アニメコラム

【最悪の後味】7月に見たアニメ・実写ランキングTOP14【近況報告vol.33】

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オタク歴25年、アニメレビュー歴13年、YouTube登録者11万人。
個人的な視点で語るアニメ批評です。

どうもみなさん、夏真っ盛りの中、いかがお過ごしでしょうか。
毎月恒例の個人的アニメランキングになります。

7月

TVアニメ、配信アニメ、劇場アニメ、海外アニメ、さらには実写映画まで、
かなり幅広い作品を見た感じがあります。
振り返ってみると、今月は作品の落差が凄まじい月でした。

原作10巻分を1クールに押し込んだ狂気のアニメ化があれば、
豪華キャストを集めて2時間の茶番劇を繰り広げる実写映画もある。

一方で、ニワトリが怪獣と戦う作品に王道の熱さを感じ、
フランス産のSFアニメに『攻殻機動隊』のような骨太さを味わい、
30年以上続くシリーズ作品に泣かされました。

そして1位では、かわいいキャラクターからは想像もできないほどの
絶望を叩きつけられ……と、非常に面白い月になりました。

レビュー数としては14作品。
映画が多めになってしまったのはやや心残りではありますが、
7月に見たアニメ・映画のランキングを振り返っていきます。

14位 リィンカーネーションの花弁

全編総集編の腐ったアニメ「リィンカーネーションの花弁」レビュー
評価 ☆☆☆☆☆(3点) 全13話あらすじ 自らの首を切ることで前世の才能を得ることができる“輪廻の枝。高校生の扇寺東耶は塾の帰り、クラスメイトの灰都がその枝を使いシリアルキラー(=アルバート・ハミルトン・フィッシュ)と戦う場面に遭遇してし...

前世の偉人や犯罪者の「才能」を引き出して戦うという設定自体は、
能力バトルものとして決して悪くなく、
ある意味、王道の要素です。

宮本武蔵をはじめとする偉人の力を持つ者たちと、
犯罪者の才能を持つ者たちが戦う。
きちんと描けば、それなりに面白くなりそうな素材ではありました。

しかし、このアニメは原作約10巻分の内容を、
わずか1クールに無理やり押し込んでいます(苦笑)。

1話で原作2巻分ほど進み、2話では大量の新キャラクターが登場し、
3話では早くも総力戦が始まる。

キャラクターに思い入れを持つ暇もないまま、裏切り、戦い、死んでいく。
誰が敵で誰が味方なのかも分からず、
毎話ソシャゲの10連ガチャを回しているような気分になります。

原作を知っている人なら脳内で補完できるかもしれませんが、
視聴者はエスパーではありません。

原作を読んでいることを前提にしたような構成であり、
アニメだけを見ている視聴者に対する説明も積み重ねも、
圧倒的に足りていませんでした。

原作の物語とキャラクターを、
アニメ側が雑に切り刻んでダイジェストにしてしまい、
『覇穹 封神演義』を思い出すほどの、とんでもない圧縮アニメでした。

13位 新解釈・幕末伝

2時間の拷問茶番劇「新解釈・幕末伝」レビュー
評価 ★☆☆☆☆(7点) 全119分あらすじ 江戸末期の日本の動乱。ペリー来航に伴い渡米を試みる勤王の志士達が繰り広げるドタバタ劇 引用- Wikipedia

福田雄一監督が、幕末と坂本龍馬を独自に描いた作品でした。
しかし、舞台が幕末に変わっただけで、
やっていることはいつもの福田雄一作品。

豪華な役者を集め、ムロツヨシに長々としゃべらせ、
山田孝之に奇行をさせ、佐藤二朗にアドリブ風の演技をさせる。

幕末の歴史や坂本龍馬という題材は、
彼らにいつものコントをさせるための舞台装置でしかありません。

会話のテンポも悪く、同じようなやり取りを何度も繰り返し、
グダグダな茶番劇で119分を埋めています。

ギャグというものは、短くテンポよく見せるからこそ笑えるものです。
結果的に、観客が感じるのは笑いではなく疲労でしかなく、
2時間が拷問のように感じられます。

福田作品のノリが好きな人なら楽しめるのかもしれませんが、
そのノリを何度も見てきた人間からすると、何の新鮮味もなく、
「新解釈」と名乗りながら、映画としては何一つ新しくない作品でした。

