ラブコメ

「トニカクカワイイ」レビュー

ラブコメ
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評価 ★★☆☆☆(30点) 全12話

あらすじ 成績優秀な主人公・由崎星空(以下、ナサ)は、高校受験を控えた大雪の日に偶然道端で出会った少女・月読司に一目惚れする。引用- Wikipedia

現代的低刺激ラブコメ

原作は「ハヤテのごとく」でお馴染みの畑健二郎による漫画。
監督は博史池畠、制作はSeven Arcs

とにかく微妙


画像引用元:トニカクカワイイ 1話より
©畑健二郎・小学館/トニカクカワイイ製作委員会

1話早々、主人公が血まみれで倒れている。
そんな血まみれな主人公がポエミーな語りをしているところに
ヒロインが現れ、同じようにポエミーな台詞で語る。

主人公とヒロインという物語の中核に居る存在、
そんな二人のキャラクターデザインが微妙だ。
ややもすれば作画崩壊を起こしそうな不安すら感じるキャラデザは、
タイトル通り「可愛さ」がメインの本作品においては欠点でしか無い。
キャラクターの顔の角度によっては不安すら覚えてしまう。

もっとも原作が「畑健二郎」であり、
原作に寄せたキャラデザと言えなくもないのだが、
もう少しなんとかならないか?と思うほど
微妙なキャラクターだデザインだ。

主人公の見た目がやや「ショタ」っぽいのに
演じている声優さんの声が妙に低く、
キャラデザと声のミスマッチを感じてしまい、
モノローグが多いせいでより声優が合っていないと感じてしまう。

交通事故で出会った主人公とヒロインではあるものの、
一目惚れした主人公は怪我をした体で彼女を追いかけ
「プロポーズ」し結婚するというところから物語が始まる。

それほどの思いを寄せるヒロインの魅力を感じられれば
主人公に共感でき、この作品の「トニカクカワイイ」という
面白さを感じられるかもしれないが、
そこまでの想いを寄せれるほどの可愛さをヒロインからは感じない。

淡々とした主人公の語りで話の抑揚がなく、
見せ場を見せ場として見せきれていない。
作画の微妙さ、キャラデザの微妙さ、演出の弱さというより古さを感じる。
驚いて「家が揺れる」、水を吹く、古めかしいBGMや頬を染める演出、
平成初期くらいのラブコメ、下手したら昭和のノリすら感じてしまう。

良い言い方をすれば懐かしいノリといえなくもないが、
悪い言い方をすれば古臭さを感じる。
90年代から00年代前半にこの手の作品は多くあり、
この作品を見ていると「藍より青し」を思い出すほどだ。

刺激の無さ


画像引用元:トニカクカワイイ 3話より
©畑健二郎・小学館/トニカクカワイイ製作委員会

2話以降もこの作品の刺激の薄さは変わらない。
急に始まった結婚生活に主人公は慌てつつ、
「女の子」との暮らしに最初は戸惑いあせり、下心を抱えつつも
心の中でボケて自分でツッコミ、そんな主人公の慌てっぷりに対して
余裕な態度で笑顔を浮かべるヒロインに「可愛い!」と叫ぶ。

1話の中で何度も主人公は「可愛い」と叫ぶが、
そこに共感ができない。見せて「可愛い」と伝えるのではなく、
主人公に台詞として言わせることで「可愛い」を強調し
成り立たせているような必死さすら感じてしまう。

そもそも余計なセリフが多い。
2話では急に始まった結婚生活で布団が必要であり、
ドンキホーテに買いに行くという展開になる。
そこで主人公はヒロインに羽根布団と羽毛布団の違いを説明する。

そんなシーンは必要だろうか?
「記憶力」や「勉強ができる」という主人公の設定を
強調するためのシーンなのはわかるものの、特にすごいとも思えない。
ツッコミのための台詞もムダに長いことが多く、ギャグが間延びしている。

