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人間よ、神に挑め「PLUTO」レビュー

PLUTO SF
PLUTO
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評価 ★★★★★(82点) 全8話

『PLUTO』ティーザー予告編 – Netflix

あらすじ ユーロポールのロボット刑事であるゲジヒトは森林火災の後に発見されたモンブランの残骸に言葉を失う。モンブランは戦争参加後、森林レンジャーとして活躍。誰もが慕う存在となっていた。引用- Wikipedia

人間よ、神に挑め

原作は20世紀少年などでおなじみの浦沢直樹による漫画。
もともとは手塚治虫の『鉄腕アトム』に含まれる
「地上最大のロボット」の回を原作としてリメイクした作品だ。
監督は河口俊夫、製作はスタジオM2
NetfFlixオリジナル作品として配信された

スタジオM2

製作であるスタジオM2はあまり知名度のない会社だ。
実績としては2017年に鬼平、2018年に薄墨桜 -GARO-を手掛けているが、
もともとはMAPPAの代表だった丸山正雄氏が立ち上げた会社であり、
MAPPAやマッドハウスと関係性が深い制作会社だ。

そんな制作会社が1話冒頭から魅せてくる。
浦沢直樹さん原作だからこその彼らしい渋いキャラクターデザインはそのままに、
手書きの作画でそんな渋いキャラクターデザインの渋さを強調しつつも、
山火事のシーンや未来を感じさせる機械の数々の描写では
MAPPAやマッドハウスの匂いを感じるCGで描かれている。

このCGは場面によってやや違和感を感じる部分はある。
エフェクトの過剰さはシーンによっては特に感じる部分であり、
特に4話の戦闘シーンなどは、かなりエフェクトが多用されており、
画面のみづらささえ産んでいる部分もある。

浦沢直樹さんの漫画は何度もアニメ化しているが、
MONSTERからやく9年ぶりのアニメ化になる。
しかし、それなのにどこか9年前に制作されたMONSTERの
あの雰囲気はきっちりと感じることができ、
そんな雰囲気で描かれているからこそ
浦沢直樹さんらしい序盤の盛り上がりをしっかりと感じることができる。

ロボット

もともとは鉄腕アトムの中の1エピソードを原作としている作品だ。
そんな鉄腕アトムを舞台にしているからこそ、物語の舞台は未来だ。
様々なロボットが存在し、人間とロボットが共にいきている。
だが、そんな中でロボットが誰かに破壊される事件が起きている。
誰がなんのために世界的にも有名なロボットを壊しているのか、
目的はなんなのか。

そんな犯人を追うのはロボットでありながら刑事である「ゲジヒト」だ。
ロボット法によってロボットは人間を殺すことはできない、
法律だけでなく頭の中に搭載されている人工知能に人間を殺すことを
制限されている。

だが、何者かが人間を殺し、ロボットも破壊している。
ロボットは人間を殺すことはできない、
だが、殺害された人間の部屋には人間が侵入した痕跡はない。
そもそもただの人間にロボットを壊すことなど不可能だ。

高度な知能を持っているロボットは、見た目こそ違えど、
人間と同じような「感情」をもつもの多く存在している。
人間の中にもロボットに対して様々な感情を持つものもいる。
ロボットでありながら人間と同じように接し、壊れてしまえば葬式を行うもの、
逆に動かなくなったロボットを鉄くずと表し、
ゴミとして捨ててしまうものもいる。

そんな世界で「ゲジヒト」は人間を殺す「ロボット」の影を見つける。
浦沢直樹さんらしい先が純粋気になるストーリーの魅せ方は流石だ。
人間を殺せないはずのロボットがどうやって人間を殺したのか、
そんなロボットはなぜ人間だけではなく、ロボットまで殺しているのか。

ロボットブラウ1589

どんな世界にも「異例」は存在する。
ロボットブラウ1589と呼ばれたロボットは唯一、
ロボットでありながら人間を殺したロボットだ。
彼の人工頭脳は何度調べても「正常」であり、「正常」なはずなのに、
人間を殺してはいけないというルールが適用しない。

欠陥がないのに人間を殺してしまう。
一歩間違えば「大量殺人」を簡単に起こしてしまえるロボットの存在、
だが、この世界の人間においてロボットは生活に必要な存在だ。
だからこそ、欠陥品であったロボットブラウ1589を
人類はおそれ、壊すこともなく幽閉しつづけている。