12位 君と花火と約束と

なにもかもが酷すぎる金欠映画「君と花火と約束と」レビュー
評価 ☆☆☆☆☆(6点) 全96分あらすじ 高校入学直後のある日、夏目誠は同級生の葉山煌と出会う。煌は幼い頃から曽祖母に「いつか夏目誠と出会う」と語られており、一枚の花火の絵を手にしていた。 引用- Wikipedia

高校時代に絵を描くことをやめてしまった主人公が、
不思議な少女と出会い、過去へとタイムスリップする。

青春、恋愛、タイムスリップ、花火、戦争。
いかにも泣ける映画になりそうな要素を詰め込んだ作品です。
しかし、どの要素も薄い。

主人公のトラウマは説得力に欠け、
少女との関係性も深まらないまま物語が進み、
タイムスリップの設定も勢い任せ。

キャラクターの行動やリアクションにも違和感が多く、
脚本の都合で動かされていることが透けて見えます。

主人公を演じた佐藤勝利の声の演技も厳しく、
何が起きても同じような調子でしゃべるため、
主人公の気持ちが伝わってきません。

作画も昨今の劇場アニメとしては物足りず、
最大の見せ場となる花火のシーンにも、
映画館で見る価値を感じるほどの迫力や美しさはありませんでした。

『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』のような戦争と恋愛、
『花緑青が明ける日に』のような花火。

そうした既存作品の要素を集めたものの、
一つの作品としてまとめ切れておらず、
何を見せたいのか、何を感動させたいのか。

最後までよく分からない映画でした。

11位 『女神「異世界転生何になりたいですか」俺「勇者の肋骨で」』

アニメじゃない?クリエイター展覧会「『女神「異世界転生何になりたいですか」俺「勇者の肋骨で」』」レビュー
評価 ★☆☆☆☆(15点) 全12話あらすじ 現世で死亡した主人公は、異世界転生する先を自由に選べる空間にたどり着いた。しかし人気の転生先は待ち時間が長いことを女神に告げられた主人公は、転生先として勇者の肋骨を選択する 引用- Wikipe...

勇者や魔王ではなく、「勇者の肋骨」に転生する。
その発想自体は面白い作品でした。

異世界転生ものが飽和した時代に、
転生先を肋骨にするという出落ちは、
確かに一瞬だけ強烈なインパクトがあります。

しかし、本当に一瞬だけでした。

1話で出落ちを使い切り、
2話以降は同じような大喜利を延々と繰り返していく。

毎話異なるクリエイターが参加し、実写、仕掛け絵本、
独特なアニメーションなど、さまざまな表現方法を見せてくれます。

映像の実験場、クリエイターの展覧会として見れば興味深いのですが、
根本にあるギャグが微妙で、素材そのものが滑っているため、
どれだけ映像表現を変えても笑いにはつながりません。

むしろ、表現方法が変わるたびに
「これはアニメなのか?」という疑問が強くなっていきます。

さまざまなクリエイターが、
面白くない大喜利の答えを必死に料理しているような作品でした。

10位 サイボーグ009 ネメシス

企画倒れの昭和の遺物「サイボーグ009 ネメシス」レビュー
評価 ★☆☆☆☆(17点) 全3話あらすじ 世界各地で相次ぐ大規模な破壊行為。犯罪組織やテロ支援国家、そしてその関係者たちが拠点ごと葬られるという実行困難かつ大胆な事件に対し、サイボーグの暗躍を噂する者も少なくなかった。 引用- Wikip...

『サイボーグ009』としては約10年ぶりとなる新作アニメ。

長年愛され続けた作品が令和によみがえる。
それだけなら期待したくなるところですが、
完成した作品からは、企画倒れという言葉しか浮かんできませんでした。

全3話という短い尺にもかかわらず、
敵となるネメシスを9人も登場させ、
009たちと一人ずつ戦わせようとする。

当然ながら、敵も味方も掘り下げる時間がない。

キャラクターが出てきて、少し戦い、いつの間にか決着がつく。
何か大きな物語が始まりそうな雰囲気だけはあるものの、
その物語を描く尺が最初から用意されていません。

本来は2時間程度の映画として考えていた企画が通らず、
無理やり30分×3話のWebアニメにしたのでは?

