ファンタジーアニメ一覧

強くなくて古臭い英雄譚「強くてニューサーガ」レビュー

1.0
強くてニューサーガ ファンタジーアニメ一覧
©2025阿部正行・アルファポリス/強くてニューサーガ製作委員会
スポンサーリンク

評価 ★☆☆☆☆(18点) 全12話

TVアニメ『強くてニューサーガ』第1弾PV|2025年7月からTOKYO MX、ABCにて放送開始

あらすじ 魔族が仕掛けた大規模な戦争「大侵攻」によって、人族が滅亡寸前にまで追い込まれた世界。戦乱の中で青年・カイルは、かけがえのない存在と故郷を失う。 引用- Wikipedia

強くなくて古臭い英雄譚

原作は小説家になろうな本作品。
監督は水沢直木、制作は創通、スタジオクラッチ。
もともと横浜アニメーションラボが制作予定だったが、
昨今ごたごたもあいまって延期の末、制作会社が変更になった

犠牲

1話序盤はベタな始まりだ。
ファンタジーな世界で「魔王」と呼ばれる存在と争っている人類、
勇者である主人公は多くの仲間とともに魔王軍へと挑み、
その果てに仲間を失いながら、自らの命をもかけて魔王を倒すことに成功する。
たった一人生き残った主人公だが、守りたかったものは守れなかった。

だが、魔王が守っていた魔道具に触れた瞬間、主人公は
「4年前の過去」に戻っていたというところから物語が始まる。
いわゆるタイムリープものだ。
バッドエンドとはいえない、だが、ハッピーエンドとは言えない。
そんな旅の終わりを味わった主人公が、もう1度やり直す。

ベタだからこそわかりやすく、1話から
主人公がタイムリープした理由もきちんと描かれており分かりやすい。
ただキャラクターデザインの時点からあまりやる気を感じず、
1話は作画崩壊こそしていないものの、
あまりクォリティは高くない。

バカ

タイムリープして未来の記憶があるのは主人公だけだ。
3年後に魔王軍が侵攻してくることは主人公しか知らない、
そのために主人公は英雄となり、多くの人に信じてもらえる存在になろうとしている。
当然、主人公以外に未来の情報は知らない。

将来、恋仲になるエルフも主人公のことすら知らない。
そんな彼女を主人公は「真名」で呼んでしまう。
エルフにとって両親と自分自身、大切な人にしか明かさないのが真名だ。
そんな真名をあっさりと呼んでしまう。
馬鹿である。

この2話以外にも、当人しかしらないような個人情報、
おしりのあざなどをポンポンと言い出す。
未来の情報、なにがおこるのか、ダンジョンやお宝がどこにあるのかなどの
情報を頼りに魔王軍への対策を進めるのはいいのだが、
主人公しか未来の情報を知らないのに個人情報をペラペラしゃべる。

このあたりの主人公のバカっぷりがいまいち受け入れきれず、
「暴力ヒロイン」や「風呂をのぞこうとする悪友」など、
原作が13年前の作品だから仕方ない部分はあるものの、
キャラクター描写の古臭さが厳しい。

ストーリー的にもかなり淡々としており、
1話で過去にやってきて、3話で仲間とともに財宝が眠るダンジョンに
横穴を掘って大金と装備をゲットだ。
話の盛り上がりというものが薄く、地味な序盤にフックといえるものがない。
1話以外にろくに戦闘シーンもないため余計に盛り上がらない。

地味

4羽になるとようやくタイムリープものらしく、
本来は死ぬはずだったお姫様を助けるという流れになる。
戦闘シーンもあるのだが、何も気合が入っていない。
「ヒドラ」という強敵、序盤におけるボス戦なのだが、
だらーっとした戦闘シーンは特に面白みがない。

横浜アニメーションラボだったら作画崩壊していたかもしれない、
しかし、スタジオクラッチにかわっても、
棒立ちなヒドラに魔法石をなげてひたすら攻撃するだけという
地味すぎる戦い方は盛り上がりに欠ける。

ヒドラという複数の頭を持つ相手に対して
何度も何度も同じような魔法をぶつけるのだが、
再生力がすごいと自覚したら否や突っ込んで、
魔法石を体内に埋め込んで終わる。

