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急変する怪作「怪~ayakashi~」レビュー

3.0
怪~ayakashi~ サスペンスアニメ一覧
画像引用元:©怪~ayakashi~製作委員会
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この記事を書いた人

オタク歴25年、アニメレビュー歴13年、YouTube登録者11万人。 個人的な視点で語るアニメ批評です。

評価 ★★★☆☆(50点) 全11話

15周年記念プロジェクト解禁PV/『劇場版 モノノ怪』超特報映像

あらすじ 江戸怪奇文学の傑作鶴屋南北の『四谷怪談』、明治の文豪泉鏡花の幻想文学『天守物語』、怪奇日本映画の定番『化猫』。その妖しくも美しく、おぞましくも哀しい世界を、最新のアニメーション技術と本格派クリエーターによる演出で表現。 引用- Wikipedia

急変する怪作

本作品はノイタミナで放送された作品。
四谷怪談、天守物語を原作としたオムニバス形式の作品であり、
3話ごとに制作スタッフが変わるという斬新な試みがなされた作品だった。
制作は東映アニメーション。

四谷怪談

1話から4話は四谷怪談が原作となる話だ。
もともとは江戸時代の歌舞伎狂言であり、詳しくは知らずとも
「四谷怪談」という名前自体を聞いたことがある人は多いはずだ。

そんな四谷怪談の作者「鶴屋南北」の語りから物語が始まる。
四谷怪談をもしかしたら書かされていたのではないか、
その語りから始まる「お岩」の物語に一気に引き込まれる。

この語りで世界観や前提となる話の設定をわかりやすく語っており、
いわゆる説明セリフではあるものの、その語り口が聞いていて心地よい。
鶴屋南北を演じる「阪脩」氏の演技力の高さを感じてしまう部分だ。

お岩

四谷怪談はお岩を巡る物語だ。
赤穂家取り潰しによって浪人となった民谷伊右衛門、
取り潰しや疑いゆえにお岩と離縁させられるものの、
お岩への思いは捨てることができず、彼はお岩の父を斬り捨てる。

そんな現場を目撃した直助権兵衛はお岩の姉に取り入り、
民谷伊右衛門も自らが義父を斬り捨てたことを隠し通し、
無事にお岩との仲を取り戻し、子供を持つものの、
いざ子供が生まれると貧乏暮らしもあってお岩への感情もどこへやらだ。

この時代に見返すといささか色々とツッコミどころのある話ではあり、
いま1つパンチに欠ける部分がある。
あの「お岩」が恨みを募り、日本で最も有名な女の亡霊になった
経緯が語りとともにダイジェスト的にサクサクと描かれる。

貧乏ながらも夫を支えたはずの「お岩」、仇討ちすらならず、
子供ができても夫はお岩を愛さず、お岩が死ねば若い後妻をとるとのたまう。
若い女はお岩に毒を盛り、そのせいで顔はただれ……と
不幸なエピソードがどんどんと積み重なる。

結果、お岩は亡霊となり、祟りが始まる。
3話になるとようやくホラーアニメっぽさが強まるものの、
4話になると実写映像を取り込んだり、基本的に語りで語られたりと、
アニメとしての面白さはやや薄い。
四谷怪談そのものの知名度と題材の強さで見られる部分はあるが、
作品としてはふわっとした終わりになっている。

天守物語

5話からは天守物語が描かれる。
序盤の四谷怪談に比べて圧倒的に知名度が低く、
これに関しては四谷怪談よりもパンチ不足だ。

女の忘れ神の住まう城があり、男をたぶらかしては精気を吸っている。
そんなある日、神の一人は人間のとある男と偶然出会い恋に落ちる。
しかし、人を食べる神が恋に落ちれば腐り神になって死んでしまう。

どんどんと人間の男に恋をしてしまい、
人間の男も神に恋をして……という感じだ。
浦島太郎的に神の国での1日は人間の世界での1年だったりと、
いろいろな要素があるが、この人間の男、恋人がいる(笑)

朝チュンまでしっかりあるベタさは、どこか笑いすら生まれる部分があり、
別れる別れないだの一緒になるだのならないだのを繰り返す。
「ホラー」や「怪談」という要素はどこへやらの恋愛模様だ。

作画も話のテンポも重く、会話劇としても恋愛劇としても
いまひとつ跳ね切らない。
神と人間の恋、異界と現世の時間感覚という素材自体は悪くないのに、
その魅力がアニメとしてあまり膨らんでいない印象だ。

せっかくのオムニバスなのだし、
序盤の四谷怪談はともかく、この作品は2話くらいに収めて、
もう1作品くらい挟めばよかったのでは?と感じる部分だ。

化猫

9話から描かれる「化猫」は、ここまでの流れから明らかに空気が変わる。
それまでの8話の作画とは打って変わって、
まるで「和紙」のような質感と色合いで描かれる画面は、
始まった瞬間に強烈なインパクトを残す。

主人公である「薬売り」のキャラデザも相まって、
同じ作品内とは思えないほど完成度が跳ね上がる。
オムニバスの1編というより、後の「モノノ怪」の原型として
この時点でほとんど完成している印象だ。

