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邪道な異世界アニメ「オーバーロード」レビュー

4.0
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評価 ★★★★☆(62点) 全12話

【振り返りPV】TVアニメ「オーバーロード」Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ

あらすじ 時は2138年。一大ブームを巻き起こした仮想現実体感型オンラインゲーム《ユグドラシル》はサービス終了を迎えようとしていた。プレイヤーであるモモンガも仲間と栄華を誇ったギルドで一人静かにその時を待っていた 引用- Wikipedia

邪道な異世界アニメ

原作はライトノベルな本作品。
監督は伊藤尚往、アニメーション制作はマッドハウス

日野聡

見だして感じるのは声優「日野聡」さんの凄さだ。
「日野聡」さんといえばライトノベルアニメが流行りだした頃から
ゼロの使い魔、灼眼のシャナなど多くの作品の主人公を演じており、
「日野聡」=主人公という印象が強い人も多いはずだ。

ただ、近年はどちらかというと主人公の友人ポジション的キャラクターや
サブキャラクターなど主人公以外のキャラクターも多く演じており、
「日野聡」の声を聞く機会は減ってしまっていた。
だからこそ久しぶりに「日野聡」が演じる主人公は少し「懐かしさ」を感じると
同時に、あの頃にはなかった「声の圧」を感じる。

この作品の主人公は外見はゲーム内のキャラクターであり、
しかも「アンデッド」だ。
外見は魔王のような骸骨キャラクターで、表情の変化は
骸骨であるがゆえにほとんどない。表情を再現するための
筋肉がないのだから当たり前だ。

だからこそ「声優の演技」で感情や心理を表現しなければならない。
数々の主人公を演じてきた「日野聡」さんだからこその演技力が、
この作品における主人公「アインズ」というキャラをより魅力的なものに仕上げている。

このレビューを書いていたころ、オーバーロードの1期が
放送されていたときには、まさか数年後
「400億円の男」を演ずることになるとは想像もしていなかった(笑)

RPG

この作品の主人公「アインズ」は「演ずる」ことを求められている。
主人公ガは誰もいないMMOの世界でサービス停止の瞬間を待っていると
終了時間を過ぎてもサーバーが落ちず、ログアウトもできず、
更に喋りかけないと話さないはずのNPCが、
AIではなく意思を持って普通に話しかけてくるようになる。

彼はすぐさま自分が「ゲームのキャラクター」になってしまったことに気づき、
更には元のゲーム世界ではなく異世界へと転移していることに気づく。
ゲームの世界のキャラに転生するという作品は多いが、
自分がやっていたゲームのキャラになってなおかつ、
全く未知の異世界に転移しているという状況はかなり特殊だ。

この作品は「MMO」を題材にしている。
その手の作品の場合はSAOしかり、.hackしかり、
「ログアウト」できない状況から「ログアウト」することが
目的だったりする。

しかし、今作の主人公は「元の世界に戻る」事をあまり望んでいない。
現実世界では天涯孤独のしがないサラリーマンであり、
衰退したとはいえ、ゲームをLVMAXになるまでやりこみ愛している。
彼に付き従うNPCも定型文や決められたセリフではなく意思を持って動いている。

その状況をどこか楽しんですらいる。
どちらかというと「ゼロの使い魔」のように異世界召喚型ファンタジーに近い。
主人公が召喚されてしまったのが異世界ではあるものの
人間の姿ではなくゲーム内のキャラやアイテム、設定を引き継いだ状態になっている。

つまり彼は「演ずる」ことを求められている。
彼とともに異世界へとやってきたNPCたちは、
彼が「鈴木悟 」という名前のサラリーマンであり、
自分たちがゲームの中のキャラであることも気づいていない。

だからこそ、主人公は「モモンガ」であり「アインズ」であることを
NPCたちは求めている。
主人公は自らの人間としての本性を内に秘めつつ、「アインズ」を演ずる。
よくわからない状況の中で自らの味方であるNPCたちの信頼を裏切ることはできない、
だからこそ彼はアインズに興じなければならない。

これぞまさに「RPG」だ。
割り振られたキャラクターを自ら操作し、
そのキャラクターになりきり架空の世界での冒険、戦闘を楽しむ。
RPGという言葉の意味、ロールプレイという原点に返るような作品を
アニメという媒体で描いている。

オープンワールド

しかも、ただのRPGではない。
NPCキャラクターは人間のように意思を持ち、決められたイベントもない。
広大な未知のフィールド、無数のNPC、無限のクエストがある。

このゲーム、作品における主人公の目的は
「どうしてこうなったのか?」
「自分以外に転移してしまった人間は居るのか?」
ということだけだ。

エンディングがあるかどうかもわからない。
主人公の選択肢1つでバッドエンドにもハッピーエンドにも、
エンディングを迎えないという選択肢もできる。

そんな主人公を通して予測できない「オープンワールドRPG」を
プレイしているような感覚になるほど
物語の「地盤」「雰囲気」づくりが素晴らしく、
話の展開が一切読めないからこそストーリーが純粋に面白い。

丁寧に作られた世界観と物語の序盤があるからこそ、
ストレートに面白さが見ている側に突き刺さり、
他のMMO題材作品や異世界召喚型ファンタジー作品とは
「別の視点」で描かれている作品だからこそストーリーの予想ができない。

主人公自身にもわからない。
だが、拠点を出て無限に広がる世界に彼は感銘を受ける。

「世界征服も面白いかもしれない」

そんな何気ない一言に彼のNPCたちは暴走を始める(笑)