盛り上がりそうで盛り上がらない戦闘シーン、
あまりにも力技すぎる戦い方は
主人公のバカっぷりを感じさせてくれる。
主人公の幼馴染の戦闘シーンも止め絵とアップとエフェクトでごまかす。
最低限のクォリティしかない。

改変

未来を知る主人公ではあるものの、
かつての仲間がやってきた罪を知らない。
そもそも魔王軍が攻めてくるまで3年という月日の余裕があり、
結果的に人間同士のどうでもいいもめごとばかりが描かれるため、
話の盛り上がりも薄い。

未来を知っていても知らないこともある、救えない命もある。
ループはもうできない、タイムリープものではあるものの、
多くの作品と違い、何度もやり直すことはできないのがこの作品の特徴でもある。
だからこそ淡々としており、盛り上がりが薄い。

主人公は時に未来の仲間をてにかけ、王すら暗殺する。
ストーリー的には盛り上がる部分なのかもしれないが、
未来の仲間の掘り下げが足りないため、
主人公が涙を流したところで特にみている側に思うところはない。

中盤くらいになってもずっと淡々としており、
タイムリープものはゲームっぽさが強くなるが、
この作品の場合は「作業ゲー」っぽさが強くなる。
淡々と主人公が知っているイベントをこなす作業でしかない。

未来ではお姫様が暗殺されてた、じゃあ暗殺を止めよう。
将来戦力になるゴーレム開発者に大金を投資しよう、
そんな感じのストーリーが淡々と展開される。

魔族

終盤になるとようやく「魔族」がでてきて、帝国内で暗殺が行われる。
人族の欲望に付け入り、暗躍する魔族との戦いが描かれるが特に盛り上がるわけでもない。
主人公はタイムリープして未来の情報を知っている、
そのアドバンテージが生かされるのは序盤くらいで中盤以降は
主人公が知らない情報が多すぎてタイムリープ感が薄くなってしまっている。

タイトルの強くてニューサーガは
ゲームにおける強くてニューゲームをパロディしてるのは分かるが、
そもそもの主人公の強さが微妙だ。
2人分の魂が融合し魔力は高いようだが、普通に苦戦する。

魔族も一枚岩ではないようで、主人公が未来で戦った魔王と
過去の魔王が違ったり、一部の人間が魔族と通じていたりと色々と画策している。
結局1クールではあまりストーリーが進んでいる感がなく、
区切りがいいところで終わっているわけでもない。

最終話はダイジェストでストーリーを進めており、
俺たちの戦いはこれからだで終わらせれば
最低限の区切りが生まれるのに、それすらできていない。
これで2期の決定があったり、分割2クールならば理解できるのだが、
あまりにも印象が薄いまま終わってしまう作品だった。

総評:作画崩壊から逃げた結果…

全体的に見て非常に薄味な作品だ。
横浜アニメーションラボから制作が変わって作画崩壊こそしていないが、
作画のクオリティはお世辞にも高いとは言えず、
戦闘シーンの迫力や魅力はまるでない。

ストーリー的にもありきたりな「やり直し系」であり、
1度しかタイムリープしかしていない主人公が知っている情報が
少なすぎて、仲間の意外な過去だったり、主人公も知らないような
出来事が起こったりしすぎて
「タイムリープ」っぽさが話が進めば進むほど落ちていく。

ストーリー構成も中途半端であり、
俺たちの戦いはこれからだで終わっている。
横浜アニメーションラボ制作のままだったら、
分割2クールか2期前提で作られているような感じもある作品だった。

個人的な感想:2クール

原作もそこまで長い作品ではないだけに、
2クールくらいで一気にアニメ化すべき作品だったかもしれない。
1クールだと序章をダラダラとやっているだけで
終わってしまっている感じが強く、ここからいろいろな謎や
ストーリー的な盛り上がりも生まれるのだろう。

その前で終わってしまっており、アニメーション的な魅力はない。
1クールだとよくあるファンタジー物語でしか無く、
ストーリーの魅力もキャラの魅力も伝わりきらないままで
終わってしまっている感じだ。

横浜アニメーションラボの問題があり、
相当ゴタゴタして制作したのはわかるものの、
横浜アニメーションラボのままだったらどうなっていたのか…
というのも色々な意味で気になる作品だった。

「強くてニューサーガ」に似てるアニメレビュー