人間とロボットの関係性は人によっては友人以上の存在だ。
高度な知能を持ったロボット、人間にはできないことをなし得る。
人類にとってのパートナーが人類を脅かす存在になるかもしれない。
社会を揺るがす問題だ。

ロボットブラウ1589という一例だけでは社会はざわついても、
根幹を揺るがすほどではない。
彼だけが特別であり、彼が特別だからこそ他のロボットは問題ないのだと。
だが、二例目が出たら…この社会は壊れてしまうかもしれない。

ノース2号

ノース2号は最初に殺されたロボットや主人公と同じく
過去に戦争に参加していた軍事ロボットだ。
戦争が終わり、彼らはそれぞれ別の人生を歩んでいる。
ノース2号は一人の老人の音楽家の執事として働いている。

老人は機械を嫌い、目が衰えても機械の目を決して入れない。
機械による音楽、機械が奏でる音楽は彼にとっては「偽物」であり、
かつて自身が見た光景を、人間というものを、生身を信じている。

そんな老人はノース2号を最初は拒否している。
老人との会話の中でなにが「本物」なのか、
戦争の武器として、破壊兵器として生まれた彼は
自身の「存在意義」を求めている。

「もう戦場にはいきたくない、だからピアノをひけるようになりたい」
ノース二号の本心だ。
なんど老人に怒られても、なんどピアノに触れるなと言われても、
彼はピアノを奏で続ける。

老人も過去に縛られている、視力を失い、母にすてられ、母を失い、
彼に残ったものは「音楽」しかない。
そんな過去を音楽で表現するために彼は生きている。
彼の生の証を、母へのある種の復讐に囚われている。

過去に囚われているという意味ではノース二号と同じだ。
戦場で多くのロボットを破壊してきた彼は、人工頭脳があるからこそ感情があり、
同じ仲間を破壊することに対してトラウマがある。

人工頭脳が進化したロボットは「夢」を見ることがある。
人間と同じように起こっていない現実に、起こった過去の出来事に、
ロボットも囚われてしまっている。

シンプルな会話劇だ。
だが、それを作画とアニメーション、音楽、そして「声優」による演技が後押しする。
ノース二号演ずる山寺宏一と、老人を演ずる羽佐間道夫。
ベテラン同士のいぶし銀の演技の応酬が
二人の人生の重厚さを後押し視するような厚みを産んでいる。

人間とロボット、生と機械の存在、
自然に生み出された存在と作り出された存在。
そこには壁がある、だが、そんな壁を「感情」と「記憶」が打ち壊す。
1話1時間ほどの尺で描かれる濃厚なエピソードの数々が、
見るものの心に刺さっていく。

ロボットと人間の関係性、この世界におけるロボットと人間の立ち位置、
それぞれの思いと過去が交差し、
ロボットや人間といった種族など関係ない関係性が尊さすら感じさせる。

だが、そんな尊い関係性を壊す存在がやってくる。
「PLUTO」と呼ばれたそれは、人間とロボットの関係性を、
この社会にとっての脅威だ。
せっかく老人と素晴らしい関係性を築けていたのに、
ノース二号は戦いの中で破壊されてしまう。

このエピソードをしっかりと描くことで、
見ている側がよりロボットというものに感情移入し、
この世界への没入感をうみ、
同時に「PLUTO」がなぜロボットを破壊しているのかが気になってくる。

1話の引きも完璧すぎる。
謎のロボット破壊事件、ロボットによる人類の殺人、
ノース二号と老人の音楽家のエピソードを描き、
ラストで主人公が「アトム」と出会うところで終わっている。

ここまで素晴らしい引きの作品を久しぶりに味わった感覚だ。

人間らしいロボット

アトムはこの世界でもある種の異端だ。
あまりにも優れた人工頭脳をもつアトムは
この世界ではアイドルのような存在になっている。

見た目だけではロボットには一切見えない、
人間を模倣し、その模倣の中で人間らしさを掴んだロボットだ。
同じロボットのゲジヒトでさえ、
彼のことをロボットか人間かと正しく認識できない。

そんな彼もまた事件を追う。
世界中で有名なロボットが次々と破壊される中で、
2人は真相へと近づいていく。
高度に発展した人工頭脳、アトムもまた過去に捨てられたからこそ、
強い感情をいだき、人間を模倣する中で人とたぐわないものになっていった。

殺されたロボットたちも同じだ。
戦争を経験し、自身の中に悲しみや憎しみといった感情が生まれ、
ロボットの人権が拡大し、養子縁組することができるようになり、
家族を持つものも現れ、人間とより近いところで暮らす中で、
彼らの中に「人間らしさ」が生まれてくる。