そう疑いたくなるほど構成が粗く、
何度もアニメ化されてきた『サイボーグ009』を、
令和にもう一度作る意味。

その答えを見つけられないまま終わってしまいました。

昭和から平成にかけて擦り倒されたシリーズを、
さらに擦った結果、絞りカスしか残っていないような印象を受けました。

9位 The Summer あの夏

新海誠風韓国百合はビターな味「The Summer あの夏」レビュー
評価 ★☆☆☆☆(28点) 全61分あらすじ とある地方の高校で運命的に出会った2人の少女イギョンとスイの、距離が近づいていくことの喜びや、一見するとささいにも思えるすれ違い、そして避けられなかった結末までを、2人のモノローグとともに描く。...

韓国のアニメ映画は初めて見たかもしれません。

夏の日差し、蝉の鳴き声、夕焼け、田舎町。
序盤から「夏」という季節の空気を強烈に感じさせる作品です。

リアルな背景描写やポエミーな台詞回しには、
初期の新海誠監督作品に近いテイストがありますが、
描かれるのは男女の恋愛ではなく、二人の少女による百合。

序盤は、少女たちが距離を縮めていく姿を
ニヤニヤしながら眺められますが、
環境が変わり、進学し、二人の心は少しずつ離れていきます。

中盤以降は、イギョンの身勝手にも見える行動にモヤモヤさせられ、
そのモヤモヤが完全に晴れることなく終わります。

それこそが、失恋のリアルなのかもしれない。
どちらか一方が明確に悪いわけではない。

環境が変わり、気持ちが変わり、
かつて愛した相手と離れていく。

恋愛が終わる理由は、
必ずしもきれいに説明できるものではない。
そんなことを感じさせてくれる作品です。

韓国だからこその社会背景や女性同士の関係性には面白さがあり、
単なる新海誠風の作品では終わっていません。

ただ、心変わりの過程をもう少し丁寧に描いていれば、
単なるモヤモヤではなく、
忘れがたい苦い青春映画になっていたかもしれません。

素直に人へ勧めるのは難しい、ビターな百合映画でした。

8位 ガス人間

ガバガバスカスカ「ガス人間」レビュー
評価 ★★☆☆☆(35点) 全8話あらすじ 生放送中のTV局で突如起きた、人間が膨らみ爆死するという未曾有の殺人事件。その犯人はガス化した人間――ガス人間だった。 引用- Wikipedia

Netflixで配信されたドラマでした。

東宝特撮映画『ガス人間第一号』を原案にした作品であり、
序盤の期待感はかなり高かったと思います。

人間がガスになり、どこからともなく侵入し、人を殺す。

現代的な映像表現で描かれるガス人間には不気味さがあり、
事件を追う捜査劇としても引き込まれました。

1話から3話までは、
「これは面白くなりそうだ」と素直に期待できました。

しかし、中盤以降から脚本が崩れていきます。

ヤクザ、YouTuber、警察、人体実験、黒幕。
さまざまな要素を盛り込んでいるものの、それらのつながりが弱い。

キャラクターの行動にも無理があり、
警視総監が簡単に殺されて自殺として処理されるなど、
物語の根幹に関わる部分までガバガバでした。

ガス人間がガスになることは、
特撮作品のファンタジーとして受け入れられます。

しかし、警察組織や登場人物まで
脚本の都合で不自然に動くことは別の問題です。

素材自体は悪くなく、ガス人間という存在も、事件の構造も、
現代版として描きたいことも分かるのですが、
最後まで練り込み切れなかったことが惜しい作品でした。

7位 灰原くんの強くて青春ニューゲーム

妄想青春詰め合わせセット「灰原くんの強くて青春ニューゲーム」レビュー
評価 ★★☆☆☆(28点) 全12話あらすじ 高校デビューに失敗したことで暗い高校生活を送った灰原夏希は大学4年生のある日、7年前にタイムスリップした。 引用- Wikipedia

