやベタベタなツンデレっぽいキャラなどもおり、
最初に感じる印象は「ラノベ原作」らしいラブコメになるだろうなという印象だ。
しかしながら、その印象は見れば見るほど崩され、
このアニメが「青春アニメ」であることを思い知らされる

主人公は最初「ましろ」が自分が居ないと何もできない漫画家志望の少女という認識だ
ただ、それは最初だけ。
「ましろ」は実は有名な天才美少女画家であることを知ると、彼は迷う。
目標のあるもの、才能のあるもの。
そんな「さくら荘」の住人たちに比べ、自分は何もない。

自分に何もないこと、行動できないことを悲観しつつも彼は何とか行動する。
だが、それすらも本心ではなく、周りを振り回してしまう。
そんな彼をヒロインである「ましろ」は見守ると同時に、
彼の決意を固めるキッカケにもなる。

1話ではラノベ原作のラノベアニメだなと感じさせられたが、
2話、3話と進み、4話でこのアニメが「青春アニメ」だということを感じさせられる。
何もできなかった少年が何もできない少女に刺激され、一歩を踏み出す。
4話までの青春ラブコメ展開は気持ちいまでのストーリーで、

100mを駆け抜けたような爽快感すら感じる。
しかしながら、それ以降が若干丁寧過ぎるまでの展開だ。
主人公が目標に向かってやり始めたりするのだが、展開があまり早いとはいえず
その中で主人公がヒロインに対し若干ヒステリックな行動をしたりと
若さ故の行動や悩みであることはわかるのが、
それをあまりにも「丁寧」に描いているため、変な生々しさが出てしまっている。

キャラ設定こそ、いかにもラノベチックな荒唐無稽なキャラばかりだ。
介護が必要なヒロイン、傍若無人な先輩、やさぐれた先生など
ラノベらしいキャラクターなのだが、
肝心のメインのストーリーが、それこそ「実写ドラマ」のようなストーリーなため
アニメのキャラを使って実写ドラマを作ったような違和感を感じる。
いわゆるアニメの実写化の逆パターンのような印象だ。

更にこの作品の根幹であるはずの「ペットな彼女」である「ましろ」、
彼女は介護が必要というレベルの日常生活ができない人間だが、
その要素が描かれるのは序盤のみで、あとは介護要素は取ってつけたような描写しか無い。
「ペットな彼女」な部分が中盤以降ほとんど生かされてないのは残念だ。

更に言えば彼女のバックボーンの描写が甘すぎる。
天才画家である「ましろ」は漫画家になるために日本にやってきたというのはわかるのが、
肝心の彼女が何故「漫画家を目指すのか」が描かれていない
この部分は本来はかなり重要なはずだ。

アニメでこの部分が一切描写されず、私は1話か2話見逃したのかと思ったくらいだ
実際の所、原作ではきちんと描写されているようだ。
なぜ彼女が漫画家を目指すキッカケを描写しなかったのかは不思議だ

それでも1クールまではまとまりがあった。
主人公の成長、色々あったさくら荘との仲間との共同作業による学園祭、
そして「ましろ」の叫び。
1クールの締めとしては素晴らしく、青春ラブコメとして1クールまでは
問題点はあるものの面白さを感じられる作品だ。

2クール目からも色々な問題はある。
2クール目からは主人公の「やつあたり」もすごく、
1クールまでは、その「やつあたり」も受け入れることができたのだが
2クール目からの主人公の性格の悪さというか、
ヒロインに対する態度が「若さ」という言葉じゃごまかしきれなくなる。

更に先輩組。
お互い相思相愛なのだが、男のほうが頑なに彼女の気持ちの答えず遠回りをする。
複雑な恋愛模様といってしまえばそれまでだが、
あまりにも遠回りかつ頭の硬い感じになってしまっており、
その解決方法が岡田麿里脚本お得意の殴り合い、感情の叫びあい。走る。
もっと早い段階でこの二人の恋愛模様が解決すればよかったのだが、少し引っ張りすぎだ。