高度に発展した人工頭脳が更に進化した結果が彼らだ。
その末にあるのは「ロボットブラウ1589」だ。
ロボットに人間は殺せない、人工頭脳による制限と法律が
強制力を生み出している。
だが、高度に発展した人工頭脳をもつロボットは
ロボットではなく、もはや人間だ。

人間を殺せるのは人間だけ。
高度に発展したロボットは人間になることで、
人間を殺せるようになってしまうのではないか?
アトムがたどり着いた答えは深く、重い答えだ。

ゲジヒト

主人公であるゲジヒトはロボットだ、高度な人工頭脳をもち
戦争に参加し、現在は刑事として働いて事件を追っている。
だが、ロボットであるはずの彼は悪夢にうなされている。
悪夢の原因も分からず、自分の記憶が意図的に消去されているのでは?
という疑念すら浮かんでいる。

妻と日本に旅行に行ったことがないのに、
旅行をキャンセルした記録があり、
妻と訪れた旅行先での写真は妙に多く残っている。

原作で言えば1巻あたり1話ずつ物語が進んでいく。
TVアニメでは通常、マンガが原作の場合は1話あたり20分の尺で
2話か3話作られている。
この作品も1話あたり60分ほどであり、
同じように1巻あたり約3話×20分=1話の尺で描いている。

鉄腕アトムという作品の世界で、
鉄腕アトムが存在するほどの技術が確立した社会で、
ロボットによる人権が認められたからこそ、人間の仕事も奪われている。
だからこそ、ロボットに対して差別的な感情のある人間もいる。
人間とロボットの共存、人工頭脳の進化、そのはてに
どんな社会が訪れるのか。

ロボットはデータさえ削除しなければ、
人工頭脳が傷つかなければ記憶を失うことも死ぬこともない。
だが、ときに人間は意図的にロボットのデータを消してしまう。
人間の欲望がロボットを戦争の道具にする。

人間の欲望が憎悪をうみ、そんな憎悪がロボットにも伝染していく。
憎しみの連鎖は人工頭脳が開発され、
優秀なロボットが開発されても変わらないどころか、
ロボットにも影響を与えていく。

アトムもまた、そんな憎しみの連鎖に巻き込まれていく。
戦争が生んだ人間の憎悪が、ロボットの憎悪をうみ、
そんな憎悪がアトムを「死」においやる。

同時にアトムの最後のメッセージをゲジヒトは受け取る。

「ゲジヒトさん、プルートゥはあなたと同じ、僕を殺したのはあなた?」

憎悪が憎悪をよび、謎が謎を呼ぶ。
物語が進めば進むほど、この作品から目を離せなくなる。

ロボットは間違えない、忘れない、感情も抑制されている。
だが、人間のように忘れ、間違え、感情が抑制されない
ロボットが生まれれば史上最大のロボットが生まれる。

「ゲジヒト」は戦争の経験、刑事としての経験によって
人間の残酷さを味わい、人間に憎悪し、
プログラミングの抑制を超えて、彼は人を殺した。
例えその記憶データを消去していても、彼の中にはそれが残り続け
悪夢という形で現れている。

ウラン

アトムの妹であるウランは他のロボットとは少し違う。
彼女は人の悲しみ、ロボットの悲しみに敏感であり、
言葉に出さずとも、どれだけ離れていてもそれを感じることができる。
人の感情を普通のロボットよりも敏感に感じることができる少女だ。

そんな彼女がPLUTOに出会う。
PLUTOの中にある深い困惑と悲しみ、それを彼女は感じ取ってしまう。
アトムが、そんなPLUTOにより死に追いやられ、
彼女も深い悲しみを抱えてしまう。
アトムの生みの親でもある「天馬博士」もまた悲しみに包まれている。

彼は自身の息子を交通事故で失ったことでアトムを作り上げている。
だが、それはアトムであって本当の息子ではない。
見た目が似ているだけだ。それゆえに彼をサーカスに売り払ってしまう。
しかし、それでもアトムの死を彼は嘆いている。
2度の息子の死、その息子の死を受け入れられない彼が
アトムを死の淵から目覚めさせようとする。

天馬博士

だが、それには強い感情のデータが必要だ。
怒り、悲しみ、憎しみ。
人間の倫理観を破壊するような強い感情があればアトムは目覚める。
しかし、目覚めたアトムが以前のアトムと同じかはわからない。

