「ドラえもん のび太の新恐竜」レビュー

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映画
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評価 ★★★☆☆(59点) 全111分

あらすじ スネ夫たちと恐竜展を訪れたのび太は、化石発掘体験で恐竜の卵の化石を見つける。「タイムふろしき」をかぶせると、生まれてきたのは双子の羽毛恐竜。そ引用- Wikipedia

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心の汚れのバロメーター

本作品はドラえもんの劇場アニメ作品。
ドラえもんとしては40作品目の作品となる。
監督は今井一暁、製作はシンエイ動画、
ドラえもん連載50周年記念作品と銘打たれている。

なお本レビューはネタバレを多く含みます

目でピーナッツ


画像引用元:『映画ドラえもん のび太の新恐竜』スペシャル映像 見どころ篇
(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2020

ドラえもんの映画の導入として最もベタなのは、
のび太が無理のある宣言をし、それをきいたジャイアンやスネ夫が
「できなかったら鼻からスパゲッティな!」と言い放ち、
ドラえもんに頼るというパターンだ(笑)

今作はドラえもん連載50周年記念作品ということもあり、
そんな記念作品だからこそ「王道」のドラえもん映画を見せてくれている。
今まで作られた40作品で培われた、ドラえもん映画に求められているもの。
そんな求められているものをきちんと飲み込んだ上で作られているような作品だ。

のび太たちは恐竜展にいき化石発掘体験コーナーで
カセキを発掘する中でのび太は「生きている恐竜」を見つけると宣言してしまい、
そんな宣言に対しジャイアンは悪い笑みを浮かべ、スネ夫はビデオカメラを回し
「出来なかったら目でピーナッツを噛め!」と柿ピー片手に煽られる。

このベタな始まりは王道のドラえもん映画の導入の仕方だ。
これがあるからこそ「あードラえもん映画始まる」という期待感が
生まれると言っても過言ではない。
残念ながら「どらえーもん!」と叫び主題歌が流れる展開にはならないものの、
「ドラえもん映画」らしい導入だ。

双子


画像引用元:『映画ドラえもん のび太の新恐竜』スペシャルPV より
(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2020

この作品は「のび太の恐竜」のセルフオマージュといってもいい。
特に前半部分の話の流れは「のび太の恐竜」とほぼ変わらない。

のび太が恐竜の卵のカセキを見つけてタイムふろしきで時間を戻すと
恐竜の卵になり、そこから恐竜の子供が生まれる。
育てる中で徐々に大きくなってしまい、現代で育てられないため
元の時代に帰すという流れだ。
細かい部分の違いはあるものの、大まかな流れは新恐竜でも変わらない。

しかし、今作での最大の違いは生まれてくる恐竜が「双子」という部分だ。
「のび太の恐竜」ではピー助一匹だったが、今作では2匹。
活発な性格で好奇心旺盛なミューと、臆病で間抜けなキュー。

新種であるがゆえにどう成長し、どうなるのかがわからない。
なにを食べるのかも手探りの中で勉強が嫌いなのび太が懸命に
2匹の恐竜を育てようと頑張る姿がきちんと描かれており、
そんなのび太の努力に見合うように2匹が成長していくさまが可愛らしい。

新種の恐竜であるミューとキューは「羽」がある。
ミューは何でも食べてすくすくと育ち、すぐに飛べるようになるが
キューは好き嫌いが激しくミューより体も小さく、飛ぶことが出来ない。

そんな「出来損ない」なキューにのび太は自分自身を重ねる。
好き嫌いは多い、勉強もできない、逆上がりも出来ない、
出来ないままにしてしまっている自分、
だけどそれでも良いと思っている自分。
キューという存在がのび太を表す鏡合わせのような存在として描かれている。

作画


画像引用元:『映画ドラえもん のび太の新恐竜』スペシャルPV より
(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2020

今作のドラえもん映画は作画のクォリティが非常に高く、
言葉をしゃべるわけではない2匹の恐竜の細かい「表情」の変化で
きちんと感情を見てる側に伝えてくれる。
のび太やジャイアン、スネ夫のコミカルな動きや表情の描写も秀逸で、
「子供向け映画」だからこその動きと表情の描写へのこだわりを強く感じる。

キューやミューなどの仲間の恐竜はのび太たちと同じ2Dで描かれ、
後期白亜紀で出会う仲間ではない、襲ってくる恐竜は3DCGで描くことで
恐竜の迫力と怖さを演出している。
仲間になると3DCGから2Dへ代わり、可愛らしく変化することで
目で見てのび太たちの仲間かどうかをわからせる演出だ。

2006年ののび太と恐竜の作画と演出はかなり癖が強かっただけに、
今作は子供向け映画だからこそ「見て」わからせるよう制作側の
配慮をきちんと感じる。

冒険


画像引用元:『映画ドラえもん のび太の新恐竜』スペシャルPV より
(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2020

ドラえもん映画といえば冒険だ。今作でも後期白亜紀にタイムマシンで訪れ
ミューとキューの仲間を探す冒険の旅に出る。
様々な道具を使いながら、時には恐竜に襲われながら、
ワクワクする冒険模様はドラえもん映画のお約束だ。

