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43年前の名作「ドラえもん のび太の海底鬼岩城」レビュー

4.0
ドラえもん のび太の海底鬼岩城 映画
画像引用元:©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 1983
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評価 ★★★★☆(64点) 全90分

AI全盛期の今だからこそ見たい「ドラえもん のび太の海底鬼岩城」レビュー

あらすじ 夏休み、大西洋で金塊を積んでいた沈没船発見のニュースが流れる中、のび太たちはキャンプの行き先を巡って言い争っていた。引用- Wikipedia

43年前の名作

本作品はドラえもんの映画作品。
ドラえもんとしては4作品目の劇場作品となる。
監督は芝山努、制作はシンエイ動画

40年

本作品のリメイクが決定し、旧ドラえもんの映画のほうを
見ておこうと思い、驚いたのだが、この作品は「40年前」の作品だ。
1983年に公開され、興行収入は10億円を突破しており、
ドラえもん映画の歴史を感じるところだ。

当然、私も生まれる前の映画であり、
子供のころにビデオでおそらく見たきり以来であり、
ある意味、初見のような感覚で映画を見ることができた。

ドラえもんの映画としても初期であるがゆえに、
大山のぶ代さんをはじめとする声優陣の声も若々しく、
水田わさびさんをはじめとする新声優陣ではなく、
子供のころに慣れ親しんだ大山のぶ代さんたちの声に
なつかしさと同時に一周回って新鮮さすら感じる。

もう新声優陣になって20年以上たっている。
時の流れは速いものだ

映画冒頭はわりとのんびりとしている、
のび太たちは夏休みにキャンプで海に行くことになるものの、
のび太の宿題が終わっておらず、
なかなかキャンプに行くこととができない。

そんな「日常」を丁寧に描きながら、
同時にそんな海には謎の沈没船が発見される。
一夜でそんな沈没船はどこかへと消えてしまい、幽霊船のうわさも出始める。
そんなニュースに心をときめかせた「スネ夫」と「ジャイアン」は
沈没船を探しに行く決意をする

ほのぼのとした日常から「冒険」へと至る、
その期待感と自然な導入、日常から非日常へ徐々にスライドさせるのは
ドラえもん映画らしい展開だ。

海底

ドラえもんがいるからこそ、普通のキャンプではない。
海は海でも海底だ。未来の道具である「バギー」にのることで
海の底を自由に走ることができ、「テキオー灯」などおなじみのアイテムも
出てくることで24時間、海の底を自由に旅をすることができる。

ドラえもんだからこその夢と希望に満ちた海の底の冒険だ。
普通ならたどり着くことのできない「深海」の世界、
ありとあらゆる海の生物が潜む海の中はロマンの塊だ。

普通なら長時間潜ることのできない海の中、
普通なら真っ暗で見えない深海の底。
そんな普通ならあり得ない場所でキャンプをする、
この「ワクワク感」を序盤は思う存分感じさせてくれる。

生活

そんなワクワクだけではない細かいこだわりがすさまじい。
たとえば海底の中に家をたてて、そこで寝たり食べたりするのだが、
問題は「トイレ」だ。
「テキオー灯」 のおかげでぬれた感じもしなければ息も問題ない、
だが、水中でトイレをしてしまえば、そこら中やばいことになる(笑)

ドラえもん映画の中での「食事」は印象に残ってる人も多いはずだ。
確かに今見ればセル画で古さを感じる部分はある、
だが、料理の数々が本当においしそうで、そんな料理は
海の中の「プラクトン」をもとに作られている。

寝る、食べる、そして「トイレ」という生活を丁寧に描くことで
そこにファンタジーの中でのリアルが生まれる。
もちろん、ドラえもんも未来の道具も本来は存在しないものだ、
だが、このちょっとしたリアルを描くことで現実感が生まれる。

水の中なのにシャワーを浴びたがったり、水の中でも手を洗うしずかちゃんや、
「歌おう」とするジャイアン、
バルミューダトライアングルの説明をするスネ夫など、
それぞれのキャラクターらしさをしっかりと感じる。

決して子供だましで終わらせていない。だからドラえもんは
今もなお愛されているのだと感じさせてくれる。

余談ではあるが「のび太」の父が会社で大量のタバコを吸った形跡が
あるシーンがある、今だったらあり得ない、
昭和だからこそのシーンだ。

24時間

序盤の山場といえるのがジャイアンとスネ夫の暴走だ(笑)
沈没船の金塊を見つけたい二人はこっそりとバギーで、
沈没船まで行こうとする。だが、テキオー灯は24時間しか効果がない。
30分、10分、5分、3分、効果が切れはじめると
二人の体の自由はどんどんと奪われる。

「死」というものを匂わせながらも、当然死ぬ展開にはならない。
ジャイアンとスネ夫はバギーのせいにするものの、
彼はあくまで機械だ、善悪の区別をすることはできない。
栂鵜川の人間次第で良くも悪くもなる、それが機械だ。

そんなトラブルはありつつ、
ドラえもんたちは「沈没船」を発見することになる。

ホラー

大山のぶ代さん時代のドラえもん映画には独特な暗さがある。
それもまた芝山監督の持ち味であり、
本作から20年以上もドラえもん映画の監督でありつづけた
芝山監督のらしさでもある。

