だからアニメは面白い「SHIROBAKO」レビュー

2015年5月7日

評価/★★★★★(100点)

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だからアニメは面白い

本作品はP.A.WORKSによるアニメオリジナル作品
監督は水島努、制作はP.A.WORKS
「アニメーション制作会社」を取り扱った作品だ
なお、アニメーション制作会社が題材のアニメは
「アニメーション制作進行くろみちゃん」という作品がアニメで初であり
本作品は「2作目」となる。

見出して感じるのは「女の子の可愛さ」だろう。
P.A.WORKSらしい「女の子」の可愛らしい描写、なにげない表情の変化は
いかにも「アニメ!」という感じではなく、
どちらかというと「一般受け」しやすい雰囲気でありながら
アニメキャラクター特有の可愛らしさがにじみ出ている。
きっちりとした「キャラデザ」によるキャラの描き分けがしっかりしており、
印象に残りやすい。

そして、1話開始5分でこの作品の凄さが分かる。
1話冒頭は5人の女の子がそれぞれ「アニメ」業界を目指し
高校のアニメ同好会で自主制作アニメを作る青春ストーリーが描かれる
そして、明るい雰囲気から綺羅びやかな表情で
それぞれの道へ旅立つ描写の後に時系列が流れ・・・
主人公の顔が死ぬ(笑)

つい1分前は青春全開の「PAWORKS」らしい夢を感じる雰囲気だったのに
一分後に「社会人アニメ」という現実を突きつけるような
理想と現実のギャップを「5分」という尺で描写する
言葉で書くのは非常に簡単なのだが、実際にこの「5分」を見てもらえば
私が言いたいことが痛いほど伝わるはずだ。
この作品は「面白い」、この作品は間違いなく「名作」になる
そんな予感をたった5分で感じさせる。

そして、そんな5分を過ぎても「面白さ」のラインが一切落ちない。
静寂と喧噪の雰囲気をシーンごとに激しく切り替えながら
「アニメーション制作会社の日常」を描く。
雰囲気の切り替えがなければ淡々とした印象が強まってしまうところを
激しいテンポとゆっくりとしたテンポを切り替えることで
見ている側の「感情」をぐわんぐわん揺らされるような感覚だ。

普段見ているアニメを私達は気楽に見ている。
総集編があれば「なんだよ、総集編かよ!」と怒り心頭し、
作画が崩れれば「制作しっかりしろ!」と突っ込む。
文句をいうのは簡単で、私も1200レビューを超える記事の中で
幾度と無く、そんな「批判」の言葉を書き連ねている。

なぜ、そんな批判が生まれるシーンが生まれたのか。
なぜ、アニメ業界にトラブルにはつきものなのか。
この作品はそんな「アニメーション制作会社」の日常を生々しく描いている

「アニメ」は人が作っているものだ。
絵がうまくても作業が遅い人、絵が遅くても作業が早い人、
こだわる監督もいれば、ちょっとしたミスやトラブルで遅れが生じる
色々な人が「アニメ」に関わっているからこそ「スケジュール」が思うようにいかない

主人公は「制作進行」の女の子だ。
アニメに関わる「スケジュール」を彼女が管理し、取りまとめる
ギリギリのスケジュールで「1分1秒」を争う制作状況は
独特の緊張感を主人公と同じように見ている側にも感じさせる

1話は2週間前、2話は1週間前、3話は三日前。
主人公が制作進行をしているアニメはどんどんとスケジュールが遅れ、
完成品が納品される時間が話数を重ねるごとに期限ギリギリになっていく
人が作るものだ、体調不良でスケジュールが押したり
連絡ミスでスケジュールがうまくいかなくなったりする。
時には監督や原作者のせいで「ほとんど完成しているシーン」があっさり0になる。

そんな中で主人公以外の多くの人物が奮闘する。
各話ごとに「キャラの名前」と「役割」がでることで
多い登場人物の「立ち位置」をしっかりと視聴者に意識させる演出があり、
そのおかげでアニメに関わる大量の人物が代わる代わる出てきても
「コレ誰だっけ?」と迷うことがない。

