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矛盾と忠義、これが刀剣男士だ!「活撃 刀剣乱舞」レビュー

3.0
活撃 刀剣乱舞 アクションアニメ一覧
画像引用元:©Nitroplus・DMM GAMES/「活撃 刀剣乱舞」製作委員会
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評価 ★★★☆☆(58点) 全13話

TVアニメ「活撃 刀剣乱舞」第3弾PV

あらすじ 文久三年。倒幕派と佐幕派が世を二分し、刀の時代が終わりを告げた時代―――幕末。刀剣男士として顕現したばかりの堀川国広は、かつて同じ主の元で戦った和泉守兼定とともに、雨の山道をひた走る。引用- Wikipedia

矛盾と忠義、これが刀剣男士だ!

原作はソーシャルゲームな本作品。
「刀剣乱舞 花丸」として以前、アニメ化もされたが、
そんな花丸が日常アニメだったのに対して、
本作品はシリアスなストーリー展開となっている。
監督は白井俊行 、制作はUfoable

鬼滅前

本作品が制作されたのは鬼滅の刃よりも前の2017年だ。
Ufotableは今や鬼滅の刃の制作会社として一気に知名度を上げたが、
それ以前もFateシリーズなどを手掛けた実力のある制作会社だ。

そんなUfotableが手掛けたのが本作品であり、
1話から「Ufotable」らしいアクションシーンをきちんと見せてくれる。
今みたからこそ「鬼滅っぽさ」をどことなく感じる部分もあるのだが、
この作品で培った剣戟アクションがあったからこそ、
鬼滅の刃が大ヒット作品になったのかもしれないと思うと感慨深いところがある。

1話から丁寧にストーリーが描写されている。
刀剣男士、彼らは付喪神であり、有名な刀が擬人化した存在だ。
彼らは歴史を変えようとする「時間遡行軍」と戦っており、
歴史が改変されないように戦っている。

2205年の未来からやってきている時間遡行軍、
そんな軍に対して二人で挑まなければならない。
闇夜に月の輝きを反射してきらめく刀身、
刀の付喪神である彼らが刀を用いて戦う姿は外連味がしっかりときいており、
さすがはUfotableと言いたくなる映像美がしっかりとある。

彼らはあくまで「歴史を守る」存在だ。人助けをすることはできない。
目の前で多くの人が焼け死ぬ事実を見ても、そこで干渉してしまえば歴史は変わる。
それでも目の前で失われる命を見過ごすことはできない。
多勢に無勢のなかで彼らの主である「審神者」が現れるというところから
物語が動き出す。

審神者

原作で言えば「プレイヤー」たる存在が審神者だ。
ソーシャルゲーム原作アニメの場合、このプレイヤーをどうするかが
非常に厄介なところであり、作品によっては存在を濁したり、
自我のあるキャラクターとしてきちんと登場させることもある。
この作品は後者だ。

基本的に「青年」な刀剣男士たちに対し、
ショタな「審神者」というバランスは素晴らしく、
ソシャゲ原作アニメにありがちな「キャラ」を平等に
大量に登場させるということをしていない。

1話では二人、2話では審神者がきたことで仲間が一気に増えるものの、
3人しか増えない。一人ひとりをきちんと意味ある形で登場させている。
「時間遡行軍」 の目的がわからない中で、
彼らは過去に長居ができない審神者にかわり、
調査することになる。

掘り下げ

メインキャラが5人、そして物語の目的もわかりやすい。
序盤でしっかりとメインとなるキャラと世界観、
ストーリーを描いており、原作をやっていなくとも
きちんと理解できる作品になっている。

彼らは刀の付喪神だ、それゆえに「持ち主」の人生を見て、
それが彼ら自身にも影響している。
かつての主と今の主、使えるべきものが違い、考えも違い、自らの姿も違う。
歴史の中で彼らの主が成し遂げたものを守るためにも、
彼らは戦い続ける。

序盤から中盤までしっかりと世界観、設定、メインキャラを掘り下げており、
非常にわかりやすいストーリーを展開している。
史実の日本の歴史に関しては、義務教育で習っている範囲であり、
そのあたりがしっかりと頭に入っていれば、サラッと出てくる
歴史の主要人物の名前や、今、彼らがどんな事件に関わってるかも理解できる。

中盤

ややテンポは悪い感じはあるものの、
毎話のようにある戦闘シーンできちんと魅せており、
それがいい刺激になっている。特に中盤での船のシーンはえぐい。
UfotableらしいCGの表現が大爆発しており、
「海」の描写はTVアニメでは考えられないほどだ。

「勝海舟」という歴史上の重要人物を守るために、刀剣男士たちは戦う。
死闘の果の死闘、命をかけてまで戦う姿には容赦がない。
ぼろぼろになりながら、主のため、歴史を守るために戦っている。
1歩間違えば死んでしまう、それを中盤できちんと感じさせることで
物語に緊張感が生まれている。

それを彼ら自身も感じている、
特に隊長である「」は任務における責任感を強く感じている。
歴史を守ることはできた、だが、多くの無垢な民の命が奪われた。
もっとなにかできたのではないのか、もっと自分が強ければ、
そんな思いを抱えながら彼らは戦っている。