アニメーションという技法、表現として見ているだけで面白い。
これまでの8話とはまるで違うアニメが、いきなり9話で始まる。
アニメとしての見せ方、作画やキャラデザもそうだが、
カット割りもまるで違い、「アニメ」として面白くしようという
制作側の意気込みを強く感じる。

初期のノイタミナは普段アニメを見ない人に向けたアニメ枠であり、
実写ドラマ的な作品をアニメ化したりしていた。
この作品もその流れであり、オープニングはRHYMESTER、
エンディングに至っては元ちとせと、当時の時代感を感じさせてくれる。

普段アニメを見ない人をターゲットにしたホラー。
「怪~ayakashi~」がそういうテイストなのは理解できるが、
そのテイストだけを意識した8話まではアニメとしての見ごたえが薄くなっており、
アニメでやる意味というのをあまり感じない作品になってしまっていた。

しかし、9話からの化猫は違う。
普段アニメを見ない人をターゲットにしたホラーでありながら、
アニメとしても圧倒的に面白い。
あえてカメラを斜めに傾ける、そのちょっとした工夫が
「不安感」を煽り、独特な作画とBGMによる演出が、
見ている側の恐怖心をしっかりと煽ってくる。

とある武家の当主の娘が嫁入りの寸前に「不審死」する事件が起こる。
そこには怪しげな薬売り。
怪しげな薬売りは疑われるものの、
彼は「モノノ怪」の仕業と疑い、家中に結界を貼り付ける。

家中にばらまかれたネズミ捕り、薬売りの持つモノノ怪を斬る刀、
さらには姿の見えない猫の鳴き声が響き渡る。

薬売りの怪しげな雰囲気と演じている櫻井孝宏さんの演技も相まって、
蠱惑的な雰囲気が常に漂い、ホラーとしての怖さもしっかりとある。
次々と不審死が起こり、薬売り以外がモノノ怪を信じない中で、
化猫が姿を見せずに凶刃を振るう戦闘シーンは、
「見えないもの」というホラーの鉄則をやりつつ、
アニメとしての戦闘シーンの面白さを感じさせてくれる。

ミステリー

薬売りの刀はモノノ怪の「形」と「真」と「理」を知らなければならない。
モノノ怪の名前という名の「形」、
モノノ怪が生まれた因果という名の「真」、
モノノ怪が生まれるに至った人たちの思いという「理」。

ある種のミステリー要素すらあるのがこの作品だ。
モノノ怪を退治するまで結界の外に出られないという
クローズドサークルな状況も相まって、よりミステリー感が強まる。
ホラーとミステリーは紙一重だ。

犯人という名の「モノノ怪」が、どういう存在で、
どうして犯行を起こしたのか。
それがわからなければ、犯人の凶行を止めることはできない。
これはまさしくミステリーだ。

人の業が生み出した「モノノ怪」。
モノノ怪に至るまでのドラマがこの作品にはきちんとある。
単に化け物が出てきて人を襲うのではなく、
そこに至るまでの情念や因果を解き明かしていくからこそ、
ホラーとしてもミステリーとしても見ごたえが生まれている。

ラストの「刀」を抜いた薬売りの戦闘シーンは
圧巻の一言であり、陰鬱としたストーリーを祓い清めるかのような
芸術的な戦闘シーンが描かれている。

たった3話しかない物語だが、圧倒的な作画と演出、
まさにジャパニメーションと言いたくなるような芸術が詰まっており、
ホラーとミステリー、そしてアニメーションとしての面白さが
詰まりに詰まった作品に仕上がっている。

総評:オムニバスから逸脱した作品

全体的に見て、やはり化猫だけが突出している作品だ。
序盤の四谷怪談、中盤の天守物語は
作画的にも見劣りしてしまう部分があり、四谷怪談はともかく、
天守物語はホラーとしても話としても弱い。

この2作品だけなら、この作品は
10年も20年も語られる作品にはならなかっただろう。
だが、終盤の化猫がすべてを変えている。

和紙のような質感の作画は見ているだけで心地よく、
蠱惑的な魅力を醸し出す薬売りの存在、
起承転結がすっきりとした物語のミステリーな雰囲気が素晴らしい。

オムニバス作品の中の1編でありながら、
化猫だけは完全に独立した1つの作品として成立している。
むしろ、ここから「モノノ怪」という作品が生まれていくことを考えると、
この化猫こそが本作最大の価値であり、
今なお語られる理由そのものだと感じる。

個人的な感想:2006年

この作品は放送当時、リアルタイムで見ていた記憶があるのだが、
化猫以外の記憶が薄く、改めて見返したところ、
記憶が薄くなってしまうのも納得な部分があった(苦笑)

ただ、それでも化猫の印象だけは残り続けていた。
あの薬売りの怪しさ、独特すぎる画面作り、
ホラーとミステリーが混ざり合う空気感。
作品全体の記憶は薄れても、化猫だけは妙に頭の中にこびりついていた。

ここから化猫が1つの作品として1クール放送され、
さらにそこから映画化までされるのも納得できるほどの
作品としての魅力がある。
「怪~ayakashi~」という作品全体をすすめるには少し迷う部分もあるが、
化猫だけは今見ても間違いなく見てほしいと感じてしまう作品だ。

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