「リアル」なアニメーション制作会社だからこそ
「キャラクターの名前」でインパクトを出すことは難しい
外見的にも「美少女」は多いが極端なキャラクターデザインや髪色にはできない
だからこそキャラ印象の薄さを名前と役割が出るだけという単純なことなのだが、
その演出が効果的に作用し話数を重ねていくうちに自然と
多数の登場人物の名前が頭に入ってくる。

だからこそ「多くのキャラ」が関わった作品が完成した時の感動を
キャラクターたちと同じように味わえる。
きっちりと一人ひとりのキャラクターの印象を深めるからこそ、
そのキャラクターたちがギリギリのスケジュールで切羽詰まって
トラブルを抱えまくった状況で
ようやく、本当にようやく完成した作品が完成する喜びを実感できる

そして、この作品で描かれるのは「アニメーション制作会社」だけではない。
「アニメ」に関わるものすべてだ。
原画マン、プロデューサー、音響、演出、出版会社、原作者、声優etc…
「アニメーション制作会社」の中だけでなく、
「アニメ」というものに関わる全てだ。

そして主人公と同じ同好会だった子たち。
主人公と同じようにまだ「アニメ業界」では新人だ。だからこそ「苦悩」する。
「先輩」たちの意見を聞き入れながら彼女たちは少しずつ、少しずつ成長する
その結果に彼女たちが作り上げるアニメの中の1シーン、アニメの中の演技、
苦悩した末の「成長」をこの作品は強く実感できる。
生々しくキャラクターを描写し、リアルにストーリーを進め、
丁寧にそれをアニメとして「見せる」ことで見ている側により強い感情移入を産む。

はっきりいって「理想」でしかないパターンも多い。
トラブルを抱えまくった状況がたまたま上手くいく、だが、それはアニメだからだ
本来ならスケジュールを守りきれず落として総集編、作画崩壊だろう。
自分の絵について悩む原画マンも本来なら潰れてしまうかもしれない、
売れない新人声優も売れないまま終ってしまうかもしれない。

だが、これは「アニメ」だ。
リアルに生々しく描きながらも、そこに現実ではなく「夢」をもってくることで
ストーリーの抑圧と解放から生まれる「爽快感」を産む。
シリアスなシーンも多い、むかつくキャラクターも多い、
だが、そんなキャラやシリアスなシーンの後に
「見てよかった!」と思える展開が描かれる心地よさがある

本当に素直な感想だ。
だが、悩む彼女たちを見て、その悩み解決するシーンを見て
本当に素直に「よかったね」と呟いてしまう。
キャラクターに強い感情移入をしているからこそ、
純粋に素直な感想が生まれる。

欠点を言うなら、この作品は「アニメ」というものを知らないと楽しめない
普段アニメを見て、監督の名前を知っていたり、アニメ用語を知っていたりと
ある程度、「アニメ知識」がある前提で作られている部分が大きい。
アニメーション制作に関わる用語の説明などを余りしないために、
その用語を知らないと楽しめない部分もある。

調べればすぐに意味がわかる用語ではあるが、
逆に言うと解説シーンがすぐに有るわけでもないので調べないとわからない。
後半になると用語解説があるのだが、後半にならないと無い。
この点に関しては次回予告シーンなどで
用語の解説などがもう少しあってもいいのでは?と感じる部分だ

更に「業界人」のパロディも多い。
監督、アニメーター、女性声優など
わからない人にはわからないパロディが多いのだが、
逆に言えば「分かる人にとってはたまらない」パロディばかりだ。
もう私は興奮しっぱなしだ。
別に本人が演じてるわけじゃない、だが「出てくる」だけでテンションが上ってしまう

アニメーターの板野、監督の庵野、
もちろん直接名前が出るわけじゃない、だが伝わる。
出てくるアニメ業界人の数々が「彼ららしい」言葉を登場人物に投げかける
著名な業界人だからこそ「名作」「名シーン」を作った彼らを
模したキャラクターだからこそ、その言葉の「重み」が違う。