灰色の高校生活を後悔している主人公が高校時代へ戻り、
今度こそ理想の青春を送ろうとする。
青春ラブコメ版のタイムリープものでした。

高校時代に戻った主人公は、友人を作り、運動部に入り、
文化祭やバンド活動を経験し、美少女たちと恋愛する。

青春時代にやりたかったことを、
すべて詰め込んだような作品です。

しかし、あまりにも
「オタクが妄想した理想の青春」の域を出ていません。

イベントは次々と起こるものの、どれも淡々としており、
キャラクター同士の関係性が深まっている感覚が薄い。

ヒロインも多くいるのですが、
物語の中で使いこなせていません。

作画も不安定で、1枚絵をカメラワークで動かしているように見せたり、
キャラクターの頭上だけを映したりと、
作画を省略するための苦労が画面から伝わってきます。

終盤では本命ヒロインと結ばれ、
一応のハッピーエンドを迎えます。

しかし、最後の最後に幼馴染がメンヘラ化し、
続編を匂わせるような歯切れの悪い終わり方をしてしまいました。

6位 上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花

酔いどれの反逆者「上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花」レビュー
評価 ★★★☆☆(58点) 全12話あらすじ 秩父の大学の寮に入寮した、お酒初心者である上伊那ぼたんが焼酎やワインなどさまざまなお酒に挑戦しながら、寮の先輩女子たちに酔った勢いで絡み、交流を重ねていく。 引用- Wikipedia

女子大学生たちがお酒を飲みながら交流し、
少しずつ百合模様を濃くしていく作品でした。

序盤だけを見れば、かわいい女の子たちがお酒を楽しむ、
きらら系のような日常アニメにも見えます。

しかし、話が進むにつれて作品の湿度が上がり、
キャラクター同士の感情も濃くなっていきます。

本作で最も特徴的なのは、
毎話のように作画監督や絵柄の雰囲気が変わることです。

かわいらしい日常アニメ風の作画になったかと思えば、
突然シャフト作品のような演出が始まり、
そうかと思えば、濃厚で湿度の高い百合アニメになる。

飲む酒が変われば、人間関係も少しずつ変わる。
その変化を、作画や演出の違いによって
表そうとしたのかもしれません。

3話の癖は非常に強く、
個性というより悪癖に近い部分もあります。

通常のアニメのように総作画監督が絵柄を統一していれば、
もっと見やすい作品になっていた可能性もあります。

それでも、毎話異なるアニメーターの個性を味わえる作品は珍しく、
その実験精神には興味をそそられました。

アニメ業界の統一された作画に反逆する、
酔いどれの実験百合アニメでした。

5位 ニワトリ・ファイター

世界を救う鶏「ニワトリ・ファイター」レビュー
評価 ★★★☆☆(57点) 全12話あらすじ 街が破壊され、絶望に暮れる人々…。誰もが諦めかけたその時、鬼獣に立ち向かう一つの影が——!「テメーら、トサカにくるぜ!!」 引用- Wikipedia

巨大な怪獣「機獣」が街を破壊し、人々を食い散らかす。
そんな怪獣に立ち向かうのは、
ウルトラマンでもゴジラでもない。

一羽のニワトリ。

設定だけを聞けば完全なギャグアニメで、
一発ネタの出落ち作品にしか思えないのですが、
この作品はそこから王道の物語を紡いでいました。

序盤はニワトリが真剣な顔で怪獣と戦うだけでも面白く、
三宅健太さんの渋すぎる声で格好いい台詞を放ち、
圧倒的な強さで機獣を倒していく展開には爽快感があります。

中盤からは、主人公ケイジの過去、仲間との出会い、
強大な敵の存在が際立ちます。

物語が進むにつれて王道の少年漫画らしい熱さが生まれていき、
出落ちの設定を出落ちで終わらせず、
王道の面白さへつなげたことは見事でした。

CGアニメとしてのクオリティも高く、
機獣との戦闘には重量感と迫力があります。

ただ、中盤以降は物語の規模がかなり大きくなり、
原作も連載中のため、
どこまで続くのかは少し不安なところです。

それでも、続きをアニメで見たいと思わせてくれた作品でした。

4位 マーズ・エクスプレス

大爆死のフランス産名作アニメ映画「マーズ・エクスプレス」レビュー
評価 ★★★★☆(60点) 全89分あらすじ 物語は23世紀の火星を舞台とする。私立探偵のアリーヌ・ルビーとアンドロイドの相棒カルロス・リヴェラは、名門大学の学生2人が行方不明になった事件の解決を任される。引用- Wikipedia