過去作では「桃太郎印のきびだんご」を使って恐竜を仲間にしていたが、
今作では「友チョコ」だ(笑)
現代的な言葉と価値観による道具が出てくることで
新しいドラえもんであることを感じさせてくる。

ただ桃太郎印のきびだんごは食べさせるだけでなついてくれたが、
友チョコは自分も半分食べなければならない。
一時的に恐竜の力の一部を得ることができるという要素はあるものの、
この要素はいまいち話の中で活かしきれておらず、
せっかく桃太郎印のきびだんごと違った道具が出てきてるのに活かしきれていない。

終盤、ストーリー的に多くの恐竜を従わせることになるのだが
食べさせるだけの桃太郎印のきびだんごと違って自分も食べなければならず、
従えてる恐竜の数はどれくらいかはわからなかったものの、
ジャイアンとスネ夫としずかちゃんで相当な量の友チョコを食べたはずなのだが、
そういった描写がないのもやや違和感が出てしまった。

なら「桃太郎印のきびだんご」のままでいいのでは?と
新しい道具を出した意味がやや薄まってしまっているのは残念だ。

ミスチル


画像引用元:『映画ドラえもん のび太の新恐竜』スペシャルPV より
(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2020

これは個人的な感覚ゆえに人によって違うかもしれないが、
途中で冒険がダイジェストで一気に描かれる。
コレ自体は全く問題ないものの、ダイジェストの間に流れる曲が問題だ。
「ミスチル」である。

びっくりするほどミスチルのあの声と曲が
ドラえもんという世界観に馴染んでおらず、主張があまりにも強い。
エンディング曲で流れるのは別に違和感はそこまでなかったものの、
劇中歌としてダイジェストの間にミスチルが流れるのは、
やや「ドラえもん」という作品の世界観とミスマッチだ。

ミスチルの曲自体は良いものの、劇中歌は違うんじゃないか?と
ちょっと流れてる間にこの違和感のせいで笑ってしまったくらいだ。

え?


画像引用元:『映画ドラえもん のび太の新恐竜』スペシャルPV より
(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2020

これはある意味で今作の最大のポイントだ。
ちょっとよくわからないのだが「のび太の恐竜」の恐竜であるピー助が出る。
のび太の意識があるときにはっきりと彼の前に現れたわけではなく、
彼が意識を失ってるときに彼を助けるのがピー助だ。

しかし、そうなってくると意味がわからない。
のび太はピー助を育て白亜紀に帰した経験という名の過去があり、
彼とピー助の関係性があったからこそ、今作でのび太はピー助に助けられている。
Wikipediaなどにも明確に「ピー助」と書かれているため、
全くの別人ならぬ別恐竜ではないはずだ。
ピー助ではないなら助ける意味もわからない。

そうなると、のび太は全く似たようなことを今作でやりだしたことになる。
「ピー助」という名前や「過去」にそういうことをやったという事は
登場人物の口からは一切語られないものの、
別の世界線の話ではなく、同じ世界線の話ということになってしまう。

ピー助はある意味でファンサービス的に出したのは分かり、
出た瞬間は懐かしさで少しうるっとしてしまう部分はあるものの、
よくよく考えるとちょっと分けのわからないことになっている。

「もしかしたらピー助かも…しれない…」くらいの描写ならともかく、
ピー助との過去のシーンが挟まったりして明確に匂わせており、
ちょっとファンサービスにしてもヤリスギてしまった感じは否めない。

弱肉強食


画像引用元:『映画ドラえもん のび太の新恐竜』スペシャルPV より
(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2020

恐竜の世界は弱肉強食だ。群れをなし、群れを作ることで強者から
自分たちを守り、繁栄している。
しかし、そんな「群れ」で生きる彼らだからこそ異端者は排除される。
ミューとキューの仲間を見つけても、飛びことのできるミューは受け入れられるが
飛ぶことの出来ないキューは排除されてしまう。

このあたりの描写は見る人の価値観によって受け入れがたいものがあるだろう。
コミュニティに入るためには、そのコミュニティと同じ属性でなければならない。
わかりやすく言えば「差別」だ。
飛ぶことの出来ないキューは群れにとっては排除し差別する対象だ。
弱肉強食の世界だからこそ弱者は排除される。

しかし、見方によっては生まれ持ったものの差別を描いているような描写であり、
「キュー」もそんなコミュニティに入るために努力するものの、
差別を受けないように弱者が強者に合わせるという図式は
人によっては嫌悪感を感じるポイントかも知れない。

あくまでも「弱肉強食」の恐竜の世界だからこそであり、
努力して出来ないことを、出来ないままにするのではなく
自分なりに成し遂げようというテーマを描きたいからこその描写ではあるものの、
ミューとキューの仲間のキューに対する態度がかなり露骨すぎる。

飛べないければ餌を取れず、群れにも馴染めず、このままだと死んでしまう
くらいの描写で良かったのでは?と
もう少し表現をマイルドに出来たのでは?と感じるポイントだ。