パロディだからこそ「著名人」の描写が不要だ、パロ元の偉大さがそのまま
パロディキャラクターの重みになっている
その人がいかに凄いかという説明をする尺よりもストーリーの流れを重視する。
パロ元がわからない人にとっては分からない、だが、そこを切り捨てることで
「見やすさ」と「爽快感」を生んでいる。

「切り捨てるべきところを切り捨てる」というのは非常に難しい判断だ
ストーリーを描く上で、キャラを描写する上で最低限必要な箇所を判断する
アニメの場合、余計な肉付けが多すぎたり、逆に切り捨てすぎて
描くべき部分が描かれていなかったりする作品も多い
しかし、この作品はきちんとソレができている。

だからこそキャラ描写が光る。
会社のお荷物でしか無かったように見えた老人が
ふとしたきっかけで熱く燃えるような展開を生む人物になる。
それまで少ししか描かれていなかったキャラクターなのに
たった1話でアニメーション制作の「キーパーソン」になる。

魅せるべき部分をきっちりと意識しアニメとして「見せる」ことで
たった1シーン、たった1セリフで熱い展開に切り替わる
熱すぎる展開に心も目頭も刺激される。
余計なに肉付けがないストーリーだからこそ、
制作側が「魅せたい部分」が視聴者にストレートに突き刺さる

そんな魅せたい部分の中のふとしたセリフの中に制作の思いを強く感じる。
キメ台詞ではない、だが、ふとしたセリフの数々、
キャラクターたちが「こぼす」ように言い放つセリフの中に
「制作側の本音」が見え隠れしており、
それを名台詞のようにキメ台詞としては言わない。
あくまでも、ふとこぼれた本音としてセリフになっている。
だからこそ「何気ない日常会話」が面白い。

そして、だからこそ「ふとした萌え」の破壊力がすさまじい。
日常だからこそ過度な萌えシーンは無い、
だが、日常だからこその「ふとした萌え」シーンが存在する。
何気ない表情の変化だったり、日常の中の「体操」だったり
1200作品以上のアニメをレビューしてきたが、
「体操」のシーンで萌を感じたのは初めてだ(笑)

そして、何気ないシーンで「ふと涙腺を刺激」される。
制作側はそこまで狙ってなかったかもしれない、
だが、サブキャラクターの涙についつい誘われるように感動してしまう
そこまで深いキャラ描写があるサブキャラクターではないのに、
出番なんてほとんどないサブキャラクターなのに、
ふと、そんなキャラに感情移入をしてしまう。

中盤以降になると「アニメーション制作会社の裏側」も描かれる
声優オーディションと声優の決め方、出版社との関係性、
自虐ネタともいえる描写ではあるものの「暴露ネタ」のような
裏側の描写は素直に笑えてしまう。

そして描くべき部分の中で削らなかった「新人声優」の描写。
主人公と同じ高校時代のアニメ同好会の一員であり、
他の4人に比べて苦労をしており、その苦労が中々報われない
オーディションには落ち続け、バイトの日々、
他の4人が同じ作品を作っているのに自分だけは違う。
年齢的にも決して若くはなく、自分より若い声優が業界では活躍している。

これが現実なら、このままで終わりだろう。
だが、この作品はアニメだ、「夢」がある。
予定調和?ご都合主義?やっぱりそういう展開?
制作側もそれを「言われる」ことをわかった上だろう、
わかったうえで「予定調和でいいじゃないか、これがアニメだ!」と言わんばかりに
彼女が報われる。

ベタベタな展開だ、王道な展開だ、予定調和な展開だ、想像通りな展開だ
だが、その「ご都合主義」をこの作品はずるい見せ方をする
「なんてベタな展開だ、なんて予想できる展開だ」
見ている最中に口ではそう言っている、だが、目からは涙が止まらない。
登場人物の「涙」と一緒に見ている側も涙する。
きっちりとしたキャラ描写とそこから生まれる強い感情移入が
「予想できる展開」だからこその感動を作り上げている