深海には存在しない「アヒルの声」や「沈没船」と「ガイコツ船長」、
子供向けの映画でありながら、そんな子供がみると
「怖い」と感じさせる描写がところどころにある。
徐々に徐々にドラえもんたちに、そんな怖さが忍び寄る。

のび太だけが見た火を噴く魚や巨大なイカ、
バギーだけが見た「海底人」の存在、終盤で出てくる鉄騎隊や、
ポセイドンのおぞましさはすさまじいものがある。
丁寧に映画の半分ほどで海底の冒険を描き、
中盤から物語が動き出す。

この丁寧な下地の描き方は今見返すとややテンポが悪くも感じるが、
丁寧に描いたからこその良さもきちんとある。
バギー以外の、いわゆる映画オリジナルキャラがドラえもん達の
前に現れるのは映画が始まって45分ほど過ぎてからという
贅沢な尺の使い方だ。

海底人

テキオー灯によって海底にすんでいる海底人たち、
そんな海底人たちでさえ近づかないのがバルミューダトライアングルであり、
そこには「鬼岩城」と呼ばれるものが存在する。
海底人が海底にすんでいることは秘密だ、地上に帰ることはできない。
だが、あっさりドラえもん達は逃げ出す(笑)

映画の序盤から中盤まではゆっくりとしたテンポなのだが、
中盤からのテンポ感はすさまじく、次々と未来の道具を使い、
状況を打破していく展開はワクワクさせられる。
90分しかない映画で、子供向けだからこそ、
飽きさせないストーリー構成になっていることを感じる。

映画オリジナルキャラである「エル」とドラえもん達との交流も
短いながらもしっかりと描かれている。
バミューダトライアングルの正体もドラえもんらしい要素であり、
そんなエルとドラえもん達は動き出した鬼岩城をなんとかするために
動き出すことになる。

鬼岩城

鬼岩城は何千年もの昔に存在した海底国家アトランティスが作った
「核ミサイル」と「ポセイドン」というAIが残ってしまっている。
ポセイドンが暴走し、世界中に核ミサイルを打ちまくりかねない状況だ。
ラスト30ぷんくらいでここまで怒涛の展開になるテンポ感はすさまじい、
まさにジェットコースターのような展開だ。

様々な未来の道具を使いながらドラえもん達は
ポセイドンにたどり着こうとするものの、しずかちゃんはとらわれ、
ドラえもん達も苦戦を強いられてしまう。
しずかちゃんは必死にAIであるポセイドンを説得しようとするもののの、
自らを「神」と認識するポセイドンは聞く耳を持たない。

ポセイドンもまた人が作り出したAIだ。
そして同時に「バギー」も人が作り出したAIだ。

バギー

バギーは決して優秀なAIではない。
深海魚の知識もろくになく、文句を言ってばかりだ。
のび太たちもそんなバギーに暴言を吐くのだが、
「しずかちゃん」だけはバギーにやさしく接している。

鬼岩城ではそんなバギーは臆病風に吹かれ、
ドラえもんのポケットに隠れてしまう。
だが「しずかちゃんの涙」に、しずかちゃんを悲しまさせる存在を
彼は許さなかった。

AIの自己犠牲、それはこのドラえもん映画のあとで
アニメや漫画、映画、様々なもので描かれた要素だ。
ハッピーエンドではあるものの「キャラクターの死」という
要素を子供向けアニメ映画でもしっかりと盛り込んでいるドラえもん映画の
「凄さ」に驚嘆してしまう作品だった。

総評:43年前の名作

全体的に見てすばらしい作品だ。
今見返すと43年前の作品であるが故の作画の古さや、
テンポの遅さは感じるものの、43年前にこの作品が生み出されていたことに
ただただ驚いてしまう。

序盤から中盤まではドラえもん映画らしい冒険模様が描かれており、
スネ夫やジャイアンのピンチなどの盛り上がりはあるものの、
ストーリー展開としてはかなり遅めだ。
しかし、その分、海底の冒険模様を本当に丁寧に描いており、
SFらしい嘘と本当を混ぜ合わせた描写に夢中になってしまう。

中盤からはそんなゆったりとした展開から
ジェットコースターのごとくグルんぐるんと急展開の連続であり、
バルミューダトライアングルの謎、そしてAIの暴走と自己犠牲という
AIの問題がやり玉にあがっている今でも通ずるような内容になっている。

ドラえもんという作品に詰まった面白さ、
未来の道具、冒険、小学生たちのジュブナイル、
そしてほんの少しの怖さと、SF要素がバランスよく詰まっており、
1本の映画としての満足感がきちんと生まれていた。

個人的な感想:30年ぶり?

おそらく20年か30年ぶりに本作を見返した。
大まかなストーリー自体は覚えていたが、
おとなになって見返すと細かい描写のこだわりが凄まじく、
藤子不二雄先生、そして芝山監督を始めとする制作スタッフの
すごさを感じてしまう。

今の子供達が見ると古い上に声も違うからこそ、
違和感はあるかもしれないが、ぜひ、大人だけでも
旧作と新作の違いを味わってほしいところだ。

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