ここ最近、日本での上映が増えているフランスのアニメ映画。
そんなフランスのアニメ映画らしい哲学を感じさせてくれる作品でした。

火星に築かれた都市で、人間とアンドロイドが共存する未来。
探偵のアリーヌとアンドロイドのカルロスが、
ハッキング事件と失踪事件を追っていく。

一言で表現すれば、
フランス版『攻殻機動隊』とも言える作品です。

しかし、単なる模倣作品ではありません。

アンドロイドに魂はあるのか。
人間と機械の違いは何なのか。
人工知能が自由を求めることは許されるのか。

SF作品として王道のテーマを扱いながら、
捜査劇とアクションをハイテンポに展開していきます。

本作の難点を挙げれば、説明描写が少ないことにあります。

本作は世界観をいちいち説明してくれず、
アンドロイドや強化人間が存在することも、
火星で人間と機械が共存していることも、
この世界では当たり前です。

観客はキャラクターの会話や行動から、
その世界の仕組みを理解しなくてはなりません。

SF作品をあまり見ない人は、
情報量の多さに置いていかれるかもしれません。

しかし、余計な説明がないからこそ、
物語は最初から最後まで止まらない。

キャラクターデザインには海外アニメらしい癖があるものの、
それを乗り越えれば、骨太なSF映画を存分に味わえます。

海外では高く評価されながら、
興行的には苦戦した作品でしたが、
埋もれさせるには惜しい。

久しぶりに「遊びのない本格SF」を見たと思える作品でした。

3位 トイ・ストーリー5

30年越しの答え「トイ・ストーリー5」アニメレビュー
評価 ★★★★★(80点) 全102分あらすじ ボニーのもとで暮らすバズやジェシー、フォーキーたちは、これまでと変わらぬ日常を送っていた。しかし、最新型の電子タブレット「リリーパッド」がやってきたことで状況は一変。 引用- Wikipedi...

『トイ・ストーリー3』できれいに終わったはずのシリーズを、
なぜ再び作るのか。

公開前は、私もそんな疑問を抱いていました。
しかし、本作は単なる蛇足ではありませんでした。

主人公として描かれるのは、ウッディではなくジェシー。

かつて持ち主に捨てられた経験を持つジェシーが、
タブレットという新しい遊び道具に夢中になる子供と向き合っていく。

おもちゃとタブレット。
アナログとデジタル。

一見すると、
「スマホやタブレットばかり見ていないで、おもちゃで遊べ」
という古臭い作品にも見えるのですが、
本作はデジタルを一方的に否定しません。

序盤ではおもちゃとハイテクを対立させながら、
終盤では新しい時代を受け入れていく。

その変化は、『トイ・ストーリー』1作目を
子供のころに見ていた世代にも重なるところがあります。

おもちゃで遊び、インターネットが登場し、
スマートフォンが普及し、今ではAI全盛期。

デジタルに飲み込まれながら、
それでも必死についていこうとしている。

そんな世代に対し、本作は改めて
「おもちゃとは何だったのか」を問いかけてくれます。

もう、子供のころに遊んだおもちゃは手元にない。
それでも、そのおもちゃと遊んだ思い出は残っている。

おもちゃの価値は、
永遠に子供のそばにいることではない。
子供の記憶の中に残ることなのかもしれない。

30年以上続いたシリーズだからこそ描ける、30年越しの答え。

自分の思い出の中にいるウッディやバズを思い出し、
思わず涙腺を刺激される作品でした。

2位 ペリリュー 楽園のゲルニカ

生還率0.34% 美化しない戦争映画「ペリリュー 楽園のゲルニカ」レビュー
評価 ★★★★☆(75点) 全106分あらすじ 太平洋戦争末期の昭和19年、21歳の日本兵・田丸均は、南国の美しい島・ペリリュー島にいた。漫画家志望の田丸はその才を買われ、亡くなった仲間の最期の雄姿を遺族に向けて書き記す「功績係」という任務...