3話からは二人以外にもキャラクターが増えてくるものの、
主人公は基本的にヒロインである「由崎 司」以外の女子には興味ない。
いくら増えてもハーレムラブコメのようにはならないところが、
この作品の魅力ではあるものの、
同時にキャラが増えても関係性の変化が生まれず、ほぼ何も変わらない。

変化がなく刺激がない。
そういった変化の生まれる刺激のない作品が好まれるのが
最近の作品の風潮かもしれないが、そんな時代に生まれた
ラブコメらしいと言えばらしい作品と言えるかもしれない

だからこそ彼らは夫婦になってるのに
「夜の営み」にすらいたらず、キス止まりだ。
変化がなく刺激がない作品を求める人にとって
夜の営みは刺激が強すぎるのだろう。

いわゆるお風呂回ですら、この作品はわざわざキャラクターに
バスタオルをまいている。銭湯でバスタオルは明らかに
マナー違反であるが、ストレートな表現は刺激が強すぎる。
タオルで1枚で覆わなければ刺激が強すぎる。

ヒロインの可愛さを強烈に感じられず、
主人公の台詞でカバーしてようやく可愛いという表現にしているのも
そういった「低刺激」を意識して作られている作品だからかもしれない。
ヒロインの可愛さを素直に表現してしまえば刺激が強すぎるのだろう。

なろう系の主人公が最強で誰にも負けず、
周囲のキャラに最強と崇めたてまつらせ困難のないサクセスロードを
突き進むのと同じように、この作品は主人公とヒロインの関係性が
最強であり、なんの障害もなく結婚生活を送り続ける。

秘密


画像引用元:トニカクカワイイ 1話より
©畑健二郎・小学館/トニカクカワイイ製作委員会

1話からヒロインの「秘密」を匂わせている。
なぜか怪我をしてもすぐに治ったり、月に関係していることを匂わせたり
長い間生きていることを示唆するシーンが有る。
だが、それに関しての謎を追うようなストーリーにはならない。

主人公は別に彼女の過去なんてものは一切気にしておらず、
視聴者には彼女の謎を散々匂わせており、
考察させたいのかもしれないが正直どうでもいい謎だ。
1クールの中でそれが明かされたりするならともかく、
明かされることはない。

原作でもまだ謎なようなので、おそらくは作品自体の終盤に
明かされる謎なのかもしれないが、その謎がこの作品の
面白さや魅力につながっては居ない。

パロディ


画像引用元:トニカクカワイイ 4話より
©畑健二郎・小学館/トニカクカワイイ製作委員会

「ハヤテのごとく!」の作者らしく、パロディ要素も多い。
ハヤテのごとく!はアニメではよりパロディ要素を強めていたが、
今作では「パロディ要素」こそあるものの、扱いは雑だ。

例えば4話でサブキャラクターの一人が主人公が入ってはいけない
部屋に入ったことでこんなことを言い放つ。

「この部屋に入った者は悪即斬で滅殺です!」

悪即斬はるろうに剣心の斎藤一の台詞として有名だ。
しかし、それを言うだけでそれが特に面白さになるわけでもない。
大剣を振りかざしているため、それを主人公が突っ込むのだが、
パロディとしてギャグになりきれておらず、笑いどころにはならず、
そもそもパロネタとしてもやや古さを感じてしまう。

どこか昭和ドタバタラブコメのような演出で
そういった雰囲気がある作品なのに、平成的なパロディギャグがあり、
だがストーリー自体は令和的な低刺激ラブコメだ。
1つ1つの要素の年代のちぐはぐさを感じてしまう。

第三者


画像引用元:トニカクカワイイ 6話より
©畑健二郎・小学館/トニカクカワイイ製作委員会

ただ中盤くらいになると登場人物が増えることにより、
ドタバタコメディ感がましにぎやかになる。
主人公とヒロインという鉄壁のカップルのイチャイチャっぷりも
加速していき、そんな二人を「第三者」の目線で突っ込むキャラが
現れることでイチャイチャコメディとして形になっていく。

遠慮がちとも言えた序盤のイチャイチャから中盤では
周囲の目線すら気にしないイチャイチャになってくることで、
ようやく「ヒロイン」の可愛さも少なからず感じられるようになる。