強者の多い第一部隊なども描きつつ、
ちょうどいい塩梅のキャラ数を1クールで登場させている印象だ。

彼らはもともと刀として主に仕えた身だ。
歴史の改変を防ぐ戦いの中でかつての「主」。
そんな主が人生をかけてやり遂げたものを彼らも守りたいと思っている。
かつての主と会ってはならないという規則はない、
だが、彼らはあえて会わないようにしている。

それでも戦いの中で出会ってしまうこともある。
「時間遡行軍 」の行動故に歴史が少し変わってしまった結果、
「人の姿」でかつての主と再会するのは複雑だ。
今の主とかつての主、目的も人も違う。

真実を言えぬまま、自らがかつての愛刀とはつげぬまま、
「かつての自分」を握りしめ戦う姿は熱い。
かつての主の最後を伝えたいという気持ちはあれど、
それは歴史改変につながる。

刀のかつての主同士が争っていたこともある。
歴史が変われば、かつての主が死なずにすみ、幸せになるかもしれない。
だがそれはできない。
土方歳三と坂本龍馬、時代をかえた歴史に彼らは介入していく。

主に「忠義」を尽くす。
前の主の人生に介入することなく、そんな前の主の人生を守るために
歴史を守るという今の主の目的に、彼らは二人の主に忠義を尽くしている。
複雑な思いを抱え、戦いに身を投じる。

特に「堀川国広 」は新人であるがゆえに複雑な思いだ。
元の主である土方歳三の人生を考えれば、
彼を救いたいという思いも生まれてしまう。
序盤よりも終盤の元の主とのエピソードが描かれることで、
刀剣乱舞という作品にぐっと厚みが生まれる印象だ。

最期の地

「堀川国広 」と「和泉守兼定」はかつて同じ主の刀だった。
そんな主である「土方歳三」が死ぬ場所、そこが最終決戦の地となる。
歴史を変えないために戦っている彼らの中にも、
歴史を変えて主を守りたいという思いを抱えているものいる。
そんな矛盾が彼らを苦しめ、悩み、あがく。

かつての主の人生を変えることもできる、だが、彼らはそれをすることはない。
悩みながらもかつての主の人生を尊重し、そして今の主のために戦う。
彼らの中にある「忠義」が終盤は際立ち、
そこにさらに戦闘シーンで盛り上げてくれる。

特に最終話の大量の軍相手に戦う姿はまさに「戦」であり、
多くの刀剣男士たちが一挙に集って戦う姿は最終話らしい盛り上がりが生まれている。
Ufotableらしいド派手なエフェクトと、舐め回すようなカメラアングル、
激しいキャラクターの動きが戦闘を盛り上げてくれる。

物語的に「俺達の戦いはこれからだ!」で終わっているものの、
きちんと「刀剣乱舞」の世界観は伝わる作品だった。

総評:俺達の戦いはいつだ!?

全体的に見て1クールで綺麗にまとまっている作品だ。
彼らの敵となる存在の目的はややふわっとしているものの、
歴史を守る刀剣男士たちの世界観やキャラを一人ずつ丁寧に描き、
中盤からは刀剣男士たちが抱える業、矛盾のようなものを描き、
前の主との関係性を描くことで一気に作品に深みが生まれている。

前の主たちは幸せに一生を終えたものばかりではない。
そんな歴史を「変える」ことも彼らにはできる。
しかし、それをせずに主たちが死ぬ運命を変えず、
「歴史」を守ることは前の主、そして今の主への忠義だ。

1クールでそんな物語が綺麗に描かれており、
「刀剣乱舞」という作品を知らない人にも楽しみやすい作品になっており、
俺達の戦いはこれからだで終わっているが区切りとしてスッキリとしたものになっている。

しかし問題はラストだ(苦笑)
最終話のラストのシーンさえなければここまで長い間、
ファンが腹に一物抱えることはなかっただろう。
「劇場版」の始動だ、そんなシーンさえなければ
長い間、「刀剣乱舞の映画はどうなった!?」と叫ぶことはなかったはずだ。

1クールで綺麗にまとまっているだけにラストでそんな綺麗にまとめた部分を
すっ飛ばしてしまったような感覚になる。
2017年に本作品が放送され、すでに8年の月日が経っている。
現在、制作のUfotableは鬼滅の刃に全集中であり、
この作品の映画がいつになるのかわからない現状だ。

俺達の戦いはこれからだで終わった作品の、
俺達の戦いはいつになるのだろうか….

個人的な感想:ソシャゲ原作アニメとして

ややテンポは悪い感じはあったが、序盤から中盤まで
丁寧に設定とキャラを描写したからこそ、
原作をやっていなくとも問題がない作品だった。

好みはあるだろうが、ソシャゲ原作アニメとしては良作に入る作品であり、
これがきちんと映画になっていれば、
もっと話題になったかもしれないだけに、
8年も寝かされているというのは残念すぎる。

おそらく鬼滅が終わるのが早くて2年後だが、そのあとになるのだろう。
他にもufotableは原神なども控えていたはずだが、
果たしていつになることやら…

「活劇 刀剣乱舞」に似てるアニメレビュー

著:津田穂波, 著:「刀剣乱舞-ONLINE-」より(DMM GAMES/Nitroplus)