更に終盤の「さくら荘」をたて壊すというストーリー展開。
それまで青春ラブコメストーリー展開で突込みどころは確かに多いが、
終盤の「さくら荘建て壊し」展開は唐突で、更に登場人物をまた挫折させる。
才能のある「ましろ」や「先輩」は成功しているのだが、
それに比べ凡人である「主人公」や「七海」はあまりにも挫折が多く、
報われない展開が多い・・・というよりも、報われた展開はない。

先輩組の恋愛に関しても、主人公と七海の夢も
同じようなシリアスな展開を繰り返してしまっているのは残念だ。
そのせいでストーリーがなかなか進まないもどかしさやダレが生まれてしまい
少しずつ成長や変化しているのはわかるのだが、
なかなか大きく進まないもどかしさがあった。

それに比べてメインヒロインの「ましろ」が
とっとと漫画家になってしまうあっさりさもあり、
もう少し「天才組」の挫折があっても良かったのではと感じる部分は多い。

全体的に見て若い勢いを感じられる作品だ。
序盤の疾走感のある「天才」と「凡人」の主人公とヒロイン、
中盤の挫折と複雑になっていく恋愛関係、
終盤の強引とも言える卒業式でのスピーチと取り壊し問題の解決など
青臭いまでの若さを作品全体から感じさせる。

この「若さ」をどう受け止めるかで作品の印象は大きく違うだろう。
走り、叫び、殴り、挫折し、夢を抱き、飛び跳ねる。
登場人物たちが若々しく成長していく様を共感したり、暖かく見守れるのか
それとも、この若い勢いで誤魔化してる部分に目が行ってしまうのか。

更に言えば本筋のストーリーに対してメインヒロインの設定が邪魔になってしまっていた
パンツも自分で選べないヒロインという設定が生かされたのは序盤だけで
中盤以降はその要素はむしろ邪魔になっている。
中盤以降はラノベ要素の薄い「七海」のほうがメインヒロインとして魅力的に写り
ラノベ要素の濃い「ましろ」の魅力を最大限に感じられない。
ラノベ原作ではあるが、ラノベ的要素が本筋のストーリーを素直に楽しみづらくしている

誰でも楽しめる作品といよりは若い人ほど楽しめる作品だろう。
簡単に夢がかなわない要素など妙にリアルで生々しく、
それゆえに主人公の現実的な「挫折」に共感する人も多いはずだ
空想の話なのに主人公の都合、物語の都合よく夢が叶わない。
このリアルなジレンマがこの作品の魅力だろう。

個人的には世間一般の「サムゲ荘」的な評価とは正反対の印象だ。
あの一件でケチがついてしまったことは非常に痛いが、
この作品はこの作品で多くのアニメ作品の中の類似する作品の1つではなく
この作品らしい「若さ」と「生々しさ」を感じられる作品だ。

ストーリー的に最終回らしい締め方はしたものの
もっとすっきりと終われば1つの青春作品としてもっと高く評価できたが、
主人公とヒロイン達の恋愛模様は微妙に結末を濁してしまい、
新1年生が入ったことで本来は2期への展開もできたはずだ。
しかし売上やサムゲタンでケチがついてしまったことで2期の可能性が薄い。

結局主人公は彼女を選ぶんだろうなという予想はできるものの、
気になる方は原作でという感じになってしまっているのが残念だ。

ただ2クールできっちりと青春モノとして面白い作品になっている。
この作品は決して駄作ではない。
しかし、好き嫌いがはっきりと別れる作品だ。

サムゲタン騒動で見るのをやめた方、見る前にあの騒動のせいで全然見てない方、
あの騒動を忘れてもう1度みてみる事をおすすめしたい
「青春」という言葉が気になる方にはおすすめの作品だ。

ただ、「青春」という言葉に青臭さを感じてしまう方は見ても疲れるだけだろう。
実際私はそこそこ楽しめたものの、見た後に結構な疲労感があった(苦笑)
時間と心の余裕が有るときに見ることをおすすめします。