アインズ

主人公のNPCたちにとって人間族は下等生物でしかない。
助ける意味もなく、保護する意味も彼らは感じない。だが、主人公の中身は「人間」だ。
人間としての理性、価値観と「アインズ」というアンデッドを
演じなければならない状況による板挟みがこの作品の面白さにもなっており、
「アインズ」という主人公の魅力にもなっている。

威厳のある喋りをしつつも、内面では慌てふてめく様子のギャップが
「ギャグ」になっており、非常に愛着の持てる主人公の描写になっている。
そんな主人公が拠点の周囲を探りながら、
徐々に「人間」に、この世界にかかわっていく。

戦闘シーン

アインズだけでなくNPCも魅力的だ。
彼らはアインズが作り出したものと、アインズのかつての仲間が作り上げたものたちだ。
だが、多くの仲間たちは彼らを捨てゲームをやめてしまった。
唯一、残ってくれていたのが「アインズ」だ。

だからこそ彼により心酔している。
アルベドは狂愛をむけ、シャルティアは性愛を向け、
デミウルゴスは尊敬の念を、マーレとアウラは親のように、
コキュートス は忠誠を誓っている。

それぞれがアインズという主人に対する並々ならに感情を抱いている。
そんな感情、期待にアインズは答えるためにも演じ続けなければならない。
最強で聡明な主人を。間違えることは許されない、失敗することも許されない。
NPCたちもまたアインズに迫るレベルを持ち、レアアイテムの数々を持っている。
NPCに裏切られる、そんな可能性も「意思」をもった彼らならあり得る。

だからこそ鈴木悟は「アインズ」であり続けようとする。
この世界のどこかにいるかもしれない仲間を探し、
この世界に訪れた意味を探るために。

アインズやNPCたちはこの世界において最強に近い。
だが、最強だからといって「無敗」であるわけではない。
この世界に流れ込んだユグドラシルのアイテムの数々、
その中には「ワールドアイテム」と呼ばれるものも存在する。
世界の理すら変えるアイテムはアインズのNPCを支配してしまう。

俺つえーでチートな作品ではあるものの
「主人公が負ける可能性」をきちんと示唆することによって
物語の緊張感がきちんと生まれる。
1クールという尺の中で描かれるのはオーバーロードの序章にすぎない。

そんな序章の中で主人公とメインキャラをきちんと掘り下げ、
世界観を描き、物語の目的を指し示し、
「敵」の存在と脅威も盛り込むことで、作品としての完成度を高めている。

課金アイテム

主人公がやっていたゲームはVRMMOだ。
そういったゲームをやったことがある人ならばご存じの通り、
その手のゲームには必ず「課金」アイテムが存在する。
pay to winなんて言葉もあるくらい課金によってゲームで有利になることも多い。

そんな「課金」アイテムをアインズはこの世界に持ち込んでいる(笑)
終盤、操られた仲間を助けるためにアインズは単身挑むことになる。
1体1ならば負けは確実だ。NPCに裏切られれば主人公は終わる、だが、
それは単純なキャラクターとしての性能差の場合だ。

主人公にはNPCにはない知識とアイテムがある。
それがまさに「課金アイテム」だ。
終盤で課金アイテムを「湯水」のごとく使いながら戦うさまは
笑ってしまうほどであり、プレイヤーだからこその知識とアイテムで
NPCを圧倒するシーンは見事だ。

主人公は「モモンガ」という名前で本来はプレイしていた。
だが、この世界に来た時に「アインズ・ウール・ゴウン」という
名前に変えている、彼と、彼の仲間たちが作り上げたギルド、
そんな「41人」の仲間たちのすべてを彼は背負っている。

1クールの締めとしてラストの戦闘シーンは本当に素晴らしく、
オーバーロードという作品を印象付けるものになっていた。

総評:至高のオープンワールドRPGアニメ

全体的に見てすばらしい作品だ。
ストーリーの進みの遅さはやや気になる部分ではあるものの、
1クール全体でオーバーロードという作品の序章を丁寧に描いており、
ゲーム内のキャラでゲームの世界じゃない異世界にNPCとともに
転移するという独創性から世界観と設定がきちんと作られている。

そんな設定と世界観をもとに作り上げられているキャラクターの
魅力もしっかりとあり、主人公のアインズはプレイヤーとして
人間としての心を持ちながらもアンデッドであり、
ギルドの長である「アインズ」であることを演じなければならない。
まさにRPGだ。

なぜかゲームの世界の魔法やモンスターが存在する異世界、
そんな右も左もわからない世界を冒険する様は
「オープンワールドRPG」のような感覚があり、
本当に「RPG」をプレイしているような感覚になれるような
広大なフィールド、先が見えないストーリー、魅力のあるキャラクターを感じられる。

この作品を「プレイ」してみたくなるほどRPGの面白さが詰まっている作品だ。
同時に最終的なプレイ時間がどれくらいか見えないのが
若干の不安要素にもなっているのだが、まだまだ「序章」な感じも強く
2期以降、どういうふうにストーリーが展開するのか気になる所だ。

個人的な感想:1期

2025年現在、4期まで制作され映画も制作され、
映画を見る前に久しぶりに1機を見返したのだが
しっかりとした面白さを感じる作品だ。

2機以降はいろいろと欠点や気になるところも生まれた作品だが、
このまま5期、6期と制作されていき、
アニメという媒体でこの至高のオープンワールドRPGの
エンディングを見てみたいところだ。

「オーバーロード」に似てるアニメレビュー

著:丸山 くがね, イラスト:so-bin

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