全体的に見て本当に面白い作品だった。
アニメを作るスタッフだからこそ「遊び心」とともに
「子供」のような頑固さと自由さがある、
そんなキャラクターたちが時にはわがままに、
特には意固地になりながらも1つの作品を作り上げるストーリーと、
リアルに「アニメーション制作会社」の実情を描きつつも
現実的しすぎるのではなく「アニメ」としての夢を作品の中に詰め込んでおり、
「現実」と「夢」という2つの要素を絶妙なバランスで取り入れ、
全体を1つの「アニメ」作品としてまとめあげている作品だ。

アニメアニメしすぎてもイケない、生々しすぎてもイケない。
アニメアニメしすぎたら非現実過ぎてわざとらしさが強まる。
生々し過ぎたらシリアスなシーンが重すぎて淡々としすぎてしまう。
この「夢」と「現実」を絶妙な塩梅で描くからこそ
キャラクターに強い感情移入をすることができ、
2クールという尺を飽きずに、最後まで隅々まで楽しむことができる。

本当に1話たりとも無駄な回がない。
2クールという尺を1話1話を大切にしながらも
全体のストーリーを意識しまとめあげている。
「ストーリー構成」の重要さをはっきりと感じることができ、
1話から最終話までの「流れ」が本当に心地が良い。

1話1話が非常に濃ゆく、2クールが長い。
だが、その長さが本当に心地よく長いのに疲れない。
「面白さ」のモチベーションが最後まで下がること無く、
むしろ見れば見るほど上がり、最終話を見終わった後に「ストン」と落とされる
久しぶりに・・・本当に久しぶりに作品を見終わった後の
「喪失感」を強く感じてしまった。
もう1話見たい、なぜもう1話ないんだと彷徨ってしまう感じだ(笑)

ここからは物凄い個人的な感想でしか無いが、
「CG」と「手描き」の話が興味深かった
私も10年位前は「CG」に対して拒否感が強く、
手描きじゃなければアニメじゃないくらいの思いが強かった(特にロボアニメ)
だが、ここ2,3年のCGの進歩はすごい。
手描きとはまた違う「アニメの表現」の可能性をCGから感じている最中に
あの話は、制作側の色々な思いを強く感じてしまった。

そして「無音」の原画パートのシーンに私は涙腺を刺激された
ただの「バイクで走る中の爆破シーン」でしかない。
だが、その爆破シーンが描かれるまでの経緯、
そして「CG」とは違う「手描き」の本気の描写と
あえて「無音」でそのシーンを見せる素晴らしさに
素直に「かっこいい」と思い「感動」してしまった

本当に書こうと思えばキリがない。
レビュー文章も長文になってしまったが、本来はこの倍はあった。
見ている最中に感情を突き動かされることが多く、
衝動的に「素直な感想」が見ている間に沸々と沸き上がってくる。
だが、本来はこんな長いレビュー文章すらいらない。
一行で十分だ

「いいから見てくれ、面白いから」

アニメレビューサイトとして身も蓋もない言葉だが、
事実なのだから仕方ない(笑)

欠点を言うならアニメの知識が必要なことくらいだろう
ソレ以外は特に無い。
あえて言うならば終盤、若干ギャグ演出が過剰になったくらいだろう(笑)
水島監督が我慢できなかった感じが強く、笑ってしまうシーンなのだが
全体を見ると明らかに浮いている。

2期・・・というのはあるのだろうか?
個人的には綺麗に締めた作品なのでコレ以上やってしまうと
蛇足な感じもあるのだが、
だが、そんな気持ちはあるのに「続きが見たい」とも思ってしまう。
かなりハードルが上がった状態での2期になるとは思うが、
ここは是非、2期を期待したいところだ。

超個人的にエンゼル体操のシーンを3回見なおした(笑)
なんだろうか、あの言葉で表現しにくい可愛さは・・・w

最後に。
演じた声優さん、水島監督、制作スタッフの皆さん。お疲れ様でした。
本当に心の底から面白かった、1話から最終話まで楽しかった・・・
もう1回、私はもう1回この作品を今から見ます。
もしかしたら、あと3回位は繰り返し見てしまうかもしれない(笑)

レビューでもしかしたら、この言葉を初めて本当の意味で使うかもしれない。
この作品は「神アニメ」だ!

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