そんなアトムが深い眠りについている間に多くのものが犠牲になっていく。
「ゲジヒト」もまた、人工頭脳を進化させ、
人間に付き従うロボットではなく、人間へと進化していく。
PLUTOの正体を知った彼は、PLUTOの事情を知ってしまったからこそ、
彼は人間の命令を拒否する。それが彼を死へと追いやってしまう。

アトムを蘇らせるために「天馬博士」は悪魔になる。
人間を作り上げるのは神の所業だ。そんな神に人間は長い間、挑み続けている。
日本の現実のロボットが人形が多いのは鉄腕アトムやドラえもんの
影響と言われている。

子供ころに見てきた人に似せたロボット、
そんなロボットに思いを馳せ大人になった彼らもまたアトムや
ドラえもんを作り上げようとしている。

「天馬博士」はロボットがこれ以上進化すれば
人間の手に負えない悪魔になるかもしれないと考えている。
人間が人間を機械で作り上げる、それは悪魔の魂を売り払うようなものだ。
しかし、「天馬博士」は2度、息子を失わないために
悪魔に魂を売り渡す。

イプシロン

イプシロンは超高性能のロボットだ。
破壊力、殲滅力に優れ数々のロボットが苦戦したPLUTOと
互角以上の戦いを繰り広げている。だが、彼は優しいロボットだ。
戦争にも参加せず、人を傷つけることも、
ロボットを傷つけることも本来はしたくはない。

だが、戦後処理でロボットの残骸を処理させられ、
彼の心にも大きな悲しみが生まれている。
だからこそ、彼はPLUTOにとどめを刺しきれない。
多くの仲間が、知り合いが彼に破壊されようとも、
彼は憎しみの連鎖を止めようとしている。

そんな彼の優しさにPLUTOも触れる。
彼の中にいるのは「サハド」と呼ばれた花を愛したロボットだ。
だが、生みの親に強制され、操られ、したくもないことをさせられている。
彼もまた人間の憎しみの渦に飲み込まれてしまったロボットだ。

ロボットたちが人間の憎しみ、欲望によって変わっていく。
それがロボットたちをより進化させ、人間へと変わっていく。
だが、神に近づきすぎた人間は代償を受けなければならない。
進化したロボットは人間になり、人間になったロボットは
どういう選択をするのか。

深いテーマで描かれる未来の物語は、
本当にありえるかもしれない我々の未来の1つだ。
目覚め進化したアトムは人間に牙を向くのか、それとも…

滅びる地球

目覚めたアトムが完成させたのは「反陽子爆弾」の数式だ。
それが出来上がってしまえば、地球が崩壊する。
人類が作り上げてしまった最高峰のロボット、
そんなロボットが「憎しみ」に染まってしまう。

だが、その憎しみは「ゲジヒト」のものだ。
彼は死の直前に消された過去を思い出し、
自分の憎しみが消えるか、人間に聴いていた。憎しみはたちきる事も可能だ。
彼がそう学んだからこそ、アトムもその意志を受け継いでいる。
憎しみは連鎖する、だが、断ち切ることもできる。
これはこの作品のテーマの答えでもある。

そんな人間の憎しみの連鎖の果に地球全体が爆発するかもしれない状況に陥る。
全人類の1割だけが生き残り、ロボットだけの世界になる。
止められるのは「アトム」だけだ。

進化したアトムは「嘘」をつけるようになっている。
真実しか伝えられないはずのロボット、
そんなロボットの人工頭脳が進化したからこそ彼は嘘をつく。
心の傷を作らないように、憎しみの連鎖を断ち切るために。

人間は自己保身のためにときに嘘をつく、
だが同時に誰かを傷つけないためにも嘘をつく。
アトムだけでは地球全体の爆発を止めることはできない、
優秀な人工頭脳を持つ彼にはわかっている。
だが、それでも彼は敵に立ち向かう。

理論ではなく、感情が彼を突き動かす。
憎しみが彼をPLUTOと立ち向かわせ、PLUTOもまた自身の憎しみを抑えきれない。
人間の憎しみに巻き込まれた2体のロボットの戦いは
悲しみに包まれている。

人間

そんな悲しい戦いを止めるのも感情だ。
破壊されたロボットたちの「心」、愛情、優しさが、
彼らの思いが憎しみの連鎖を断ち切る。
ロボットが流さないはずの涙をアトムもPLUTOも流す、
人工に作られた頭脳をもつロボットたちが理解できない涙を流す。