太平洋戦争中、約1万人の日本兵が投入され、
わずか34人しか帰還できなかったとされるペリリュー島の戦い。

本作は、その凄惨な戦場を真正面から描いています。

特徴的なのは、三頭身のかわいらしいキャラクターデザインで、
その絵柄だけを見れば、戦争映画には見えません。

しかし、描かれる内容は徹底的に重い。

人があっさりと死ぬ。
昨日まで話していた仲間が、次の瞬間には肉の塊になる。

主人公は、亡くなった兵士の最期を記録する「功績係」で、
その記録には兵士たちを英雄として美化する役割もあります。

現実には恐怖に震え、逃げ、泣きながら死んだ人間も、
「勇敢に敵へ立ち向かった」と書き換えられていく。

国のために命を捧げること。
敵を倒すこと。
最後まで戦い続けること。

それが美徳とされていました。

現代人から見れば理解し難い価値観も、
当時の教育と時代背景の中では正義でした。

戦争は人を殺すだけではなく、
人間の価値観そのものを書き換えてしまう。

終戦を迎えても敗戦を受け入れられず、
戦い続けようとする兵士たちの姿は、
「リアル」という言葉だけでは足りません。

これは作り話ではなく、現実に起きたこと。
創作物ゆえのファンタジーはありつつも、
根底にあるのは現実です。

亡くなった兵士を英雄として語ることはできる。

しかし、どれだけ美しい英雄譚を作っても、
失われた命が戻ることはない。

だからこそ、戦場に本物の英雄はいない。

かわいらしい絵柄だからこそ、悲惨さだけに飲み込まれず、
その奥にある人間の感情と戦争の異常さを見つめることができます。

戦争を美化せず、反戦という答えを押しつけることもなく、
ただ戦場にいた人間たちを描いている作品です。

1位 映画ちいかわ 人魚の島のひみつ

最悪の後味「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」レビュー
評価 ★★★★☆(75点) 全99分あらすじ ある日、広場でくつろいでいたちいかわとハチワレのもとに、顔にチラシを貼り付けたうさぎが現れる。ハチワレがチラシの内容を確認すると、それは「特別な島」への招待状だった。 引用- Wikipedia

私は『ちいかわ』について、
ほぼ何も知らない状態で見に行きました。

完全なミリしら。

しかし、そんなミリしらだからこそ、
序盤は純粋にキャラクターのかわいらしさを楽しめました。

うさぎのラップや、島二郎の意味が分からない強さには、
素直に笑わされました。

子供向けのかわいらしい冒険映画。
少なくとも、序盤まではそう感じます。

しかし、物語が進むにつれて空気が変わる。

かわいらしい世界の裏側にある残酷さが少しずつ顔を出し、
終盤では、それまで積み重ねてきた楽しさを
すべてひっくり返すような展開が待っています。

そして、エンドロール後に描かれる最後のカット。

あの一枚によって、観客は笑うことも、
感想を口にすることもできなくなる。

すさまじい後味が強烈に残る作品です。

99分という尺に無駄がなく、
子供でも理解できるシンプルな物語でありながら、
大人でも予想できない方向へ突き進んでいく。

だからこそ、見終わった後に
素直に「面白かった」とは言えない。

ふとした瞬間にラストを思い出し、
暗い気持ちになってしまう。

それほど鮮烈な作品でした。

普通なら、これほど救いのない物語が
万人に受け入れられることは難しいのですが、
『ちいかわ』というキャラクターの魅力と人気があるからこそ、
多くの観客がこの地獄を目撃することになります。

かわいいだけではない。
理不尽で、残酷で、それでも懸命に生きる。

それこそが『ちいかわ』という作品の魅力なのかもしれません。

とんでも作品と名作

今月は、下位と上位の差が非常に激しい月でした。

こういう月はレビューをしていて純粋に楽しく、
話題性のある作品も多いからこそ、
その話題がSNSで流れるたびに笑顔になれるような月でした。

ただ、映画が多すぎたことは気になる部分で、
8月はTVアニメをがっつりとレビューしていきたいところです。

8月もよろしくお願いいたします。

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