ただ、第三者が居ないときはやはりツッコミ不足が顕著であり、
イチャイチャする二人に胸焼けというよりは、
俯瞰的な目線で見てしまい、二人のイチャイチャを面白いと思ったり
ニヤニヤしたりは出来ない。

もう一歩、バカップルぶりに拍車がかかれば視聴者を
ツッコミ役として成立させることもできるが、
そこまでバカップルにまでは至っていない。

二人だけのシーンよりもサブキャラを含めたシーンで
わちゃわちゃしている方が素直に面白く、
そういった面白さがあるだけに二人だけのシーンの微妙さが
余計に際立ってしまう。

終盤になっても、結局大きな変化はなく、
最終話でも特になにか起きるわけでもない。
1クールのストーリー構成を意識したストーリー構成にはなっておらず、
最初から最後まで低空飛行で終わる作品だ。

総評:ヒロインを可愛いと思えるかどうか


画像引用元:トニカクカワイイ 2話より
©畑健二郎・小学館/トニカクカワイイ製作委員会

全体的に見て、ある意味で現代的とも言えるラブコメだった。
「なろう系」が流行る昨今において、ラブコメというジャンルでも
その波が来たかと感じさせるような「不変さ」と主人公とヒロインの
関係性の強さの絶対感のある作品だ。

ヒロイン候補なキャラクターは多く、主人公に思いを寄せている
キャラクターはいるものの、三角関係になったり
ハーレムになったりはしない。
あくまでも主人公とヒロインの絶対的な強さというなの愛情を
ひたすらに見せられる作品だ。

本来は新婚生活の中の「ヒロインの可愛さ」を楽しむ作品なのはわかる。
だが、キャラクター自体の魅力という可愛さが出てくるのは中盤以降であり
それまでは主人公が「可愛い」と連呼して、その可愛さを表現している。
なろう系において主人公以外のキャラが「なんて強さだ!」と
言うことで、主人公の強さを強調しているのと同じ構図だ。

キャラクター本来の強さ=魅力という名の可愛さを芯から感じられない。
本来はアニメーションという表現でその可愛さを描くべきだが、
簡素なキャラクターデザインと作画の悪さ、演出の古さが
ヒロインの可愛さを後押ししておらず、むしろ、顔の角度によっては
気になってしまうほどだ。

彼らの新婚生活にキス以上の行為はなく、それ以上の刺激がない。
お風呂シーンでさえタオルできっちりとガードされてる低刺激っぷりであり
強い刺激、強い変化を求められていない現代的な
低刺激ラブコメとも言える作品だった。

一応、ヒロインに秘密があるようだが、正直どうでもいい部分もあり、
この作品が描きたいのはそこではないと感じてしまう。
もっと強く、その部分が描かれれば「いつかくるかもしれない別れ」が
作品の良いスパイスになったかもしれないが、
この作品にそんな刺激はいらないのだろう。

この低刺激っぷりを物足りないと感じるか、丁度いいと感じるか。
ヒロインの可愛さを感じられるかどうかでこの作品を
楽しめるかどうかが決まってしまう。

個人的な感想:合わなかった


画像引用元:トニカクカワイイ 12話より
©畑健二郎・小学館/トニカクカワイイ製作委員会

1話からヒロインの可愛さを感じず、キャラデザや作画の微妙さで
中盤くらいまでヒロインの魅力がわからず、
中盤からはややくすくすと笑える部分はあったものの、
ほとんどサブキャラとのシーンで笑っていることに気づいてしまった。

二人のイチャイチャというメインよりも、
サブキャラたちとのワチャワチャのほうが面白く、
それだけに中盤以降はそこそこ楽しめる部分はあったものの、
色々と合わないと感じてしまう作品だった。

海外では割と人気だったようで、もしかしたら2期があるかもしれないが
2期はもう少し作画のクォリティを上げてほしい。

トニカクカワイイ Blu-ray BOX
コロムビアミュージックエンタテインメント

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