しかし、そんなキューを厳しく指導しつつ、自らも出来ないことに挑戦し
同じように努力する「のび太」と「キュー」の関係性の描写は素晴らしく、
「キュー」が「のび太」のために仲間と同じ飛び方ではなく、
自らのやりかたで空を飛ぶ姿は涙を誘われる。
それがきちんと物語としての伏線にもなっている。

悪役


画像引用元:『映画ドラえもん のび太の新恐竜』スペシャルPV より
(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2020

今作は非常にキャラクターが少ない。
メインキャラクターと言えるのはドラえもん達一行、ミューとキュー、
そしてタイムパトロールの二人だ。
「のび太の恐竜」では明確な敵として恐竜ハンターが出てきたが、
今作には明確な敵は存在しない。

序盤から中盤までは「のび太の恐竜」の流れとほぼ同じだが、
中盤以降からは完全にオリジナル展開となっている。
明確な敵が存在しないドラえもん映画というのはやや違和感はあり、
これも時代の変化に伴う価値観の変化が作品に影響された部分は
あるのかもしれない。

タイムパトロールはその名の通り、時空移動が可能になった未来において
「歴史の改変」を防ぐ役目を負っている。
今作はある意味で「のび太」たちは一歩間違えば悪役だ。

運命


画像引用元:『映画ドラえもん のび太の新恐竜』スペシャルPV より
(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2020

ミューとキューが生きた時代は隕石によって氷河期に突入する直前であり、
彼らは滅びる運命だ。隕石によって多くの生物が死に、
わずかに生き残った恐竜が鳥へと進化し、人類の誕生へとつながっていく。
だからこそ恐竜は滅びる歴史を変えてはいけない。
だが、それを知ったのび太は当然、キューとミューを守るために行動する。

ただ、この当たりは色々と突っ込みどころも多い。
一言で言えば「タイムパラドクス」だ。
本来はのび太の恐竜を守る行動はしてはいけないはずの行動だ。
歴史が変わってしまい、下手したら生き残った恐竜で哺乳類が淘汰され、
人類が誕生しない可能性もある。

キューとミューを守りたいという彼の気持ちはわかるものの、
下手したら自分自身は愚かドラえもん達も家族も、
人類全てが消え冴える可能性すらあった行動だ。
止めようとするタイムパトロールの行動は当たり前の行動だ。

しかし、今作では「のび太の行動」が歴史として正しいものになっている。
のび太が一部の恐竜を守ったからこそ、その恐竜が鳥へと進化した
というのが終盤のストーリーだ。
最近の恐竜の絶滅の説を取り込んだストーリーではある。

ただ結果的にはそうなったものの「のび太」という主人公の行動を
正当化するためにやや強引に脚本が作られている感じも否めず、
全体的な物語としては悪くないものの、細かい部分で気になる部分が多く、
大人であれば大人あるほど「引っかかてしまう」部分がある作品だ。

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総評:まっすぐなドラえもん映画


画像引用元:『映画ドラえもん のび太の新恐竜』スペシャルPV より
(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2020

全体的に見て細かい部分で気になるところはあるものの、
それは見ている私が「大人」だからだ。
ピー助の登場の違和感、差別的表現、タイムパラドクス、ストーリーの強引さと
大人だからこそ細かいところが気になってしまい、素直に感動しきれなかった。

しかし、子供が見るにはまっすぐなドラえもん映画だ。
王道な導入、キューとミューという2匹の恐竜を育て、白亜紀を冒険し、
笑って泣ける物語がしっかりと作られている。
大人が見るからこそ物語の細かい部分が気になってしまい素直に
感動に至れない。心の素直さが失われてる事を突きつけられてしまう(苦笑)

細かく気になる部分はあるものの全体的にはよくまとまっており、
「恐竜が隕石で絶滅していたのに一部はなぜ生き残っていたのか?」
というのをストーリーの中でうまく使い、
飛べなかったキューの成長と、のび太とともに成長し、
彼なりの飛び方で飛ぶ立つシーンは思わず涙腺を刺激されるシーンだ。

物語としてやや強引さは目立つものの、そこに目をつぶれば
しっかりと面白いドラえもん映画と言えるだろう。

個人的な感想:気になる気になる気になる…


画像引用元:『映画ドラえもん のび太の新恐竜』スペシャルPV より
(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2020

ただ思い返すと色々と気になる部分は多い。
序盤、のび太が化石発掘の際に居た恐竜博士に色々とアドバイスを求めに行くのだが
途中で深夜に恐竜博士の家にいきなり訪れている。
のび太は一体全体、恐竜博士の家をどうやって突き止めたのだろうか。

こういった細かい部分が気になってしまうのは大人だからだろう(苦笑)
汚れた心でドラえもん映画を見てしまったせいで気になる部分が
引っかかってしまい、泣くまでには至らなかった。

来年は「のび太の宇宙小戦争」を彷彿とさせる予告が出ており、
個人的には期待したい所だ。

コメント

  1. 名の無き豆腐 より:

    映画なのに12話なんですね!
    (ちょっと気になってしまったw)