たとえ自分が壊れることになっても、
たとえ止めることができないとわかっても、
最後まで希望を捨てないのが「人間」だ。

ロボットだったアトムが人間になる、
嘘を付き、憎しみに包まれても、希望を捨てず最後まで諦めない。
神のまねごとを始めた人間が初めて人間を作り上げた。
皮肉にもそれは「憎しみの連鎖の果て」だ。

戦争がありとあらゆる技術を発展したのと同じく、
このロボット同士の戦争によって人工頭脳は進化し、
人間の領域までたどり着いた。

憎しみの連鎖の連鎖の末に、人工頭脳を進化させたロボットたちは、
「憎しみ」の無意味さを知り、人間たちが生み出した
憎しみの連鎖をロボットたちが止めようとする。
人工頭脳の進化、社会、そして人間の業を
全8話で深く、深く描いてくれた作品だった。

総評:訪れるかもしれない未来の物語

全体的に見て素晴らしい作品だ。
浦沢直樹さんの作り出した世界観を彩る作画のクォリティも素晴らしく、
手書きの作画で描かれたキャラクターの細やかな動きや、
アクションシーンではCGを使い、より派手な戦闘シーンを作り出している。

CGエフェクトに関してはやや過剰な部分があり、
画面の見えづらさを産んでる部分はあるものの、
細かい表情の変化はひとりひとりのキャラクターの心理描写を
より深く見ている側に伝えてくれている。

ストーリーの素晴らしさは秀逸の一言だ。
手塚治虫さんが手掛けた鉄腕アトムという世界の中の
1エピソード、漫画の神と呼ばれた手塚治虫に
浦沢直樹が挑み、作り上げたストーリーは重厚だ。

特に一人ひとりのキャラクターの深さと印象の深さは強烈だ。
7体のロボットたち、そんなロボットに関わる人間たち、
一人ひとりの印象が強く残るように掘り下げながら、
メインストーリーを紡いでいく。

なぜ有名なロボットが破壊されたのか、
人間を殺せないはずのロボットが人間を殺せたのか?
序盤の謎を徐々に紐解いていきながら、中盤まで謎が謎を呼ぶ展開を描きつつ、
ラストはそれが綺麗に回収され収束していくストーリー展開は
流石は浦沢直樹さんといわざるえない。

そんな原作を丁寧にあますことなく1巻ずつ丁寧に描いている。
1話1時間ほどの尺ではあるものの間延びもせずダレもせず、
そして1話1話の引きも素晴らしく、
特に1話の引きの完璧さはスタンディングオベーションしたくなるほどだ。

この作品のテーマは「人類の業」と「在り得るかもしれない未来」だ。
人間がロボットというものをつくり、
どんどんと人間を模倣し、人間に近づけて行っている未来、
そんな中で生まれたアトム達、
だが、その裏には人の「欲望」や「憎しみ」といった業がひそんでいる。

本来はロボットたちが抱えることのない感情、
人によって憎しみや悲しみを抱いたロボットたちが
自らの人工頭脳を進化させ、それが新たな憎しみを生む。
これはまさに人間の業だ。

だが、それでも人間は止まらない。
人間を作り上げるためにロボットを作る行為は神の所業だ。
そんな神に近づくために憎しみの連鎖を繰り返し、
そして人間は神の領域へと一歩を踏み出す。

アトムというロボットを超えた人間を生み出し、
そんなアトムの行動と言葉が憎しみの連鎖を断ち切ってくれる。
見終わったあとの満足感、この作品が描いているテーマを
もう1度自分の中で改めて味わいたくなるような
深く味わい深い作品だった。

個人的な感想:Netflixオリジナル

NetFlixオリジナル作品は当たり外れが酷い印象だが、
この作品は間違いなくあたりだ。
近未来を舞台にしながら、手塚治虫という漫画の神が
描いたストーリーを基盤に置きながら、
人間が人間を作り出す神の所業がどういったものなのかを深く描いている。

漫画の神と、人類の神。
この2柱の神に挑むような、そんな熱意と魂を感じるような
熱い作品だった。

「PLUTO」に似てるアニメレビュー

著:浦沢直樹×手塚治虫, 著:長崎尚志プロデュース, 著:手塚プロダクション, 読み手:手塚眞
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  1. suzy より:

    8話で約8時間。私は原作を読破した者です。ストーリーも熟知していましたが・・・それでもこの8時間は実に充実した時間でした。

    NETFLIXでしかこの感情を味わう事ができない。それが残念でならない。

    NETFLIX契約者以外の方がいつの日かこの作品に触れる機会が生まれる事を祈ります。